建物の衛生管理基礎2026.09.16 公開ES-29

簡易専用水道とは?年1回の法定検査と清掃の違い

目次

簡易専用水道でいちばん多い行き違いは、清掃をしたから検査も済んでいるという思い込みです。受水槽の清掃と、簡易専用水道の法定検査は別のもので、どちらも年1回ずつ必要とされています。清掃の記録は手元にあるのに、検査の結果書が1枚も無い、という建物が実際にあります。

この記事では、簡易専用水道を、該当する条件清掃との違い法定検査で見られる3つ誰に頼むか不適合が出たときの順に整理します。該当の判断や報告の様式は自治体の運用で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。

貯水槽の清掃・検査の記録様式そのものを探している場合は、点検板に施設向けの様式がそろっています。

結論:清掃と検査は別。どちらも年1回

水道法では、簡易専用水道の設置者に、おおむね次の2つが求められているとされています。

清掃法定検査
何をするか水槽の中を洗う管理が適正かを第三者が確かめる
頻度1年以内ごとに1回1年以内ごとに1回
誰がやるか清掃を行う業者登録を受けた検査機関
残るもの清掃の記録検査結果書

検査は「掃除がされているか」を含めて、管理全体を外から見るものです。清掃をした業者が自分で「適正でした」と言っても検査にはなりません。ここが、清掃と検査が別である理由です。

書類が3種類そろっているか

自分の建物の状態は、手元の書類を見れば分かります。

  • 清掃の記録(清掃業者から)
  • 検査結果書(登録検査機関から)
  • 日常の管理の記録(残留塩素、水の色・濁り・臭い)

2つ目が無ければ、法定検査を受けていない可能性があります。契約の中に含まれていないことが多いところなので、清掃を頼んでいる業者に一度確かめます。

貯水槽の清掃そのものは貯水槽の清掃にまとめています。

どちらも1年以内ごとに1回清掃水槽の中を洗う清掃業者が行う残るのは清掃の記録法定検査管理が適正かを見る**登録を受けた検査機関**残るのは検査結果書
清掃と法定検査は別のもの

簡易専用水道になる条件

簡易専用水道とは、水道からの水だけを水源として、受水槽に受けてから建物に給水する設備のうち、受水槽の有効容量が10立方メートルを超えるものとされています。

受水槽の有効容量区分
10立方メートルを超える簡易専用水道(水道法に基づく検査の対象)
10立方メートル以下小規模貯水槽水道(自治体の条例などで扱う)

10立方メートルは、だいたい2メートル×2.5メートル×2メートルくらいの水槽です。事務所ビルや商業施設、集合住宅ではこれを超えることが多くあります。

10立方メートル以下でも検査を勧められる

10立方メートル以下のものは簡易専用水道には当たりませんが、自治体の条例や要綱で、同じような管理と検査を求めていることがあります。年1回以上の検査を受けるよう努めることとされている地域があります。

「うちは小さいから関係ない」で終わらせず、所在地の保健所で確認しておきます。飲み水の話なので、条例の側で上乗せされていることが珍しくありません。

有効容量は「入る量」ではない

ここでつまずきます。有効容量は、水槽に物理的に入る量ではなく、実際に使える範囲の量として算定されます。水槽の一番上まで満たした量とは違うので、見た目の寸法から自分で計算すると、境目の付近でずれることがあります。

判断に迷う容量なら、図面と竣工時の書類を持って保健所に相談するのが確実です。10立方メートルをわずかに超えるかどうかで、受ける検査が変わります。

受水槽が無い建物

水道の本管から直接、各階へ送っている建物(直結給水)には受水槽がありません。この場合は簡易専用水道に当たりません。自分の建物に受水槽と高置水槽があるかどうかは、屋上と地下を見れば分かります。

容量で区分が変わる10m3超簡易専用水道(水道法の検査)事務所ビル・商業施設・集合住宅に多い10m3以下小規模貯水槽水道条例で上乗せも自治体が同じ管理を求めることがある
容量で区分が変わる

法定検査で見られる3つ

登録を受けた検査機関が行う検査は、大きく3つに分かれるとされています。水を採るだけの検査ではありません。

検査見られること
施設と管理の状態水槽の本体・内部・周囲、通気管、給水管、マンホール
給水栓での水質臭気、味、色、色度、濁度、残留塩素
書類の整理清掃の記録、日常の点検の記録があるか

3つ目があるのが、この検査の特徴です。現場がきれいでも、記録が無ければ「管理されている」とは判断されません。逆に言えば、日々の記録を残しておくだけで、検査の3分の1は通ります。

施設で見られるところ

現場で指摘が出やすいのは、水槽そのものより周りの状態です。

見るところよくある指摘
マンホールの蓋施錠されていない、隙間がある
通気管・オーバーフロー管防虫網が破れている・付いていない
水槽の周囲物が置かれて点検できない
水槽の上排水管が上を通っている
水槽の壁・底ひび、さび、汚れ、浸入の跡

防虫網の破れが、いちばん多い指摘とされています。網は数百円のものですが、ここが破れていると虫や小動物が入る経路になります。日常の巡回で、マンホールの施錠と防虫網の2つだけは見ておきます。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

貯水槽の点検記録や巡回表を一から作るのは手間がかかります。既成の様式を使いたい方は点検板をご覧ください。

この様式をひらく
検査は3つに分かれる施設と管理水槽の本体・内部・周囲通気管、マンホール給水栓の水質臭気・味・色色度・濁度・残留塩素書類の整理清掃の記録日常の点検の記記録が無いと管理と見なされない
検査は施設・水質・書類の3つ

日常の管理でやること

法定検査は年1回ですが、水の状態は毎日変わります。設置者の側で続けることがあります。

やること頻度の目安
残留塩素の測定一般には週1回程度(特定建築物では7日以内ごとに1回とされる)
水の色・濁り・臭いを見る同じタイミングで
マンホールの施錠を確かめる巡回のたび
防虫網の破れを見る巡回のたび
水槽の周囲に物がないか巡回のたび

残留塩素は、測る蛇口を毎回同じにしておくと、値の変化が読み取れます。建物の中でいちばん遠い蛇口を決めておくのが一般的です。

値が出ない、あるいは急に下がったときは、水の滞留か配管の問題を疑います。空室が増えて水が動いていない建物では起こりやすくなります。

ビル管法の特定建築物では、この測定が管理基準の一部になっています。ビル管法とはにまとめています。

受水槽と高置水槽の関係

建物によっては、受水槽と高置水槽の2つがあります。どちらも簡易専用水道の設備で、検査の対象になります。

置かれる場所役割
受水槽地下・1階・敷地内水道からの水をいったん受ける
高置水槽屋上受水槽から汲み上げ、重力で各階へ配る

高置水槽は屋上にあるため、普段は誰も見ません。ここのマンホールが施錠されていない、防虫網が飛んでいる、という指摘が実際に出ます。巡回の順路に屋上を入れておくと、年1回の検査まで気づかない状態を避けられます。

ポンプも一緒に見る

受水槽から高置水槽へ水を送る揚水ポンプは、止まると建物全体が断水します。

  • 運転の音に変化がないか
  • 制御盤に異常の表示が出ていないか
  • 水位の警報が鳴りっぱなしになっていないか

警報を止めたまま放置すると、次に本当に止まったときも気づけません。鳴ったら、止める操作と原因の確認をセットにします。

受水槽から高置水槽へ1水道の本管外から来る2受水槽地下・1階でいったん受ける3揚水ポンプ止まると建物全体が断4**高置水槽**屋上。誰も見ないので指摘が出る
受水槽と高置水槽で水が回る

清掃の当日にすること

清掃の日は、水を止める時間が出ます。段取りは建物の側で組みます。

段階やること
1実施日をテナント・入居者へ知らせる(1か月前が目安)
2断水する時間帯を具体的に伝える
3水を使う設備を洗い出す(厨房・トイレ・冷却塔・医療機器)
4必要なら仮設のタンクや飲料水を用意する
5清掃後、水質が確認できるまで飲用を控える案内を出す

3が抜けると当日に困ります。飲食のテナントは営業できませんし、医療や介護の施設では水を止められない機器があります。知らせの文面に「何時から何時まで水が出ないか」を数字で書くと、問い合わせが減ります。

清掃と検査の順番

一般には、清掃をしてから法定検査を受けるという順で組む建物が多くあります。検査では清掃の記録も見られるので、直近の清掃が済んでいるほうが説明が早くなります。

年間のどこに置くかを決めて、毎年同じ時期に回すのが実務です。前回の実施日から1年以内という条件なので、遅れると次も遅れていきます。

誰に頼むか

頼む相手
清掃貯水槽の清掃を行う業者(自治体の登録・許可がある地域も)
法定検査国の登録を受けた検査機関
日常の管理建物側、または管理の委託先

法定検査は、登録を受けた機関でなければできません。清掃業者が「検査もします」と言っていても、その機関が登録を受けているかは別の話です。登録の有無を確かめてから契約します。

契約を見直すとき

見積りを比べるときは、次を同じ条件にしてからにします。

  • 受水槽と高置水槽の数と、それぞれの容量
  • 清掃と法定検査のどちらを含むか(両方含むかを明記してもらう
  • 水質検査の項目
  • 検査結果書の提出
  • 不適合が出たときの対応と費用

2つ目が抜けている見積りが実際にあります。「貯水槽管理一式」と書かれていて、開けてみると清掃だけだった、という形です。

不適合が出たとき

検査の結果は、適正か否かで示されるのが一般的です。不適合が出た場合、改善して報告することになります。

指摘の例対応
防虫網の破れすぐ交換できる
マンホールの施錠すぐ直せる
水槽の周囲に物片づける
水槽のひび・さび補修または更新。予算が要る
残留塩素が出ない給水の停止を含めて相談する

最後の1つは重さが違います。飲み水として安全が保てない可能性があるため、保健所と検査機関に相談し、指示に従います。原因が水の滞留であれば、使っていない系統の水を定期的に流すといった対応になることがあります。

直した記録を残す

改善が終わったら、いつ・どこを・どう直したかを1行ずつ残します。写真を1枚添えておくと、次の検査で経過を説明できます。担当が替わっても分かります。

期限と記録の管理は建物の法定点検一覧にまとめています。

不適合は重さで分けるすぐ直せる防虫網、施錠、周囲の物予算が要る水槽のひび、さび**すぐ相談**残留塩素が出ない
不適合は重さで分ける

よくある質問

清掃をしていれば法定検査は要りませんか

別のものとされています。清掃は水槽の中を洗う作業、法定検査は管理が適正かを第三者が確かめるもので、どちらも1年以内ごとに1回です。清掃を頼んでいる業者の契約に検査が含まれているかを確かめます。

受水槽が10立方メートル以下です

簡易専用水道には当たりませんが、自治体の条例や要綱で同じような管理と検査を求めていることがあります。年1回以上の検査を受けるよう努めることとされている地域があります。所在地の保健所で確認します。

有効容量は自分で計算できますか

有効容量は、水槽に入る量ではなく実際に使える範囲の量として算定されます。見た目の寸法から計算すると、10立方メートルの前後でずれることがあります。境目に近い容量なら、図面と竣工時の書類を持って保健所に相談するのが確実です。

検査は誰に頼みますか

国の登録を受けた検査機関です。清掃業者が検査も行うと言っていても、その機関が登録を受けているかは別に確かめます。保健所のサイトに登録機関の一覧が載っていることがあります。

ビル管法の特定建築物でも受けますか

水道法に基づく検査とは別に、ビル管法の管理基準でも給水の管理が求められています。自治体によっては、報告書の提出で検査に代えられる運用があるとされているため、所在地の保健所で扱いを確認します。二重に受ける必要がない場合があります。

高置水槽も検査の対象ですか

対象です。受水槽と高置水槽はどちらも簡易専用水道の設備で、清掃も検査も両方が見られます。高置水槽は屋上にあって普段は誰も見ないため、マンホールの施錠や防虫網の指摘が出やすいところです。巡回の順路に屋上を入れておきます。

清掃の日は断水しますか

水を止める時間が出ます。厨房・トイレ・冷却塔・医療機器など、水を使う設備を先に洗い出し、必要なら仮設のタンクや飲料水を用意します。知らせの文面には「何時から何時まで水が出ないか」を数字で書くと、問い合わせが減ります。

清掃と検査はどちらを先にしますか

一般には、清掃をしてから法定検査を受ける順で組む建物が多くあります。検査では清掃の記録も見られるため、直近の清掃が済んでいるほうが説明が早くなります。毎年同じ時期に回すと、1年以内という条件から外れにくくなります。

残留塩素が出なくなりました

水の滞留や配管の問題が考えられます。飲み水として安全が保てない可能性があるため、保健所と検査機関に相談します。空室が増えて水が動いていない建物では起こりやすく、使っていない系統の水を定期的に流す対応をとることがあります。

空室が増えてから水がにおいます

水の滞留が原因のことがあります。使われていない系統では水が動かず、残留塩素が消費されて水質が落ちます。測定の値が下がっていないかを確かめ、使っていない系統の蛇口を定期的に流すという対応をとることがあります。改善しない場合は保健所と検査機関に相談します。

まとめ

簡易専用水道は、受水槽の有効容量が10立方メートルを超える設備です。設置者には、清掃法定検査の2つが、それぞれ1年以内ごとに1回求められているとされています。

清掃と検査は別のものです。清掃をした業者が自分で適正だと言っても検査にはならず、登録を受けた検査機関が第三者の立場で確かめます。手元に検査結果書が無ければ、受けていない可能性があります。

検査で見られるのは、施設の状態・給水栓での水質・書類の整理の3つです。現場がきれいでも記録が無ければ管理されているとは判断されません。日々の記録を残しておくだけで、検査の3分の1は通ります。

清掃の日は水を止める時間が出ます。厨房・トイレ・冷却塔・医療機器を先に洗い出し、断水の時間帯を数字で知らせる。清掃をしてから検査を受ける順で、毎年同じ時期に回すと1年以内という条件から外れにくくなります。

日常でできるのは、残留塩素の測定、マンホールの施錠、防虫網の破れの3つです。特に防虫網はいちばん多い指摘で、数百円の部品です。巡回のたびに見ておけば、年1回の検査は確認だけで終わります。

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