定期報告の提出|出す先と時期、遅れたときの動き
目次
調査や検査は業者に頼んだ。では、その報告書はどこへ、いつまでに出すのか。建築基準法の定期報告は、調査や検査そのものよりも、提出の段取りでつまずきます。出す先が消防ではなく特定行政庁であること、時期が建物ごとに決まっていることが、知られていないためです。
この記事では、定期報告の提出を、4つの報告の種類、出す先、時期の決まり方、出すまでの段取り、遅れたときの動きの順に整理します。対象の建物も時期も、自治体によって定められ方が違います。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。
結論:出す先は特定行政庁で、時期は建物ごとに決まっている
定期報告は、建物の所有者か管理者が、特定行政庁へ出すものです。特定行政庁とは、建築主事を置く自治体のことで、実務としては市区町村か都道府県の建築指導の部署にあたります。
ここで押さえるのは3つです。
1つ目は、消防への報告とは別のものだということです。消防用設備等の点検結果は消防署へ、定期報告は特定行政庁へ出します。混同すると、片方が抜けます。
2つ目は、業者が出してくれるとは限らないことです。調査や検査をした資格者が代行することもありますが、報告する義務は所有者か管理者にあります。
3つ目は、時期が建物ごとに決まっていることです。自治体が、用途と地区ごとに報告の時期を指定しています。
3つのうち、いちばん多い事故は2つ目です。「業者がやっていると思っていた」という形で、何年も出ていないことに後から気づきます。契約書に代行が含まれているかを確かめてください。
4つの報告がある
定期報告は1種類ではありません。建物と設備で分かれています。
| 報告の種類 | 見るもの |
|---|---|
| 特定建築物定期調査 | 敷地、構造、防火、避難など建物そのもの |
| 建築設備定期検査 | 換気、排煙、非常用照明、給排水 |
| 防火設備定期検査 | 防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーンなど |
| 昇降機等定期検査 | エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機 |
4つは、対象になる建物も周期も別々です。自分の建物で、どれが対象になるかを一覧にしておかないと、1つだけ抜けます。昇降機は保守業者が、防火設備は別の業者がという形で担当が分かれていることが多く、そこが抜ける原因になります。
出す先を間違えない
提出先は、建物の所在地の特定行政庁です。ただし、実際の窓口は自治体によって違います。
確かめるのは3つです。
1つ目は、部署の名前です。建築指導課、建築安全課、建築審査課など。
2つ目は、受付の方法です。窓口へ持参、郵送、電子。指定の団体が受付の窓口になっている自治体があります。
3つ目は、部数と添付です。正副の部数、写真の付け方、図面の要否。
指定の団体が窓口になっている場合、直接役所へ持って行っても受け付けられません。調査をした資格者は知っていることが多いので、報告書を受け取るときに提出先まで聞いておくと早く済みます。
時期の決まり方
報告の時期は、自治体が用途と地区ごとに指定しています。全国で同じ月ではありません。
決まり方は3つです。
1つ目は、用途による区分です。病院、旅館、物販店など、用途ごとに報告の月が決められています。
2つ目は、周期です。毎年のもの、3年に1回のものがあります。特定建築物定期調査は3年に1回、建築設備定期検査は毎年という形が多く使われています。
3つ目は、地区による区分です。同じ用途でも、地区で月を分けている自治体があります。
自分の建物の報告月は、特定行政庁のホームページで確かめられます。一覧表が公開されていることが多くあります。分かったら、社内の予定表に毎年入れてください。通知が来ると思って待っていると、来ない自治体もあります。
出すまでの段取り
報告の月に業者を呼んでも間に合いません。逆算します。
段取りは4段です。
1つ目は、業者に依頼することです。報告の月の2か月から3か月前。繁忙期は予約が取れません。
2つ目は、調査や検査を受けることです。立ち入る部屋や、止める設備があるので、テナントに事前に知らせます。
3つ目は、報告書を受け取ることです。指摘があれば、この段階で分かります。
4つ目は、提出することです。報告の月のうちに出します。
指摘が出た場合も、提出は遅らせません。「直してから出す」と考えて出さずにいると、未報告になります。指摘を載せたまま出して、改善の予定を添えるのが基本です。
指摘が出たあとの動き
報告書には、要是正として指摘が載ることがあります。放置すると次の報告でも残ります。
動きは4つです。
1つ目は、内容を分けることです。すぐ直せるもの、費用がかかるもの、使い方の問題。
2つ目は、期限を決めることです。次の報告までに直すのか、今年度中なのか。
3つ目は、直したことを記録に残すことです。写真と、直した日。
4つ目は、次の報告で改善済みとして載せることです。調査の資格者に、前回の指摘を伝えます。
同じ指摘が3回続いているものは、直し方ではなく建物の使い方に原因があります。避難経路に物が置かれる、防火戸の前がふさがれる。設備を直しても元に戻るタイプの指摘です。
遅れたとき、出していなかったとき
何年も出していないことに気づくことがあります。そのときに隠さないことが大事です。
動きは3段です。
1つ目は、特定行政庁に連絡することです。いつから出ていないか、今の建物の状況を伝えます。
2つ目は、調査を受けることです。最新の状態で報告書を作ります。
3つ目は、出すことです。遅れた理由を添えます。
報告しないこと自体が、法令で罰則の対象とされています。ただし、気づいて自分から動く場合と、指摘されてから動く場合では、その後の扱いが変わります。まず連絡してください。
業者の選び方と契約の見方
定期報告の調査や検査は、資格を持つ人しか行えません。誰に頼むかで、その後の手間が変わります。
見るのは4つです。
1つ目は、資格です。特定建築物調査員、建築設備検査員、防火設備検査員、昇降機等検査員。報告の種類ごとに資格が違います。
2つ目は、4つをまとめて頼めるかです。別々の業者に頼むと、日程の調整だけで手間がかかります。
3つ目は、提出の代行が含まれるかです。含まれない契約もあります。含まれない場合は、自分で出すことになります。
4つ目は、是正の見積もりが出せるかです。指摘が出たあとに、別の業者を探すことになると時間がかかります。
契約書に「提出まで」と書かれているかを確かめてください。ここが曖昧なまま何年も過ぎている建物があります。
テナントへの知らせ方
調査や検査では、専有部に立ち入り、設備を止めることがあります。事前に知らせないと当日に入れません。
知らせるのは4つです。
1つ目は、日程です。日付と、おおよその時間帯。
2つ目は、立ち入る範囲です。天井裏、空調の吹き出し口、非常用照明、防火戸の周り。
3つ目は、止める設備です。防火シャッターを動かす、エレベーターを止める。
4つ目は、準備してほしいことです。防火戸の前を空ける、天井点検口の下を空ける。
4つ目を先に伝えると、当日がとても速く進みます。物が置かれたままだと、その場で動かすことになり、時間が倍かかります。1週間前に紙で配り、前日にもう1回知らせる形が確実です。
記録として残しておく
定期報告は、数年に1回のものがあります。担当者が替わると、前回のことが分かりません。
残すのは4つです。
1つ目は、報告書の控えです。受付の印があるもの。
2つ目は、指摘の一覧と是正の記録です。
3つ目は、頼んだ業者と費用です。次に見積もりを取るときの基準になります。
4つ目は、報告の月です。自分の建物の報告月を、表紙に大きく書いておきます。
4つを1つのファイルに、報告の種類ごとに綴じます。引き継ぎのときに、このファイルを渡せば足りる形にしておくと、抜けが起きません。
4つの報告を1枚の表にする
定期報告でいちばん多い抜けは、4つのうち1つを忘れることです。担当する業者が分かれているためです。1枚の表にまとめます。
入れる列は5つです。
1つ目は、報告の種類です。特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機等の4行。
2つ目は、対象かどうかです。自分の建物が対象になるかを、○と×で書きます。×の理由も一言書いておきます。あとで「本当に対象外か」を確かめ直すときに使えます。
3つ目は、周期と報告の月です。毎年か3年に1回か。何月に出すか。
4つ目は、頼んでいる業者です。会社名と担当者、連絡先。
5つ目は、前回出した日です。受付の印がある控えの日付を書きます。
表は年度の初めに見直します。前回出した日から周期を足せば、次の期限が出ます。期限の3か月前に業者へ連絡する日も、同じ表に書いておくと動けます。
複数の建物を持っている場合
事業所や店舗を複数持っていると、建物ごとに報告の月が違います。同じ表で並べて管理します。
やり方は4つです。
1つ目は、建物ごとに1行にすることです。所在地、用途、延べ面積、階数。
2つ目は、所在地の特定行政庁を書くことです。自治体が違えば、時期も窓口も違います。同じ会社の建物でも、扱いは別々になります。
3つ目は、報告の月で並べ替えることです。月ごとに、その年に出すものが見える形にします。
4つ目は、担当者を決めることです。建物ごとに、誰が段取りするか。
本社で一括して管理するか、各拠点に任せるかを決めておきます。どちらでも構いませんが、決めていない建物がいちばん抜けます。本社が知らず、拠点も知らない状態になります。
まとめ
定期報告は、建物の所有者か管理者が、特定行政庁へ出すものです。
- 消防への報告とは別。出す先も時期も違う
- 種類は4つ。特定建築物・建築設備・防火設備・昇降機等
- 時期は自治体が用途と地区ごとに指定している。通知が来ない自治体もある
- 報告する義務は所有者か管理者にある。業者がやってくれるとは限らない
- 指摘が出ても提出は遅らせない。改善の予定を添えて出す
対象の建物も時期も自治体で違います。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。
よくある質問
Q. 定期報告と消防設備点検は、同じものですか。 A. 別のものです。定期報告は建築基準法に基づくもので特定行政庁へ、消防用設備等の点検結果は消防法に基づくもので消防署へ出します。両方が必要な建物が多くあります。
Q. 自分の建物が対象かどうか、どこで分かりますか。 A. 特定行政庁のホームページに、用途と規模の一覧が掲載されていることが多くあります。分からなければ電話で確かめてください。建物の用途、階数、延べ面積を伝えると答えてもらえます。
Q. 報告の時期が分かりません。 A. 特定行政庁が用途と地区ごとに指定しています。ホームページの一覧で確かめるか、電話で聞いてください。通知が来ると思って待たないことです。
Q. 調査は誰に頼めばよいですか。 A. 報告の種類ごとに定められた資格を持つ人に頼みます。建築士が兼ねていることもあります。4つをまとめて頼めるかを聞くと、日程の調整が楽になります。
Q. 業者が提出まで代行してくれますか。 A. 契約によります。含まれていない契約もあります。報告する義務は所有者か管理者にあるので、代行の有無を契約書で確かめてください。
Q. 指摘が出ました。直してから出すべきですか。 A. 直すのを待たずに出します。指摘を載せたまま、改善の予定を添える形が基本です。出さずにいると未報告になり、そちらのほうが重い扱いになります。
Q. 何年も出していませんでした。 A. 特定行政庁に連絡してください。隠して次の報告だけ出すことはできません。自分から動く場合と、指摘されてから動く場合では、その後の扱いが変わります。
Q. 建物を買いました。前の所有者の報告はどうなりますか。 A. 報告の義務は現在の所有者か管理者に移ります。買う前に、直近の報告書と指摘の状況を受け取ってください。受け取っていない場合は、前の所有者か特定行政庁に確かめます。
Q. テナントの区画も調査の対象ですか。 A. 対象です。避難経路、防火設備、非常用照明は専有部にもあります。立ち入りの了解を事前に取ってください。取れないと、その部分が未実施のまま報告することになります。
Q. 報告書の控えは何年残しますか。 A. 法令で年数が決まっているものではありませんが、少なくとも前回分は残します。指摘と是正の経過をたどるために、過去3回分を残している建物が多くあります。
Q. 電子で提出できますか。 A. 電子申請を受け付けている自治体が増えています。ただし写真や図面の添付の方法が決まっていることがあります。所在地の特定行政庁に確かめてください。
Q. 用途を変えたら、報告の内容も変わりますか。 A. 変わることがあります。用途によって対象かどうかも時期も変わります。用途変更を考えた時点で、特定行政庁に相談してください。工事が終わってからでは、手戻りになります。
Q. 空室が多い建物でも報告は要りますか。 A. 要ります。使っていない部分も建物の一部です。空室に物が置かれていると指摘の対象になることがあるので、調査の前に確かめてください。
Q. 報告の月をまたいでしまいました。 A. 気づいた時点で、特定行政庁に連絡して出してください。月を過ぎたから来年でよい、とはなりません。遅れた理由を添えて提出します。