建築設備定期検査|対象の4設備と報告書の書き方
目次
建築設備定期検査は、名前から「設備の点検」と思われがちですが、見るのは4種類だけです。空調・換気、排煙、非常用照明、給排水。ボイラーもエレベーターもここには入りません(別の制度です)。この範囲を取り違えると、点検の見積りが噛み合いません。
この記事では、建築設備定期検査を、対象の4設備、周期と提出先、検査の中身、報告書と是正の順に整理します。対象と周期は特定行政庁(都道府県・市)が指定します。自分の建物に何が適用されるかは、建物のある自治体の建築指導課に確認してください。
結論:見るのは4設備。周期はおおむね1年に1回
建築基準法の定期報告のうち、建築設備定期検査が対象とするのは次の4つです。
| 設備 | 何のためのものか |
|---|---|
| 換気設備 | 室内の空気を入れ替える。機械換気、自然換気 |
| 排煙設備 | 火災のときに煙を外へ出す |
| 非常用の照明装置 | 停電したときに避難経路を照らす |
| 給水設備及び排水設備 | 飲み水の安全、排水の逆流防止 |
周期はおおむね1年に1回です(自治体が指定)。特定建築物定期調査がおおむね3年に1回なので、周期が違う点に注意します。
| 周期の目安 | 見るもの | |
|---|---|---|
| 特定建築物定期調査 | 3年に1回 | 建物そのもの |
| 建築設備定期検査 | 1年に1回 | 上の4設備 |
| 防火設備定期検査 | 1年に1回 | 防火戸・防火シャッター |
| 昇降機等定期検査 | 1年に1回 | エレベーター等 |
建物側の調査は特定建築物定期調査とはにまとめています。
誰が検査するか
| 資格 | 内容 |
|---|---|
| 一級建築士・二級建築士 | 建築士であれば行える |
| 建築設備検査員 | 講習を修了して資格者証の交付を受けた人 |
所有者や管理者が自分で検査することはできません。
他の定期報告とまとめる
特定建築物・建築設備・防火設備・昇降機は別々の報告ですが、同じ業者にまとめて依頼できることが多くあります。周期が違うので全部が同じ年に来るわけではありませんが、依頼先を1社にすると、次回の案内がまとめて来るという利点があります。
検査の中身
換気設備
- 給気口・排気口がふさがれていないか
- 換気扇・送風機が動くか、異音・振動がないか
- ダクトの接続、ダンパーの状態
- 風量が基準を満たしているか(測定)
給気口が塞がれているのが最も多い指摘です。寒い、うるさいという理由で、使う人がテープやダンボールで塞いでいることがあります。
排煙設備
- 排煙口が開くか(手動開放装置の操作)
- 排煙機が起動するか
- 排煙口の前に物が置かれていないか
- 防煙垂れ壁が壊れていないか
手動開放装置(壁の赤いボックスやレバー)の前に什器が置かれているのが定番の指摘です。操作できなければ設備が無いのと同じになります。
非常用の照明装置
- 停電時に点灯するか(電源を切って確認)
- 照度が確保されているか
- バッテリーが劣化していないか
「点いているから大丈夫」ではありません。非常用照明は、停電したときに点くかが中身です。バッテリーは数年で劣化するので、点検で「不点灯」が出たら交換になります。
給水設備及び排水設備
- 受水槽・高置水槽の状態、清掃の記録
- 逆流を防ぐ構造になっているか(クロスコネクションが無いか)
- 排水トラップの封水、通気
- 排水槽・ポンプの状態
貯水槽の清掃そのものは水道法の話で、別の制度です。貯水槽の清掃にまとめています。
検査の日に用意するもの
当日にそろっていないと、検査がその場で止まります。
| 用意するもの | なぜ |
|---|---|
| 竣工図・設備図 | 設備の位置と系統を追うため |
| 前回の報告書 | 前回の指摘が直っているかを見る |
| 各室の鍵 | 機械室、屋上、電気室 |
| 停電させてよい時間帯 | 非常用照明の確認で一時的に電源を切る |
| 立会いの担当者 | 入居者への説明、開錠 |
「停電させてよい時間帯」を先に決めておくのが要点です。非常用照明の確認は電源を落とす必要があるため、テナントや利用者への周知が要ります。当日に調整すると、その項目だけ後日になります。
入居者への周知
- 換気が一時的に止まる
- 照明が一瞬消える
- 排煙口が開く(音が出る)
事前に1枚貼っておくだけで問い合わせが減ります。
報告書と是正
提出は所有者・管理者
検査した人ではなく、所有者・管理者が特定行政庁へ報告します。ここは特定建築物定期調査と同じです。業者が代行するかは契約によります。
指摘の区分
報告書には、指摘の区分が付きます。一般に次のように分かれます。
| 区分 | 意味 | やること |
|---|---|---|
| 指摘なし | 問題なし | なし |
| 要重点点検 | いまは使えるが、注視が必要 | 次回までに様子を見る |
| 要是正 | 直すことが前提 | 改修の計画を立てる |
「要是正」を放置すると、次の年も同じ指摘が並びます。直す時期を報告書に書いて出し、直したら改善の報告を入れる形にします。
直せるものはその場で直す
給気口のテープをはがす、排煙口の前の什器をどける、照明のランプを替える。当日に直せるものは直してしまうと、指摘が減ります。検査員に「これは今直せますか」と聞いてよい部分です。
日常でできること
1年に1回の検査だけでは、間の11か月が空きます。日常の巡回で見られることがあります。
| 見る場所 | 頻度 |
|---|---|
| 給気口・排気口がふさがれていないか | 月1回 |
| 排煙口の手動開放装置の前に物が無いか | 月1回 |
| 非常用照明の点灯(テストボタンがあるもの) | 月1回 |
| 排水口の詰まり、におい | 月1回 |
「ふさがれていないか」の2つは、見れば分かります。巡回のルートに入れておくだけで、年1回の指摘が減ります。巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
防火設備定期検査との違い
名前が似ていて混同されますが、別の報告です。
| 建築設備定期検査 | 防火設備定期検査 | |
|---|---|---|
| 見るもの | 換気・排煙・非常用照明・給排水 | 防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーンなど |
| 資格 | 建築士、建築設備検査員 | 建築士、防火設備検査員 |
| 周期の目安 | 1年に1回 | 1年に1回 |
| 提出先 | 特定行政庁 | 特定行政庁 |
排煙設備は建築設備、防火戸は防火設備です。どちらも火災に関わるので混ざりやすいところです。
防火設備の検査で見られること
- 防火戸が自動で閉まるか(連動して動くか)
- 閉まる途中で止まらないか(床の段差、戸当たり)
- 扉の前に物が置かれていないか
- 常時閉鎖式の戸が開け放しになっていないか
「くさびで開けっ放し」が最も多い指摘です。通行の邪魔だからと、ドアストッパーで固定している建物があります。火災のときに閉まらなければ、区画になりません。
日程の組み方
4つの定期報告(特定建築物・建築設備・防火設備・昇降機)は周期が違うので、年によって来る数が変わります。
| 年 | 来るもの |
|---|---|
| 1年目 | 建築設備・防火設備・昇降機 |
| 2年目 | 建築設備・防火設備・昇降機 |
| 3年目 | 特定建築物・建築設備・防火設備・昇降機 |
3年に1度、4つ全部が来る年があります。その年は費用も立会いの手間も増えるので、予算と人の手配を前年から準備します。
まとめて受けるか、分けるか
| まとめる | 分ける | |
|---|---|---|
| 立会いの手間 | 1回で済む | 何度も出る |
| 建物を止める時間 | 1日に集中する | 分散する |
| 入居者への影響 | 1日だけ大きい | 小さいが何度も |
| 費用 | 割引になることがある | なし |
入居者がいる建物では、分けるほうが受け入れられやすいことがあります。テナントの営業を丸1日止めるより、1時間ずつ数回のほうが調整しやすいためです。
停電・断水の調整
非常用照明の検査で一時的に停電、給排水の検査で断水することがあります。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 1か月前 | 検査日と、停電・断水の見込み時間を業者と決める |
| 2週間前 | 入居者・利用者へ周知(掲示) |
| 前日 | 再周知 |
| 当日 | 開始と復旧を放送する |
医療・飲食・データを扱うテナントがある建物では、1か月前の調整が要ります。サーバーがある区画は、検査の対象から外せるか業者に相談します。
よくある質問
エレベーターは含まれますか
含まれません。昇降機等定期検査という別の報告になります。周期はおおむね1年に1回で、提出先は同じ特定行政庁です。
防火戸は含まれますか
含まれません。防火設備定期検査という別の報告です。以前は特定建築物定期調査の中で見ていましたが、分かれています。
ボイラーや受変電設備は含まれますか
建築設備定期検査の4設備には入りません。ボイラーは労働安全衛生法、受変電設備は電気事業法など、別の法令に基づく点検があります。法令ごとに分かれるので、一覧にしておくと抜けません。
対象かどうかが分かりません
建物のある自治体の建築指導課に、用途・階数・延べ面積を伝えて確認します。自治体のサイトに対象一覧が載っていることが多くあります。
前回いつ出したか分かりません
自治体に問い合わせれば、報告の履歴を確認できることがあります。分からないまま放置するより、相談したほうが早く収まります。
まとめ
建築設備定期検査が見るのは、換気・排煙・非常用照明・給排水の4設備です。周期はおおむね1年に1回で、3年に1回の特定建築物定期調査とは別の報告になります。エレベーターと防火戸も別の報告です。
よく出る指摘は決まっています。給気口が塞がれている、排煙口の手動開放装置の前に物がある、非常用照明が停電時に点かない。前の2つは、日常の巡回で見れば防げます。
検査の日は、停電させてよい時間帯を先に決めておくのが要点です。非常用照明の確認で電源を落とすため、決めていないとその項目だけ後日になります。そして報告する義務は所有者・管理者に残ります。