消防・防火基礎2026.09.16 公開BK-01

防火管理者とは?甲種と乙種の違いと選任届

目次

防火管理者は、講習を受けて資格を取ったら終わり、という役職ではありません。資格を取ったあとに、消防計画を作って、訓練をして、点検の結果をまとめるという仕事が続きます。名前だけ置いてある状態だと、立入検査で最初に指摘されます。

この記事では、防火管理者について、選任が必要になる条件甲種と乙種の違い選任届の出し方選任してからやることの順に整理します。必要になる条件は建物の用途と収容人員で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。

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結論:収容人員で決まる。資格より先に「対象かどうか」

防火管理者の選任が必要かどうかは、建物の用途と収容人員で決まります。面積ではありません。

建物の区分選任が必要になる収容人員の目安
特定防火対象物(飲食店、物販店、ホテル、病院、福祉施設など)30人以上
非特定防火対象物(事務所、工場、倉庫、学校、共同住宅など)50人以上
自力での避難が難しい人が入所する施設10人以上

「収容人員」は従業員数ではありません。客席の数、面積から算定する人数など、用途ごとに数え方が定められています。自分で数えると外すので、所轄の消防署で確認するのが確実です。

選任が必要になる収容人員の目安建物の区分収容人員特定防火対象物30人以上非特定防火対象物50人以上自力避難が難しい人の施設10人以上
選任が必要かは用途と収容人員で決まる

甲種と乙種の違い

資格は2種類あります。建物の規模で、どちらが必要かが変わります。

甲種乙種
対象規模の大きい建物(甲種防火対象物)規模の小さい建物
講習2日間程度1日程度
できる範囲甲種・乙種の両方乙種の建物のみ

迷ったら甲種を取るのが実務的です。乙種で足りる建物でも甲種の資格で務められますが、逆はできません。人事異動や建物の変更があったときに、乙種だと取り直しになります。

講習の受け方

  • 日本防火・防災協会や各消防本部が実施している
  • 申込みは先着で、都市部は埋まるのが早い
  • 受講したその日に修了証が出る形が一般的

再講習が必要になる場合があります。一定規模以上の特定防火対象物で防火管理者になっている人は、定められた期間ごとに再講習を受けることとされています。選任した日を記録しておかないと、再講習の期限が分かりません。

資格が要らない場合もある

一定の管理的または監督的な地位にある人で、所定の要件を満たす場合は、講習を受けなくても防火管理者になれる扱いがあります。ただし条件が細かいので、該当しそうなときは消防署に確認します。

甲種は乙種を兼ねる甲種規模の大きい建物講習は2日程度**乙種の建物も務まる**迷ったらこちら乙種規模の小さい建物講習は1日程度甲種の建物は務まらない建物が変わると取り直し
甲種は乙種を兼ねる。迷ったら甲種

誰を選任するか

「管理的または監督的な地位にある人」であることが求められます。アルバイトや、権限のない担当者では務まりません。

向いている人向いていない人
施設長、支配人、店長、総務課長権限のない担当者
常駐していて判断ができる人ほとんど建物に来ない人

「常駐しているか」が実質の条件です。本社の総務部長を名前だけ置いて、現地には来ない、という形は立入検査で問題になります。

名前だけ置くと問題になる名前だけ本社の部長ほとんど来ない立入検査で指摘される実際に務まる施設長・店長・総務課長常駐して判断できる管理的・監督的な地位
名前だけ置くと立入検査で問題になる

交代したとき

人事異動で担当が変わったら、改めて選任届を出します。前任の名前のまま消防計画が置いてあると、訓練も点検報告も前任の名前で回ることになります。

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実際に使える様式が必要な方へ

防火管理の記録や点検の様式を一から作るのは手間がかかります。既成の様式を使いたい方は点検板をご覧ください。

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選任届の出し方

出す書類

書類中身
防火管理者選任(解任)届出書建物の情報、管理権原者、防火管理者の氏名と資格
資格を証明するもの修了証の写しなど
消防計画(作成・変更の届出)選任と同時か、その直後に出す

選任届と消防計画はセットで考えます。選任だけ出して計画を出していないと、防火管理者がいるのに何も決まっていない状態になります。消防計画の作り方は消防計画の作り方にまとめています。

いつ出すか

遅滞なくとされています。実務では、選任した日から2週間以内を目安にしている施設が多くあります。人事異動の内示が出た段階で準備を始めると間に合います。

誰が出すか

管理権原者(建物の所有者や事業所の代表者など、防火管理について権原を持つ人)の名前で出します。防火管理者本人が持っていくのは構いませんが、届出者は管理権原者です。

管理権原が分かれている建物

1つの建物に複数のテナントが入っている場合、管理権原者が複数いることになります。この場合、それぞれが防火管理者を選任したうえで、建物全体をまとめる統括防火管理者が必要になることがあります。

テナントビルでここが抜けている建物は多くあります。各テナントは選任しているのに、建物全体をまとめる人がいない、という状態です。

テナントビルは統括が要ることがある1階 飲食店2階 事務所3階 クリニック4階 事務所統括防火管理者
テナントビルは統括防火管理者が要ることがある

選任してからやること

資格を取って届を出したら、そこからが本番です。

やること頻度
消防計画を作って届け出る選任時。変更があるたび
消火・通報・避難の訓練を行う特定防火対象物は消火と避難を年2回以上
消防用設備等の点検・報告に関わる点検は年2回、報告は1年か3年に1回
火気の使用・取扱いの監督日常
避難経路・防火戸の管理日常
収容人員の管理日常

日常の3つが、実は立入検査でいちばん見られます。避難経路に段ボールが積んである、防火戸の前に什器が置いてある、というのはその場で分かります。

訓練の進め方は消防訓練の進め方にまとめています。

記録を残す

やったことは記録に残します。訓練の実施記録、日常の点検、火気の確認。立入検査では「やっていること」ではなく「やった記録」を見られます。

講習の受け方

資格が要る場合、講習を受けます。段取りは決まっています。

段階やること
1甲種か乙種かを確認する(建物の規模で決まる)
2実施機関を調べる(日本防火・防災協会、各消防本部)
3申し込む(先着。都市部は早く埋まる
4受講する(甲種は2日程度、乙種は1日程度)
5修了証を受け取る
6選任届に修了証の写しを添えて提出する

3がいちばんの関門です。都市部では受付開始から数日で埋まることがあります。人事異動が決まった段階で、先に席を押さえます。

費用と持ち物

受講料はテキスト代を含めて数千円程度が一般的です。顔写真が必要なことが多いので、申し込みの前に用意しておきます。

再講習

一定規模以上の特定防火対象物で防火管理者になっている人は、定められた期間ごとに再講習を受けることとされています。

選任した日を記録しておかないと、再講習の期限が分かりません。選任届の控えに受講日を書き添えて、期限の一覧に入れておきます。管理のしかたは建物の法定点検一覧にまとめています。

講習は先着。異動が決まったら席を押さえる1甲種か乙種建物の規模で決まる2申し込む**都市部は数日で埋まる**3受講する甲種は2日程度4選任届に添える修了証の写
講習は先着。異動が決まったら先に席を押さえる

兼任と交代

複数の建物を兼ねられるか

原則として、その建物で管理的・監督的な地位にあり、業務を適切に行えることが条件です。

状況考え方
同じ敷地内の複数棟兼ねられることが多い
近接した別の建物距離と業務量による。要相談
遠隔地の建物難しい

「名前だけ置く」は通りません。立入検査で不在が続いていることが分かると、選任のやり直しを求められます。

交代するときの手順

段階やること
1後任を決める(資格の有無を確認)
2資格が無ければ講習を手配する
3選任(解任)届出書を出す
4消防計画の氏名を書き換えて、変更届を出す
5自衛消防の各班の名簿を更新する
6前任から鍵・書類の束・業者の連絡先を引き継ぐ

4と5が抜けると、書類上は交代したのに中身が前任のままになります。訓練の当日に、いない人の名前が班長として書かれている、という状態です。

引き継ぐもの

  • 消防計画の控えと、平面図
  • 点検報告書の束(過去分)
  • 訓練の実施記録
  • 点検業者の名前と連絡先
  • 鍵の場所(防火戸、屋上、機械室)

業者の連絡先が最も抜けます。前任が「いつものところ」に電話していただけだと、記録に残っていません。

よくある質問

防火管理者を選任しないとどうなりますか

消防法で義務づけられているため、選任命令や罰則の対象になります。それ以上に、火災が起きたときに管理権原者の責任が問われます。

1人で複数の建物の防火管理者になれますか

原則として、その建物で管理的・監督的な地位にあり、業務を適切に行えることが条件です。距離が離れた複数の建物を1人で兼ねるのは難しい扱いになります。所轄の消防署に確認してください。

修了証を失くしました

講習を実施した機関に再交付を申請します。選任届に添えるので、届出の前に取り直します。修了証は本人のものなので、退職時に会社が預かることはできません。

収容人員はどう数えますか

用途ごとに数え方が定められています。従業員数+客席数、あるいは面積を所定の数値で割る、といった形です。自分で数えると外しやすいので、図面を持って消防署で確認するのが確実です。

防災管理者とは違いますか

別の制度です。防災管理者は、大規模な建物で地震などの災害に備えるために選任するもので、防火管理者と兼ねることが多くあります。対象になる建物は限られるので、該当するかを確認してください。

まとめ

防火管理者が必要かどうかは、建物の用途と収容人員で決まります。特定防火対象物なら30人以上、それ以外は50人以上が目安で、自力避難が難しい人の施設は10人以上です。収容人員は従業員数ではないため、図面を持って消防署で確認します。

資格は甲種と乙種があり、甲種は乙種を兼ねます。迷ったら甲種を取っておくと、建物や人事が変わったときに取り直しになりません。

そして、選任届を出したところからが本番です。消防計画を作り、訓練を年2回以上行い、点検の報告に関わる。日常では避難経路と防火戸の管理が、立入検査でいちばん見られます。やったことは記録に残します。

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