建物の定期報告実務2026.09.16 公開TH-02

建築設備定期検査|対象の4設備と報告書の書き方

目次

建築設備定期検査は、名前から「設備の点検」と思われがちですが、見るのは4種類だけです。空調・換気、排煙、非常用照明、給排水。ボイラーもエレベーターもここには入りません(別の制度です)。この範囲を取り違えると、点検の見積りが噛み合いません。

この記事では、建築設備定期検査を、対象の4設備周期と提出先検査の中身報告書と是正の順に整理します。対象と周期は特定行政庁(都道府県・市)が指定します。自分の建物に何が適用されるかは、建物のある自治体の建築指導課に確認してください。

点検の記録様式そのものを探している場合は、点検板に施設の点検様式がそろっています。

結論:見るのは4設備。周期はおおむね1年に1回

建築基準法の定期報告のうち、建築設備定期検査が対象とするのは次の4つです。

設備何のためのものか
換気設備室内の空気を入れ替える。機械換気、自然換気
排煙設備火災のときに煙を外へ出す
非常用の照明装置停電したときに避難経路を照らす
給水設備及び排水設備飲み水の安全、排水の逆流防止

周期はおおむね1年に1回です(自治体が指定)。特定建築物定期調査がおおむね3年に1回なので、周期が違う点に注意します。

周期の目安見るもの
特定建築物定期調査3年に1回建物そのもの
建築設備定期検査1年に1回上の4設備
防火設備定期検査1年に1回防火戸・防火シャッター
昇降機等定期検査1年に1回エレベーター等

建物側の調査は特定建築物定期調査とはにまとめています。

見るのは4設備だけ換気設備排煙設備非常用の照明装給水設備・排水設備建築設備定期検査
建築設備定期検査が見るのは4設備だけ

誰が検査するか

資格内容
一級建築士・二級建築士建築士であれば行える
建築設備検査員講習を修了して資格者証の交付を受けた人

所有者や管理者が自分で検査することはできません。

他の定期報告とまとめる

特定建築物・建築設備・防火設備・昇降機は別々の報告ですが、同じ業者にまとめて依頼できることが多くあります。周期が違うので全部が同じ年に来るわけではありませんが、依頼先を1社にすると、次回の案内がまとめて来るという利点があります。

検査の中身

換気設備

  • 給気口・排気口がふさがれていないか
  • 換気扇・送風機が動くか、異音・振動がないか
  • ダクトの接続、ダンパーの状態
  • 風量が基準を満たしているか(測定)

給気口が塞がれているのが最も多い指摘です。寒い、うるさいという理由で、使う人がテープやダンボールで塞いでいることがあります。

排煙設備

  • 排煙口が開くか(手動開放装置の操作)
  • 排煙機が起動するか
  • 排煙口の前に物が置かれていないか
  • 防煙垂れ壁が壊れていないか

手動開放装置(壁の赤いボックスやレバー)の前に什器が置かれているのが定番の指摘です。操作できなければ設備が無いのと同じになります。

非常用の照明装置

  • 停電時に点灯するか(電源を切って確認)
  • 照度が確保されているか
  • バッテリーが劣化していないか

「点いているから大丈夫」ではありません。非常用照明は、停電したときに点くかが中身です。バッテリーは数年で劣化するので、点検で「不点灯」が出たら交換になります。

給水設備及び排水設備

  • 受水槽・高置水槽の状態、清掃の記録
  • 逆流を防ぐ構造になっているか(クロスコネクションが無いか)
  • 排水トラップの封水、通気
  • 排水槽・ポンプの状態

貯水槽の清掃そのものは水道法の話で、別の制度です。貯水槽の清掃にまとめています。

4設備でよく出る指摘設備よくある指摘換気給気口がテープで塞がれている排煙手動開放装置の前に什器非常用照明停電時に点かない(電池の劣化給排水逆流を防ぐ構造になっていない
4設備でよく出る指摘
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実際に使える様式が必要な方へ

設備の点検記録の様式を一から作るのは手間がかかります。既成の様式を使いたい方は点検板をご覧ください。

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検査の日に用意するもの

当日にそろっていないと、検査がその場で止まります。

用意するものなぜ
竣工図・設備図設備の位置と系統を追うため
前回の報告書前回の指摘が直っているかを見る
各室の鍵機械室、屋上、電気室
停電させてよい時間帯非常用照明の確認で一時的に電源を切る
立会いの担当者入居者への説明、開錠

「停電させてよい時間帯」を先に決めておくのが要点です。非常用照明の確認は電源を落とす必要があるため、テナントや利用者への周知が要ります。当日に調整すると、その項目だけ後日になります。

入居者への周知

  • 換気が一時的に止まる
  • 照明が一瞬消える
  • 排煙口が開く(音が出る)

事前に1枚貼っておくだけで問い合わせが減ります。

報告書と是正

提出は所有者・管理者

検査した人ではなく、所有者・管理者が特定行政庁へ報告します。ここは特定建築物定期調査と同じです。業者が代行するかは契約によります。

指摘の区分

報告書には、指摘の区分が付きます。一般に次のように分かれます。

区分意味やること
指摘なし問題なしなし
要重点点検いまは使えるが、注視が必要次回までに様子を見る
要是正直すことが前提改修の計画を立てる

「要是正」を放置すると、次の年も同じ指摘が並びます。直す時期を報告書に書いて出し、直したら改善の報告を入れる形にします。

直せるものはその場で直す

給気口のテープをはがす、排煙口の前の什器をどける、照明のランプを替える。当日に直せるものは直してしまうと、指摘が減ります。検査員に「これは今直せますか」と聞いてよい部分です。

当日に直せるものは直してしまう1検査で見つかるテープ、什器、切れたランプ2その場で直す検査員に確認して外す3指摘が減る報告書の要是正が少なくなる
当日に直せるものは直してしまう

日常でできること

1年に1回の検査だけでは、間の11か月が空きます。日常の巡回で見られることがあります。

見る場所頻度
給気口・排気口がふさがれていないか月1回
排煙口の手動開放装置の前に物が無いか月1回
非常用照明の点灯(テストボタンがあるもの)月1回
排水口の詰まり、におい月1回

「ふさがれていないか」の2つは、見れば分かります。巡回のルートに入れておくだけで、年1回の指摘が減ります。巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。

日常で見れば、年1回の指摘が減る見る場所頻度給気口・排気口の障害物月1回排煙口の手動開放装置の前月1回非常用照明(テストボタン)月1回排水口の詰まり・におい月1回
日常で見れば、年1回の指摘が減る

防火設備定期検査との違い

名前が似ていて混同されますが、別の報告です。

建築設備定期検査防火設備定期検査
見るもの換気・排煙・非常用照明・給排水防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーンなど
資格建築士、建築設備検査員建築士、防火設備検査員
周期の目安1年に1回1年に1回
提出先特定行政庁特定行政庁

排煙設備は建築設備、防火戸は防火設備です。どちらも火災に関わるので混ざりやすいところです。

防火設備の検査で見られること

  • 防火戸が自動で閉まるか(連動して動くか)
  • 閉まる途中で止まらないか(床の段差、戸当たり)
  • 扉の前に物が置かれていないか
  • 常時閉鎖式の戸が開け放しになっていないか

「くさびで開けっ放し」が最も多い指摘です。通行の邪魔だからと、ドアストッパーで固定している建物があります。火災のときに閉まらなければ、区画になりません。

排煙は建築設備、防火戸は防火設備建築設備定期検査換気・**排煙**非常用照明給排水建築設備検査員防火設備定期検査**防火戸**防火シャッター耐火クロススクリーン防火設備検査員
排煙は建築設備、防火戸は防火設備

日程の組み方

4つの定期報告(特定建築物・建築設備・防火設備・昇降機)は周期が違うので、年によって来る数が変わります。

来るもの
1年目建築設備・防火設備・昇降機
2年目建築設備・防火設備・昇降機
3年目特定建築物・建築設備・防火設備・昇降機

3年に1度、4つ全部が来る年があります。その年は費用も立会いの手間も増えるので、予算と人の手配を前年から準備します。

まとめて受けるか、分けるか

まとめる分ける
立会いの手間1回で済む何度も出る
建物を止める時間1日に集中する分散する
入居者への影響1日だけ大きい小さいが何度も
費用割引になることがあるなし

入居者がいる建物では、分けるほうが受け入れられやすいことがあります。テナントの営業を丸1日止めるより、1時間ずつ数回のほうが調整しやすいためです。

停電・断水の調整

非常用照明の検査で一時的に停電、給排水の検査で断水することがあります。

段階やること
1か月前検査日と、停電・断水の見込み時間を業者と決める
2週間前入居者・利用者へ周知(掲示)
前日再周知
当日開始と復旧を放送する

医療・飲食・データを扱うテナントがある建物では、1か月前の調整が要ります。サーバーがある区画は、検査の対象から外せるか業者に相談します。

よくある質問

エレベーターは含まれますか

含まれません。昇降機等定期検査という別の報告になります。周期はおおむね1年に1回で、提出先は同じ特定行政庁です。

防火戸は含まれますか

含まれません。防火設備定期検査という別の報告です。以前は特定建築物定期調査の中で見ていましたが、分かれています。

ボイラーや受変電設備は含まれますか

建築設備定期検査の4設備には入りません。ボイラーは労働安全衛生法、受変電設備は電気事業法など、別の法令に基づく点検があります。法令ごとに分かれるので、一覧にしておくと抜けません。

対象かどうかが分かりません

建物のある自治体の建築指導課に、用途・階数・延べ面積を伝えて確認します。自治体のサイトに対象一覧が載っていることが多くあります。

前回いつ出したか分かりません

自治体に問い合わせれば、報告の履歴を確認できることがあります。分からないまま放置するより、相談したほうが早く収まります。

まとめ

建築設備定期検査が見るのは、換気・排煙・非常用照明・給排水の4設備です。周期はおおむね1年に1回で、3年に1回の特定建築物定期調査とは別の報告になります。エレベーターと防火戸も別の報告です。

よく出る指摘は決まっています。給気口が塞がれている、排煙口の手動開放装置の前に物がある、非常用照明が停電時に点かない。前の2つは、日常の巡回で見れば防げます。

検査の日は、停電させてよい時間帯を先に決めておくのが要点です。非常用照明の確認で電源を落とすため、決めていないとその項目だけ後日になります。そして報告する義務は所有者・管理者に残ります。

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