消火器の点検|自分で見る範囲と記録の残し方
目次
消火器は、建物の中でいちばん数が多い消防用設備です。そして、置いてあることに慣れてしまって、誰も見ていない設備でもあります。いざというときに使えない消火器は、無いのと同じになります。
この記事では、消火器の点検を、自分で見てよい範囲、見る場所、使用期限と交換、記録の残し方の順に整理します。点検や報告の義務は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
結論:外から見るところは自分で見られる。中は触らない
消火器の点検には、外観で分かる部分と、分解や内部の確認が要る部分があります。
| 中身 | 誰が | |
|---|---|---|
| 外観の確認 | 設置場所、変形、圧力、標識、期限 | 関係者でもできる(建物による) |
| 機器点検・総合点検 | 設備としての点検。内部や機能の確認を含む | 建物によっては有資格者のみ |
「毎月自分で見て、法定の点検は別にある」という二段構えで考えるのが実務的です。自分で見るのは法定の点検の代わりではなく、次の点検までの間に異常を見つけるためです。
建物全体の点検の仕組みは消防設備点検とはにまとめています。
自分で見る5か所
月に1回、巡回のついでに見られます。1本あたり10秒です。
| 見る場所 | 何を見るか |
|---|---|
| 設置場所 | 決めた場所にあるか。物が前に置かれていないか |
| 圧力計 | 針が緑の範囲にあるか(緑を外れていたら使えない) |
| 本体 | へこみ、さび、変形。特に底面のさび |
| ホース・ノズル | ひび、詰まり、外れ |
| 標識・ラベル | 「消火器」の標識が見えるか。使用期限が読めるか |
底面のさびが、いちばん見落とされます。床に直置きしていると、清掃の水が溜まって底から腐食します。持ち上げて底を見るのが月1回の点検の中身です。
圧力計の見方
- 緑の範囲:正常
- 緑より左(低い):圧力が抜けている。使えない
- 緑より右(高い):過充填。危険なので触らない
どちらも自分で直せません。業者に連絡して交換します。
加圧式には圧力計が無い
古いタイプの加圧式消火器には圧力計が付いていません。加圧式で本体がさびているものは、操作したときに破裂する事故が報告されています。さびが出ている加圧式は使わず、早めに交換します。
使用期限と交換
消火器には設計標準使用期限が表示されています。一般に、業務用でおおむね10年が目安とされています(製品によって違います)。
| 表示 | 見るところ |
|---|---|
| 製造年 | 本体のラベル。「製造年 2016」のような表示 |
| 設計標準使用期限 | ラベルに年で書かれている |
期限が切れたら交換です。中身の詰め替え(薬剤の詰め替え)で延ばす方法もありますが、本体の状態によっては交換のほうが安全で安いことがあります。
期限は一覧で管理する
1本ずつ期限が違うので、頭では管理できません。設置場所・製造年・期限を1枚の表にすると、来年交換する本数が先に分かります。予算の準備ができます。
管理のしかたは建物の法定点検一覧にまとめています。
廃棄は自分で捨てない
消火器は一般ごみでは捨てられません。指定の窓口(リサイクル窓口、販売店、専門業者)に引き取ってもらいます。倉庫に古い消火器が並んでいる施設は多いのですが、さびた加圧式を置いておくのは危険です。
置き場所の決まり
点検で指摘されやすいのが、置き場所です。
| 見られること | 目安 |
|---|---|
| 歩行距離 | 建物内のどこからでも一定の距離以内に届くこと |
| 高さ | 床面からの高さに上限がある(取り出しやすい高さ) |
| 標識 | 「消火器」の標識を見やすい位置に |
| 周囲 | 前に物を置かない。扉で隠れない |
「前に物を置かない」が、日常でいちばん崩れます。段ボール、台車、傘立て。置いた人は一時的のつもりでも、次に来たときも同じ場所にあります。
床にテープで範囲を示す
消火器の足元にテープで四角を描くだけで、物が置かれなくなります。言葉で注意するより効きます。防火戸の前にも同じことができます。
記録の残し方
月1回の自主点検
法定の点検とは別に、自分たちで見た記録を残します。様式は自由です。
| 欄 | 内容 |
|---|---|
| 点検日 | 年月日 |
| 点検者 | 氏名 |
| 番号・設置場所 | 1階事務所入口、2階厨房など |
| 圧力 | 良/不良 |
| 本体・ホース | 良/不良 |
| 標識・周囲 | 良/不良 |
| 処置 | 不良だったときに何をしたか |
「処置」の欄を必ず作ります。不良と書いて空欄のままだと、直したのか放置したのかが分かりません。
番号を振る
消火器に通し番号のシールを貼ると、記録と現物が結び付きます。「3階の消火器」では、3階に2本あったときに分かりません。
法定の点検結果と同じ束にまとめる
自主点検の記録、法定の点検票、報告書の控え。消防関係を1つの束にすると、立入検査でまとめて出せます。
必要な本数の考え方
消火器は「とりあえず置いておく」ものではなく、本数と配置に基準があります。
| 決まること | 考え方 |
|---|---|
| 本数 | 建物の用途・延べ面積・階数から算定する |
| 配置 | 各階で、歩行距離が一定以内に1本届くように |
| 種類 | 対象となる火災の種類(普通・油・電気)に合うもの |
「歩行距離」は直線距離ではありません。壁や什器を避けて歩いた距離です。図面上で近く見えても、実際に歩くと遠いことがあります。
用途を変えたら本数が変わる
事務所の一部を倉庫にした、厨房を増やした。用途が変われば必要な本数も変わります。内装工事の前に消防署へ相談すると、あとから追加を求められずに済みます。
種類を間違えない
| 火災の種類 | 中身 |
|---|---|
| A火災(普通) | 木、紙、布 |
| B火災(油) | 天ぷら油、ガソリン |
| C火災(電気) | 配線、電気機器 |
粉末ABC消火器が一般的で、3種類に対応します。厨房には強化液(K火災対応)を置いている施設もあります。ラベルの表示で何に使えるかが分かります。
よくある不良と、その場でできること
| 不良 | その場でできるか | やること |
|---|---|---|
| 前に物が置かれている | できる | どける。床にテープで範囲を示す |
| 標識が見えない | できる | 掛け直す、汚れを拭く |
| 設置場所から動いている | できる | 戻す。番号シールと照合 |
| 圧力計が緑を外れている | できない | 業者へ連絡、交換 |
| 本体にさびがある | できない | 交換(加圧式は特に危険) |
| 使用期限が切れている | できない | 交換 |
| ホースにひび | できない | 交換 |
上の3つは、点検の場で直せます。「不良」と書いて翌月まで放置するより、その場で直して「処置済」と書くほうが早いです。
直したらその場で書く
記録は、見た直後に書きます。事務所に戻ってからまとめて書くと、どの消火器がどうだったか混ざります。スマートフォンで撮った写真を後で見返すより、その場で1行書くほうが速くて正確です。
交換の年をまとめる
期限が1本ずつ違うと、毎年少しずつ交換することになります。設置場所・製造年・期限の表を作って、来年の交換本数を先に出しておくと、予算が組めます。
| 年 | 交換本数 | 概算 |
|---|---|---|
| 今年 | 4本 | なし |
| 来年 | 12本 | 多いので予算に入れる |
| 再来年 | 3本 | なし |
「来年12本」が分かっていれば、予算の相談ができます。期限が切れてから慌てるのと、1年前に分かっているのとでは、まったく違います。
よくある質問
消火器の点検は自分でやってよいですか
建物の規模と用途によります。有資格者による点検が必要な建物では、法定の点検は消防設備士または消防設備点検資格者が行います。ただし、月1回の外観確認を自分たちで行うこと自体は妨げられません。まず自分の建物がどちらかを消防署に確認してください。
使用期限が切れていても、いざというとき使えますか
使えないことがあります。期限は「そこまでは性能を保つ」という目安であって、それを過ぎたら動作が保証されません。加圧式でさびが出ているものは、操作時の破裂事故が報告されています。
圧力計の針が緑から外れています
自分で直そうとせず、業者に連絡して交換します。特に針が右(高い)側にあるものは触らないでください。
何本必要ですか
建物の用途、面積、階数で必要な本数が決まります。内装や用途を変えたときに必要本数が変わることがあるため、工事の前に消防署へ相談します。
訓練用の消火器はどこで手に入りますか
水消火器(訓練用)は消防設備の業者が扱っています。1本あれば何度でも練習できるので、訓練のたびに実物を使うより現実的です。訓練の進め方は消防訓練の進め方にまとめています。
まとめ
消火器は、外観で分かる部分は自分たちで月1回見られます。設置場所、圧力計、本体(特に底面のさび)、ホース、標識の5か所で、1本あたり10秒です。法定の点検は別にあり、建物によっては有資格者でなければ行えません。
使用期限は設計標準使用期限で表示されています。期限が切れたら交換で、1本ずつ違うため設置場所・製造年・期限を1枚の表にして管理します。廃棄は一般ごみではできません。
置き場所は「前に物を置かない」が日常で崩れます。足元にテープで四角を描くだけで置かれなくなります。記録は通し番号で現物と結び付け、「処置」の欄を必ず作って、不良を書いたら直した内容まで残します。