防災管理者とは?防火管理者との違いと防災管理点検
目次
防災管理者は、火災以外の災害に備えるために選任する人です。防火管理者と名前が1文字違いで、しかも同じ人が兼ねることが多いため、2つを1つのものだと思っている建物があります。実際には根拠となる条文も、作る計画も、点検の制度も別です。
この記事では、防災管理者を、防火管理者との違い、選任が必要になる建物、防災管理に係る消防計画、避難訓練、防災管理点検の順に整理します。対象や手続きは建物の用途・規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
結論:火災は防火管理者、地震などは防災管理者
消防法では、火災への備えとは別に、地震などの火災以外の災害への備えが定められています。この部分を担うのが防災管理者です。
| 防火管理者 | 防災管理者 | |
|---|---|---|
| 備える相手 | 火災 | 地震などの火災以外の災害 |
| 対象になる建物 | 収容人員などで広く | 大規模・高層の建物など、より限られる |
| 作る計画 | 消防計画 | 防災管理に係る消防計画 |
| 訓練 | 消火・通報・避難 | 避難の訓練(年1回以上など) |
| 点検の制度 | 防火対象物点検 | 防災管理点検 |
防災管理者が必要な建物では、防火管理者も必要になります。逆は成り立ちません。だから実務では、同じ人が両方を兼ねていることがほとんどです。
兼ねていても、やることは2つ
同じ人でも、計画は2つ、訓練も別、点検も別です。ここを1つにまとめてしまうと、片方が抜けます。
「消防計画は出した」で終わっていて、防災管理に係る消防計画が出ていないという形が実際にあります。届出の控えを見ると、どちらが出ているかが分かります。
防火管理者については防火管理者とはにまとめています。
選任が必要になる建物
防災管理者の選任が必要になるのは、一定の規模・階数の建物とされています。防火管理者より対象が狭く、大規模で高層の建物や、大きな面積を持つ建物が中心です。
| 区分 | おおまかな考え方 |
|---|---|
| 階数と延べ面積 | 高層・大規模なもの |
| 用途 | 特定の用途で、一定の規模以上 |
| 地下街 | 一定規模以上のもの |
具体的な数値は条文で定められています。自分の建物が当たるかどうかは、図面と用途を持って所轄の消防署で確認するのが確実です。
対象になったときにやること
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 防災管理者を選任する(資格が要る) |
| 2 | 選任届を出す |
| 3 | 防災管理に係る消防計画を作成し、届け出る |
| 4 | 避難の訓練を実施する |
| 5 | 防災管理点検を受け、報告する |
3が抜けやすいところです。防火管理の消防計画と別に作るものなので、「計画は出してある」という感覚で見落とされます。
資格の取り方
防災管理者になるには、防災管理に関する講習を修了するなどの方法があります。防火管理者の講習と併せて受けられる形(甲種防火管理・防災管理の同時講習)が用意されていることがあります。
新しく選任するなら、両方をまとめて取れる講習を探すと時間が節約できます。
防災管理に係る消防計画
火災の消防計画とは別に、地震などに備えた計画を作ります。中身も変わります。
| 書くこと | 内容 |
|---|---|
| 自衛消防の組織 | 災害時の体制。誰が何をするか |
| 地震のときの措置 | 初動、安否の確認、負傷者への対応 |
| 避難の方法 | 経路、誘導、階段の使い方 |
| 建物にとどまる場合の対応 | 一斉に出さない判断、待機の場所 |
| 情報の収集と伝達 | 放送、館内への伝え方 |
| 資機材の備え | 備蓄、救助の道具 |
4つ目が、火災の計画といちばん違うところです。火災では建物の外へ出るのが基本ですが、地震では外に出るほうが危険な場面があります。落下物、火災の発生、帰宅困難。一斉に外へ出さない判断を計画に書いておく必要があります。
帰宅困難者への対応
大きな地震のあと、すぐには帰れない人が建物に残ります。利用者、テナントの従業員、来館者。この人たちをどう扱うかを決めておきます。
- とどまってもらう場所(安全が確認できた区画)
- 水と食料の備え
- トイレ(断水したときの扱い)
- 情報の伝え方(交通の状況)
- 帰宅を判断する目安
3つ目が現実的にいちばん困るところです。断水するとトイレが使えなくなります。簡易のものを備えているかどうかで、数時間後の状況が変わります。
避難の訓練
防災管理の対象になる建物では、避難の訓練を実施することとされています。火災の訓練とは想定が変わります。
| 火災の訓練 | 地震の訓練 | |
|---|---|---|
| 最初にすること | 通報・初期消火 | 身を守る(落下物から) |
| 避難の判断 | 基本は外へ | 外へ出るか、とどまるか |
| 使うもの | 消火器、屋内消火栓 | 安否の確認、備蓄 |
| 確かめること | 経路、誘導、通報 | 安否確認の方法、連絡の手段 |
安否の確認がいちばん練習しておく価値があります。誰がどこにいたかを短時間でまとめる作業は、やったことがないとできません。テナントビルでは、各テナントから人数を集める手順を決めておきます。
訓練の記録を残す
実施したら記録を残します。「やった」だけでなく、うまくいかなかったことを書くのが次につながります。
- 実施日、想定、参加した人数
- 所要時間(安否の確認が終わるまで)
- うまくいかなかったこと
- 次回までに直すこと
3つ目を空欄にしないのが大事なところです。問題が無かった訓練は、たいてい想定が甘いだけです。
訓練の進め方の考え方は消防訓練の進め方にまとめています。
防災管理点検
防火対象物点検と同じ構図で、防災管理についても点検して報告する制度があります。
| 防災管理点検 | 防火対象物点検 | |
|---|---|---|
| 見るもの | 防災管理の業務が回っているか | 防火管理の業務が回っているか |
| 点検する人 | 防災管理点検資格者 | 防火対象物点検資格者 |
| 周期 | 1年に1回 | 1年に1回 |
| 報告先 | 消防長・消防署長 | 同じ |
| 特例認定 | ある | ある |
両方の対象になる建物では、同じ日にまとめて受けるのが一般的です。見られる書類が重なるので、段取りが1回で済みます。
防火対象物点検については防火対象物点検とはにまとめています。
見られるのは書類と現場
- 防災管理者の選任と届出
- 防災管理に係る消防計画の作成と届出
- 避難の訓練の実施と記録
- 自衛消防組織の設置と届出
- 避難施設の管理
2つ目が最も指摘の出やすいところです。防火の消防計画だけ出していて、防災のほうが出ていないという状態です。届出の控えを2枚並べて確かめるのが早い確認方法になります。
備蓄をどう決めるか
防災管理の計画に書いた備えは、実際に物がなければ機能しません。建物にどれだけ置くかは、利用者の数と滞在の時間で決めます。
| 備えるもの | 考え方 |
|---|---|
| 水 | 1人1日あたりの量 × 想定する人数 × 日数 |
| 食料 | 同上。調理が要らないもの |
| 簡易トイレ | 断水すると最初に困る |
| 毛布・保温 | 季節と滞在の時間による |
| 照明・電池 | 停電が続く場合 |
| 情報の手段 | ラジオ、携帯の充電 |
3つ目が現実的に最も効きます。水や食料は1日なら我慢できますが、トイレは我慢できません。断水したときに使える形を用意しているかどうかで、数時間後の状況がまったく変わります。
期限の管理も仕事のうち
備蓄には消費期限があります。買ったきり誰も見ていない、という状態になりがちです。
- 品目と数量の一覧を作る
- 消費期限を書く
- 入替の年を建物の年間計画に入れる
- 置き場所を図に落とす
3つ目を年間の一覧に入れてしまうのが続けるコツです。法定点検の一覧と同じ表に「備蓄の入替」を1行足しておくと、毎年思い出せます。一覧のつくり方は建物の法定点検一覧にまとめています。
自衛消防組織
一定の建物では、自衛消防組織を置くこととされています。これも届出が必要です。
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 統括管理者 | 組織全体を指揮する人。資格が要る |
| 班の編成 | 通報連絡、初期消火、避難誘導、応急救護 |
| 要員の配置 | 誰がどの班か |
| 交代の扱い | 夜間・休日はどうするか |
| 届出 | 消防署へ出す。変わったら変更の届出 |
4つ目が現実的な課題です。夜間や休日は人が少なく、昼間と同じ編成が組めません。「誰もいない時間」を計画に書いておくことで、実態に合った内容になります。
夜間・休日の体制を書く
昼間と同じ編成は組めません。人数が少ないうえ、役割を兼ねることになります。計画に「昼間の体制」しか書いていないと、実際に起きたときに誰も動けません。
- その時間帯に建物にいる人数
- 最初に動く人(警備員、宿直、当番)
- 連絡する順番と手段
- 応援が来るまでの時間の見込み
4つ目を書いておくと、その間に何ができるかで判断が変わります。「30分は自分たちだけ」と分かっていれば、無理のない手順を組めます。
変わったら届け出る
人事異動で要員が替わると、変更の届出が必要になります。毎年4月に見直すと決めておくと、抜けにくくなります。
選任している人の一覧を1枚にまとめておくと、異動のたびに何を出すかが分かります。誰がどの役割で、どこへ届け出ているか。防火管理者、防災管理者、統括管理者、環境衛生管理技術者、電気主任技術者。届出先はそれぞれ違います。
よくある質問
防災管理者と防火管理者は違いますか
違います。防火管理者は火災、防災管理者は地震などの火災以外の災害に備える役割です。防災管理者が必要な建物では防火管理者も必要になるため、同じ人が兼ねていることがほとんどですが、計画も訓練も点検も別です。
兼ねているので計画は1つでよいですか
別に作ります。消防計画と、防災管理に係る消防計画の2つです。「計画は出してある」という感覚で片方が抜けていることがあります。届出の控えを2枚並べて確かめます。
どんな建物が対象ですか
一定の規模・階数の建物とされていて、防火管理者より対象が狭くなります。高層・大規模なもの、一定規模以上の地下街などが中心です。具体的な数値は条文で定められているため、図面と用途を持って所轄の消防署で確認します。
資格はどう取りますか
防災管理に関する講習を修了するなどの方法があります。防火管理者の講習と併せて受けられる形が用意されていることがあるので、新しく選任するなら両方まとめて取れる講習を探すと時間が節約できます。
地震のときは全員を外へ出しますか
火災とは判断が変わります。落下物や火災の発生、帰宅困難を考えると、外に出るほうが危険な場面があります。一斉に外へ出さない判断と、とどまる場所を計画に書いておきます。
帰宅困難者への備えは何が要りますか
とどまってもらう場所、水と食料、トイレ、情報の伝え方、帰宅を判断する目安です。断水するとトイレが使えなくなるのが現実的にいちばん困るところで、簡易のものを備えているかどうかで数時間後の状況が変わります。
防災管理点検も受けるのですか
対象になる建物では受けることとされています。防火対象物点検と同じ構図で、1年に1回、資格者が点検して消防署へ報告します。両方の対象になる建物では、同じ日にまとめて受けるのが一般的です。
備蓄は何から用意しますか
簡易トイレが現実的に最も効きます。水や食料は1日なら我慢できますが、トイレは我慢できません。断水したときに使える形を用意しているかどうかで、数時間後の状況が変わります。あわせて水、食料、毛布、照明、情報の手段を、想定する人数と日数から決めます。
備蓄を買ったあと、何をしますか
消費期限の管理です。品目と数量の一覧を作り、期限を書き、入替の年を建物の年間計画に入れます。法定点検の一覧と同じ表に「備蓄の入替」を1行足しておくと、毎年思い出せます。置き場所も図に落としておきます。
備蓄は何から用意しますか
簡易トイレが現実的に最も効きます。水や食料は1日なら我慢できますが、トイレは我慢できません。断水したときに使える形を用意しているかどうかで、数時間後の状況が変わります。あわせて水、食料、毛布、照明、情報の手段を、想定する人数と日数から決めます。
備蓄を買ったあと、何をしますか
消費期限の管理です。品目と数量の一覧を作り、期限を書き、入替の年を建物の年間計画に入れます。法定点検の一覧と同じ表に「備蓄の入替」を1行足しておくと、毎年思い出せます。置き場所も図に落としておきます。
人事異動があったら何をしますか
変更の届出が必要になります。防火管理者、防災管理者、自衛消防組織の統括管理者と要員。届出先がそれぞれ違うため、選任している人の一覧を1枚にまとめておき、毎年4月に見直すと決めておくと抜けにくくなります。
まとめ
防災管理者は、地震などの火災以外の災害に備えるために選任する人です。防火管理者とは根拠も対象も別で、防災管理者が必要な建物では防火管理者も必要になります。
同じ人が兼ねていても、計画は2つ、訓練も別、点検も別です。いちばん抜けやすいのが防災管理に係る消防計画で、「消防計画は出してある」という感覚で片方だけになっていることがあります。届出の控えを2枚並べれば確かめられます。
火災の計画といちばん違うのは、一斉に外へ出さない判断を書くところです。地震では外が危険な場面があり、帰宅困難者が建物に残ります。とどまる場所、水と食料、そして断水したときのトイレを決めておきます。
計画に書いた備えは、物がなければ機能しません。水と食料だけでなく、断水したときのトイレを用意しているかで数時間後が変わります。備蓄には消費期限があるので、入替の年を建物の年間計画に1行足しておきます。
そして、訓練で練習しておく価値がいちばん高いのは安否の確認です。誰がどこにいたかを短時間でまとめる作業は、やったことがないとできません。テナントビルでは、各テナントから人数を集める手順を先に決めておきます。