消防設備点検報告書の出し方|3年に1回の意味と保管
目次
消防設備点検報告書は、業者が置いていった時点では、まだ何も終わっていません。提出する義務は建物の側にあります。ここを業者がやってくれていると思い込んで、何年も出していなかった、という施設は珍しくありません。
この記事では、消防設備点検報告書について、「3年に1回」の本当の意味、誰がどこへ出すか、書類の中身、保管の順に整理します。様式や提出の細かい運用は自治体で違います。所轄の消防署に確認してください。
結論:「3年に1回」は報告の話。点検は毎年2回ある
これだけは分けて覚えます。
| 周期 | |
|---|---|
| 機器点検 | 6か月に1回 |
| 総合点検 | 1年に1回 |
| 報告 | 特定防火対象物は1年に1回/それ以外は3年に1回 |
「うちは3年に1回だから」と点検まで3年空けるのが、いちばん多い間違いです。点検は建物の区分に関係なく年2回あります。3年に1回なのは、その結果を消防署へ出す回数だけです。
点検そのものの中身は消防設備点検とはにまとめています。
自分の建物はどちらか
| 区分 | 例 | 報告 |
|---|---|---|
| 特定防火対象物 | 飲食店、物販店、ホテル、病院、福祉施設、劇場、遊技場など | 1年に1回 |
| 非特定防火対象物 | 事務所、工場、倉庫、学校、共同住宅、神社など | 3年に1回 |
判断の軸は、不特定多数の人が出入りするかです。同じビルでも、1階に飲食店が入れば建物全体の扱いが変わることがあります。
テナントの入れ替わりで区分が変わるのが見落としどころです。事務所ビルの1階を店舗にした、共同住宅の一部を施設にした、といったときは所轄の消防署に確認します。
誰がどこへ出すか
出すのは「関係者」
消防法では、防火対象物の関係者(所有者・管理者・占有者)が報告することとされています。点検を業者に委託していても、報告の義務は関係者に残ります。
| よくある形 | 提出は誰が |
|---|---|
| 自社所有・自社管理 | 自社 |
| 管理会社に委託 | 契約による。委託範囲を確認する |
| 点検業者に委託 | 契約による。点検だけの契約なら提出は自社 |
「たぶん業者が出している」が、いちばん危ない状態です。契約書か見積書に「報告書の提出」が入っているかを1度見ておきます。
出す先
所轄の消防長または消防署長です。建物の住所を管轄する消防署になります。
提出の方法は自治体で違います。窓口へ持参、郵送、電子申請のいずれか、または併用です。電子申請に対応しているかは自治体の消防のサイトで確認します。
書類の中身
提出するのは、一般に次の2つです。
| 書類 | 中身 |
|---|---|
| 消防用設備等(特殊消防用設備等)点検結果報告書 | 表紙にあたる書類。建物の情報、点検日、点検者、結果の概要 |
| 点検結果総括表・点検票 | 設備ごとの点検結果。業者が作る |
表紙の書類は、建物側が書く欄があります。業者が作った点検票をそのまま出せばよい、ではありません。
表紙で埋める欄
- 防火対象物の所在地・名称・用途
- 管理権原者(所有者・代表者)の氏名
- 防火管理者の氏名
- 点検の期間、点検を行った者
- 不良の有無と、改修の予定
管理権原者と防火管理者の氏名が空欄のまま出て戻ってくる、というのがよくある形です。防火管理者の選び方は防火管理者とはにまとめています。
不良がある場合
不良の欄に「有」と書いたら、改修の予定を添えます。「いつまでに、どこを、どうする」が書いてあれば受け付けてもらえることが多くあります。空欄のまま出すと、放置とみなされます。
出し忘れが起きる流れ
出し忘れは、忘れっぽさではなく仕組みで起きます。
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| 1 | 点検が終わり、業者が報告書を置いていく |
| 2 | 受け取った人が「点検が終わった」と理解する |
| 3 | ファイルに綴じる |
| 4 | 提出という工程が誰の仕事にもなっていない |
| 5 | 3年後の点検で、前回の控えに受付印が無いことに気づく |
止められるのは4だけです。点検を依頼する時点で「提出は誰がやるか」を決めておきます。
防ぎ方は2つ
- 業者に提出まで含めて依頼する(契約書に明記する)
- 自社で出すと決めて、点検日の1か月後を提出日として一覧に入れる
どちらでもよいのですが、決めていない状態がいちばん危ないです。
保管
控えは必ず受け取る
窓口へ持参する場合は、受付印を押した控えをもらいます。郵送や電子申請なら、受付の記録を残します。「出したはず」を証明できるのは控えだけです。
いつまで残すか
法令上の保管期間の扱いは自治体の運用で異なります。実務としては、次の報告までは必ず残すのが最低線です。3年に1回の報告なら、少なくとも3年分が手元にあることになります。
| 残すもの | 理由 |
|---|---|
| 提出した報告書の控え(受付印つき) | 出した証明 |
| 点検票(設備ごとの結果) | 前回の不良と比べられる |
| 改修の記録 | 不良を直した証明 |
3つ目が抜けやすいところです。直したのに記録が無いと、次の点検で同じ指摘が出たときに説明できません。
置き場所を1か所にする
建物ごとにファイルを分けて、消防関係だけを1つの束にまとめます。消防計画、防火管理者の選任届、訓練の報告、点検報告書。消防署の立入検査では、この束をまとめて見られます。
自治体で違うところ
同じ消防法でも、運用は自治体で違います。引っ越しや複数拠点の管理で戸惑うのはここです。
| 違うところ | 確認のしかた |
|---|---|
| 様式の細かい書式 | 所轄消防のサイトでダウンロード |
| 電子申請の可否 | 同上。対応していない自治体もある |
| 添付書類 | 平面図や設備の一覧を求められることがある |
| 窓口の受付時間 | 平日日中のみが一般的 |
| 事前相談の要否 | 初回は窓口へ、という運用のところがある |
複数の建物を持っている会社では、建物ごとに所轄が違います。「本社と同じやり方」で出して差し戻されるのがよくある形です。
初回は窓口へ行く
郵送や電子で出せる自治体でも、初回は窓口で顔を合わせておくと後が楽になります。書き方の癖や、その消防署で重視されている点を教えてもらえます。
出したあとの流れ
提出して終わりではありません。
| 段階 | やること |
|---|---|
| 1 | 受付印のある控えを受け取る |
| 2 | 控えを消防の束に綴じる |
| 3 | 要是正の項目があれば改修する |
| 4 | 改修したら記録を残す(写真・請求書・業者の報告) |
| 5 | 次回の点検時期を一覧に入れる |
4が抜けると、次の点検で「前回と同じ不良」として再び指摘されます。直したのに記録が無いと、直していないのと同じ扱いになります。
立入検査で出す束
消防署の立入検査では、次をまとめて見られます。別々のファイルに散らばっていると、その場で探すことになります。
- 消防計画(届出の控え)
- 防火管理者の選任届(控え)
- 消防用設備等点検結果報告書(控え)と点検票
- 訓練の実施記録
- 防火対象物点検の報告書(対象の建物のみ)
1つのファイルにまとめて、背表紙に「消防」と書いておく。これだけで検査の時間が半分になります。
改修の記録に残すもの
| 残すもの | なぜ |
|---|---|
| 改修前の写真 | 何が不良だったか |
| 改修後の写真 | 直った状態 |
| 業者の報告書または請求書 | いつ誰が直したか |
写真は前後の2枚で1組です。後だけだと、何を直したのか分かりません。
よくある質問
業者が提出まで代行してくれますか
契約によります。代行している業者は多いのですが、点検だけの契約だと提出は含まれません。見積書の項目に「報告書提出」があるかを確認してください。
何年も出していませんでした。どうすればよいですか
気づいた時点で所轄の消防署に相談します。出していない期間を隠すより、現状を伝えて出すほうが早く収まります。直近の点検を実施して、その結果から出す形になることが多くあります。
建物の所有者と使用者が別です。誰が出しますか
消防法上は関係者(所有者・管理者・占有者)です。実務では賃貸借契約や管理委託契約でどちらが行うかを決めていることが多いので、契約書を確認します。決まっていなければ、先に決めます。
電子申請はできますか
対応している自治体が増えています。所轄の消防のサイトで確認してください。対応していても、初回は窓口という運用のところもあります。
点検はしたが不良を直せていません。出してよいですか
出します。不良を隠して「無」と書くほうが問題になります。改修の予定(時期と内容)を添えて提出し、直したら改修の報告を入れる形にします。
まとめ
消防設備点検報告書の「3年に1回」は報告の周期であって、点検の周期ではありません。点検は建物の区分に関係なく、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回あります。
提出するのは関係者(所有者・管理者・占有者)です。点検を業者に委託していても、報告の義務は建物の側に残ります。点検を依頼する時点で「提出は誰がやるか」を決めておくと、出し忘れが起きません。
出したら受付印のある控えを必ず受け取り、点検票と改修の記録と一緒に1つの束にまとめます。消防署の立入検査では、この束をまとめて見られます。