設備の保安と点検解説2026.09.02 公開DK-06

電気主任技術者の外部委託|要件と頼み方

目次

キュービクルのある建物には、電気主任技術者を置くことが求められます。ところが、資格を持つ人を社内に置いている建物は多くありません。多くは外部に委託しています。この形は法令で認められていますが、要件があります。

この記事では、電気主任技術者の外部委託を、認められる要件委託先の種類契約で見るところ任せきりにしないための見方切り替えるときの段取りの順に整理します。要件は設備の規模と電圧で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所轄の産業保安監督部に確認してください。

キュービクルの保安点検の記録そのものを探している場合は、点検板に施設向けの様式がそろっています。

結論:一定の規模までなら、外部に委託して選任しない形が認められる

自家用電気工作物を設置する事業者は、電気主任技術者を選任することが求められます。ただし、一定の要件を満たす場合、外部に委託して選任しないことが認められています。

押さえるのは3つです。

1つ目は、規模の上限があることです。受電の電圧と出力によって、委託できる範囲が決まっています。

2つ目は、委託先に要件があることです。保安管理業務を行える者として、要件を満たしている必要があります。

3つ目は、承認が要ることです。選任しないことについて、所轄の産業保安監督部の承認を受けます。

3つを押さえる規模の上限受電の電圧と出力で決まる委託先の要件行える者としての要件承認産業保安監督部の承認
規模の上限・委託先の要件・承認という3つの押さえどころを並べた層の図

「業者に頼んでいるから大丈夫」ではありません。承認の手続きを踏んでいるか、委託先が要件を満たしているか。この2つを確かめていない建物があります。

委託先の種類

委託できる相手は、大きく2つに分かれます。

1つ目は、電気保安法人です。保安管理の業務を行う会社。複数の技術者を抱えています。

2つ目は、個人事業者です。資格を持つ個人が、直接委託を受ける形。

委託先は2つに分かれる電気保安法人複数の技術者を抱える担当が休んでも代替がきく建物が多いと組みやすい個人事業者同じ人がずっと見る建物のことをよく知る緊急時の対応を確かめる
保安法人と個人事業者という2つの委託先を並べた比較の図

どちらでも構いませんが、違いがあります。保安法人は、担当者が休んだときの代替がききます。個人事業者は、同じ人がずっと見てくれるので建物のことをよく知っています。建物の数と、緊急時の対応をどう考えるかで選びます。

いずれの場合も、要件を満たしていることを確かめてください。保安管理業務を行える者としての要件は定められています。登録や届出の状況を確かめる方法は、所轄の産業保安監督部に聞けます。

委託でできること、できないこと

外部委託は、保安の監督を委託するものです。すべてを任せられるわけではありません。

分けるのは4つです。

1つ目は、委託先がやることです。月次と年次の点検、記録の作成、保安の監督、異常時の対応。

2つ目は、事業者がやることです。設備の維持、指摘への対応、予算の確保、日常の運用。

3つ目は、相談して決めることです。点検の日程、停電作業の時期、改修の計画。

4つ目は、事業者にしかできないことです。保安規程を定めること、届出を出すこと。義務の主体は事業者です。

4つの分担誰がやること委託先点検・記録・保安の監督事業者設備の維持・予算・日常の運用相談して決める点検の日程と改修の計画事業者にしかできない保安規程と届出
委託先・事業者・相談して決める・事業者にしかできないという4つの分担を並べた表

4つ目を忘れないでください。委託先は代行してくれますが、義務そのものは事業者に残ります。「業者がやってくれると思っていた」は通りません。

契約で見るところ

保安管理の委託契約は、月額いくらという形で提示されます。中身を確かめます。

見るのは5つです。

1つ目は、点検の回数です。月次点検の頻度。隔月になっている契約もあります。

2つ目は、年次点検の扱いです。含まれるか、別料金か。停電を伴う作業の費用がどちらかを確かめます。

3つ目は、異常時の出動です。何時間以内に来るか、夜間と休日はどうか、費用は含まれるか。

4つ目は、報告の形です。点検の結果をどう渡してもらうか。

5つ目は、契約の期間と解約です。

契約の主な確認点確かめること中身点検の回数月次が隔月になっていないか年次点検含むか別料金か異常時の出動何時間で来るか。夜間と休日報告と契約期間結果の渡し方と解約の条件
点検回数・年次点検・異常時の出動・報告・契約期間という主な確認点を並べた表
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実際に使える様式が必要な方へ

キュービクルの点検記録と期限をまとめて管理する様式は、点検板でそのまま使えます。

この様式をひらく

3つ目が、いざというときの差になります。停電したときに、何時間で来てもらえるか。契約書に時間が書かれていないことが多いので、口頭でも確かめて記録に残してください。

任せきりにしない見方

外部委託でいちばん多いのは、報告書を受け取って綴じるだけという運用です。3つだけ見てください。

見るのは3つです。

1つ目は、点検の日付です。契約どおりの回数で来ているか。抜けている月が無いか。

2つ目は、指摘の欄です。要注意や要修繕が出ていないか。前回と同じ指摘が残っていないか。

3つ目は、測定の値です。絶縁抵抗の値が下がっていないか。数字を並べると、悪くなっている系統が見えます。

3つ目を表にするのが効きます。回ごとに列を足して、系統ごとに値を並べます。下がり始めた時点で分かれば、故障する前に手を打てます。報告書を1枚ずつ見ていても、この変化は見えません。

指摘が出たあとの動き

点検で指摘が出たら、対応の期限を決めます。

動きは4段です。

1つ目は、内容を分けることです。すぐ直せるもの、部品の交換、工事が要るもの。

2つ目は、危険の度合いを聞くことです。「いつまでに直す必要があるか」を委託先に聞きます。「そのうち」ではなく、時期を言ってもらいます。

3つ目は、見積もりを取ることです。委託先が工事もできる場合と、別の業者に頼む場合があります。

4つ目は、直したことを記録に残すことです。

2つ目を必ず聞いてください。報告書の「要修繕」という言葉だけでは、緊急性が分かりません。いま停電の危険があるのか、数年かけてよいのかで、予算の扱いが変わります。

停電を伴う年次点検

年次点検は、建物全体を停電させて行うことが一般的です。

決めるのは5つです。

1つ目は、日程です。休館日か、営業時間外。年に1回のことなので、早めに押さえます。

2つ目は、停電の時間帯です。何時から何時まで。

3つ目は、テナントへの連絡です。2週間前と前日の2回が確実です。

4つ目は、止まる設備の一覧です。エレベーター、空調、給水ポンプ、サーバー、冷蔵と冷凍。冷蔵と冷凍がいちばん困ります。

5つ目は、復電の手順です。戻すときの順番と、確かめること。

4つ目を一覧にしてテナントへ渡してください。「停電します」だけでは、何が止まるか分かりません。飲食店の冷蔵庫、医療機器、サーバーを持つテナントには個別に伝えてください。

切り替えるときの段取り

委託先を替えるときは、手続きと引き継ぎの両方が要ります。

段取りは4段です。

1つ目は、現在の契約の解約の条件を確かめることです。

2つ目は、新しい委託先を決めることです。要件を満たしているかを確かめます。

3つ目は、手続きを行うことです。選任しないことの承認や、保安規程の変更が要ることがあります。所轄の産業保安監督部に確かめてください。

4つ目は、資料を引き継ぐことです。点検の記録、単線結線図、保安規程、鍵。

4つ目の単線結線図がいちばん大事です。設備の構成を示す図面で、無いと新しい委託先が一から調べることになります。現在の委託先が持っている場合は、必ず写しをもらってください。

建物の側で持っておく資料

委託していても、建物の側で持っておく資料があります。

持つのは4つです。

1つ目は、保安規程の写しです。

2つ目は、単線結線図です。設備の構成を示す図面。

3つ目は、点検の記録です。直近3年分。

4つ目は、連絡先の一覧です。委託先、電力会社、社内の責任者。電気室と事務室に貼ります。

2つ目を建物の側で持っていないことが多くあります。委託先が替わると消えてしまう資料なので、写しをもらって建物の書類と一緒に保管してください。改修や増設のときにも必要になります。

月次点検で見ていること

外部委託の技術者が月に1回来て、何を見ているのかを知っておくと、報告書の読み方が変わります。

見ているのは5つです。

1つ目は、外観です。キュービクルの扉、さび、変形、雨水の入った跡。扉の周りに物が置かれていないかも見ています。

2つ目は、計器の値です。電圧、電流、電力。普段と違う値が出ていないか。

3つ目は、音とにおいと温度です。うなり音、焦げたにおい、変圧器の温度。

4つ目は、絶縁の状態です。測定できる範囲で測ります。停電しないと測れない部分は、年次点検で測ります。

5つ目は、周りの環境です。小動物の侵入の跡、草、水たまり。

月次点検の主な観点観点見ていること外観扉・さび・雨水の跡・周りの物計器の値電圧・電流・電力音とにおいと温度うなり・焦げ・変圧器絶縁と周りの環境小動物の跡・草・水たまり
外観・計器・音とにおい・絶縁・周りの環境という主な月次点検の観点を並べた表

5つ目が意外に重要です。キュービクルの中に小動物が入って停電する事故が実際に起きます。周りの草を刈る、隙間をふさぐのは建物の側でできることです。技術者から指摘されたら、その月のうちに手を打ってください。

建物の側でできる日常の確認

月に1回の点検の合間に、建物の側でも見られることがあります。専門の知識は要りません。

見るのは4つです。

1つ目は、キュービクルの周りです。物が置かれていないか、扉の前が空いているか。柵の鍵がかかっているか。

2つ目は、音です。普段と違ううなり音がしていないか。

3つ目は、においです。焦げたにおい。

4つ目は、周りの状態です。草、水たまり、小動物の跡。

建物の側でできる日常確認見るところ確かめること周り物・扉の前・柵の鍵普段と違ううなりにおい焦げたにおい環境草・水たまり・小動物の跡
周り・音・におい・環境という4つの日常確認の項目を並べた表

近づいて触らないでください。見るのは柵の外からです。異常を感じたら、自分で扉を開けず、委託先に連絡することが手順になります。月に1回、巡回のついでに5分見るだけで、月次点検までの空白が埋まります。

複数の建物をまとめて委託する

建物を複数持っている場合、まとめて委託することができます。

利点は4つです。

1つ目は、単価が下がることです。まとめると条件が良くなることがあります。

2つ目は、窓口が1つになることです。建物ごとに別の会社だと、連絡先も報告の形も別々になります。

3つ目は、記録の形がそろうことです。建物ごとに様式が違うと、比べられません。

4つ目は、緊急時の対応が読めることです。どの建物にも同じ時間で来られるか、拠点の場所で確かめます。

ただし、拠点から遠い建物は分けたほうがよいことがあります。「まとめて安くなったが、いちばん遠い建物に3時間かかる」という形になると、停電したときに困ります。建物ごとの所要時間を確かめてから決めてください。

まとめ

電気主任技術者の外部委託は、一定の規模までなら認められている形です。

  • 規模の上限、委託先の要件、承認の3つが条件になる
  • 委託できるのは保安の監督。義務の主体は事業者に残る
  • 契約では、点検回数、年次点検の扱い、異常時の出動、報告の形を見る
  • 報告書は、日付・指摘・測定の値の3つだけ見る。値は表にして並べる
  • 単線結線図は、建物の側で写しを持っておく

要件は設備の規模と電圧で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所轄の産業保安監督部に確認してください。

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実際に使える様式が必要な方へ

キュービクルの点検記録と期限をまとめて管理するなら、点検板の様式が近道です。

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よくある質問

Q. 外部委託なら、社内に資格者は要りませんか。 A. 要件を満たし、承認を受けている場合は、選任しないことが認められています。ただし設備の維持と指摘への対応は事業者の仕事です。窓口になる担当者は決めておいてください。

Q. どのくらいの規模まで委託できますか。 A. 受電の電圧と出力によって上限が定められています。所轄の産業保安監督部に確かめてください。増設で上限を超えると、扱いが変わることがあります。

Q. 委託先が要件を満たしているか、どう確かめますか。 A. 委託先に確かめるほか、所轄の産業保安監督部に相談する方法があります。契約の前に確かめてください。満たしていない相手と契約しても、承認を受けられません。

Q. 月次点検が隔月になっていました。 A. 規模と条件によって、点検の頻度は変わります。保安規程に書いた周期と一致しているかを確かめてください。一致していなければ、どちらかを直すことになります。

Q. 停電しました。すぐ来てもらえますか。 A. 契約によります。何時間以内に来るか、夜間と休日はどうかを、契約の前に確かめてください。書かれていない場合は、口頭でも聞いて記録に残してください。

Q. 報告書のどこを見ればよいですか。 A. 日付、指摘の欄、測定の値の3つです。測定の値は、回ごとに表に並べてください。下がり始めた系統が見えます。

Q. 「要修繕」と書かれていますが、急ぎますか。 A. 委託先に「いつまでに直す必要があるか」を聞いてください。報告書の言葉だけでは緊急性が分かりません。時期を言ってもらえば、予算の計画が立てられます。

Q. 単線結線図がありません。 A. 委託先か、設備を入れた電気工事の業者が持っていることがあります。無ければ作ってもらってください。改修や増設のとき、委託先を替えるときに必ず必要になります。

Q. 年次点検の停電は、何時間かかりますか。 A. 設備の規模によります。半日から1日が目安ですが、委託先に確かめてください。テナントへの連絡には、正確な時間帯が要ります。

Q. 停電のあいだ、冷蔵庫はどうしますか。 A. 飲食店などのテナントには、個別に伝えて対応してもらいます。発電機を用意する、前日に在庫を減らす、クーラーボックスを使う。選択肢を示すと、対応してもらいやすくなります。

Q. 委託先を替えると、手続きが要りますか。 A. 選任しないことの承認や、保安規程の変更が必要になることがあります。所轄の産業保安監督部に確かめてください。手続きが終わるまで、空白の期間を作らないようにします。

Q. 委託の費用を下げたいのですが。 A. 点検の回数を減らす形は、保安規程との整合が必要です。先に委託先に相談してください。複数の建物をまとめて委託することで単価が下がることがあります。

Q. キュービクルの周りに物を置いてはいけませんか。 A. 点検の作業に必要な空間が定められています。扉が開かない、人が入れない状態にしないでください。柵の中に物置を作っている建物がありますが、避けてください。

Q. 小動物の侵入は、どう防ぎますか。 A. 隙間をふさぐこと、周りの草を刈ること、餌になるものを近くに置かないことです。ごみ置き場がキュービクルの近くにある建物は、とくに注意してください。委託先に相談すると、対策の方法を教えてもらえます。

Q. 複数の建物をまとめると、必ず安くなりますか。 A. 条件が良くなることが多くありますが、拠点から遠い建物の対応が遅くなることがあります。建物ごとの所要時間を確かめてから決めてください。

Q. 委託先の担当者が毎回替わります。 A. 保安法人では起こりえます。建物の特徴を伝える手間が毎回かかるようなら、担当を固定できないか相談してください。単線結線図と過去の指摘を渡しておくと、引き継ぎが速くなります。