空調設備の点検|フロン法の簡易点検と定期点検
目次
空調設備の点検は、建物の法定点検の一覧から抜けやすい項目です。消防設備や建築設備の報告は意識されていても、業務用エアコンに点検の義務があることは知られていません。根拠が消防法でも建築基準法でもなく、フロン排出抑制法という別の法律にあるためです。
この記事では、空調設備の点検を、簡易点検と定期点検の違い、対象になる機器の見分け方、記録の残し方、漏えいが分かったとき、整備を頼むときの流れの順に整理します。対象や周期は機器の種類と定格出力で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、機器の銘板を確認したうえで、設備の委託先や所管の窓口に確認してください。
結論:3か月ごとの簡易点検は、管理者が自分でやる
空調設備の点検は2段構えになっています。片方は自分たちでやるもの、もう片方は有資格者に頼むものです。
| 簡易点検 | 定期点検 | |
|---|---|---|
| 誰がやるか | 管理者(自分たちでよい) | 十分な知見を有する者(専門業者) |
| 頻度 | 3か月に1回以上 | 機器の規模により1年に1回または3年に1回 |
| 対象 | すべての業務用の機器 | 一定の定格出力以上の機器 |
| 中身 | 目視が中心 | 直接法・間接法による漏えいの確認 |
「簡易点検はすべての業務用機器が対象」というのが、いちばん見落とされるところです。小さな店舗用のパッケージエアコン1台でも、業務用であれば3か月ごとの点検の対象になるとされています。
家庭用は対象ではない
対象になるのは、業務用の冷凍空調機器(第一種特定製品と呼ばれます)です。事務所や店舗に付いていても、家庭用のエアコンであれば対象外とされています。判断がつかないときは、機器の銘板と型番を控えて、設備の委託先に確認します。
なぜ点検が要るのか
フロン類は、大気に放出されると温室効果が非常に大きいガスです。二酸化炭素の何百倍から何千倍という係数で換算されます。そのため、機器から少しずつ漏れているのを早く見つけることが、法律の目的になっています。
漏れていても、空調は動き続けます。効きが悪くなったと感じる頃には、かなりの量が出ていることがあります。ここが、壊れてから気づく他の設備と違うところです。
| 段階 | 建物の側で分かること |
|---|---|
| 少し漏れている | ほとんど分からない |
| 進む | 効きが落ちる。電気代が上がる |
| さらに進む | 冷えない・暖まらない |
| 止まる | 修理か入替になる |
電気代が上がっているのに理由が分からない、という形で先に出ることがあります。空調の消費電力を月ごとに並べておくと、気づく材料になります。
簡易点検で見ること
簡易点検は、管理者が目で見て確かめる点検です。特別な資格も道具も要りません。3か月に1回以上、記録を残しながら行います。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| 室外機・室内機の外観 | 傷、さび、腐食、油のにじみ |
| 配管・接続部 | 油のにじみ(冷媒と一緒に油が出る) |
| 熱交換器 | 汚れ、詰まり、変形 |
| 異音・異常な振動 | 圧縮機やファンの状態 |
| 表示・エラー | 制御盤やリモコンの異常表示 |
いちばん分かりやすいサインは「油のにじみ」です。冷媒が漏れるとき、機械の中の油も一緒に出てきます。配管の継ぎ目やバルブの周りが黒く湿っていたら、そこを疑います。
巡回に組み込む
3か月に1回という周期は、忘れやすい間隔です。日常の巡回とは別に予定を立てると抜けるので、四半期の巡回の項目に入れてしまうのが実務です。
室外機は屋上や建物の裏に置かれていることが多く、普段は誰も見ません。巡回の順路に室外機置き場を入れておくだけでも、落ち葉やごみで塞がっている、といったことに気づけます。
巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
定期点検の対象と周期
定期点検は、機器の圧縮機(コンプレッサー)の定格出力で対象かどうかと周期が決まるとされています。
| 区分 | 周期の目安 |
|---|---|
| 小さい機器 | 定期点検の対象外(簡易点検のみ) |
| 中くらいの機器 | 3年に1回以上 |
| 大きい機器 | 1年に1回以上 |
この数値は機器の種類(空調か冷凍冷蔵か)でも変わります。自分の建物の機器がどれに当たるかは、銘板に書かれた定格出力を控えて、委託先に確認するのが確実です。
「1年か3年か」を業者任せにしない
周期の判定は、機器の定格出力という客観的な数値で決まります。にもかかわらず、契約の内容が「年1回の点検」で一律になっていて、本来は3年に1回でよい機器まで毎年払っている、という形が起こり得ます。逆に、1年に1回が必要な大きい機器が3年ごとの契約に混ざっていることもあります。
銘板の定格出力を自分たちで控えておくと、見積りの中身を読めるようになります。写真を撮って一覧に貼っておくだけで十分です。
まず機器の一覧を作る
対象かどうかを判断する前に、建物に何台あるかを数えるところからになります。これが無い建物が実際に多くあります。
一覧に載せるのは5つで足ります。
- 設置場所(階・部屋・屋上の区画)
- 機器の種類と型番
- 圧縮機の定格出力
- 設置年
- 冷媒の種類と充填量
この一覧が、そのまま点検の計画表になります。作るのは一度きりで、あとは更新するだけです。一覧のつくり方は建物の法定点検一覧にまとめています。
記録を残して保存する
フロン排出抑制法では、機器ごとに点検や修理、冷媒の充填・回収の履歴を記録し、保存することとされています。ここが実務の本体になります。
| 残すもの | 内容 |
|---|---|
| 簡易点検の記録 | 実施日、点検者、機器ごとの結果 |
| 定期点検の記録 | 実施日、点検した者、方法、結果 |
| 修理の記録 | いつ、どこを、どう直したか |
| 充填・回収の記録 | 量と、行った業者の登録番号 |
| 整備を依頼した記録 | 依頼先と内容 |
記録は機器1台ごとに作ります。建物単位でまとめると、どの機器が何回漏れているかが追えません。
廃棄するときも記録が要る
機器を入れ替えるとき、古い機器のフロンを回収して、その記録(行程管理票など)を残すこととされています。「解体業者に任せた」で終わりにすると、記録が手元に残りません。
入替の見積りを取るときに、フロンの回収と記録の提出が含まれるかを確かめておきます。これが工事の範囲に入っていないと、後から探すことになります。
漏えいが分かったとき
漏れが見つかったら、そのまま冷媒を足して使い続けるのは避けるのが原則です。法律の側でも、漏えい箇所の点検・修理を行わずに充填することは原則としてできないこととされています。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 漏れている箇所を特定してもらう |
| 2 | 修理する |
| 3 | 修理のあとに冷媒を充填する |
| 4 | 充填した量を記録する |
| 5 | 年間の漏えい量を把握しておく |
「冷媒を足せば当面は動く」という提案を受けることがあります。夏や冬のさなかであれば一時的な措置が必要な場面もありますが、修理の予定をセットで決めておかないと、毎年足し続けることになります。
一定量を超えると報告が要る
事業者全体で、1年間の漏えい量が一定の量(二酸化炭素に換算して1,000トン)以上になると、国へ報告することとされています。
建物を1棟だけ管理している場合には届きにくい量ですが、複数の建物や店舗を持っている事業者では届くことがあります。充填した量を機器ごとに記録しておけば、集計はその足し算で済みます。記録が無いと、超えているかどうかすら分かりません。
室外機の周りが性能を決める
点検の話から少し外れますが、空調の効きと寿命は、室外機の置かれ方でかなり変わります。簡易点検のついでに見ておくと、電気代にも効きます。
| 見るところ | 何が起きるか |
|---|---|
| 吹出しの前に物がある | 出した熱を吸い直す。効率が落ちる |
| 吸込み口が塞がれている | 同じく。落ち葉、段ボール、雑草 |
| 室外機どうしが近すぎる | 互いの熱を吸い合う |
| 直射日光が当たり続ける | 夏の負荷が上がる |
| 熱交換器が汚れている | 熱が逃げない。消費電力が増える |
屋上や建物の裏は、置き場所として使われやすい場所です。そこに室外機があると、周りに物が積まれていきます。「室外機の周りには物を置かない」を館内のルールに1行入れておくと、毎回の注意が要らなくなります。
効きが悪いときに見る順番
「エアコンが効かない」という連絡を受けたとき、いきなり業者を呼ぶ前に確かめられることがあります。
- フィルタが目詰まりしていないか(室内機)
- 吹出し・吸込みの前に物がないか(室外機)
- 設定と運転モードが合っているか
- 同じ系統の他の部屋でも同じか(1部屋だけか、全体か)
- 配管に油のにじみがないか
最後の1つで冷媒の漏れが見つかることがあります。「効かない」は故障ではなく漏えいのサインであることがあるので、ここを見る癖をつけておきます。
整備を頼むときに見るところ
| 見ること | なぜ |
|---|---|
| 充填・回収の登録があるか | 冷媒を扱うには登録が要る |
| 定期点検までやるか | 簡易点検は自社、定期点検は委託という分け方が多い |
| 記録の様式を出してくれるか | 保存するのは建物側 |
| 台数の数え方 | 室外機の台数で金額が変わる |
| 入替のときの回収 | 行程管理票まで含むか |
「記録の様式を出してくれるか」が実務で効きます。点検してもらっても、記録が業者の手元にしかなければ、保存の義務を果たせません。
見積りを揃える
- 機器の台数と、それぞれの定格出力
- 簡易点検の指導を含むか(自社でやる形にするなら手順書がほしい)
- 定期点検の周期(1年か3年か)
- 冷媒の充填が別料金か
- 記録の様式と提出のしかた
4つ目が金額の差になりやすいところです。漏れている機器があると、充填の費用が毎年乗ってきます。修理と入替の見積りも一緒に出してもらって、3年ぶんで比べると判断しやすくなります。
よくある質問
空調設備の点検は義務ですか
業務用の冷凍空調機器(第一種特定製品)については、フロン排出抑制法に基づいて簡易点検と定期点検を行い、記録を保存することとされています。家庭用のエアコンは対象外です。自分の機器がどちらかは、銘板と型番で確認します。
簡易点検は自分たちでやってよいのですか
管理者が行う点検とされていて、特別な資格は求められていません。目視が中心です。3か月に1回以上、記録を残しながら行います。四半期の巡回に組み込んでしまうのが続けやすい形です。
定期点検は何年に1回ですか
機器の圧縮機の定格出力によって、1年に1回または3年に1回とされています。小さい機器は定期点検の対象外で、簡易点検だけになります。銘板の定格出力を控えて、委託先に確認します。
空調の電気代が上がっています
冷媒の漏れが原因のことがあります。漏れていても空調は動き続けるため、効きの悪さより先に消費電力の増加として出てくることがあります。空調の消費電力を月ごとに並べておくと、前年の同じ月と比べられます。あわせて、フィルタの目詰まりと室外機の周りの物も確かめます。
記録はどこまで残しますか
機器1台ごとに、点検・修理・充填・回収の履歴を残します。建物単位でまとめると、どの機器が繰り返し漏れているかが追えません。入替のときのフロン回収の記録も、工事の範囲に含まれているかを確かめます。
エアコンが効かないと連絡がありました
業者を呼ぶ前に確かめられることがあります。室内機のフィルタの目詰まり、室外機の前に置かれた物、設定と運転モード、1部屋だけか建物全体か。そして配管に油のにじみがないかです。最後の1つで冷媒の漏れが見つかることがあります。「効かない」は故障ではなく漏えいのサインであることがあります。
古い冷媒の機器はどうしますか
生産が終わっている冷媒を使った機器は、漏れたときに補充する冷媒が手に入りにくくなっていきます。修理を重ねるより入替のほうが早く済む場面が出てきます。設置年と冷媒の種類を一覧に控えておくと、供給の状況を委託先に聞けます。入替の際は、古い機器のフロン回収と記録の提出が工事の範囲に入っているかを確かめます。
冷媒を足せば使えると言われました
漏れている箇所を直さずに充填することは、原則としてできないこととされています。季節的にやむを得ない場合でも、修理の予定をセットで決めておかないと毎年足し続けることになります。充填した量は必ず記録に残します。
点検の記録が無いまま引き継ぎました
分かるところから作り直します。まず建物にある機器を数え、設置場所・型番・定格出力・設置年・冷媒の種類を一覧にします。過去の履歴は、整備を頼んでいた業者に照会すると出てくることがあります。今からの記録が残っていれば、次の点検からは説明できます。ゼロから完璧を目指すより、一覧を1枚作るほうが先です。
まとめ
空調設備の点検は、フロン排出抑制法に基づくものです。消防法でも建築基準法でもないため、建物の法定点検の一覧から抜けやすい項目になっています。
2段構えで、3か月に1回以上の簡易点検は管理者が自分たちで、定期点検は機器の規模に応じて1年または3年ごとに専門業者へという形です。簡易点検はすべての業務用機器が対象なので、小さな店舗用のエアコン1台でも入ります。
見るのは外観と配管で、いちばん分かりやすいサインは油のにじみです。冷媒が漏れるとき、機械の中の油も一緒に出てきます。室外機は普段誰も見ない場所にあるので、四半期の巡回の順路に入れてしまいます。
点検のついでに、室外機の周りも見ておきます。吹出しと吸込みの前が塞がれていると、出した熱を吸い直して効率が落ちます。屋上や建物の裏は置き場所に使われやすいので、館内のルールに1行入れておきます。
そして実務の本体は記録です。機器1台ごとに、点検・修理・充填・回収を残す。これがあると、繰り返し漏れている機器が見え、入替の判断もできます。記録が無いと、報告が必要な量に達しているかどうかすら分かりません。