空気環境測定|ビル管法の基準値と2か月に1回の測り方
目次
空気環境測定は、2か月に1回という周期が他と合わないため、単独で飛びやすい業務です。消防が年2回、建築設備が年1回、貯水槽が年1回。そのなかで空気だけが年6回なので、一覧に入れていないと必ずどこかの回が抜けます。
この記事では、空気環境測定を、対象になる建物、測る7項目と基準値、測り方と時期、基準を外れたときの対応の順に整理します。対象や運用は建物の用途・規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物のある自治体の保健所に確認してください。
結論:特定建築物なら2か月に1回
建築物衛生法(ビル管法)では、特定建築物について、空気環境の測定を2か月以内ごとに1回行うこととされています。
| 対象 | |
|---|---|
| 特定建築物 | 興行場、百貨店、店舗、事務所、学校、旅館などの用途で、延べ面積が一定以上のもの |
用途と面積の両方で決まります。倉庫や工場は、用途としては特定建築物に該当しないのが一般的です。自分の建物が該当するかは保健所に確認します。
他の点検と周期が合わない
| 業務 | 周期 |
|---|---|
| 空気環境測定 | 2か月に1回(年6回) |
| 消防設備の機器点検 | 6か月に1回 |
| 建築設備定期検査 | 1年に1回 |
| 貯水槽の清掃・検査 | 1年に1回 |
| 特定建築物定期調査 | 3年に1回 |
年6回なのは空気だけです。だから一覧に入れていないと飛びます。一覧の作り方は建物の法定点検一覧にまとめています。
測る7項目と基準値
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 浮遊粉じんの量 | 0.15mg/m3以下 |
| 一酸化炭素の含有率 | 6ppm以下 |
| 二酸化炭素の含有率 | 1000ppm以下 |
| 温度 | 18度以上28度以下 |
| 相対湿度 | 40%以上70%以下 |
| 気流 | 0.5m/秒以下 |
| ホルムアルデヒドの量 | 0.1mg/m3以下 |
一酸化炭素の基準は改正で厳しくなっています。古い資料には10ppmと書かれていることがあるので、最新の基準を保健所か測定業者に確認してください。
ホルムアルデヒドは毎回ではない
ホルムアルデヒドだけ扱いが違います。新築・増築・大規模の修繕や模様替えを行った場合に、使用開始後の所定の時期に測定することとされています。毎回の7項目には入りません。
実務でよく外れるのは3つ
| 項目 | 外れる理由 |
|---|---|
| 相対湿度 | 冬に40%を下回る。加湿が足りない |
| 二酸化炭素 | 人が増えた、換気量が足りない |
| 温度 | 夏の窓際、冬の吹き抜け |
冬の湿度がいちばん多い指摘です。加湿器を置いても、給水を誰もしていなければ湿度は上がりません。
測り方と時期
測定する人
建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)を選任している建物では、その監督のもとで行います。実務では測定業者に委託することが多くあります。
測定点
- 各階ごと、居室の中央部
- 床上75cm以上150cm以下の高さ
- 建物の使用時間中に測る
「使用時間中に測る」のがポイントです。誰もいない早朝に測ると、二酸化炭素は当然低く出ます。実際に人がいる状態で測らないと意味がありません。
測る時期の決め方
2か月に1回なので、年6回です。季節が偏らないように割り振ります。
| 回 | 時期の目安 | 注意する項目 |
|---|---|---|
| 1 | 1〜2月 | 湿度(下がりやすい) |
| 2 | 3〜4月 | 温度の切り替え |
| 3 | 5〜6月 | 湿度(上がりやすい) |
| 4 | 7〜8月 | 温度(28度を超えやすい) |
| 5 | 9〜10月 | 温度の切り替え |
| 6 | 11〜12月 | 湿度 |
厳しい季節を外して測ると、基準内に見えてしまいます。冬と夏を必ず1回ずつ入れます。
基準を外れたときの対応
「基準値を外れた」で終わらせず、原因まで追います。
| 外れた項目 | まず見るところ | よくある原因 |
|---|---|---|
| 二酸化炭素が高い | 給気量、在室人数 | 人が増えた、外気導入が絞られている |
| 湿度が低い | 加湿器、外気量 | 給水されていない、加湿器の能力不足 |
| 湿度が高い | 除湿、外気 | 梅雨時、排気が足りない |
| 温度が外れる | 空調の設定、日射 | 吹出口が塞がれている、ブラインドが無い |
| 粉じんが多い | フィルター | 交換していない |
| 一酸化炭素が出る | 燃焼機器、外気取入口 | 駐車場の排気が回り込んでいる |
フィルターの交換記録が無い建物は多くあります。粉じんの指摘が出たら、まずフィルターの交換履歴を見ます。
記録には「処置」を書く
測定結果だけを綴じて終わりにすると、翌年も同じ結果になります。外れた回には、何をしたかを1行書きます。
- 「二酸化炭素1200ppm。外気ダンパーの開度を調整。翌月の測定で850ppmに改善」
この1行があると、次に外れたときに同じ手を打てます。
日常でできること
2か月に1回の測定だけでは、間が空きます。日常で見られることがあります。
| 見る場所 | 頻度 |
|---|---|
| 吹出口・吸込口がふさがれていないか | 月1回 |
| フィルターの汚れ | 月1回 |
| 加湿器の給水と清掃 | 冬季は週1回 |
| 空調の設定温度が変えられていないか | 月1回 |
加湿器の給水が、冬の湿度不足でいちばん多い原因です。「置いてあるが水が入っていない」という状態がよくあります。巡回のルートに入れるだけで変わります。
巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
記録と保管
| 残すもの | 期間の目安 |
|---|---|
| 空気環境測定の結果 | 5年間(建築物環境衛生管理基準に基づく帳簿書類) |
| 清掃・ねずみ等の防除の記録 | 同上 |
| 給水・排水の管理の記録 | 同上 |
| 設備の図面 | 建物がある間 |
建築物環境衛生管理基準に関する帳簿書類は5年間の保存とされています。消防や建築の書類とは保存期間が違うので、束を分けておくと捨て間違いが起きません。
測定業者の選び方
自社で測ることもできますが、登録を受けた測定業者に委託するのが一般的です。
| 見るところ | なぜ |
|---|---|
| 登録の有無 | 建築物環境衛生法に基づく登録業者か |
| 測定点の数 | 各階・各区画で必要な点数を押さえているか |
| 測定の時間帯 | 使用時間中に測ってくれるか |
| 報告の形 | 結果だけか、原因と対策の所見が付くか |
| 他の業務とまとめられるか | 清掃・防除・貯水槽と同じ業者にできるか |
3つ目を確認しないと、早朝や閉館後に測られることがあります。それだと二酸化炭素が低く出て、実態と合いません。
所見が付く業者を選ぶ
数値だけの報告書だと、外れたときに何をすればよいか分かりません。「二酸化炭素が高い。外気ダンパーの開度を確認してください」という一文があるだけで、次の手が決まります。
改善の打ち手
外れた項目ごとに、まず試すことが決まっています。費用のかからないものから順にやります。
二酸化炭素が高い
| 順 | やること | 費用 |
|---|---|---|
| 1 | 外気ダンパーの開度を確認する | なし |
| 2 | 給気口・排気口の障害物をどける | なし |
| 3 | 在室人数と換気量が合っているか確認 | なし |
| 4 | 換気の運転時間を延ばす | 電気代 |
| 5 | 全熱交換器やダクトの清掃 | 中 |
| 6 | 換気設備の増設 | 大 |
1と2で解決することが多くあります。省エネのために外気を絞っていて、そのまま忘れられているのが典型です。
湿度が低い(冬)
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 加湿器に水が入っているか確認する |
| 2 | 加湿器のフィルター・気化材を清掃する |
| 3 | 台数と能力が部屋の広さに合っているか |
| 4 | 空調機の加湿装置が動いているか確認 |
1がいちばん多い原因です。置いてあるだけで給水されていない加湿器は、どの建物にもあります。巡回のルートに「加湿器の給水」を入れるだけで解決します。
粉じんが多い
フィルターの交換履歴を見ます。交換記録が無いなら、まず交換します。交換の周期を決めて、設備点検の月次に入れます。
温度が外れる
夏の窓際、冬の吹き抜け。測定点が偏っていないかも確認します。空調の効きにくい場所ばかりで測っていると、平均より悪く出ます。
記録の残し方
| 残すもの | 期間 |
|---|---|
| 測定結果 | 5年 |
| 外れた回の処置(1行でよい) | 同上 |
| フィルターの交換記録 | 同上 |
| 加湿器の清掃記録 | 同上 |
建築物環境衛生管理基準に関する帳簿書類は5年保存とされています。消防(次の報告まで)や建築(次の報告まで)と期間が違うので、束を分けておくと捨て間違いが起きません。
年間の表を1枚作る
6回分を1枚に並べると、季節の傾向が見えます。
| 回 | 時期 | CO2 | 温度 | 湿度 | 処置 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1月 | 820 | 21.5 | 35 | 加湿器2台に給水を追加 |
| 2 | 3月 | 790 | 22.0 | 45 | なし |
「処置」の列があると、翌年の同じ季節に同じ手を打てます。
よくある質問
うちの建物は対象ですか
用途と延べ面積で決まります。事務所や店舗で一定以上の面積なら該当することが多くあります。保健所に用途・面積を伝えて確認してください。
特定建築物でなければ測らなくてよいですか
法令上の義務はありませんが、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則で、事務室の空気環境について定めがあります。対象外でも、室内環境を確かめる意味はあります。
誰が測定できますか
登録を受けた測定業者に委託するのが一般的です。建築物環境衛生管理技術者の選任が必要な建物では、その人の監督のもとで行います。
基準を外れたら罰則がありますか
直ちに罰則というより、改善の指導が入ります。ただし放置すると命令の対象になります。外れた原因と処置を記録に残しておくことが、いちばんの備えになります。
ホルムアルデヒドはいつ測りますか
新築・増築・大規模の修繕や模様替えを行った場合に、使用開始後の所定の時期に測定することとされています。内装工事をしたら、測定が必要か業者に確認してください。
まとめ
空気環境測定は、特定建築物で2か月以内ごとに1回、年6回行います。周期が他の法定点検と合わないため、一覧に入れていないと必ずどこかの回が飛びます。
測るのは浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素・温度・相対湿度・気流の6項目で、ホルムアルデヒドは工事のあとに別途測ります。実務で外れやすいのは、冬の湿度、二酸化炭素、夏の温度の3つです。
測定は建物の使用時間中に行います。人がいない時間に測ると二酸化炭素が低く出て、実態が分かりません。外れた回には処置を1行書いておくと、次に同じことが起きたときに同じ手が打てます。冬の湿度不足は、加湿器に給水されていないことが原因のことが多くあります。