ビル管法とは?特定建築物になる条件と届出の手順
目次
ビル管法は、正式には「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」といいます。建築物衛生法、ビル衛生管理法とも呼ばれます。名前が4つあるので、調べているうちに別の法律の話を読んでいた、ということが起こりがちです。
この記事では、ビル管法を、対象になる特定建築物の条件、届出の手順、守るべき管理基準、備えておく帳簿、保健所の立入検査の順に整理します。該当するかどうかや届出の様式は自治体の運用で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。
結論:3,000平方メートルが分かれ目
ビル管法の対象になるのは、特定建築物と呼ばれる建物です。条件は2つあり、両方に当てはまったときだけ対象になります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 用途 | 興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、学校、旅館など特定の用途に使われていること |
| 規模 | その特定用途に使われる部分の延べ面積が3,000平方メートル以上(学校教育法第1条に定める学校は8,000平方メートル以上) |
「3,000平方メートル以上のビル」と覚えられていることが多いのですが、正確には特定用途に使われている部分の面積で数えます。建物全体が3,000平方メートルあっても、そのうち特定用途の部分が3,000平方メートルに届かなければ対象になりません。
面積の数え方でつまずく
ここが実務でいちばん迷うところです。駐車場や機械室、倉庫といった部分をどう扱うかで、面積が変わります。
- 特定用途に付随している部分(廊下、階段、便所、洗面所など)は含めて数えるのが一般的
- 共同住宅の部分は特定用途に入らないとされている
- 複数の用途が入っている建物では、特定用途の部分だけを合計する
自分で数えて「足りないから対象外」と判断するのは危ない部分です。図面を持って所在地の保健所に相談するのが確実です。用途を変更したときに、対象になったり外れたりすることもあります。
対象になったら何をするか
特定建築物に該当したら、おおむね次の4つが必要になるとされています。
| 内容 | |
|---|---|
| 1 | 特定建築物の届出を保健所へ出す |
| 2 | 建築物環境衛生管理技術者を選任する |
| 3 | 建築物環境衛生管理基準に従って維持管理する |
| 4 | 帳簿書類を備えて保存する |
1の届出は、使用を開始してから1か月以内に出すこととされています。新築や用途の変更で対象になったときは、この期限を意識しておきます。
届出の内容が変わったとき(所有者が替わった、面積が変わった、管理技術者が替わった)も、届け出ることとされています。「変更の届出だけ何年も出ていない」というのがよくある形です。
届出の提出先は保健所
提出先は消防署でも特定行政庁でもなく、所在地の保健所です。建築基準法や消防法の報告とは別の窓口になります。
管理技術者の選任については建築物環境衛生管理技術者にまとめています。
建築物環境衛生管理基準
ビル管法の中心は、この管理基準です。空気・水・清掃・ねずみ等の4つの分野に分かれています。それぞれに「何を、どのくらいの頻度でやるか」が決められています。
| 分野 | 主な内容 | 頻度の例 |
|---|---|---|
| 空気環境の調整 | 温度、湿度、二酸化炭素、浮遊粉じん、一酸化炭素、気流の測定 | 2か月以内ごとに1回 |
| 給水の管理 | 水質検査、貯水槽の清掃、残留塩素の測定 | 項目により異なる |
| 排水の管理 | 排水設備(排水槽など)の清掃 | 6か月以内ごとに1回 |
| 清掃・ねずみ等の防除 | 日常の清掃、大掃除、ねずみ等の調査と措置 | 大掃除は6か月以内ごとに1回など |
頻度が「2か月」「6か月」と分かれているのが、管理を難しくしています。カレンダーに落とし込まないと、どれかが抜けます。
それぞれの詳しい進め方は、次にまとめています。
残留塩素の測定は頻度が高い
給水の管理のなかで、飲み水として供給している水の残留塩素の測定は、他より頻度が高く設定されています。一般には7日以内ごとに1回とされており、実務では週に1回、決まった蛇口で測って記録する形をとります。
測定そのものは数分で終わりますが、週次なので抜けやすい項目です。清掃のシフトに組み込んでしまうのが現実的です。
備えておく帳簿書類
ビル管法では、維持管理に関する帳簿書類を備えておくこととされています。保健所の立入検査で最初に見られるのがここです。
| 帳簿 | 内容 |
|---|---|
| 空気環境測定の記録 | 2か月ごとの測定結果 |
| 給水・排水の管理記録 | 水質検査、清掃、残留塩素の測定 |
| 清掃・ねずみ等の記録 | 日常清掃、大掃除、防除の調査と措置 |
| 設備の平面図・配管図 | 建物の構造と設備の系統 |
| 維持管理の計画と実施状況 | 年間の計画とその結果 |
平面図と配管図が見当たらない建物が実際にあります。管理会社や竣工時の図書の中にあることが多いので、写しを1部、帳簿と一緒に置いておきます。
保存する期間
帳簿書類は、一定の期間保存することとされています。一般には5年間とされているものが多く、測定や清掃の記録がこれに当たります。図面は建物がある限り保存する扱いです。
保存の期間は種類ごとに違うため、「何をいつまで残すか」を1枚の表にして、帳簿の先頭に挟んでおくと、担当が替わっても迷いません。
委託していても帳簿は建物側に置く
清掃や測定を委託している場合でも、帳簿書類は建物に備えておくのが本来の形です。委託先の事務所にしか記録が無いと、立入検査のときに出せません。
報告書をもらったら、その場で帳簿に綴じるという手順にしておくと、たまりません。
年間の計画に落とし込む
ビル管法でいちばん多い失敗は、頻度の違う作業がカレンダーに載っていないことです。2か月ごと、6か月ごと、7日以内ごとが混ざるので、頭で覚えていると必ずどれかが抜けます。
一般には、次のような形で1枚の年間表を作っている建物が多くあります。
| 周期 | 載せるもの |
|---|---|
| 週 | 残留塩素の測定 |
| 月 | 日常の清掃の確認、貯水槽の外観点検 |
| 2か月 | 空気環境測定 |
| 6か月 | 排水設備の清掃、大掃除、ねずみ等の調査 |
| 年 | 貯水槽の清掃、水質検査、設備の定期点検 |
この表に、他の法令の点検も一緒に載せてしまうのが実務のコツです。消防設備点検も建築設備定期検査も同じ建物の話なので、1枚にまとまっているほうが漏れません。一覧のつくり方は建物の法定点検一覧にまとめています。
実施した日を同じ表に書き込む
計画の表と実績の表を分けると、照らし合わせる手間が増えます。同じ表の横に実施日を書き込む形にしておくと、その場で抜けが見えます。空欄が残っている行が、そのまま未実施です。
保健所の立入検査でも、この表が1枚あるだけで説明が早くなります。
保健所の立入検査
保健所は、特定建築物に対して立入検査を行うことができるとされています。定期的に回っている自治体もあれば、通報や届出をきっかけに来ることもあります。
見られるのは、おおむね次のようなものです。
| 見られること | 確かめられ方 |
|---|---|
| 届出の内容と実態が合っているか | 面積、用途、管理技術者 |
| 管理基準どおりに実施しているか | 帳簿の記録と頻度 |
| 測定の結果が基準に入っているか | 空気環境、水質 |
| 帳簿がそろっているか | その場で提示できるか |
| 現場の状態 | 給水設備、排水設備、清掃の状態 |
いちばん多い指摘は「記録の抜け」です。実施していても記録していない、記録はあるが頻度が足りていない、という形です。
指摘が出たときの進め方
指摘は、改善の報告を求められることが一般的です。その場で直せるものと、体制を変える必要があるものを分けて進めます。
- 記録の様式が足りない → 様式を用意して次回から記録する
- 頻度が足りない → 年間の計画を組み直す
- 測定結果が基準を外れている → 原因を調べて設備側の対応をとる
- 管理技術者が不在 → 選任して変更の届出を出す
測定結果が基準を外れている場合は、記録を直しても解決しません。空調の風量、外気の取り入れ、フィルタの状態といった設備側の話になります。
他の法令との関係を整理する
ビル管法の管理基準には、他の法令でも求められている項目が混ざっています。同じ作業が二重に見えて混乱するところなので、整理しておきます。
| 作業 | ビル管法 | 他の法令 |
|---|---|---|
| 貯水槽の清掃 | 管理基準に含まれる | 水道法(簡易専用水道の管理) |
| 空気環境測定 | 2か月以内ごとに1回 | 労働安全衛生法(事務所衛生基準規則) |
| 排水設備の清掃 | 6か月以内ごとに1回 | 自治体の条例で上乗せがあることも |
| ねずみ等の防除 | 6か月以内ごとに1回の調査 | 食品衛生法(飲食のテナントがある場合) |
同じ作業を2回やる必要はありませんが、記録の出し先が違うことがあります。たとえば貯水槽の清掃は、ビル管法の帳簿にも、水道法に基づく検査の資料にもなります。1回の作業で、両方に使える記録を残しておくのが効率のよいやり方です。
条例の上乗せに注意する
自治体によっては、法令より厳しい頻度や基準を条例や指導要綱で定めていることがあります。排水槽の清掃を4か月ごととしている地域が実際にあります。
「法令では6か月だから半年に1回」で運用していると、地域の基準を外れることがあります。所在地の保健所のサイトか窓口で、上乗せの有無を一度確かめておきます。
よくある質問
3,000平方メートル未満なら何もしなくてよいですか
ビル管法の特定建築物には該当しませんが、水道法に基づく貯水槽の管理など、他の法令が適用されることがあります。また、自治体によっては条例で独自の基準を定めていることがあります。所在地の保健所で確認します。
残留塩素の測定は誰がやりますか
建物の側でできる作業です。専用の測定器(比色式のもの)で、決まった蛇口の水を測って記録します。1回は数分で終わりますが、7日以内ごとという頻度なので抜けやすい項目です。清掃のシフトに組み込んでしまうと続きます。測る蛇口の場所は毎回同じにしておくと、値の変化が読み取れます。
共同住宅は対象になりますか
共同住宅の部分は特定用途に入らないとされています。ただし、同じ建物の中に店舗や事務所があり、その部分の面積が条件に達していれば、その部分について対象になることがあります。用途が混在する建物は保健所で確認します。
届出はいつまでに出しますか
使用を開始してから1か月以内に出すこととされています。届出の内容が変わったときも届け出ます。変更の届出が抜けている建物が多いので、所有者や管理技術者が替わったときは忘れずに出します。
用途を変更したら届出は要りますか
特定用途の部分の面積が変わると、対象になったり外れたりすることがあります。事務所の一部を店舗にした、共同住宅の一部を事務所にしたといった場合です。面積が変わったときは届出の内容も変わるので、工事の計画段階で保健所に相談しておくと手戻りがありません。
帳簿はどれくらい残しますか
一般には5年間とされているものが多くあります。図面は建物がある限り保存する扱いです。種類ごとに違うので、1枚の表にして帳簿の先頭に挟んでおくと迷いません。
同じ作業が他の法令でも求められている気がします
実際に重なっています。貯水槽の清掃は水道法、空気環境測定は労働安全衛生法、ねずみ等の防除は食品衛生法と、それぞれ別の枠組みでも求められることがあります。同じ作業を2回やる必要はありませんが、記録の出し先が違うので、1回の作業で両方に使える記録を残しておきます。
自治体が独自の基準を出していることはありますか
あります。排水槽の清掃を4か月ごととしている地域のように、法令より厳しい頻度を条例や指導要綱で定めていることがあります。「法令では6か月だから」で運用していると地域の基準を外れることがあるため、所在地の保健所で一度確かめておきます。
管理を委託していても届出は要りますか
必要です。届出も帳簿の備え付けも、建物の所有者・管理者の側の義務とされています。委託先が実務を担っていても、記録は建物に備えておきます。
まとめ
ビル管法の対象になるのは、特定用途に使われる部分の延べ面積が3,000平方メートル以上の建物です(学校は8,000平方メートル以上)。建物全体の面積ではないので、用途が混在する建物は数え方で結論が変わります。図面を持って保健所に相談するのが確実です。
対象になったら、届出、管理技術者の選任、管理基準に沿った維持管理、帳簿の備え付けの4つが必要になります。届出は使用開始から1か月以内で、提出先は保健所です。
管理基準は、空気・水・清掃・ねずみ等の4分野に分かれ、それぞれ頻度が決まっています。2か月ごと、6か月ごと、7日以内ごとと分かれているので、年間のカレンダーに落とし込まないとどれかが抜けます。
対策は1枚の年間表です。周期の違う作業を1枚に並べ、実施日をその横に書き込む。空欄が残っている行が、そのまま未実施になります。他の法令の点検も同じ表に載せてしまうと、建物全体の期限が1枚で見えます。
立入検査でいちばん多い指摘は、記録の抜けです。委託していても、帳簿は建物に備えておくのが本来の形です。報告書をもらったらその場で綴じる、という手順にしておくと、後からまとめる手間が消えます。