設備点検の回し方実務2026.09.16 公開TK-01

設備点検のやり方|日常・月次・年次の分け方と巡回の組み方

目次

設備点検が続かない理由は、項目が多すぎることではありません。「毎日見るもの」と「月に1回見るもの」と「年に1回業者が見るもの」が1枚の表に混ざっていることです。混ざっていると、毎日の巡回が重くなって、そのうち誰も回らなくなります。

この記事では、設備点検のやり方を、3つに分ける巡回の組み方点検表の作り方異常が出たときの流れの順に整理します。法令で定められた点検の周期や資格は設備ごとに違います。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の官庁または業者に確認してください。

点検表そのものを探している場合は、点検板に施設・設備の点検様式がそろっています。

結論:毎日・毎月・毎年で分ける。混ぜない

設備点検は、見る深さで3層に分かれます。

誰が何を見るか時間
日常点検施設の担当者動いているか、異音・漏れ・表示1回15〜30分
月次点検施設の担当者摩耗、汚れ、消耗品、作動の確認1回1〜2時間
年次(法定)点検有資格者・業者分解、測定、法令で定められた検査半日〜数日

日常点検に月次の項目を混ぜるのが、いちばん多い失敗です。毎日1時間かかる点検表は、3週間で回らなくなります。

法定点検の全体像は建物の法定点検一覧にまとめています。

設備点検は毎日・毎月・毎年の3層日常点検15〜30分。見れば分かること月次点検1〜2時間。開けて見る年次(法定)有資格者・業者
設備点検は毎日・毎月・毎年の3層

日常点検で見るもの

「見れば分かること」だけにします。道具を使わない、分解しない、記録は○×だけ。

場所見るもの
受変電設備(キュービクル)異音、におい、表示ランプ、周囲に物が無いか
ポンプ・送風機異音、振動、漏れ、圧力計の指示
空調機吹出口がふさがれていないか、異音
受水槽まわり漏水、マンホールの施錠
消火器所定の位置にあるか、前に物が無いか
避難経路・防火戸物が置かれていないか
屋上・外周排水口の詰まり、飛散しそうなもの

「物が置かれていないか」が3つ入っています。これが日常点検の実質です。設備そのものより、人が置いたものを見つけるほうが事故を防ぎます。

15分で回れる形にする

項目を増やすと回らなくなります。A4で1枚、20項目まで。それ以上は月次へ送ります。

月次点検で見るもの

道具を使う、少し開ける、数値を測る。日常では見えないものを見ます。

場所見るもの
空調機フィルターの汚れ、ドレンの詰まり
ポンプグランドの漏れ、軸受の温度、絶縁
受変電設備温度、汚損、ねずみ・虫の侵入跡
非常用照明テストボタンで点灯するか
排煙口手動開放装置が操作できるか
貯水槽残留塩素の測定、防虫網
消火器圧力計、本体のさび(底面を見る

フィルターの汚れは、日常では見えません。月に1回開けて見る、と決めておかないと、年次の測定で粉じんの指摘が出て初めて気づきます。

消火器の見方は消火器の点検にまとめています。

日常と月次で見るものが違う日常(見れば分かる)異音・漏れ・表示物が置かれていないか道具を使わない月次(開けて見る)フィルターの汚れ安全装置を作動させる数値を測る
日常は「見れば分かること」、月次は「開けて見ること」

巡回の組み方

ルートを固定する

見る順番を決めて、毎回同じ順番で回ります。順番がばらばらだと、抜けたことに気づけません。

場所
1屋上(排水口、飛散物、高置水槽)
2機械室(ポンプ、送風機)
3電気室(キュービクル、分電盤)
4各階(廊下、避難経路、消火器、防火戸)
51階・外周(受水槽、外構、ごみ置場)

上から下へ、が基本です。屋上から降りてくると、階段も見られます。

時間帯を決める

毎日同じ時間に回ると、「いつもと違う」に気づけます。音、におい、温度。比べる相手が前日の同じ時間になるためです。

2人で回る日を作る

月に1回は2人で回ります。1人だと見落としが固定します。慣れた人が見落とす場所を、慣れていない人が「これは何ですか」と聞いて見つけることがあります。

点検表の作り方

判定は3段階にする

○×だと「まだ使えるが、そろそろ」が書けません。

判定意味次にやること
問題なしなし
要観察使えるが進行している次回に必ず見る。写真を残す
不良使えない使用停止、修理の手配

「要観察」があると、突然の故障が減ります。2か月前から分かっていれば、部品の手配が間に合います。

数値の欄を作る

「汚れている」ではなく「差圧◯◯Pa」、「熱い」ではなく「◯◯度」。数値で残すと、前回と比べられます。言葉だけだと、人が変わった瞬間に比較できなくなります。

前回の結果を印刷しておく

前回「要観察」だった箇所が分かる状態で回ると、見落としが減ります。点検表の裏面に前回の結果を刷るだけで効きます。

判定は3段階にする問題なし次にやることなし要観察使えるが進行している写真を残す部品の手配が間に合う不良使えない使用停止・修理
判定は3段階。要観察があると突然の故障が減る
点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

設備の点検表を一から作るのは手間がかかります。既成の様式を使いたい方は点検板をご覧ください。

点検板で様式をさがす

異常が出たときの流れ

決めておかないと、見つけた人が止まります。

段階やること誰が
1危険があれば使用を止める見つけた人
2何がどうなっているかを記録に書く見つけた人
3使用禁止の表示を付ける見つけた人
4責任者へ報告する見つけた人
5直すか、業者へ依頼するかを決める責任者
6直した内容を同じ記録に追記する直した人
7使用を再開する責任者

6が抜けると、記録が「不良」で終わります。後から見た人には、直したのか放置したのかが分かりません。

「異常あり」で終わる記録をなくす

追記を、記録を綴じる条件にします。不良の行に処置が書かれていない記録は、その月の点検が完了していないという扱いにすると、自然に埋まります。

同じ箇所が続けて出たら

2回続けて同じ箇所に異常が出たら、部品ではなく使い方か環境の問題であることが多くあります。負荷、周囲の温度、清掃の頻度。設備だけを直しても再発します。

記録の置き場所

中身保存の目安
日常・月次自社の点検表1〜3年(社内で決める)
消防点検票、報告書の控え、訓練記録、消防計画次の報告まで必ず
建築定期報告の控え、是正の記録次の報告まで必ず
水まわり清掃記録、法定検査の結果、残留塩素検査の要件に合わせる
空気環境測定結果5年

法令ごとに保存期間が違うので、束を分けます。1つの箱にまとめて3年で捨てると、5年保存のものまで消えます。

法令ごとに束を分ける保存の目安日常・月次(自社)1〜3年消防次の報告まで必ず建築次の報告まで必ず空気環境**5年**
法令ごとに束を分ける。保存期間が違う

設備台帳を作る

点検表の前に、何があるかの一覧が要ります。台帳が無いと、点検表の項目が作れません。

列は7つ

中身
番号通し番号。現物にシールを貼る
設備の名前空調機、ポンプ、キュービクルなど
設置場所階、部屋名
メーカー・型式銘板から写す
設置年更新の計画に使う
点検の区分日常/月次/年次(法定)
業者・連絡先保守や修理を頼む先

5つ目の設置年が、いちばん後から効きます。耐用年数が近い設備が分かると、更新の予算を前もって相談できます。

現物に番号シールを貼る

台帳と現物が結び付きます。「3階の空調機」では、3階に4台あったときに分かりません。番号があれば、記録も見積りも指示も1つに定まります。

写真を1枚ずつ撮る

銘板の写真を撮って台帳に紐づけておくと、故障のときに型式をすぐ伝えられます。現地へ見に行く往復が1回減ります。

台帳が無いと点検表が作れない1設備台帳を作る何がどこに、いつ入れたか2現物に番号を貼る記録と現物が結び付く3点検表を作台帳の項目から起こす4巡回するルートを固定する
台帳が無いと点検表が作れない

人が変わっても回る形

設備点検は、担当が替わるときに最も飛びます。頭の中にある情報が多いほど、引き継ぎで落ちます。

引き継ぐのは6つ

引き継ぐもの無いと何が起きるか
設備台帳何があるか分からない
巡回ルートと点検表見る順番が変わり、抜けに気づけない
法定点検の期限一覧期限が切れる
業者の連絡先故障時に誰を呼ぶか分からない
鍵の場所当日に開けられない
過去の記録の置き場所前回の状態と比べられない

5つ目が抜けやすいところです。屋上、機械室、電気室、受水槽。鍵の一覧と保管場所を紙で残します。

引き継いだ月は2人で回る

説明だけで終わらせず、最初の1か月は2人で巡回します。手順が飛んでいる箇所は、実際に歩いたときにしか見つかりません。

時期やること
1か月前台帳・ルート・一覧・鍵の場所を渡す
当月2人で巡回する
翌月新しい担当が1人で回し、前任が記録を見る
翌々月交代完了

1人しかいない場合

交代の相手がいないなら、書いて残すしかありません。台帳・ルート・一覧・鍵・業者を1つのファイルにまとめて、事務所の決まった場所に置きます。

「◯◯さんに聞けば分かる」という状態が、いちばん危ないです。その人が急に休んだ日に、建物が止まります。

よくある質問

点検表の項目はどれくらいが適当ですか

日常点検はA4で1枚、20項目程度。月次はA4で2〜3枚。「15分で回れるか」を基準にして、超えるものは月次へ送ります。

資格がないと点検できませんか

日常点検や月次の外観確認は、資格が無くても行えるものが大半です。ただし受変電設備の停電作業、消防設備の総合点検、法定の検査などは資格が要ります。区別がつかないときは業者に確認します。

記録はデータでもよいですか

構いません。必要な期間、見られる状態で残っていることが条件です。担当者の個人の端末だけに入っている状態は避け、共有の場所に置きます。

業者に全部任せてはいけませんか

法定の点検は業者でよいのですが、日常点検まで委託すると費用が合わなくなることが多くあります。日常は自社、月次は一部自社、年次は業者、という分け方が現実的です。

担当が1人しかいません

1人でも回ります。ただし引き継ぎが飛ぶのが最大のリスクです。ルートと点検表と業者の連絡先を1つのファイルにまとめておいてください。

まとめ

設備点検は、日常・月次・年次の3層に分けます。混ぜると日常点検が重くなり、そのうち誰も回らなくなります。日常は「見れば分かること」だけにして、A4で1枚・15分で回れる形にします。

巡回はルートを固定し、屋上から下へ降りてくる順番にします。毎日同じ時間に回ると「いつもと違う」に気づけます。月に1回は2人で回ると、慣れた人の見落としが見つかります。

判定は良・要観察・不良の3段階にして、数値の欄を作ります。要観察があると突然の故障が減り、数値があると人が変わっても比較できます。そして異常を書いたら、直した内容まで同じ記録に追記して初めて完了です。

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