排水管の洗浄|年1回の目安と高圧洗浄の段取り
目次
排水管の洗浄は、詰まってから呼ぶという運用になりがちな作業です。ところが詰まりは、いちばん都合の悪いときに起きます。飲食店の営業中、休日の夜、そして下の階に水が回ってからです。
この記事では、排水管の洗浄を、やる意味、頻度の目安、高圧洗浄の段取り、建物側の準備、詰まりが起きたときの順に整理します。頻度や求められる管理は建物の区分と自治体の条例で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所または下水道担当課に確認してください。
結論:詰まる前に、年1回を目安に洗う
ビル管法(建築物衛生法)の特定建築物では、排水に関する設備の清掃を6か月以内ごとに1回行うこととされています。これは主に排水槽などの設備を指します。
配管そのものの洗浄については、法令で一律の周期が決まっているわけではありません。ただし実務では、次のような目安で回している建物が多くあります。
| 対象 | 頻度の目安 |
|---|---|
| 厨房・飲食店の系統 | 年1回以上。使い方によっては半年ごと |
| 住戸・事務所の雑排水 | 年1回程度 |
| 汚水(トイレ)の系統 | 状況に応じて |
| 排水槽・グリストラップ | 別に周期がある |
厨房の系統がいちばん早く汚れます。油と食品くずが流れるためです。ここだけ頻度を上げる、という形で運用している建物があります。
排水槽の清掃は排水槽の清掃、グリストラップはグリストラップの清掃にまとめています。
配管の中で何が起きているか
配管は見えないので、どう汚れるのかを知っておくと判断ができます。
| 汚れ | 出どころ |
|---|---|
| 油脂 | 厨房。冷えて固まり、内側に付く |
| 石けんかす | 浴室、洗面 |
| 毛髪・繊維 | 浴室、洗濯 |
| 食品くず | 厨房 |
| スケール(固い付着物) | 水の成分。年数をかけて厚くなる |
| さび | 古い鉄の配管 |
内側に付いたものが、少しずつ管を細くしていきます。ある日突然詰まるように見えますが、実際には何年もかけて狭くなり、最後のひと押しで塞がります。
季節で起きやすい時期がある
気温が下がると、油が固まりやすくなります。厨房の系統は冬に詰まりが増える傾向があります。夏に問題なく流れていた配管が、寒くなってから急に遅くなることがあります。
年末年始のように、厨房が集中して使われたあとに長い休みが入る時期も起こりやすい形です。使った直後に流れが止まると、固まったまま動きません。繁忙期の前に洗浄を入れておくという組み方もあります。
詰まる前に出るサイン
- 流れが遅くなった
- 排水口からぼこぼこと音がする
- においが上がってくる
- 水を流すと別の排水口から上がってくる
- 下の階から「水が漏れている」と連絡が来る
2つ目と4つ目は、配管の中が狭くなっているサインです。空気の通り道が塞がれているために起きます。この段階で洗浄すれば、詰まりきる前に対処できます。
高圧洗浄の段取り
排水管の洗浄は、高圧の水を噴き出すノズルをホースで配管に入れて、内側を削り落とす方法が一般的です。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 系統と入口(掃除口、枡)を確認する |
| 2 | 養生する(床、壁、什器) |
| 3 | ホースを入れて高圧の水を流す |
| 4 | 削り落としたものを排水枡などで受ける |
| 5 | 通水して流れを確かめる |
| 6 | 記録と報告 |
2の養生が甘いと、汚水が跳ねます。特に住戸や店舗の中で作業するときは、洗浄の前に周りを片づけてもらう必要があります。
建物の側で用意すること
- 各系統の掃除口の位置(図面があると早い)
- 屋外の排水枡の蓋を開けられる状態にする
- 各戸・各テナントへの立入の案内
- 水を止める時間帯の周知
- 作業中に排水できない時間の案内
3つ目が当日を左右します。住戸やテナントの中に掃除口がある建物では、入れなかった部屋の系統は洗えません。不在だった部屋の予備日を最初から決めておくのが実務です。
配管は上下でつながっています。1戸だけ洗えない部屋があると、その系統全体の効果が落ちることがあります。
案内のしかた
排水管の洗浄は、住戸や店舗の中に入る作業です。案内の出し方で在宅率が変わります。
| 書くこと | 目安 |
|---|---|
| 実施日と時間帯 | 階ごと・区画ごとに分けて |
| 1戸あたりの所要時間 | 「10分程度」と具体的に |
| 入る場所 | 台所、浴室、洗面、トイレ |
| 片づけてほしいもの | シンク下の物、洗濯機の周り |
| 立会いの要否 | 必要か、鍵を預けられるか |
| 不在のときの扱い | 予備日を明記する |
2つ目を書くと在宅率が上がります。半日つぶれると思われると敬遠されます。1戸あたり10分ほどで終わることが伝わっていれば、協力が得られやすくなります。
片づけの依頼は具体的に
「片づけてください」だけでは伝わりません。どこを、どのくらい空けるかを書きます。
- 台所のシンク下を空ける
- 洗濯機の排水口の前を空ける(洗濯機を少し動かす場合がある)
- 浴室の排水口の上の物をどける
- 洗面台の下の物を出す
洗濯機の下の排水口は、動かさないと届かないことがあります。当日に動かすのが難しい場合は、事前に相談してもらう形にしておきます。
給水管のほうも年数で考える
排水管と対になるのが給水管です。こちらは洗浄というより、年数による更新が課題になります。
| 状態 | 出てくる症状 |
|---|---|
| さび(赤水) | 朝いちばんの水が赤い |
| 内側の詰まり | 上階で水圧が落ちる |
| 漏水 | 天井の染み、水道料金の増加 |
| 継手の劣化 | 部分的な漏れ |
1つ目が分かりやすいサインです。長く使っていない朝や連休明けに赤い水が出るなら、配管の内側でさびが進んでいます。
古い建物では、更生(内側に被膜を作る)か更新(取り替える)かの判断が出てきます。どちらも大きな工事なので、症状が出始めた段階で相談すると選択肢が残ります。
水道料金で気づくことがある
漏水は、目に見える前に水道料金として先に出ることがあります。使い方が変わっていないのに料金が上がっているなら、どこかで漏れている可能性があります。
毎月の水道料金を並べておくと、この変化に気づけます。電気と同じで、数字を並べるだけで設備の異常が見えます。
排水の設備は全体でつながっている
排水まわりの作業は、それぞれ別の記事で扱われることが多いのですが、実際には1つの流れです。
| 上流から | 設備 | 主な手入れ |
|---|---|---|
| 1 | 排水口・トラップ | 日常の清掃 |
| 2 | グリストラップ | 毎日〜月1回+定期 |
| 3 | 排水管 | 年1回程度の洗浄 |
| 4 | 排水槽 | 6か月以内ごとに1回 |
| 5 | 下水道・浄化槽 | 別の管理 |
上流で止められなかったものが、そのまま下流に溜まります。排水槽の汚泥が早く溜まるなら、グリストラップか配管の手入れが追いついていません。
どこか1つだけ頻度を上げても、全体は良くなりません。逆に、グリストラップを毎日手入れすれば、配管も排水槽も間隔を伸ばせることがあります。
浄化槽のある建物は浄化槽の保守点検にまとめています。
費用と契約
排水管の洗浄は、戸数や系統の数で金額が決まります。
| 動くところ | なぜ |
|---|---|
| 戸数・区画の数 | 入る部屋の数 |
| 系統の数 | 厨房、雑排水、汚水で別 |
| 配管の長さと階数 | ホースの届く範囲 |
| 掃除口の有無 | 無いと作業が増える |
| 不在時の再訪 | 予備日の費用が含まれるか |
| 高圧洗浄機の搬入 | 駐車場所、電源、水の確保 |
5つ目を確かめておきます。1回目で全戸に入れることはほとんどありません。予備日が契約に含まれるか、別料金かを先に決めておきます。
見積りを揃える
- 戸数・区画数と、それぞれの系統
- 厨房の有無(飲食テナントの数)
- 掃除口の位置が分かる図面の有無
- 予備日を含むか、何回まで含むか
- 記録と報告書の提出
3つ目があると見積りが正確になります。図面が無いと、現地を見てから金額が変わることがあります。
詰まりが起きたとき
洗浄していても、詰まりは起こり得ます。初動で被害の大きさが変わります。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | その系統の使用を止める(流さないよう周知) |
| 2 | 下の階への漏れを確認する |
| 3 | 業者へ連絡する |
| 4 | あふれた水を止め、受け止める |
| 5 | 原因と範囲を記録する |
| 6 | 復旧後、その系統の洗浄の時期を見直す |
1がいちばん効きます。詰まっている状態で流し続けると、低いところ、つまり下の階や地下に水が回ります。「使わないでください」を早く伝えられるかが分かれ目です。
下の階への漏れを先に見る
詰まりであふれた水は、床を伝って下の階へ回ります。あふれた場所を片づけるより先に、真下の部屋を確認するほうが被害を小さくできます。天井の染み、照明器具からの滴り、分電盤への浸水。特に3つ目は感電の危険があるので、見つけたら近づかずに連絡します。
繰り返す系統は頻度を上げる
同じ系統で詰まりが繰り返すなら、洗浄の頻度が足りていないか、使い方に原因があります。
- 厨房で油を流している
- グリストラップの手入れが追いついていない
- 紙以外のものが流されている
- 配管の勾配や形状に問題がある
4つ目は洗浄では直りません。繰り返す場所が同じなら、配管の改修を検討する材料になります。詰まりの記録を残しておくと、その判断ができます。
記録を残す
| 残すもの | 内容 |
|---|---|
| 洗浄の記録 | 実施日、対象の系統と戸数、業者名 |
| 入れなかった部屋 | 号室と理由。次回の重点になる |
| 詰まりの記録 | いつ、どこで、原因 |
| 写真 | 洗浄の前後 |
| 次回の予定 | 周期から逆算した日 |
2つ目と3つ目を並べると、弱いところが見えてきます。同じ系統に印が集まるなら、そこが次の手を打つ場所です。
期限と記録の管理は建物の法定点検一覧にまとめています。
よくある質問
排水管の洗浄は義務ですか
配管そのものの洗浄について、法令で一律の周期が決まっているわけではありません。ビル管法の特定建築物では、排水に関する設備の清掃が6か月以内ごとに1回とされており、これは主に排水槽などを指します。実務では年1回程度を目安に回している建物が多くあります。
どのくらいの頻度でやりますか
厨房・飲食店の系統がいちばん早く汚れます。年1回以上、使い方によっては半年ごととしている建物があります。住戸や事務所の雑排水は年1回程度が目安です。詰まりが繰り返す系統は頻度を上げます。
住戸に入らないとできませんか
掃除口が室内にある建物では、入る必要があります。台所、浴室、洗面、トイレが対象になります。1戸あたり10分ほどで終わることを案内に書いておくと、在宅率が上がります。
不在の部屋があったらどうなりますか
その系統は洗えません。配管は上下でつながっているため、1戸だけ抜けると系統全体の効果が落ちることがあります。予備日を最初から決めておき、契約に含まれるかを先に確認します。
詰まったらまず何をしますか
その系統の使用を止めます。詰まっている状態で流し続けると、下の階や地下に水が回ります。「使わないでください」を早く伝えられるかで被害の大きさが変わります。そのうえで業者へ連絡します。
同じ場所で何度も詰まります
洗浄の頻度が足りていないか、使い方に原因があります。厨房で油を流している、グリストラップの手入れが追いついていない、紙以外が流されている、といった形です。配管の勾配や形状の問題なら洗浄では直らないため、改修を検討する材料になります。
流れが遅い気がします
配管の中が狭くなっているサインです。排水口からぼこぼこと音がする、別の排水口から水が上がってくる、といった症状も同じです。この段階で洗浄すれば、詰まりきる前に対処できます。
朝いちばんの水が赤いのですが
給水管の内側でさびが進んでいるサインです。長く使っていない朝や連休明けに出やすくなります。古い建物では、更生(内側に被膜を作る)か更新(取り替える)かの判断が出てきます。どちらも大きな工事なので、症状が出始めた段階で相談すると選択肢が残ります。
水道料金が上がっています
漏水が、目に見える前に料金として出ていることがあります。使い方が変わっていないのに上がっているなら、どこかで漏れている可能性があります。毎月の水道料金を並べておくと、この変化に気づけます。
洗浄した直後に濁った水が出ます
配管の内側から剥がれたものが流れていることがあります。しばらく流すと収まるのが一般的ですが、長く続くようなら業者へ伝えます。作業のあとにしばらく水を流してもらうよう、案内に1行入れておくと問い合わせが減ります。
記録には何を残しますか
洗浄の実施日と対象の系統、入れなかった部屋の号室と理由、そして詰まりが起きた場所と原因です。この2つを並べると、弱い系統が見えてきます。写真と次回の予定日も添えておきます。
まとめ
排水管の洗浄は、詰まる前にやる作業です。配管の中は何年もかけて少しずつ狭くなり、最後のひと押しで塞がります。流れが遅い、ぼこぼこ音がする、別の排水口から上がってくるのは、その途中のサインです。
頻度の目安は、厨房の系統が年1回以上、住戸や事務所の雑排水が年1回程度です。厨房だけ頻度を上げる、という形で運用している建物があります。
当日を左右するのは立入です。掃除口が室内にある建物では、入れなかった部屋の系統は洗えません。1戸あたりの所要時間を書いて案内し、予備日を最初から決めておきます。
そして、詰まったときはその系統の使用を止めるのが最優先です。流し続けると下の階へ水が回ります。詰まりの記録と、入れなかった部屋の記録を並べておくと、次に手を打つ場所が見えてきます。