設備点検のやり方|日常・月次・年次の分け方と巡回の組み方
目次
設備点検が続かない理由は、項目が多すぎることではありません。「毎日見るもの」と「月に1回見るもの」と「年に1回業者が見るもの」が1枚の表に混ざっていることです。混ざっていると、毎日の巡回が重くなって、そのうち誰も回らなくなります。
この記事では、設備点検のやり方を、3つに分ける、巡回の組み方、点検表の作り方、異常が出たときの流れの順に整理します。法令で定められた点検の周期や資格は設備ごとに違います。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の官庁または業者に確認してください。
結論:毎日・毎月・毎年で分ける。混ぜない
設備点検は、見る深さで3層に分かれます。
| 誰が | 何を見るか | 時間 | |
|---|---|---|---|
| 日常点検 | 施設の担当者 | 動いているか、異音・漏れ・表示 | 1回15〜30分 |
| 月次点検 | 施設の担当者 | 摩耗、汚れ、消耗品、作動の確認 | 1回1〜2時間 |
| 年次(法定)点検 | 有資格者・業者 | 分解、測定、法令で定められた検査 | 半日〜数日 |
日常点検に月次の項目を混ぜるのが、いちばん多い失敗です。毎日1時間かかる点検表は、3週間で回らなくなります。
法定点検の全体像は建物の法定点検一覧にまとめています。
日常点検で見るもの
「見れば分かること」だけにします。道具を使わない、分解しない、記録は○×だけ。
| 場所 | 見るもの |
|---|---|
| 受変電設備(キュービクル) | 異音、におい、表示ランプ、周囲に物が無いか |
| ポンプ・送風機 | 異音、振動、漏れ、圧力計の指示 |
| 空調機 | 吹出口がふさがれていないか、異音 |
| 受水槽まわり | 漏水、マンホールの施錠 |
| 消火器 | 所定の位置にあるか、前に物が無いか |
| 避難経路・防火戸 | 物が置かれていないか |
| 屋上・外周 | 排水口の詰まり、飛散しそうなもの |
「物が置かれていないか」が3つ入っています。これが日常点検の実質です。設備そのものより、人が置いたものを見つけるほうが事故を防ぎます。
15分で回れる形にする
項目を増やすと回らなくなります。A4で1枚、20項目まで。それ以上は月次へ送ります。
月次点検で見るもの
道具を使う、少し開ける、数値を測る。日常では見えないものを見ます。
| 場所 | 見るもの |
|---|---|
| 空調機 | フィルターの汚れ、ドレンの詰まり |
| ポンプ | グランドの漏れ、軸受の温度、絶縁 |
| 受変電設備 | 温度、汚損、ねずみ・虫の侵入跡 |
| 非常用照明 | テストボタンで点灯するか |
| 排煙口 | 手動開放装置が操作できるか |
| 貯水槽 | 残留塩素の測定、防虫網 |
| 消火器 | 圧力計、本体のさび(底面を見る) |
フィルターの汚れは、日常では見えません。月に1回開けて見る、と決めておかないと、年次の測定で粉じんの指摘が出て初めて気づきます。
消火器の見方は消火器の点検にまとめています。
巡回の組み方
ルートを固定する
見る順番を決めて、毎回同じ順番で回ります。順番がばらばらだと、抜けたことに気づけません。
| 順 | 場所 |
|---|---|
| 1 | 屋上(排水口、飛散物、高置水槽) |
| 2 | 機械室(ポンプ、送風機) |
| 3 | 電気室(キュービクル、分電盤) |
| 4 | 各階(廊下、避難経路、消火器、防火戸) |
| 5 | 1階・外周(受水槽、外構、ごみ置場) |
上から下へ、が基本です。屋上から降りてくると、階段も見られます。
時間帯を決める
毎日同じ時間に回ると、「いつもと違う」に気づけます。音、におい、温度。比べる相手が前日の同じ時間になるためです。
2人で回る日を作る
月に1回は2人で回ります。1人だと見落としが固定します。慣れた人が見落とす場所を、慣れていない人が「これは何ですか」と聞いて見つけることがあります。
点検表の作り方
判定は3段階にする
○×だと「まだ使えるが、そろそろ」が書けません。
| 判定 | 意味 | 次にやること |
|---|---|---|
| 良 | 問題なし | なし |
| 要観察 | 使えるが進行している | 次回に必ず見る。写真を残す |
| 不良 | 使えない | 使用停止、修理の手配 |
「要観察」があると、突然の故障が減ります。2か月前から分かっていれば、部品の手配が間に合います。
数値の欄を作る
「汚れている」ではなく「差圧◯◯Pa」、「熱い」ではなく「◯◯度」。数値で残すと、前回と比べられます。言葉だけだと、人が変わった瞬間に比較できなくなります。
前回の結果を印刷しておく
前回「要観察」だった箇所が分かる状態で回ると、見落としが減ります。点検表の裏面に前回の結果を刷るだけで効きます。
異常が出たときの流れ
決めておかないと、見つけた人が止まります。
| 段階 | やること | 誰が |
|---|---|---|
| 1 | 危険があれば使用を止める | 見つけた人 |
| 2 | 何がどうなっているかを記録に書く | 見つけた人 |
| 3 | 使用禁止の表示を付ける | 見つけた人 |
| 4 | 責任者へ報告する | 見つけた人 |
| 5 | 直すか、業者へ依頼するかを決める | 責任者 |
| 6 | 直した内容を同じ記録に追記する | 直した人 |
| 7 | 使用を再開する | 責任者 |
6が抜けると、記録が「不良」で終わります。後から見た人には、直したのか放置したのかが分かりません。
「異常あり」で終わる記録をなくす
追記を、記録を綴じる条件にします。不良の行に処置が書かれていない記録は、その月の点検が完了していないという扱いにすると、自然に埋まります。
同じ箇所が続けて出たら
2回続けて同じ箇所に異常が出たら、部品ではなく使い方か環境の問題であることが多くあります。負荷、周囲の温度、清掃の頻度。設備だけを直しても再発します。
記録の置き場所
| 束 | 中身 | 保存の目安 |
|---|---|---|
| 日常・月次 | 自社の点検表 | 1〜3年(社内で決める) |
| 消防 | 点検票、報告書の控え、訓練記録、消防計画 | 次の報告まで必ず |
| 建築 | 定期報告の控え、是正の記録 | 次の報告まで必ず |
| 水まわり | 清掃記録、法定検査の結果、残留塩素 | 検査の要件に合わせる |
| 空気環境 | 測定結果 | 5年 |
法令ごとに保存期間が違うので、束を分けます。1つの箱にまとめて3年で捨てると、5年保存のものまで消えます。
設備台帳を作る
点検表の前に、何があるかの一覧が要ります。台帳が無いと、点検表の項目が作れません。
列は7つ
| 列 | 中身 |
|---|---|
| 番号 | 通し番号。現物にシールを貼る |
| 設備の名前 | 空調機、ポンプ、キュービクルなど |
| 設置場所 | 階、部屋名 |
| メーカー・型式 | 銘板から写す |
| 設置年 | 更新の計画に使う |
| 点検の区分 | 日常/月次/年次(法定) |
| 業者・連絡先 | 保守や修理を頼む先 |
5つ目の設置年が、いちばん後から効きます。耐用年数が近い設備が分かると、更新の予算を前もって相談できます。
現物に番号シールを貼る
台帳と現物が結び付きます。「3階の空調機」では、3階に4台あったときに分かりません。番号があれば、記録も見積りも指示も1つに定まります。
写真を1枚ずつ撮る
銘板の写真を撮って台帳に紐づけておくと、故障のときに型式をすぐ伝えられます。現地へ見に行く往復が1回減ります。
人が変わっても回る形
設備点検は、担当が替わるときに最も飛びます。頭の中にある情報が多いほど、引き継ぎで落ちます。
引き継ぐのは6つ
| 引き継ぐもの | 無いと何が起きるか |
|---|---|
| 設備台帳 | 何があるか分からない |
| 巡回ルートと点検表 | 見る順番が変わり、抜けに気づけない |
| 法定点検の期限一覧 | 期限が切れる |
| 業者の連絡先 | 故障時に誰を呼ぶか分からない |
| 鍵の場所 | 当日に開けられない |
| 過去の記録の置き場所 | 前回の状態と比べられない |
5つ目が抜けやすいところです。屋上、機械室、電気室、受水槽。鍵の一覧と保管場所を紙で残します。
引き継いだ月は2人で回る
説明だけで終わらせず、最初の1か月は2人で巡回します。手順が飛んでいる箇所は、実際に歩いたときにしか見つかりません。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1か月前 | 台帳・ルート・一覧・鍵の場所を渡す |
| 当月 | 2人で巡回する |
| 翌月 | 新しい担当が1人で回し、前任が記録を見る |
| 翌々月 | 交代完了 |
1人しかいない場合
交代の相手がいないなら、書いて残すしかありません。台帳・ルート・一覧・鍵・業者を1つのファイルにまとめて、事務所の決まった場所に置きます。
「◯◯さんに聞けば分かる」という状態が、いちばん危ないです。その人が急に休んだ日に、建物が止まります。
よくある質問
点検表の項目はどれくらいが適当ですか
日常点検はA4で1枚、20項目程度。月次はA4で2〜3枚。「15分で回れるか」を基準にして、超えるものは月次へ送ります。
資格がないと点検できませんか
日常点検や月次の外観確認は、資格が無くても行えるものが大半です。ただし受変電設備の停電作業、消防設備の総合点検、法定の検査などは資格が要ります。区別がつかないときは業者に確認します。
記録はデータでもよいですか
構いません。必要な期間、見られる状態で残っていることが条件です。担当者の個人の端末だけに入っている状態は避け、共有の場所に置きます。
業者に全部任せてはいけませんか
法定の点検は業者でよいのですが、日常点検まで委託すると費用が合わなくなることが多くあります。日常は自社、月次は一部自社、年次は業者、という分け方が現実的です。
担当が1人しかいません
1人でも回ります。ただし引き継ぎが飛ぶのが最大のリスクです。ルートと点検表と業者の連絡先を1つのファイルにまとめておいてください。
まとめ
設備点検は、日常・月次・年次の3層に分けます。混ぜると日常点検が重くなり、そのうち誰も回らなくなります。日常は「見れば分かること」だけにして、A4で1枚・15分で回れる形にします。
巡回はルートを固定し、屋上から下へ降りてくる順番にします。毎日同じ時間に回ると「いつもと違う」に気づけます。月に1回は2人で回ると、慣れた人の見落としが見つかります。
判定は良・要観察・不良の3段階にして、数値の欄を作ります。要観察があると突然の故障が減り、数値があると人が変わっても比較できます。そして異常を書いたら、直した内容まで同じ記録に追記して初めて完了です。