防火区画とは?種類と、日常で壊してしまう使い方
目次
防火区画は、火と煙を建物の中で広げないための仕切りです。壁と床と扉でできていて、普段は見えません。ところが、配線を1本通すために壁に穴を開けただけで、区画としての役目が消えてしまうことがあります。
この記事では、防火区画を、何のためにあるのか、種類、日常で壊してしまう使い方、工事のときに確かめること、点検と報告との関係の順に整理します。適用される区画の種類は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。
結論:火と煙を止める仕切りで、穴が1つあれば効かなくなる
防火区画は、火災が起きたときに、燃えている部屋から外へ火と煙が出ていくのを一定時間止めるためのものです。止めているあいだに、人が逃げ、消防隊が着きます。
仕切りは3つの部分でできています。
1つ目は、壁と床です。一定の性能を持つ材料で作られています。
2つ目は、開口部の扉です。防火戸、防火シャッター。普段は開いていて、火災のときに閉まります。
3つ目は、貫通部の処理です。配管や配線が壁を通るところを、燃えにくい材料で埋めてあります。
3つのうち1つでも欠けると、区画としては効きません。壁がどれだけ立派でも、その横に埋めていない穴が1つあれば、煙はそこを通ります。「見えないところで壊れる」のが、この設備のいちばん厄介なところです。
種類は4つ
防火区画には種類があり、何のために切っているかが違います。
| 種類 | 何のために切るか |
|---|---|
| 面積区画 | 一定の面積ごとに切り、燃える範囲を限る |
| 高層区画 | 高い階を細かく切り、避難の時間を稼ぐ |
| 竪穴区画 | 階段や吹き抜けを切り、煙が上へ抜けるのを止める |
| 異種用途区画 | 用途が違う部分どうしを切る |
実務でいちばん問題になるのは竪穴区画です。階段、エレベーターのシャフト、吹き抜け、パイプシャフト。煙は上へ行くので、ここが開いていると建物全体に一気に広がります。
異種用途区画も見落とされます。1階が店舗、2階以上が事務所という建物で、間の扉が開けっ放しになっている形です。
日常で壊してしまう使い方
防火区画は、工事ではなく日常の使い方で効かなくなります。
よくあるのは4つです。
1つ目は、防火戸の前に物を置くことです。閉まる範囲に台車や段ボールがあると、閉まりきりません。
2つ目は、防火戸をくさびで止めることです。「風で閉まるから」「出入りが多いから」と、ドアストッパーで固定します。煙感知器に連動して閉まる扉を固定すると、区画が無いのと同じになります。
3つ目は、貫通部に新しい穴を開けることです。LANケーブルを通す、エアコンの配管を通す。埋め戻していない穴が残ります。
4つ目は、シャッターの下に物を置くことです。降りてくる場所に什器があると、途中で止まります。
2つ目と3つ目は、悪意ではなく善意で起きます。便利にしよう、早く仕事を終わらせよう、と思ってやったことが区画を壊します。だから注意ではなく、仕組みで防ぎます。
貫通部の処理を確かめる
配管や配線が防火区画の壁を通るところは、燃えにくい材料で埋めることが求められています。
確かめるのは4つです。
1つ目は、埋まっているかです。隙間から向こうが見える状態は、埋まっていません。
2つ目は、何で埋めているかです。認定された材料で処理されているか。ウレタンフォームや発泡スチロールで埋めてあることがあります。あれは燃えます。
3つ目は、表示があるかです。認定の工法で処理した場合、表示のラベルが貼られていることがあります。
4つ目は、増えていないかです。前の工事で埋めた横に、新しい穴が開いていないか。
天井裏とパイプシャフトの中は、誰も見ません。だから、ここがいちばん荒れます。点検口を開けて年に1回見るだけで、状態が分かります。
工事のときに確かめること
新しい穴は、工事のときに開きます。工事の段取りに、区画の確認を入れます。
入れるのは4つです。
1つ目は、図面で区画の位置を示すことです。工事をする業者に、どの壁が防火区画かを先に伝えます。伝えなければ知りません。
2つ目は、貫通する場合の処理を決めることです。認定された工法で埋めること、費用に含めることを、見積もりの段階で書きます。
3つ目は、終わったあとに見ることです。埋め戻しの写真を出してもらいます。天井を閉じる前に撮ってもらいます。閉じたあとでは見られません。
4つ目は、記録に残すことです。どの壁のどこを通したか。次の工事のときに使えます。
テナントが自分で工事を頼む建物では、1つ目がとくに大事です。テナントが選んだ業者は、建物の図面を持っていません。内装工事の申請のときに、区画の図面を渡す形にしてください。
防火戸と防火シャッターの点検
防火区画の開口部にある扉は、防火設備定期検査の対象になることがあります。
見るのは4つです。
1つ目は、閉まるかです。煙感知器か熱感知器に連動して、自動で閉まるか。
2つ目は、最後まで閉まるかです。途中で止まらないか。床に物が無いか。
3つ目は、閉まったあと開くかです。閉じ込めが起きないよう、くぐり戸が付いている扉があります。
4つ目は、シャッターの安全装置です。降りてくる途中で人に当たったとき、止まるか。
検査は資格を持つ人が行い、結果は特定行政庁へ報告します。対象かどうかと報告の時期は建物によって違うので、所在地の特定行政庁に確かめてください。
指摘が出たあとの動き
検査で指摘が出た場合、直し方が3つに分かれます。
1つ目は、その場で直るものです。扉の前の物をどける、くさびを外す。これはその日に終わります。
2つ目は、部品の交換で直るものです。閉鎖装置、感知器、ヒューズ、シャッターの安全装置。
3つ目は、工事が要るものです。貫通部の埋め戻し、扉そのものの交換。
1つ目から先に片づけます。指摘の件数が減り、残った件数で予算を考えられるようになります。全部をまとめて工事の見積もりに入れると、動き出すのが遅くなります。
現場に伝わる形で説明する
「防火区画だから物を置かないでください」では、現場に伝わりません。何が起きるかを伝えます。
伝え方は3つです。
1つ目は、どこまで煙が来るかを言うことです。「この扉が閉まらないと、煙が階段に入ってきます」。自分の逃げ道の話になると伝わります。
2つ目は、写真を貼ることです。閉まる範囲を床にテープで示し、その写真を扉のそばに貼ります。
3つ目は、置き場を別に作ることです。置く場所が無いから置かれています。代わりの場所を用意しないと、注意だけでは戻ります。
3つとも、防火の知識は要りません。知識を教えるより、置ける場所を作るほうが早く直ります。
巡回で見る項目を3つに絞る
日常の巡回で防火区画を全部見るのは無理です。3つに絞ります。
絞るのは3つです。
1つ目は、防火戸の前です。物が置かれていないか。
2つ目は、くさびとストッパーです。固定されている扉が無いか。
3つ目は、シャッターの下です。降りる範囲に什器が無いか。
天井裏と貫通部は、年に1回の別の機会に見ます。毎回は無理なので、点検の日か、定期検査の日に合わせて見る形にします。巡回では、床の上で見えるものだけに絞ってください。
記録として残しておく
防火区画は、図面と現場が合っているかが分からなくなりやすい設備です。
残すのは4つです。
1つ目は、区画の図面です。どの壁が区画かを色分けした図。
2つ目は、貫通部の位置と処理の記録です。工事のたびに書き足します。
3つ目は、検査の指摘と是正の記録です。
4つ目は、巡回で見つけたものの記録です。同じ場所が繰り返し出るなら、置き場の問題です。
1つ目を1枚作るのが、いちばん効きます。色分けした図面が1枚あれば、工事のたびに業者へ渡せます。渡すだけで、開けてはいけない壁に穴が開くことが減ります。
区画の図面を色分けして作る
防火区画を守るために、いちばん効くのは1枚の図面です。図面が無い建物では、どの壁を守ればよいのかを誰も知りません。
作り方は4つです。
1つ目は、竣工図を用意することです。無い場合は、建築士か、定期検査を行った資格者に相談します。
2つ目は、区画の種類ごとに色を分けることです。面積区画、竪穴区画、異種用途区画。3色で足ります。線を引くだけで、現場の見え方が変わります。
3つ目は、防火戸とシャッターの位置に印を付けることです。閉まる方向も矢印で書きます。
4つ目は、貫通部の位置を書き足すことです。工事のたびに書き足す欄を、図面の余白に作っておきます。
できた図面は、3か所に置きます。防災センター、施設の担当者の手元、工事のときに業者へ渡す用。工事のたびに渡す1枚が、新しい穴を防ぎます。
テナントに伝える1枚を作る
テナントに「防火区画」と言っても伝わりません。やってほしいことだけを書いた1枚を作ります。
書くのは4つです。
1つ目は、置かないでほしい場所です。写真で示します。防火戸の前、シャッターの下、階段の踊り場。
2つ目は、扉を固定しないことです。くさびやストッパーを外してほしいこと。理由を1行添えます。
3つ目は、壁に穴を開ける前に連絡してほしいことです。エアコン、LANケーブル、看板の配線。
4つ目は、連絡先です。誰に言えばよいか。
入居のときに1回、年に1回の書面で1回。この2回で十分に届きます。言葉ではなく写真で示すと、伝わり方がまったく変わります。
まとめ
防火区画は、火と煙を建物の中で広げないための仕切りです。
- 壁と床、開口部の扉、貫通部の処理の3つでできている。1つ欠けると効かない
- 種類は、面積区画、高層区画、竪穴区画、異種用途区画の4つ
- 壊れるのは工事より日常。扉の前の物、くさび止め、埋めていない穴、シャッターの下
- 工事のときは、区画の図面を業者に渡し、埋め戻しを天井を閉じる前に写真で確かめる
- 巡回で見るのは3つに絞る。天井裏と貫通部は年に1回
適用される区画の種類は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。
よくある質問
Q. 防火戸を開けたままにしておきたいのですが。 A. 常時開放でよい扉は、煙感知器などに連動して閉まる仕組みになっています。くさびやストッパーで固定するのは別の話です。固定すると、火災のときに閉まりません。開けておきたい理由があるなら、建築士か所在地の特定行政庁に相談してください。
Q. 壁に開いている穴を、自分たちで埋めてよいですか。 A. 認定された工法と材料で処理する必要があります。ウレタンフォームやパテで埋めても、区画としての性能は戻りません。業者に頼んでください。
Q. 天井裏はどのくらいの頻度で見ますか。 A. 年に1回が目安です。定期検査の日や、消防設備点検の日に合わせると忘れません。点検口が開くかどうかも、あわせて確かめてください。
Q. テナントの工事で穴が開きました。 A. 埋め戻しを求めてください。内装工事の申請のときに、区画の図面を渡し、埋め戻しを条件に書いておくと防げます。終わったあとでは、天井が閉じていて確かめられません。
Q. 防火シャッターの下に物を置くと、どうなりますか。 A. 途中で止まり、区画が切れません。シャッターが降りる範囲を床にテープで示すと、置かれにくくなります。それでも置かれる場合は、別の置き場を用意してください。
Q. 竪穴区画とは何ですか。 A. 階段や吹き抜け、エレベーターのシャフトなど、上下につながった空間を切る区画です。煙は上へ行くので、ここが開いていると建物全体に広がります。階段の扉を開けっ放しにしないことが基本です。
Q. 異種用途区画はどこにありますか。 A. 用途が違う部分の境目です。1階が店舗で上階が事務所、駐車場と事務所の境など。間の扉が開けっ放しになっていることがよくあります。
Q. 防火設備定期検査の対象かどうか、どう分かりますか。 A. 建物の用途と規模で決まります。所在地の特定行政庁のホームページか、電話で確かめてください。対象なのに検査していない建物があります。
Q. 指摘が多くて、全部は直せません。 A. その場で直るものから片づけてください。物をどける、くさびを外す。残った件数で予算を考えるほうが、まとめて工事の見積もりを取るより早く動けます。
Q. 区画の図面がありません。 A. 竣工図があれば、そこから作れます。無い場合は、建築士か検査をした資格者に相談してください。1枚作っておくと、工事のたびに渡せます。
Q. くぐり戸は何のためにありますか。 A. 防火戸が閉まったあとに、人が通れるようにするためです。くぐり戸の前にも物を置かないでください。閉じ込めにつながります。
Q. 感知器に連動して閉まる扉が、勝手に閉まりました。 A. 感知器の誤作動か、扉の閉鎖装置の不具合です。扉を固定して対処しないことです。業者に見てもらってください。原因が残ったままだと、また起きます。
Q. 区画の図面を作るのに、いくらかかりますか。 A. 竣工図があれば、線を引くだけなので自分たちでも作れます。無い場合は調査が必要になり、費用がかかります。まず竣工図を探すところから始めてください。
Q. 防火戸が重くて、日常の出入りに困ります。 A. 閉鎖装置の調整で軽くなることがあります。固定して対処しないことです。出入りが多い場所なら、常時開放で感知器に連動する形にできないか、建築士か業者に相談してください。