冷却塔のレジオネラ対策|月1回の清掃と水質管理
目次
冷却塔は、屋上に置かれていて、普段は誰も近づかない設備です。ところがここで増えた菌が、風に乗って周りに運ばれることがあります。過去には、冷却塔からの曝露が疑われる集団感染の事例も報告されています。
この記事では、冷却塔のレジオネラ対策を、なぜ冷却塔で増えるのか、清掃と点検の頻度、水質管理のしかた、冷房シーズン前の準備、記録の残し方の順に整理します。頻度や基準は建物の区分と自治体の指導要綱で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。
結論:清掃は月1回程度、点検は毎日から
ビル管法(建築物衛生法)では、冷却塔について、おおむね次のことが定められているとされています。
| やること | 頻度の目安 |
|---|---|
| 冷却塔と冷却水の点検 | 使用開始時と、使用期間中は1か月以内ごとに1回 |
| 汚れの状況に応じた清掃 | 上記の点検に基づいて |
| 冷却塔の清掃 | 1年以内ごとに1回 |
| 冷却水の水管の清掃 | 1年以内ごとに1回 |
これに加えて、自治体の指導や関係団体の資料では、冷房の期間中は月1回程度の物理的な洗浄を勧めているものがあります。
レジオネラの水質検査は法律上の義務ではない
ここは知っておく価値があります。特定建築物の空調用冷却塔について、点検と清掃の維持管理基準はあるものの、レジオネラ属菌の水質検査そのものは法律上規定されていないとされています。
だから測らなくてよい、という話ではありません。義務が無いぶん、自分たちで測るかどうかを決める必要があります。人が多く出入りする建物や、病院・福祉施設のように感受性の高い人がいる建物では、定期的に測っている例があります。
ビル管法の全体像はビル管法とはにまとめています。
なぜ冷却塔で増えるのか
冷却塔は、水を空気に触れさせて熱を逃がす装置です。この仕組みが、そのまま菌にとって都合のよい条件になります。
| 条件 | 冷却塔で起きること |
|---|---|
| 水温 | 熱を持った水が循環する。夏は特に |
| 栄養 | 外気から入る塵、虫、落ち葉 |
| 滞留 | 下部水槽の隅、配管の枝分かれ |
| ぬめり(バイオフィルム) | 充填材や水槽の壁に付く |
| 濃縮 | 水が蒸発して成分が濃くなる |
4つ目がいちばん厄介です。ぬめりの膜の中には殺菌剤の効果が十分に届かないとされています。薬剤を入れているのに数が減らない、という場合はここを疑います。
飛沫が風に乗る
冷却塔は、ファンで空気を動かしています。そのため細かい水の粒(飛沫)が外に出ます。これが風に乗って周囲に運ばれ、吸い込まれることで感染の経路になり得るとされています。
吸気口や窓、人の通る場所との位置関係は、設置の段階で考えられているはずですが、あとから増築や改修で条件が変わることがあります。冷却塔の近くに窓や外気の取入口ができていないかを、一度は見ておきます。
日常の点検で見ること
月1回以上の点検では、特別な道具がなくても見られることが中心です。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| 下部水槽 | ぬめり、藻、沈殿物、虫や落ち葉 |
| 充填材 | 汚れ、スケール(白い付着物)、破損 |
| 水の見た目 | 濁り、色、においの変化 |
| 補給水と排水 | ボールタップの動き、ブローの状態 |
| ファンとモーター | 異音、振動 |
| 周囲 | 落ち葉、雑草、物が置かれていないか |
1つ目が最優先です。水槽の壁に触って、ぬるっとするなら膜ができています。この状態で薬剤だけ入れても効きません。物理的に落とす作業が要ります。
自動の水処理に任せきりにしない
薬注装置で自動的に薬剤を入れている建物が多くあります。便利ですが、装置が正常に動いているかは見ないと分かりません。
- 薬剤のタンクが空になっていないか
- ポンプが動いているか
- 設定値が変わっていないか
- 記録紙やログが残っているか
「自動だから大丈夫」で1シーズン空になっていたという形が実際にあります。月1回の点検の項目に、薬剤の残量を入れておきます。
清掃のしかた
清掃には、物理的に落とす作業と、薬剤で洗う作業の2つがあります。どちらか一方では足りません。
| 種類 | 何をするか |
|---|---|
| 物理的洗浄 | 下部水槽、充填材、壁面をブラシやジェットで洗う |
| 化学的洗浄 | 薬剤を循環させて、膜やスケールを剥がす |
| 水の入れ替え | 洗ったあとに張り替える |
| 配管の洗浄 | 冷却水の水管を年1回以上 |
膜(バイオフィルム)の中には薬剤が届きにくいため、まず物理的に落としてから薬剤を使う、という順序になります。逆にすると、表面だけが処理されて中が残ります。
冷房シーズンの前後
一般には、次のように組んでいる建物が多くあります。
- 冷房を始める前:全体の清掃、水の張り替え、試運転
- 冷房期間中:月1回以上の点検、汚れに応じた清掃
- 冷房を止めるとき:水を抜いて乾燥させる、または冬季の管理を決める
- 年1回:冷却塔本体と冷却水の水管の清掃
いちばん効くのは「冷房を始める前」です。止めていた間に水が滞留して、菌が増えていることがあります。シーズン初日にいきなり回す前に、清掃と水の入れ替えを済ませておくのが基本の形になります。
止めている間の扱い
冬の間に冷却塔を止める建物では、水を抜いて乾かしておくのが一般的です。水を張ったまま止めると、滞留した水の中で増えます。
やむを得ず水を残す場合は、定期的に循環させるなどの管理を決めておきます。「止めているから何もしない」がいちばん危ない状態です。
水質の管理
冷却水は、循環するうちに蒸発して成分が濃くなります。これを放っておくと、スケール(付着物)や腐食、そして菌の増殖につながります。
| 見る項目 | なぜ |
|---|---|
| 濃縮の度合い | 濃くなりすぎると付着物ができる |
| ブロー(排水)の量 | 濃くなった水を捨てて薄める |
| 補給水の量 | 蒸発したぶんを足す |
| 薬剤の濃度 | 効く範囲に入っているか |
| pHや導電率 | 腐食と付着の目安 |
ブローが止まっていると濃縮が進みます。自動のブロー弁が詰まったり、設定が変わったりしていないかを点検で見ます。
レジオネラを測るかどうか
法律上の義務ではないとされていますが、測ると状態が数字で分かります。測る場合の決めごとは3つです。
- いつ測るか(冷房開始前、盛夏、年2回など)
- どこで採るか(下部水槽の同じ場所)
- 出たときにどうするか(清掃、薬剤、再検査の手順)
3つ目を先に決めておかないと、数字が出てから慌てます。検出されたときの手順を、保健所や委託先と相談して決めておきます。
屋上に上がるときの安全
冷却塔は屋上にあります。点検そのものより、そこへ行く道のほうが危ないことがあります。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| 昇降のタラップ・階段 | さび、ぐらつき、手すりの有無 |
| 屋上の縁 | 転落防止の柵があるか |
| 点検口の蓋 | 開けたまま離れない |
| 濡れた床面 | 冷却塔の周りは水が飛ぶ。滑る |
| 電源 | ファンが止まっているか。勝手に回らないか |
5つ目がいちばん重いところです。水槽の中に手を入れているときにファンが回り出すと危険です。作業の前に電源を切り、勝手に入らないようにしてから始めます。
1人で上がらない
屋上での作業は、倒れても誰も気づかない場所になりがちです。夏場は熱中症の危険もあります。
- 上がるときに声をかける、または記録に残す
- 2人で行く(せめて1人は下で把握している)
- 夏の日中は時間帯をずらす
- 水分と休憩を確保する
「ちょっと見てくるだけ」が長引くことがあります。上がった時刻と戻る予定を誰かが知っている状態にしておきます。
委託先を見直すとき
冷却塔の管理は、空調の保守契約に含まれていることもあれば、清掃だけ別の業者ということもあります。どこまでが契約に入っているかを一度整理します。
| 見ること | なぜ |
|---|---|
| 月1回以上の点検を含むか | 基準の下限を満たすか |
| 物理的洗浄と化学的洗浄のどちらか | 片方だけの契約がある |
| 冷却水の水管の清掃 | 年1回以上。別料金のことがある |
| 薬剤の補充と装置の確認 | タンクが空のまま放置されない形か |
| 記録の提出 | 建物側にも残るか |
| レジオネラの検査 | 含むか、別途か |
2つ目が分かれ目です。「清掃一式」と書かれていて、実際は薬剤を回しただけ、という形があり得ます。ぬめりを物理的に落とす作業が入っているかを明記してもらいます。
記録の残し方
冷却塔の管理は、ビル管法の帳簿書類として記録を残すこととされています。立入検査でも確認される項目です。
| 残すもの | 内容 |
|---|---|
| 点検の記録 | 実施日、点検者、水槽やファンの状態 |
| 清掃の記録 | 実施日、範囲、方法、業者名 |
| 水質の記録 | 濃縮の度合い、薬剤の濃度、pHなど |
| 薬剤の記録 | 種類と補充の日 |
| 写真 | 清掃の前後。状態の変化が分かる |
写真が効きます。水槽の同じ角度を毎回撮っておくと、汚れ方が早くなっていないかが見えます。早くなっているなら、周囲の環境か水処理の条件が変わっています。
期限と記録の管理は建物の法定点検一覧にまとめています。
苦情や相談が来たとき
近隣から「屋上から水が飛んでくる」「白い煙が出ている」といった連絡が入ることがあります。冷却塔から出ているのは湯気で、それ自体は異常ではありません。ただし、飛沫が増えているなら風向きの変化や機器の状態が変わっている可能性があります。
連絡を受けたら、次の順で確かめます。
- いつ、どの方向で見えたか
- 冷却塔の運転の状況(負荷が上がる時間帯か)
- エリミネータ(飛沫を抑える部品)が外れたり破れたりしていないか
- 直近の点検と清掃の記録
エリミネータの破損は、外から見ても分かることがあります。点検の項目に入れておくと、苦情を受けてから慌てずに済みます。
よくある質問
冷却塔の清掃は義務ですか
ビル管法の特定建築物では、冷却塔と冷却水について1か月以内ごとの点検、および1年以内ごとの清掃などが定められているとされています。自治体の指導要綱で、冷房期間中の月1回程度の洗浄を勧めているところもあります。所在地の保健所で確認します。
レジオネラの水質検査は必要ですか
特定建築物の空調用冷却塔については、点検と清掃の基準はあるものの、レジオネラ属菌の水質検査そのものは法律上規定されていないとされています。義務が無いぶん、測るかどうかを自分たちで決めることになります。人の出入りが多い建物や感受性の高い人がいる施設では、定期的に測っている例があります。
薬剤を入れているのに汚れます
ぬめり(バイオフィルム)の中には薬剤が届きにくいとされています。まず物理的に洗って膜を落としてから薬剤を使う、という順序にします。また、薬注装置のタンクが空になっていないか、ポンプが動いているかも確かめます。
冬の間はどうしますか
止める建物では、水を抜いて乾かしておくのが一般的です。水を張ったまま止めると、滞留した水の中で増えます。やむを得ず残す場合は、定期的に循環させるなどの管理を決めておきます。
冷房を始める前に何をしますか
全体の清掃と水の張り替え、そして試運転です。止めていた間に水が滞留して菌が増えていることがあるため、シーズン初日にいきなり回す前に済ませておきます。ここがいちばん効く作業になります。
近くに窓や外気の取入口があります
冷却塔からは細かい水の粒が出ます。設置の段階では条件を満たしていても、あとからの増築や改修で位置関係が変わることがあります。冷却塔の近くに窓や外気取入口ができていないかを一度確認し、気になる場合は設計者や保健所に相談します。
屋上で作業するときの注意はありますか
ファンの電源を切り、勝手に回らないようにしてから始めます。水槽に手を入れているときに回り出すと危険です。あわせて、屋上は倒れても気づかれにくい場所なので、上がった時刻と戻る予定を誰かが知っている状態にします。夏の日中は時間帯をずらします。
清掃を委託していますが、中身が分かりません
物理的洗浄と化学的洗浄のどちらが入っているかを確かめます。「清掃一式」で薬剤を回しただけ、という形があり得ます。ぬめりを物理的に落とす作業が含まれているか、冷却水の水管の清掃が年1回以上あるか、記録が建物側にも残るかを契約で明記してもらいます。
近隣から「白い煙が出ている」と言われました
冷却塔から出ているのは湯気で、それ自体は異常ではありません。ただし飛沫が増えているなら、エリミネータ(飛沫を抑える部品)が外れたり破れたりしている可能性があります。いつ・どの方向で見えたか、運転の状況、直近の点検記録を確かめます。部品の破損は外から見て分かることがあるので、点検の項目に入れておきます。
記録は何を残しますか
点検・清掃・水質・薬剤の記録に加えて、清掃の前後の写真を残しておくと役に立ちます。水槽の同じ角度を毎回撮っておくと、汚れ方が早くなっていないかが見えます。
まとめ
冷却塔のレジオネラ対策は、1か月以内ごとの点検と、1年以内ごとの清掃が基準になります。冷房期間中は月1回程度の物理的な洗浄を勧める資料もあります。
レジオネラ属菌の水質検査は、法律上は規定されていないとされています。義務が無いぶん、測るかどうかを自分たちで決めることになり、出たときの手順まで先に決めておく必要があります。
汚れが落ちない原因の多くは、ぬめりの膜です。この中には薬剤が届きにくいとされているので、まず物理的に洗ってから薬剤を使うという順序を守ります。薬注装置は自動でも、タンクが空になっていないかは人が見ないと分かりません。
委託しているなら、物理的洗浄と化学的洗浄のどちらが契約に入っているかを一度確かめます。「清掃一式」で薬剤を回しただけ、という形があり得ます。
そして、いちばん効くのは冷房を始める前の清掃と水の張り替えです。止めていた間に滞留した水の中で増えていることがあります。シーズン初日にいきなり回さない、というだけで状態が変わります。