非常放送設備の点検|非常警報設備との違いと鳴動
目次
非常放送設備は、火災のときに館内へ知らせるための設備です。普段は業務放送やBGMに使われていることが多く、「放送設備」としては毎日使っているのに、消防用設備だという意識が無いという状態になりがちです。
この記事では、非常放送設備の点検を、非常警報設備との違い、設備の構成、点検で見ること、鳴動の考え方、日常でできることの順に整理します。必要な設備や点検の要領は建物の用途・規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
結論:毎日使っている放送設備が、消防用設備でもある
非常放送設備は、消防用設備等の中の警報設備に分類されます。点検の周期は他の消防用設備と同じで、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回です。
| 内容 | |
|---|---|
| 何のための設備か | 火災のときに館内へ知らせる |
| 普段の使われ方 | 業務放送、呼び出し、BGM |
| 点検の枠組み | 消防設備点検 |
| 周期 | 機器点検6か月/総合点検1年 |
| 電源 | 停電時も動くよう非常電源を持つ |
「放送が聞こえるから大丈夫」ではありません。普段のBGMが流れていても、非常時に自動で切り替わるか、停電しても鳴るかは別の話です。ここを確かめるのが点検です。
自火報と一緒に動く
非常放送は、自動火災報知設備とつながって動きます。感知器が火災を検知すると、受信機から信号が送られ、放送設備が自動で非常放送に切り替わります。
片方だけ見ていても分かりません。自動火災報知設備のほうは自動火災報知設備の点検にまとめています。
非常警報設備との違い
名前が似ていて混ざりますが、規模の小さい建物では「非常警報設備」で足りることがあります。
| 非常放送設備(放送設備) | 非常警報設備 | |
|---|---|---|
| 何が鳴るか | 音声で知らせる | ベル、サイレン、ブザー |
| 内容 | 「火災が発生しました」など | 音のみ |
| 規模 | 大きい建物・収容人員の多い建物 | 小さい建物 |
| 構成 | 増幅器、操作部、スピーカー | 起動装置、音響装置、表示灯 |
音声で知らせられるかどうかが、いちばん大きな違いです。ベルだけだと「何が起きたか」が伝わらず、避難の判断が遅れることがあります。
自分の建物にどちらが付いているかは、点検票を見れば分かります。「非常警報設備(放送設備)」と書かれていれば放送設備です。
設備の構成
点検票の用語は、構成が分かると読めるようになります。
| 部分 | 役割 |
|---|---|
| 増幅器(アンプ) | 音を大きくする。機械室や管理室にある |
| 操作部 | マイクとスイッチ。どの階へ流すかを選ぶ |
| スピーカー | 各階・各区画に付く |
| 配線 | 耐熱の電線を使う |
| 非常電源(蓄電池) | 停電しても一定時間動く |
| 音量調整器(アッテネータ) | 部屋ごとに音量を下げる装置 |
6つ目に注意が要ります。会議室や客室で音量を絞れる装置が付いていることがありますが、非常放送のときは、絞っていても強制的に鳴る仕組みになっているのが原則です。
この仕組みが働くかを点検で確かめます。普段の業務放送を絞ったままにしていて、非常時にも鳴らない配線になっていたら、その部屋には知らせが届きません。
非常電源は蓄電池
停電しても動く必要があるため、蓄電池を持っています。誘導灯や非常用照明と同じで、蓄電池は数年で劣化します。
点検で「非常電源の不良」と書かれたら、蓄電池の交換を検討します。普段は商用の電源で動いているので、劣化していても気づけません。誘導灯の蓄電池の考え方は誘導灯の点検にまとめています。
点検で見ること
| 見ること | |
|---|---|
| 機器点検(6か月) | 外観、表示灯、スイッチ、マイク、非常電源への切替 |
| 総合点検(1年) | 実際に放送を流して、各階のスピーカーから聞こえるか |
| 共通 | スピーカーが塞がれていないか、音量調整器の状態 |
総合点検では実際に音を出します。館内に放送が流れるため、実施日の周知が必要です。「訓練です」という前置きを入れて流す形をとることが多くあります。
自火報の点検と同じ日にまとめる
非常放送は自動火災報知設備とつながって動くため、同じ日にまとめて点検してもらうと効率がよくなります。
- 各区画への立入の案内が1回で済む
- 感知器から放送までの連動を通しで確かめられる
- 館内へのベルと放送の周知が1回で済む
- 入れなかった部屋の予備日も共通にできる
2つ目が大きいところです。別々の日に見ると、それぞれの機器が正常でも、つながったときに動くかは確かめられません。委託先が同じなら、日程を合わせられるか相談してみます。
各区画へ入る必要がある
スピーカーは各階・各室に付いています。音が聞こえるかを確かめるには、その部屋に入る必要があります。
- テナントの専有部
- 会議室、倉庫、機械室
- 階段室、エレベーターホール
- トイレ、更衣室
トイレや更衣室が抜けやすいところです。人がいる時間帯を避けつつ、確認できる段取りを組みます。
立入の段取りは、自動火災報知設備の点検と同じ考え方になります。同じ日にまとめられるなら、案内を1回で済ませられます。
鳴動の考え方
大きな建物では、火災が起きた階とその周辺だけに先に放送するという考え方があります。全館に一斉に流すと、階段に人が殺到するためです。
| 方式 | 内容 |
|---|---|
| 全館一斉 | すべての階に同時に流す |
| 区分鳴動 | 出火階とその上下など、一部から先に流す |
| 一斉への切替 | 一定時間後、または手動で全館へ |
自分の建物がどちらかを知っておくと、火災のときに慌てません。区分鳴動の建物では、自分の階で鳴っていなくても他の階で火災が起きていることがあります。
誰が判断するかを決めておく
区分鳴動の建物では、一斉放送へ切り替える判断を誰かがすることになります。夜間や休日に残っている人が判断できるよう、切り替える条件を1行で書いておきます。「火災を目視で確認したら一斉に切り替える」といった形です。判断の基準が無いと、迷っているあいだに時間が過ぎます。
訓練でここを確かめる
消防訓練のときに、実際に放送を流して、何が聞こえるかを確かめておくと役に立ちます。
- どの階から鳴るか
- 聞き取りにくい場所はないか
- 操作部で手動に切り替えられるか
- マイクで話したときに聞き取れるか
「聞き取れない場所がある」のは、訓練でしか分かりません。機械としては鳴っていても、空調の音や什器で聞こえないことがあります。訓練の進め方は消防訓練の進め方にまとめています。
増幅器の置き場所
増幅器(アンプ)は、機械室や管理室に置かれています。ここが使われなくなった部屋だと、状態が誰にも見られません。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| 周りの空間 | 物が積まれていないか |
| 換気と室温 | 熱がこもっていないか |
| 電源 | ランプが点いているか |
| 表示 | 障害・故障の表示が出ていないか |
| 蓄電池 | 膨らみ、液漏れ、端子のさび |
2つ目を見落とすと寿命が縮みます。機械は熱を持つので、換気扇が止まっていたり、吸気口が塞がれていたりすると室温が上がります。電気室や機械室を物置にしないという館内のルールが、ここでも効きます。
操作部の場所を周知する
火災のときに使うのは、普段放送をしている人とは限りません。夜間や休日に残っている人が操作することもあります。
- 操作部がどこにあるか
- どのスイッチで全館放送になるか
- マイクの使い方
- 非常放送が自動で流れている最中に、手動で話せるか
4つ目を試したことがある人は多くありません。訓練のときに1度やっておくと、実際の場面で迷いません。
日常でできること
非常放送設備は普段から使っているぶん、日常で気づけることがあります。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| スピーカーの前 | 棚、掲示物、什器で塞がれていないか |
| 操作部の表示 | 障害や故障の表示が出ていないか |
| マイク | 業務放送で使ったときに音が出るか |
| 音量調整器 | 極端に絞られたままになっていないか |
| 増幅器の周り | 物が置かれていないか。熱がこもっていないか |
| 電源のランプ | 点いているか |
1つ目がいちばん多い指摘です。改装や什器の移動で、スピーカーの前に棚が来ることがあります。天井に付いているので、床の配置を変えるときに意識されません。
業務放送が使える=非常放送も使える、ではない
同じ機械を使っていても、非常放送への切替と非常電源の部分は、普段は働いていません。業務放送が問題なく流れていても、非常時に切り替わるかは別です。
点検の報告書で、非常電源と切替の項目を見るのが確実です。ここに不良が書かれていたら、普段の使用感とは関係なく手配します。
巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
改装のときに確かめること
| 場面 | 起きること |
|---|---|
| 間仕切りを足した | 新しくできた部屋にスピーカーが無い |
| 天井を張り替えた | スピーカーの位置が変わる、外したまま |
| 用途を変えた | 必要な設備の範囲が変わることがある |
| 什器を入れた | スピーカーの前が塞がれる |
| 内装を吸音材にした | 音の届き方が変わる |
1つ目が起きやすい形です。大部屋を分割すると、スピーカーが片側の部屋にしか無い状態になります。壁で仕切られると、隣の部屋には届きません。
内装の工事を計画する段階で所轄の消防署に相談し、工事のあとの届出は消防用設備等設置届の出し方にまとめています。
よくある質問
非常放送設備と非常警報設備は違いますか
違います。非常放送設備は音声で知らせる設備、非常警報設備はベルやサイレンなど音だけの設備です。建物の規模や収容人員によって、どちらが必要かが決まります。点検票に「非常警報設備(放送設備)」と書かれていれば放送設備です。
業務放送が使えているので大丈夫ですか
非常放送への切替と非常電源の部分は、普段は働いていません。業務放送が流れていても、非常時に自動で切り替わるか、停電しても鳴るかは別の話です。点検の報告書で、非常電源と切替の項目を見ます。
音量を絞った部屋にも放送は流れますか
非常放送のときは、絞っていても強制的に鳴る仕組みになっているのが原則です。この仕組みが働くかを点検で確かめます。配線の状態によっては鳴らないことがあるため、報告書の該当項目を確認します。
総合点検で放送が流れるのはなぜですか
実際に音を出して、各階のスピーカーから聞こえるかを確かめるためです。館内に流れるので、実施日の周知が必要です。「訓練です」という前置きを入れて流す形をとることが多くあります。
自分の階で鳴っていなければ安全ですか
区分鳴動の建物では、出火階とその周辺から先に放送されます。自分の階で鳴っていなくても、他の階で火災が起きていることがあります。自分の建物が全館一斉か区分鳴動かを知っておきます。
聞き取りにくい場所があります
訓練でしか分かりません。機械としては鳴っていても、空調の音や什器で聞こえないことがあります。消防訓練のときに、どの場所で聞き取りにくいかを確かめ、スピーカーの追加や配置の見直しを相談します。
間仕切りを足したらどうなりますか
新しくできた部屋にスピーカーが無い状態が起こります。大部屋を分割すると、片側にしか無いことがあり、壁で仕切られると隣には届きません。内装の工事を計画する段階で所轄の消防署に相談します。
増幅器の置いてある部屋で気を付けることはありますか
換気と室温です。機械は熱を持つので、換気扇が止まっていたり吸気口が塞がれていたりすると室温が上がり、寿命が縮みます。機械室を物置にしないという館内のルールが効きます。あわせて、蓄電池の膨らみや液漏れも見ておきます。
操作部の使い方を知っている人が限られています
夜間や休日に残っている人が操作することもあります。操作部の場所、全館放送にするスイッチ、マイクの使い方、そして自動の放送中に手動で話せるかの4つを、訓練のときに1度やっておくと実際の場面で迷いません。
スピーカーの音が小さい部屋があります
音量調整器(アッテネータ)が絞られているか、スピーカーの前が塞がれているかのどちらかが多い形です。ただし非常放送のときは、絞っていても強制的に鳴る仕組みになっているのが原則なので、普段の音量だけでは判断できません。点検の報告書で該当の項目を確認します。
非常電源の不良と書かれていました
蓄電池が劣化している可能性があります。普段は商用の電源で動いているため、劣化していても気づけません。停電時に一定時間動く必要があるので、交換を検討します。誘導灯や非常用照明と同じ考え方です。
まとめ
非常放送設備は、毎日使っている放送設備が、そのまま消防用設備でもあるという設備です。だからこそ「放送が聞こえるから大丈夫」と思われがちですが、非常放送への切替と非常電源の部分は、普段は働いていません。
点検の周期は他の消防用設備と同じで、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回です。総合点検では実際に音を出すので、実施日の周知が必要になります。
日常で効くのは、スピーカーの前を塞がないことです。天井に付いているため、床の配置を変えるときに意識されません。間仕切りを足した部屋にスピーカーが無い、という形もよく起きます。
自動火災報知設備と同じ日にまとめて点検してもらうと、立入の案内が1回で済み、感知器から放送までの連動も通しで確かめられます。委託先が同じなら、日程を合わせられるか相談してみます。
そして、聞き取りにくい場所は訓練でしか分かりません。機械としては鳴っていても、空調の音や什器で届かないことがあります。消防訓練のときに、実際に流して確かめておきます。