建物の定期報告実務2026.09.16 公開TH-04

空気環境測定|ビル管法の基準値と2か月に1回の測り方

目次

空気環境測定は、2か月に1回という周期が他と合わないため、単独で飛びやすい業務です。消防が年2回、建築設備が年1回、貯水槽が年1回。そのなかで空気だけが年6回なので、一覧に入れていないと必ずどこかの回が抜けます。

この記事では、空気環境測定を、対象になる建物測る7項目と基準値測り方と時期基準を外れたときの対応の順に整理します。対象や運用は建物の用途・規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物のある自治体の保健所に確認してください。

点検の記録様式そのものを探している場合は、点検板に施設の点検様式がそろっています。

結論:特定建築物なら2か月に1回

建築物衛生法(ビル管法)では、特定建築物について、空気環境の測定を2か月以内ごとに1回行うこととされています。

対象
特定建築物興行場、百貨店、店舗、事務所、学校、旅館などの用途で、延べ面積が一定以上のもの

用途と面積の両方で決まります。倉庫や工場は、用途としては特定建築物に該当しないのが一般的です。自分の建物が該当するかは保健所に確認します。

他の点検と周期が合わない

業務周期
空気環境測定2か月に1回(年6回)
消防設備の機器点検6か月に1回
建築設備定期検査1年に1回
貯水槽の清掃・検査1年に1回
特定建築物定期調査3年に1回

年6回なのは空気だけです。だから一覧に入れていないと飛びます。一覧の作り方は建物の法定点検一覧にまとめています。

空気だけ年6回。周期が合わない業務周期**空気環境測定****2か月に1回(年6回)**消防設備の機器点検6か月に1回建築設備定期検査1年に1回特定建築物定期調査3年に1回
空気だけ年6回。周期が他と合わない

測る7項目と基準値

項目基準
浮遊粉じんの量0.15mg/m3以下
一酸化炭素の含有率6ppm以下
二酸化炭素の含有率1000ppm以下
温度18度以上28度以下
相対湿度40%以上70%以下
気流0.5m/秒以下
ホルムアルデヒドの量0.1mg/m3以下

一酸化炭素の基準は改正で厳しくなっています。古い資料には10ppmと書かれていることがあるので、最新の基準を保健所か測定業者に確認してください。

ホルムアルデヒドは毎回ではない

ホルムアルデヒドだけ扱いが違います。新築・増築・大規模の修繕や模様替えを行った場合に、使用開始後の所定の時期に測定することとされています。毎回の7項目には入りません。

実務でよく外れるのは3つ

項目外れる理由
相対湿度冬に40%を下回る。加湿が足りない
二酸化炭素人が増えた、換気量が足りない
温度夏の窓際、冬の吹き抜け

冬の湿度がいちばん多い指摘です。加湿器を置いても、給水を誰もしていなければ湿度は上がりません。

実務で外れる3項目項目外れる理由相対湿度冬に40%を下回る。加湿が足りない二酸化炭素人が増えた、外気が絞られてい温度夏の窓際、冬の吹き抜け
実務で外れるのは湿度・二酸化炭素・温度

測り方と時期

測定する人

建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)を選任している建物では、その監督のもとで行います。実務では測定業者に委託することが多くあります。

測定点

  • 各階ごと、居室の中央部
  • 床上75cm以上150cm以下の高さ
  • 建物の使用時間中に測る

「使用時間中に測る」のがポイントです。誰もいない早朝に測ると、二酸化炭素は当然低く出ます。実際に人がいる状態で測らないと意味がありません。

測る時期の決め方

2か月に1回なので、年6回です。季節が偏らないように割り振ります。

時期の目安注意する項目
11〜2月湿度(下がりやすい)
23〜4月温度の切り替え
35〜6月湿度(上がりやすい)
47〜8月温度(28度を超えやすい)
59〜10月温度の切り替え
611〜12月湿度

厳しい季節を外して測ると、基準内に見えてしまいます。冬と夏を必ず1回ずつ入れます。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

設備の点検記録の様式を一から作るのは手間がかかります。既成の様式を使いたい方は点検板をご覧ください。

点検板で様式をさがす

基準を外れたときの対応

「基準値を外れた」で終わらせず、原因まで追います。

外れた項目まず見るところよくある原因
二酸化炭素が高い給気量、在室人数人が増えた、外気導入が絞られている
湿度が低い加湿器、外気量給水されていない、加湿器の能力不足
湿度が高い除湿、外気梅雨時、排気が足りない
温度が外れる空調の設定、日射吹出口が塞がれている、ブラインドが無い
粉じんが多いフィルター交換していない
一酸化炭素が出る燃焼機器、外気取入口駐車場の排気が回り込んでいる

フィルターの交換記録が無い建物は多くあります。粉じんの指摘が出たら、まずフィルターの交換履歴を見ます。

記録には「処置」を書く

測定結果だけを綴じて終わりにすると、翌年も同じ結果になります。外れた回には、何をしたかを1行書きます。

  • 「二酸化炭素1200ppm。外気ダンパーの開度を調整。翌月の測定で850ppmに改善」

この1行があると、次に外れたときに同じ手を打てます。

日常でできること

2か月に1回の測定だけでは、間が空きます。日常で見られることがあります。

見る場所頻度
吹出口・吸込口がふさがれていないか月1回
フィルターの汚れ月1回
加湿器の給水と清掃冬季は週1回
空調の設定温度が変えられていないか月1回

加湿器の給水が、冬の湿度不足でいちばん多い原因です。「置いてあるが水が入っていない」という状態がよくあります。巡回のルートに入れるだけで変わります。

巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。

冬の湿度不足で最初に見るところ1**水が入っているか**これがいちばん多い原2フィルター・気化材清掃されているか3台数と能力部屋の広さに合っているか4空調機の加湿装置動いている
冬の湿度不足は、給水されていないことが多い

記録と保管

残すもの期間の目安
空気環境測定の結果5年間(建築物環境衛生管理基準に基づく帳簿書類)
清掃・ねずみ等の防除の記録同上
給水・排水の管理の記録同上
設備の図面建物がある間

建築物環境衛生管理基準に関する帳簿書類は5年間の保存とされています。消防や建築の書類とは保存期間が違うので、束を分けておくと捨て間違いが起きません。

測定業者の選び方

自社で測ることもできますが、登録を受けた測定業者に委託するのが一般的です。

見るところなぜ
登録の有無建築物環境衛生法に基づく登録業者か
測定点の数各階・各区画で必要な点数を押さえているか
測定の時間帯使用時間中に測ってくれるか
報告の形結果だけか、原因と対策の所見が付くか
他の業務とまとめられるか清掃・防除・貯水槽と同じ業者にできるか

3つ目を確認しないと、早朝や閉館後に測られることがあります。それだと二酸化炭素が低く出て、実態と合いません。

所見が付く業者を選ぶ

数値だけの報告書だと、外れたときに何をすればよいか分かりません。「二酸化炭素が高い。外気ダンパーの開度を確認してください」という一文があるだけで、次の手が決まります。

使用時間中に測らないと実態と合わない誰もいない時間二酸化炭素が低く出る基準内に見える実態が分からない使用時間中人がいる状態で測る実際の値が出る業者に先に伝える
使用時間中に測らないと実態と合わない

改善の打ち手

外れた項目ごとに、まず試すことが決まっています。費用のかからないものから順にやります。

二酸化炭素が高い

やること費用
1外気ダンパーの開度を確認するなし
2給気口・排気口の障害物をどけるなし
3在室人数と換気量が合っているか確認なし
4換気の運転時間を延ばす電気代
5全熱交換器やダクトの清掃
6換気設備の増設

1と2で解決することが多くあります。省エネのために外気を絞っていて、そのまま忘れられているのが典型です。

湿度が低い(冬)

やること
1加湿器に水が入っているか確認する
2加湿器のフィルター・気化材を清掃する
3台数と能力が部屋の広さに合っているか
4空調機の加湿装置が動いているか確認

1がいちばん多い原因です。置いてあるだけで給水されていない加湿器は、どの建物にもあります。巡回のルートに「加湿器の給水」を入れるだけで解決します。

粉じんが多い

フィルターの交換履歴を見ます。交換記録が無いなら、まず交換します。交換の周期を決めて、設備点検の月次に入れます。

温度が外れる

夏の窓際、冬の吹き抜け。測定点が偏っていないかも確認します。空調の効きにくい場所ばかりで測っていると、平均より悪く出ます。

記録の残し方

残すもの期間
測定結果5年
外れた回の処置(1行でよい)同上
フィルターの交換記録同上
加湿器の清掃記録同上

建築物環境衛生管理基準に関する帳簿書類は5年保存とされています。消防(次の報告まで)や建築(次の報告まで)と期間が違うので、束を分けておくと捨て間違いが起きません。

年間の表を1枚作る

6回分を1枚に並べると、季節の傾向が見えます。

時期CO2温度湿度処置
11月82021.535加湿器2台に給水を追加
23月79022.045なし

「処置」の列があると、翌年の同じ季節に同じ手を打てます。

年間の表にすると季節の傾向が見える空気環境測定 年間1月CO2 820/湿度 353月CO2 790/湿度 455月CO2 850/湿度 527月CO2 910/温度 28.4処置1月=加湿器に給水「処置」の列を必ず作る冬と夏を必ず1回ずつ入れる記録は5年保存
年間の表にすると季節の傾向が見える

よくある質問

うちの建物は対象ですか

用途と延べ面積で決まります。事務所や店舗で一定以上の面積なら該当することが多くあります。保健所に用途・面積を伝えて確認してください。

特定建築物でなければ測らなくてよいですか

法令上の義務はありませんが、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則で、事務室の空気環境について定めがあります。対象外でも、室内環境を確かめる意味はあります。

誰が測定できますか

登録を受けた測定業者に委託するのが一般的です。建築物環境衛生管理技術者の選任が必要な建物では、その人の監督のもとで行います。

基準を外れたら罰則がありますか

直ちに罰則というより、改善の指導が入ります。ただし放置すると命令の対象になります。外れた原因と処置を記録に残しておくことが、いちばんの備えになります。

ホルムアルデヒドはいつ測りますか

新築・増築・大規模の修繕や模様替えを行った場合に、使用開始後の所定の時期に測定することとされています。内装工事をしたら、測定が必要か業者に確認してください。

まとめ

空気環境測定は、特定建築物で2か月以内ごとに1回、年6回行います。周期が他の法定点検と合わないため、一覧に入れていないと必ずどこかの回が飛びます。

測るのは浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素・温度・相対湿度・気流の6項目で、ホルムアルデヒドは工事のあとに別途測ります。実務で外れやすいのは、冬の湿度、二酸化炭素、夏の温度の3つです。

測定は建物の使用時間中に行います。人がいない時間に測ると二酸化炭素が低く出て、実態が分かりません。外れた回には処置を1行書いておくと、次に同じことが起きたときに同じ手が打てます。冬の湿度不足は、加湿器に給水されていないことが原因のことが多くあります。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

設備の点検記録や管理の様式を探している方は点検板をご覧ください。

点検板で様式をさがす