用途変更とは?確認申請が要る場合と増える義務
目次
空いていた事務所に飲食店を入れる。倉庫を店舗に変える。建物の使い方を変えると、建物に求められる基準が変わります。内装を直すだけのつもりが、確認申請が必要だったと後から分かることがあります。
この記事では、用途変更を、確認申請が要る場合、変わる基準、そのあとに増える義務、段取り、気づかずに使っていた場合の順に整理します。適用される規定は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。
結論:使い方を変えると、建物に求められるものが変わる
建築基準法では、建物の用途ごとに求められる基準が違います。避難の経路、防火の区画、排煙、非常用照明。人が多く集まる用途ほど、求められるものが厳しくなります。
だから、用途を変えると3つのことが起きます。
1つ目は、確認申請が必要になる場合があることです。一定の用途に、一定の面積を超えて変える場合。
2つ目は、建物の基準を満たす工事が必要になることです。排煙設備、非常用照明、内装の制限。
3つ目は、そのあとの点検と報告が増えることです。定期報告の対象になる、消防用設備が増える、ビル管法の対象になる。
3つ目を見落とすと、あとから毎年の負担が増えます。工事のときは業者が教えてくれますが、毎年の報告や点検は誰も教えてくれません。
確認申請が要る場合
用途を変えたら必ず確認申請が要る、というわけではありません。条件があります。
見るのは3つです。
1つ目は、変える先の用途です。特殊建築物と呼ばれる用途に変える場合が対象になります。劇場、店舗、飲食店、旅館、病院、共同住宅、倉庫など。
2つ目は、面積です。その用途に供する部分の床面積が、一定の面積を超える場合とされています。
3つ目は、類似の用途かどうかです。似た用途どうしの変更は、申請が不要とされている組み合わせがあります。
判断は自分でしないほうが確実です。組み合わせで結論が変わります。建築士か、所在地の特定行政庁に相談してください。「工事が小さいから要らない」という判断がいちばん危ない形です。
変わる基準
確認申請の要否にかかわらず、用途に応じた基準を満たす必要があります。
変わりやすいのは4つです。
1つ目は、避難に関する規定です。廊下の幅、階段の数と幅、出口の数、避難経路の長さ。
2つ目は、排煙設備です。用途と面積によって、排煙の設備か、開けられる窓が求められます。
3つ目は、非常用照明です。停電したときに点く照明。居室と、そこから外へ出るまでの経路に求められます。
4つ目は、内装の制限です。壁と天井の仕上げに、燃えにくい材料を使うことが求められます。
いちばん費用がかかるのは排煙です。窓が無い部屋を飲食店にする場合、排煙の設備を入れることになります。物件を決める前に、ここを確かめてください。契約してから分かると、工事の費用が想定を大きく超えます。
消防の側の手続きも要る
建築基準法の手続きとは別に、消防法の手続きがあります。両方が必要です。
要るのは4つです。
1つ目は、防火対象物使用開始届です。建物や部分を使い始めるときに、所轄の消防署へ出します。
2つ目は、消防用設備等の設置届です。消火器、自動火災報知設備、誘導灯などが増える場合。
3つ目は、防火管理者の選任です。収容人員が増えると、対象になることがあります。
4つ目は、消防計画の変更です。建物の使い方が変わるので、計画も直します。
消防の手続きは、工事を始める前に相談します。終わってから相談すると、追加の設備が必要と分かって工事をやり直すことになります。内装の設計ができた段階で、図面を持って消防署へ行くのが確実です。
そのあとに増える義務
用途を変えると、毎年やることが増えます。ここが見落とされます。
増えるのは4つです。
1つ目は、定期報告です。特定建築物定期調査や建築設備定期検査の対象になることがあります。
2つ目は、消防用設備等の点検と報告です。設備が増えれば点検の対象も増えます。報告の周期も、用途によって変わります。
3つ目は、ビル管法の対象です。特定建築物にあたる用途と面積になると、空気環境測定や貯水槽の清掃が求められます。
4つ目は、防炎物品です。対象の用途になると、カーテンやじゅうたんを防炎のものにする必要があります。
4つを一覧にして、用途変更の計画と一緒に社内で回してください。工事の費用だけで判断すると、毎年の維持費が見えないまま決めることになります。
段取り
用途変更は、決める前に確かめることで手戻りが減ります。
段取りは4段です。
1つ目は、建築士に相談することです。確認申請の要否、必要な工事、費用の概算。物件を決める前が理想です。
2つ目は、特定行政庁と消防署に相談することです。図面を持って行きます。両方に行きます。
3つ目は、申請と工事です。確認申請が要る場合は、工事の前に済ませます。
4つ目は、使い始める前の届出です。防火対象物使用開始届、消防用設備等の設置届。
2つ目で、両方に行くことが大事です。建築の側で通っても、消防の側で追加の設備を求められることがあります。片方だけ聞いて進めると、途中で止まります。
検査済証が無い建物
古い建物では、検査済証が見つからないことがあります。この場合、用途変更の確認申請が進みにくくなります。
考え方は3つです。
1つ目は、まず探すことです。建物の書類、前の所有者、設計した事務所。特定行政庁に台帳の記載があるか確かめる方法もあります。
2つ目は、無い場合の手順を相談することです。建築基準法に適合しているかを調べる調査を行い、その結果をもとに進める方法があります。費用と時間がかかります。
3つ目は、用途変更をあきらめる選択も持つことです。費用が見合わないこともあります。
買う前、借りる前に、検査済証の有無を確かめてください。あとから分かると、計画そのものが止まります。
気づかずに使っていた場合
すでに用途を変えて使っていて、あとから手続きが必要だったと分かることがあります。
動きは3段です。
1つ目は、現状を把握することです。いつから、どの部分を、何として使っているか。
2つ目は、建築士に見てもらうことです。いまの建物が、その用途の基準を満たしているか。
3つ目は、特定行政庁と消防署に相談することです。隠さずに、現状と経緯を伝えます。
隠して使い続けるほうが、はるかに大きな問題になります。火災や事故が起きたときに、保険の扱いや責任の問題に直結します。自分から相談する場合と、指摘されてから動く場合では、その後の扱いが変わります。
テナントの入れ替えで起きやすい
貸しビルでは、テナントが替わるたびに用途が変わる可能性があります。
気をつけるのは3つです。
1つ目は、募集の段階で用途を確かめることです。「事務所として貸す」と決めていても、飲食店の問い合わせが来ます。
2つ目は、契約の前に相談することです。建築士に、その用途で入れられるかを確かめます。契約してから分かると、入居の時期が遅れます。
3つ目は、複数のテナントの合計で見ることです。1つずつは小さくても、同じ用途の合計の面積で対象が変わることがあります。
3つ目を見落とす建物が多くあります。1階に飲食店が1軒入るのは問題なくても、3軒になると建物全体の扱いが変わることがあります。
記録として残しておく
用途変更は、数年に1回のできごとです。担当者が替わると経緯が消えます。
残すのは4つです。
1つ目は、いつ、どの部分を、何から何に変えたかです。
2つ目は、確認申請の書類と検査済証です。
3つ目は、消防への届出の控えです。
4つ目は、増えた義務の一覧です。定期報告、点検、ビル管法。次の年から何をやるかを書いておきます。
4つ目がいちばん役に立ちます。工事が終わった直後は覚えていても、1年後には忘れます。年間の予定表に書き写すところまでをセットにしてください。
収容人員が変わると、消防の扱いが変わる
用途変更でいちばん見落とされるのが、収容人員です。人数によって、消防の側で求められるものが変わります。
変わるのは4つです。
1つ目は、防火管理者の要否です。一定の収容人員を超えると、選任が求められます。
2つ目は、消防用設備等の種類です。自動火災報知設備、誘導灯、消火器の本数。
3つ目は、点検結果の報告の周期です。特定防火対象物にあたると、報告は1年に1回になります。
4つ目は、防火対象物点検の要否です。用途と収容人員によっては、この点検の対象になります。
収容人員は、面積や席数から計算します。自分で数えた人数ではありません。所轄の消防署に、図面を見せて計算してもらうのが確実です。ここを間違えると、必要な設備が入らないまま使い始めることになります。
賃貸で入る側が確かめること
建物を借りて用途を変える場合、借りる側にも確かめることがあります。
確かめるのは4つです。
1つ目は、その用途で使ってよいかです。賃貸借契約の使用目的の欄と、建物の用途地域。
2つ目は、工事をしてよい範囲です。壁に穴を開ける、排煙の設備を入れる。オーナーの承諾が要ります。
3つ目は、費用の負担です。建物の基準を満たすための工事を、どちらが負担するか。契約の前に決めます。
4つ目は、退去のときの原状回復です。入れた設備をどうするか。
3つ目でもめることが多くあります。建物の基準に関わる工事は、本来は建物の側の問題です。入居のために必要な工事を借主が全額負担する形になっていないか、契約の前に確かめてください。
まとめ
用途変更は、建物の使い方を変えることで、求められる基準が変わる手続きです。
- 特殊建築物に、一定の面積を超えて変える場合、確認申請が必要になる
- 変わるのは、避難・排煙・非常用照明・内装の制限。排煙がいちばん費用に響く
- 建築基準法とは別に、消防の手続きが要る。両方に相談する
- そのあと、定期報告・消防の点検・ビル管法・防炎物品といった義務が増える
- 検査済証が無い建物では、進め方から相談が必要になる
適用される規定は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。
よくある質問
Q. 内装を直すだけでも用途変更になりますか。 A. 内装を直すことと、用途を変えることは別です。使い方が変われば、工事の大きさに関係なく用途変更にあたります。「工事が小さいから要らない」という判断が危ない形です。
Q. 事務所から事務所への入れ替えなら、手続きは要りませんか。 A. 用途が変わっていなければ、用途変更にはあたりません。ただし消防の側の届出や、防火管理者の選任が必要になることがあります。所轄の消防署に確かめてください。
Q. 確認申請が要るかどうか、どこで分かりますか。 A. 建築士か、所在地の特定行政庁に相談してください。用途と面積と類似の用途の組み合わせで決まります。電話で聞く場合も、図面を持って窓口へ行くほうが確実です。
Q. 排煙の設備は、後から入れられますか。 A. 入れられますが、費用と工期がかかります。窓が無い部屋を飲食店にする場合は、とくに大きくなります。物件を決める前に確かめてください。
Q. 検査済証がありません。 A. まず探してください。前の所有者、設計事務所、特定行政庁の台帳。無い場合は、適合しているかを調べる調査を行って進める方法があります。費用と時間がかかるので、早めに相談してください。
Q. すでに使ってしまっています。 A. 現状を把握し、建築士に見てもらったうえで、特定行政庁と消防署に相談してください。隠して使い続けるほうが、大きな問題になります。
Q. 用途変更のあと、定期報告の対象になりますか。 A. なることがあります。用途と規模で決まります。用途変更が終わった時点で、所在地の特定行政庁に確かめてください。対象になっているのに報告していない状態が、いちばん起きやすい形です。
Q. ビル管法の対象にもなりますか。 A. 用途と延べ面積によります。特定建築物にあたると、空気環境測定や貯水槽の清掃が求められます。所在地の保健所に確かめてください。
Q. 消防への相談は、いつ行けばよいですか。 A. 内装の設計ができた段階です。図面を持って行きます。工事が終わってからでは、追加の設備が必要と分かってやり直しになります。
Q. テナントが勝手に使い方を変えていました。 A. 契約と館内規則で、用途の変更には事前の承諾が必要と定めておいてください。気づいた時点で、現状を確かめて相談します。建物の責任は所有者に残ります。
Q. 一時的なイベントでも用途変更になりますか。 A. 一時的な使用は、用途変更ではなく別の手続き(催し物の届出など)で扱われることが多くあります。ただし期間と規模によります。所在地の特定行政庁と所轄の消防署に確かめてください。
Q. 用途変更の費用は、どのくらいかかりますか。 A. 建物と用途で幅が大きく、一律には言えません。設計と申請の費用、工事の費用、そのあとの毎年の維持費の3つに分けて見積もってください。3つ目を入れずに判断すると、あとで負担が増えます。
Q. 用途地域によって、入れられない業種がありますか。 A. あります。都市計画で定められた用途地域によって、建てられる建物の用途が制限されています。建物が建っていても、その用途で使えるとは限りません。所在地の特定行政庁に確かめてください。
Q. 収容人員はどうやって数えますか。 A. 用途ごとに計算の方法が定められています。席数、面積、従業者の数などから算出します。自分で数えた人数ではありません。所轄の消防署に図面を見せて確かめてください。