浄化槽の保守点検|清掃・法定検査との3つの違い
目次
浄化槽の保守点検は、「業者に来てもらっているから大丈夫」と思われがちな作業です。ところが浄化槽の維持管理には、保守点検・清掃・法定検査という3つの別の作業があり、それぞれ根拠も、やる人も、頻度も違います。このうち法定検査だけ受けていないという建物が実際にあります。
この記事では、浄化槽の保守点検を、3つの作業の違い、保守点検で何をするか、回数の決まり方、清掃との関係、法定検査の順に整理します。回数や委託先の登録制度は自治体の運用で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の市区町村または都道府県の担当窓口に確認してください。
結論:保守点検・清掃・法定検査は別のもの
浄化槽法では、浄化槽管理者(一般には建物の所有者)に、3つのことを行うこととされています。
| 何をするか | 誰が | 頻度の例 | |
|---|---|---|---|
| 保守点検 | 機器の点検・調整、消毒剤の補充 | 登録を受けた保守点検業者 | 処理方式と人槽で決まる |
| 清掃 | 槽内に溜まった汚泥を抜き取る | 市町村長の許可を受けた清掃業者 | 1年に1回以上 |
| 法定検査 | 適正に維持管理されているかを第三者が確かめる | 指定検査機関 | 設置後1回+毎年1回 |
この3つを全部やって、初めて維持管理が回ります。保守点検と清掃は業者が定期的に来るので忘れにくいのですが、法定検査は年1回で、自分から申し込む形のことが多いため、抜けやすくなっています。
「点検に来ている」が指すものを確かめる
現場で「浄化槽の点検に来ている」と言われたとき、それが保守点検なのか法定検査なのかは、書類を見ないと分かりません。
- 保守点検 … 保守点検記録票が残る
- 清掃 … 清掃記録票が残る
- 法定検査 … 検査結果書が指定検査機関から届く
3種類の書類がそろっているかを確かめれば、どれが抜けているかが分かります。
保守点検で何をするか
保守点検は、浄化槽が正しく働き続けるように、機器を点検して調整する作業です。中の微生物が働く環境を保つのが目的なので、機械の点検と水の状態の確認が中心になります。
| 見ること | 内容 |
|---|---|
| ブロワ(送風機) | 動いているか、風量は適正か、異音は無いか |
| 各槽の水位と流れ | 詰まり、逆流、片寄りが無いか |
| 汚泥の溜まり具合 | 清掃の時期の判断材料になる |
| 消毒剤 | 残量の確認と補充 |
| 放流水の状態 | 透明度、臭い、色 |
| 付属の機器 | タイマー、ポンプ、警報装置 |
ブロワが止まっていると、中の微生物が働けなくなります。電源が抜けていた、ブレーカーが落ちていた、というだけで処理の能力が落ちます。ブロワの音がしているかは、日常でも確かめられます。
記録票の読みかた
保守点検記録票は、業者が置いていくだけになりがちですが、読めば次に何が起きるかが分かります。見るのは3か所です。
| 欄 | 何が分かるか |
|---|---|
| 汚泥の堆積状況 | 次の清掃がいつごろ必要になるか |
| 放流水の状況(透明度・臭気) | 処理がうまく回っているか |
| 指摘・助言の欄 | 建物側で直すべきことが書かれている |
3つ目に何か書かれていたら、そこが宿題です。「油の流入が多い」「ブレーカーが落ちていた」といった指摘は、建物の側でしか直せません。記録票を受け取った人が読む形にしておかないと、同じ指摘が毎回積み重なります。
消毒剤の補充が主な目的ではない
保守点検というと「消毒剤を入れに来る作業」と思われていることがありますが、それは作業の一部です。汚泥の溜まり具合を見て清掃の時期を判断したり、ブロワの調整をしたりするほうが、処理の性能に直結します。
記録票に「汚泥の堆積状況」の欄があるはずなので、そこを読むと、次の清掃がいつごろ必要になるかが見えてきます。
保守点検の回数の決まり方
保守点検の回数は、一律ではありません。浄化槽の処理方式と、人槽(その浄化槽が処理できる人数の規模)で決まるとされています。
| 要素 | 影響 |
|---|---|
| 処理方式 | 分離接触ばっ気方式、嫌気ろ床接触ばっ気方式など、方式で回数が変わる |
| 人槽 | 規模が大きいほど回数が多くなる傾向 |
| 単独処理か合併処理か | 古い単独処理浄化槽は別の定めがある |
| 用途 | 事業所向けの大型のものは頻度が上がる |
「4か月に1回以上」「3か月に1回以上」といった形で示されます。自分の浄化槽が何に当たるかは、設置時の書類か、保守点検の委託先に確認します。市区町村のサイトに一覧が載っていることもあります。
人槽は使っている人数ではない
ここで誤解が起きます。人槽は浄化槽の大きさを表す単位で、実際に使っている人数のことではありません。10人槽の浄化槽を3人で使っていても、10人槽として扱われます。
規模が大きいほど回数が多くなるため、「そんなに使っていないのに」と感じることがありますが、判断は設備の規模で行われます。
清掃との関係
清掃は、槽の中に溜まった汚泥やスカムを抜き取る作業です。保守点検とは別の資格・許可が要ります。
| 保守点検 | 清掃 | |
|---|---|---|
| 内容 | 機器の点検・調整、消毒剤の補充 | 汚泥の抜き取り |
| 業者 | 都道府県知事等の登録を受けた業者 | 市町村長の許可を受けた業者 |
| 頻度 | 処理方式と人槽で決まる | 1年に1回以上(全ばっ気方式は6か月に1回以上) |
保守点検の記録が、清掃の時期を決めます。汚泥が規定の量を超えると処理の能力が落ちるため、保守点検業者から「そろそろ清掃を」と言われたら、それが判断の材料になります。
同じ業者がやっているとは限らない
保守点検と清掃は、登録と許可が別なので、同じ業者がどちらもできるとは限りません。両方を請け負っている業者もあれば、保守点検だけの業者もあります。
「点検は来ているが清掃が何年もされていない」という状態は、ここから生まれます。保守点検の記録票に清掃の記載があるかを確かめておきます。
排水槽の清掃との違いは排水槽の清掃にまとめています。
法定検査
法定検査は、保守点検と清掃が適正に行われ、浄化槽が正しく働いているかを第三者が確かめる検査です。指定検査機関が行います。
| 種類 | いつ |
|---|---|
| 設置後等の水質検査 | 使用開始から一定の期間内に1回 |
| 定期検査 | 毎年1回 |
この検査がいちばん抜けやすいところです。保守点検と清掃は業者が定期的に来ますが、法定検査は自分から指定検査機関に申し込む形のことが多く、契約に入っていないと誰も動きません。
保守点検をしていれば不要、ではない
「毎月点検に来てもらっているから、検査は要らないのでは」と思われることがありますが、法定検査は保守点検や清掃とは別の位置づけです。その保守点検と清掃が適正だったかを、第三者の立場で確かめるものだからです。
保守点検の委託先に「法定検査は契約に入っていますか」と一度聞いてみると、はっきりします。入っていなければ、指定検査機関へ直接申し込みます。
検査結果書は保管する
検査が終わると検査結果書が届きます。これは保守点検記録票・清掃記録票とあわせて、一定の期間保存することとされています。3種類の書類を同じファイルにまとめておくと、どれが抜けているかがひと目で分かります。
期限の管理は建物の法定点検一覧にまとめています。
委託を見直すときに見るところ
浄化槽の維持管理は、保守点検・清掃・法定検査の3つがそろって初めて完成します。契約を見直すときは、どれがどこに入っているかを1枚に整理してから比べます。
| 見ること | なぜ |
|---|---|
| 保守点検の回数 | 処理方式と人槽に見合った回数になっているか |
| 清掃の扱い | 契約に含むか、その都度の見積りか |
| 法定検査の扱い | 契約に含まれていないことが多い。誰が申し込むか |
| 記録票の提出 | 点検のたびにもらえるか |
| 汚泥の処理費用 | 定額か、抜き取った量による従量か |
| 故障時の対応 | ブロワの故障や詰まりに、どれだけで来てもらえるか |
3つ目がいちばんの落とし穴です。保守点検の契約書に法定検査の文字が無ければ、その建物では誰も申し込んでいない可能性があります。契約書を1回読むだけで分かることなので、早めに確かめておきます。
記録票は建物側にも残す
保守点検記録票は、業者の控えだけになっている建物があります。これだと、委託先を替えたときに過去の経過が分からなくなります。
点検のたびに写しをもらい、清掃記録票・検査結果書と同じファイルにまとめておきます。3種類が並んでいれば、どれが抜けているかがひと目で分かります。
建物の使い方が変わったとき
テナントが入れ替わって飲食店が入った、利用者が増えた、といった変化があると、浄化槽にかかる負荷が変わります。流れ込む量や油分が増えると、汚泥の溜まり方も早くなります。
使い方が変わったことを、保守点検の委託先に伝えておくと、点検の頻度や清掃の時期を調整してもらえます。伝えていないと、次の点検で異常が出るまで気づかれません。
日常でできること
浄化槽は、流すものと使い方で状態が変わります。日常でできることがあります。
| やること | なぜ効くか |
|---|---|
| ブロワの音を確かめる | 止まっていると微生物が働けない |
| ブレーカーを落とさない | 長期の休業でも電源は入れておく |
| 油を流さない | 微生物の働きを妨げ、詰まりの原因になる |
| 薬剤・漂白剤を大量に流さない | 微生物が死ぬ |
| 紙以外のものを流さない | 詰まりと汚泥の増加 |
| 放流口の周りを見る | 臭い、色、泡立ちの変化 |
ブロワの停止が、いちばん多い不調の原因です。屋外にあるため、コンセントが抜けていても気づかないことがあります。「音がしているか」を巡回の項目に入れておくだけで早く気づけます。
長期の休業でも止めない
改装や長期の休業で建物を使わないときも、浄化槽の電源は入れたままにするのが原則です。止めると微生物が死んでしまい、再開したときに処理ができません。
「使っていないから止めておこう」という判断が、再開後の臭気と水質の悪化につながります。長期に使わない予定があるなら、保守点検の委託先に相談しておきます。
巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
よくある質問
保守点検をしていれば法定検査は要りませんか
別のものとされています。法定検査は、保守点検と清掃が適正に行われているかを第三者が確かめる検査です。指定検査機関が行い、毎年1回とされています。保守点検の契約に含まれていないことが多いので、委託先に確認します。
保守点検の回数はどう決まりますか
処理方式と人槽(浄化槽の規模)で決まるとされています。「4か月に1回以上」「3か月に1回以上」といった形で示されます。自分の浄化槽が何に当たるかは、設置時の書類か委託先、市区町村の窓口で確認します。
単独処理浄化槽と合併処理浄化槽の違いは何ですか
単独処理浄化槽はトイレの排水だけを処理するもの、合併処理浄化槽は台所や風呂の排水も含めて処理するものです。現在は新設が認められていないため、残っているのは古い建物です。単独処理のままだと、台所や風呂の排水がそのまま流れます。維持管理の定めも別になっているので、自分の建物がどちらかを設置時の書類で確かめておきます。
人槽は使っている人数のことですか
いいえ。人槽は浄化槽の大きさを表す単位で、実際の使用人数ではありません。10人槽の浄化槽を3人で使っていても10人槽として扱われます。
清掃はどのくらいの頻度ですか
1年に1回以上とされています(全ばっ気方式のものは6か月に1回以上)。実際の時期は、保守点検で確認した汚泥の溜まり具合で判断します。保守点検と清掃は登録と許可が別なので、同じ業者がどちらもやっているとは限りません。
記録票はどれを残しますか
保守点検記録票・清掃記録票・検査結果書の3種類をそろえて保存します。業者の控えだけになっていると、委託先を替えたときに経過が分からなくなります。同じファイルに並べておけば、どれが抜けているかがひと目で分かります。
テナントが入れ替わりました。何かすることはありますか
飲食店が入るなど使い方が変わると、浄化槽にかかる負荷が変わります。流れ込む量や油分が増えると、汚泥の溜まり方が早くなります。変化を保守点検の委託先に伝えておくと、点検の頻度や清掃の時期を調整してもらえます。
長期の休業中も電源は入れておきますか
原則として入れたままにします。止めると中の微生物が死んでしまい、再開したときに処理ができません。長期に使わない予定があるなら、保守点検の委託先に相談しておきます。
まとめ
浄化槽の維持管理は、保守点検・清掃・法定検査の3つでできています。根拠も、やる人も、頻度も別です。3種類の書類がそろっているかを見れば、どれが抜けているかが分かります。
保守点検は、機器の点検と調整が中心です。消毒剤の補充だけが目的ではなく、汚泥の溜まり具合を見て清掃の時期を判断するのが大きな役割になります。回数は処理方式と人槽で決まり、一律ではありません。
いちばん抜けやすいのは法定検査です。保守点検と清掃は業者が定期的に来ますが、法定検査は自分から申し込む形のことが多く、契約に入っていないと誰も動きません。委託先に一度確かめておきます。
契約を見直すときは、保守点検の回数・清掃の扱い・法定検査の扱い・記録票の提出・汚泥の処理費用・故障時の対応の6つを1枚に整理してから比べます。記録票は建物側にも1部残しておくと、委託先を替えたときにも経過が追えます。
そして、日常でできることのなかでいちばん効くのはブロワの音を確かめることです。止まっていると微生物が働けず、処理の能力が落ちます。屋外にあるためコンセントが抜けていても気づきにくいので、巡回の項目に1行入れておきます。長期の休業でも電源は入れたままにします。