建物の衛生管理実務2026.09.16 公開ES-03

ねずみ等の防除|6か月ごとの調査とIPMの進め方

目次

ねずみ等の防除は、ビル管法の管理基準のなかでいちばん「業者に任せきり」になりやすい項目です。年に2回、薬剤をまいてもらって記録をもらう。それで終わりにしている建物が多くあります。ところが管理基準で求められているのは、まず調査して、その結果に基づいて必要な措置をとるという順番です。

この記事では、ねずみ等の防除を、何が対象か6か月ごとの調査IPMという考え方建物の側でできること記録の残し方の順に整理します。頻度や進め方は建物の用途と自治体の運用で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。

防除の記録や点検表の様式そのものを探している場合は、点検板に施設向けの様式がそろっています。

結論:薬剤をまくより先に、調査がある

ビル管法の管理基準では、ねずみ等の防除について、おおむね次の順序が定められているとされています。

順番内容頻度
1統一的に調査する6か月以内ごとに1回(発生しやすい場所は2か月以内ごとに1回)
2調査の結果に基づいて、発生を防止するために必要な措置をとるその都度
3薬剤を使う場合は、承認を受けた医薬品・医薬部外品を用いる使用時

「6か月ごとに薬剤をまく」ではありません。まず調査して、結果に応じて措置をとる形です。調査の結果、何も出なければ薬剤は必要ないという判断もあり得ます。

「ねずみ等」の範囲

対象は、ねずみだけではありません。ねずみ、ごきぶり、はえ、蚊など、人の健康に影響を与える生き物が含まれるとされています。建物によって出るものが違うので、自分の建物で何が問題になっているかから始めます。

管理基準の全体像はビル管法とはにまとめています。

調査が先、措置はその結果から1**統一的に調査**6か月以内ごとに1回2結果を読む何がどこに、どれだけ3必要な措置発生源と侵入経路をふさぐ4薬剤(必要なら)承認を受けたものを使
調査が先、措置はその結果から

6か月ごとの調査で見ること

調査は、建物を統一的に見ることが求められています。一部の区画だけ、あるいは苦情の出た場所だけ見るのでは足りません。

見るところ何を探すか
厨房・給湯室糞、かじり跡、油汚れの中の足跡
ごみ置き場ごみの保管の状態、こぼれ、扉の隙間
配管の周り壁や床の貫通部の隙間
天井裏・ピット走った跡、巣の材料
排水槽・排水溝ちょうばえなどの発生
搬入口・裏口扉の隙間、開けっ放しの時間帯

捕獲の器具や粘着トラップを一定期間置いて、何が何匹かかったかを数えるのが一般的な調査のしかたです。これで発生の程度を数字にできるため、前回との比較ができます。

発生しやすい場所は2か月ごと

厨房、ごみ置き場、排水槽の周りなど、特に発生しやすい場所については、より短い間隔で調査するとされています。一般には2か月以内ごとに1回です。

自分の建物のどこが「発生しやすい場所」なのかを決めて、図面に印を付けておくと、調査の範囲がぶれません。テナントが入れ替わって厨房が増えたときは、印も更新します。

場所によって間隔が違う建物全体統一的に調査する6か月以内ごとに1回発生しやすい場所厨房・ごみ置き場排水槽の周り2か月以内ごとに1回
調査は建物全体。発生しやすい場所は短い間隔で

IPMという考え方

近年の防除では、IPM(総合的有害生物管理)という考え方が基本になっています。薬剤に頼りきらず、環境を整えて発生させない方向に重心を置くやり方です。

手段内容
発生源対策ごみ、食べ物、水、巣の材料を無くす
侵入防止隙間をふさぐ。扉の開放時間を減らす
物理的防除トラップ、捕獲器
薬剤による防除必要な場所に、必要な量だけ

上の2つが本体で、薬剤は最後です。薬剤をまいても、餌と隙間が残っていれば、また入ってきます。

維持管理水準を決める

IPMでは、「どの状態なら許容できるか」の水準を建物ごとに決めることが求められます。ゼロにすることを目標にすると、薬剤の使用が増え続けます。

一般には、次のように区分して考えます。

水準状態対応
許容できる生息の兆候が見られない現状の管理を続ける
注意が必要わずかに兆候がある発生源と侵入経路を確かめる
措置が必要明らかに生息している速やかに防除を行う

場所ごとに水準を変えてよいとされています。厨房と、人の入らない機械室では、求める水準が違って当然です。

薬剤を使うときの注意

薬剤を使う場合は、承認を受けた医薬品または医薬部外品を用いることとされています。また、作業をする人と建物の利用者に影響が出ないよう配慮することも求められます。

  • 実施の日時を利用者へ周知する
  • 食品を扱う区画では、器具や食材の養生をする
  • 使用した薬剤の名称と場所を記録する
  • 換気と立入制限の時間を決める

飲食のテナントがある建物では、事前の調整がいちばん時間を取ります。営業時間の前後に区切って行うことが多くなります。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

防除の記録や点検表を一から作るのは手間がかかります。既成の様式を使いたい方は点検板をご覧ください。

点検板で様式をさがす
IPMは発生源と侵入をふさぐのが本体発生源対策ごみ・食べ物・水・巣の材料侵入防止隙間をふさぐ。扉を閉める物理的防除トラップ・捕獲器薬剤必要な量だけ
IPMは発生源と侵入をふさぐのが本体

建物の側でできること

防除を委託していても、発生源と侵入経路をつくっているのは日常の使い方です。ここは建物の側でしか直せません。

やることなぜ効くか
ごみは蓋付きの容器に入れる餌が無ければ居つかない
ごみ置き場を毎日清掃するこぼれた汁が発生源になる
排水溝の清掃を習慣にするちょうばえの発生源
配管の貫通部の隙間をふさぐねずみは小さな隙間から入る
搬入口の扉を開けっ放しにしない侵入の時間を減らす
段ボールを長く置かない巣の材料になる

いちばん効くのはごみの管理です。餌が豊富にある建物では、いくら薬剤をまいても数が戻ります。ごみ置き場を見れば、その建物の状態がだいたい分かると言われるのはこのためです。

隙間は思っているより小さくてよい

ねずみは、わずかな隙間から入ってきます。配管が壁を抜けている部分、シャッターの下、換気口の網の破れ。見つけたら金網やパテでふさぐという作業を積み重ねると、確実に減ります。

「どこから入っているか分からない」ときは、調査で足跡や糞の場所を地図に落とすと、経路が見えてきます。業者の報告書に位置図が付いているなら、それを使います。

テナントへの伝え方

飲食や物販のテナントがある建物では、専有部の中の管理がそのまま建物全体に影響します。否定的な言い方にすると協力が得られにくいので、一般的な形を先に示す伝え方が使いやすくなります。

> 一般には、閉店後に厨房の床と排水溝を流し、生ごみは蓋付きの容器で保管している店舗が多くあります。

建物としての調査結果を共有するのも有効です。「この階でこれだけ捕獲された」という数字は、注意より説得力があります。

生き物ごとに対策が違う

「ねずみ等」とひとくくりにされますが、出るものによって効く手が違います。自分の建物で何が問題になっているかが分かると、対策が絞れます。

生き物主な発生源効く手
ねずみ餌(ごみ・食品)、巣の材料侵入口をふさぐ、ごみの管理
ごきぶり厨房の油汚れ、段ボール、暖かい隙間清掃、隙間の封鎖、ベイト剤
ちょうばえ排水槽、排水溝、グリストラップの汚泥清掃の頻度を上げる
はえごみ置き場、生ごみごみの保管方法、蓋
溜まり水(受け皿、雨水ます、屋上)水を溜めない

ちょうばえと蚊は、清掃と水の管理でほぼ決まります。薬剤をまいても、発生源の汚泥や溜まり水が残っていれば、数日で戻ります。

排水槽の清掃は排水槽の清掃にまとめています。

季節で出るものが変わる

同じ建物でも、時期によって問題になるものが変わります。

  • 春から夏 … 蚊、はえ、ごきぶりの活動が増える
  • 夏から秋 … ちょうばえ、排水まわりの発生
  • 秋から冬 … ねずみが暖かい場所へ入ってくる
  • 通年 … 厨房のごきぶり

調査の時期を、この波に合わせると結果が読み取りやすくなります。真冬に蚊の調査をしても数字は出ません。6か月ごとの調査を、春と秋に置いている建物が多いのはこのためです。

出るものによって効く手が違う生き物発生源効く手ねずみ餌・巣の材料侵入口をふさぐごきぶり油汚れ・段ボール清掃と封鎖ちょうばえ排水槽の汚泥清掃の頻度溜まり水水を溜めない
出るものによって効く手が違う

記録の残し方

ねずみ等の防除は、帳簿書類として記録を残すこととされています。立入検査でも確認される項目です。

残すもの内容
調査の記録実施日、範囲、方法、結果(何がどれだけ)
措置の記録何をどこに行ったか
使用した薬剤名称、量、場所、日時
図面発生しやすい場所、調査の位置
苦情・発見の記録いつ、どこで、誰が見たか

「結果」が数字で残っているかが分かれ目です。「実施した」だけの記録では、前回と比べられません。捕獲数や兆候の有無を数えて残すと、対策が効いているかが見えます。

苦情と発見も記録する

正式な調査だけでなく、日常で見つけたものも同じ記録に入れるのがおすすめです。清掃の担当が糞を見つけた、テナントから連絡があった、といったものです。

調査は6か月ごとですが、発生はその間にも起きます。日常の発見を同じ場所に書いておくと、次の調査のときに重点的に見る場所が分かります。

記録は数字で残すねずみ等 防除記録実施日2026年4月10日範囲全館(B1〜5F)方法粘着トラップ30枚結果ねずみ2/ごきぶり8措置B1配管の隙間を封鎖「実施した」だけでは前回と比べられな日常で見つけたものも同じ記録に入れる位置図があると次の調査が早い
記録は数字で残す

業者を選ぶときに見るところ

防除の委託は、金額の幅が大きい分野です。同じ「年2回」でも、中身がまったく違うことがあります。

見ることなぜ
調査の方法と範囲トラップを何個、どこに、何日置くか
結果の出し方数字と位置図が出るか。「異常なし」だけでないか
IPMの考え方をとるか発生源と侵入経路の指摘があるか
使用する薬剤の説明名称、成分、食品を扱う区画での扱い
措置の提案建物側でやるべきことを教えてくれるか
緊急時の対応苦情が出たときに来てもらえるか

「結果の出し方」がいちばん分かりやすい目安です。報告書に捕獲数と位置図が載っていれば、前回と比べられます。「異常なし」の1行だけなら、効果を測る材料になりません。

建物側でやることを教えてくれるか

良い委託先ほど、建物の側でやるべきことを具体的に指摘してきます。「3階のごみ置き場の扉に隙間がある」「厨房の排水溝の清掃頻度が足りない」といったものです。

これを「注文が多い」と受け取らないことが大事なところです。薬剤だけで抑えようとすると費用が上がり続けます。指摘された箇所を1つずつ直していくほうが、結果として安く収まります。

見積りを揃える

金額だけを並べても比べられません。次を同じ条件にしてから比べます。

  • 調査の回数と、発生しやすい場所の追加調査の有無
  • トラップの数と設置日数
  • 報告書の形式(数字と位置図が出るか)
  • 薬剤の施工が含まれるか、別料金か
  • 苦情が出たときの臨時対応の扱い

5つ目が抜けていると、実際に発生したときに別途の請求になります。年に何回まで含むのかを確かめておきます。

よくある質問

ねずみ等の防除は年に2回、薬剤をまけばよいですか

管理基準で求められているのは、6か月以内ごとに1回の統一的な調査と、その結果に基づく必要な措置です。調査をせずに薬剤だけまく形は、順序が逆になっています。調査の結果、措置が不要という判断もあり得ます。

発生しやすい場所とはどこですか

厨房、給湯室、ごみ置き場、排水槽の周りなど、餌と水と隠れ場所がそろう場所です。こうした場所は、より短い間隔(一般には2か月以内ごとに1回)で調査するとされています。図面に印を付けておくと範囲がぶれません。

薬剤を使うときに気を付けることはありますか

承認を受けた医薬品または医薬部外品を用いることとされています。あわせて、作業する人と建物の利用者に影響が出ないよう配慮することも求められます。実施の日時を周知する、食品を扱う区画では器具や食材を養生する、換気と立入制限の時間を決める、使用した薬剤の名称と場所を記録する。飲食のテナントがある建物では、この調整にいちばん時間がかかります。

IPMとは何ですか

総合的有害生物管理の略で、薬剤に頼りきらず、発生源と侵入経路をふさぐことを中心に据える考え方です。建物ごとに「どの状態なら許容できるか」の水準を決め、その水準を超えたときに措置をとります。

テナントにどう伝えればよいですか

否定から入ると協力が得られにくくなります。一般的な形を先に示す伝え方が使いやすくなります。「一般には、閉店後に厨房の床と排水溝を流し、生ごみは蓋付きの容器で保管している店舗が多くあります」といった形です。あわせて、建物としての調査結果(この階でこれだけ捕獲された、など)を共有すると、注意より説得力があります。

ゼロにしなければいけませんか

場所ごとに許容できる水準を決めるのがIPMの考え方です。ゼロを目標にすると、薬剤の使用が増え続けます。厨房と、人の入らない機械室では、求める水準が違って当然です。

業者の報告書が「異常なし」の1行だけです

それだと前回と比べられません。捕獲数と位置図が出る形にしてもらうと、対策が効いているかが見えます。委託の内容を見直すときは、調査の回数だけでなく、トラップの数・設置日数・報告書の形式まで条件をそろえて比べます。

調査の時期はいつがよいですか

春と秋に置いている建物が多くあります。真冬に蚊の調査をしても数字は出ませんし、真夏だけだとねずみの動きが読めません。6か月ごとという周期を、生き物の活動の波に合わせると、結果が読み取りやすくなります。

記録には何を書きますか

実施日と範囲だけでは足りません。何がどれだけ確認されたかを数字で残すと、前回と比べられます。日常で見つけたものや、テナントからの連絡も同じ記録に入れておくと、次の調査で見る場所が分かります。

まとめ

ねずみ等の防除で求められているのは、まず調査し、その結果に基づいて必要な措置をとるという順番です。頻度は6か月以内ごとに1回、発生しやすい場所は2か月以内ごとに1回とされています。「年2回、薬剤をまく」は、順序が逆になっています。

考え方の基本はIPMです。発生源対策と侵入防止が本体で、薬剤は最後にきます。餌と隙間が残っていれば、薬剤をまいても数は戻ります。

建物の側でできることは、はっきりしています。ごみの管理、排水溝の清掃、配管の貫通部の隙間をふさぐ、扉を開けっ放しにしない。なかでもごみの管理がいちばん効きます。

そして、記録は数字で残します。「実施した」だけでは前回と比べられません。捕獲数や兆候の有無を残しておくと、対策が効いているかが見えます。日常で見つけたものも同じ記録に入れておきます。

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実際に使える様式が必要な方へ

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