フロンの簡易点検|3か月に1回、誰が何を見るか
目次
業務用のエアコンや冷凍機を持っている事業者には、フロン類の管理に関する義務があります。そのうちいちばん頻度が高いのが簡易点検で、3か月に1回とされています。専門の業者でなくても行えるのですが、やっていない建物が多くあります。
この記事では、フロンの簡易点検を、対象になる機器、誰が行うのか、見る項目、定期点検との違い、記録の残し方の順に整理します。適用される規定は機器の種類と出力で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所在地の都道府県のフロン担当課に確認してください。
結論:3か月に1回、自分たちで見て記録する
フロン類を使う業務用の機器を持つ事業者には、管理者としての義務があります。
やることは大きく3つです。
1つ目は、適切な場所への設置と、周囲の環境の維持です。機器の周りを整え、点検できる状態にしておきます。
2つ目は、点検です。すべての対象機器について3か月に1回以上の簡易点検、一定の出力以上の機器について定期点検が求められています。
3つ目は、記録の作成と保存です。点検の結果、整備の内容、充塡と回収の量。
2つ目のうち、簡易点検は自分たちで行えます。専門の資格は求められていません。3か月に1回、見て記録するだけです。ここをやっていない建物が多いのは、義務があることを知らないためです。
対象になる機器
対象になるのは、業務用の冷凍空調機器です。
代表的なものは4つです。
1つ目は、店舗やビルの業務用エアコンです。天井に埋め込まれたもの、床置きのもの。
2つ目は、冷蔵と冷凍のショーケースです。
3つ目は、冷凍機と冷凍冷蔵ユニットです。
4つ目は、チラーなどの熱源機器です。
家庭用のエアコンは対象になりません。家庭用と業務用の区別は、機器の仕様で決まります。自分の建物の機器がどちらかは、銘板を見るか、設置した業者に確かめてください。
テナントが自分で設置した機器は、その機器を管理している者が義務を負うのが基本です。契約と実態で判断が分かれることがあるので、所在地の都道府県のフロン担当課に確かめてください。
誰が行うのか
簡易点検は、その機器を管理している事業者が行います。
押さえるのは3つです。
1つ目は、資格が要らないことです。専門の資格は求められていません。
2つ目は、自社の人が行えることです。設備の担当者、店舗の従業員。
3つ目は、委託してもよいことです。空調の保守業者に頼むこともできます。
3か月に1回という頻度なので、自社で行うほうが現実的です。保守の契約に含めると、そのぶん費用が乗ります。設備の巡回のついでに見る形にしている建物が多くあります。
見る項目
簡易点検で見るのは、外から分かることです。機器を分解する必要はありません。
見るのは5つです。
1つ目は、異音と異常な振動です。普段と違う音がしていないか。
2つ目は、油のにじみです。配管の接続部や、機器の下に油が垂れていないか。冷媒が漏れると、一緒に油もにじみます。
3つ目は、霜の付き方です。普段と違う場所に霜が付いていないか。
4つ目は、熱交換器の汚れと損傷です。フィンが潰れていないか、ほこりで詰まっていないか。
5つ目は、機器の周りです。物が置かれていないか、腐食していないか。
2つ目がいちばん分かりやすい合図です。冷媒が漏れている機器は、接続部に油のにじみが出ることがあります。見つけたら、空調の業者に連絡してください。
定期点検との違い
簡易点検とは別に、定期点検があります。両方が必要な機器があります。
| 簡易点検 | 定期点検 | |
|---|---|---|
| 対象 | すべての対象機器 | 一定の出力以上の機器 |
| 頻度 | 3か月に1回以上 | 出力によって1年に1回、3年に1回 |
| 行う人 | 資格不要 | 十分な知見を有する者 |
| 方法 | 目視が中心 | 直接法または間接法による確認 |
定期点検は、専門の知見を持つ人が行います。空調の保守業者に頼むのが一般的です。自分の機器が定期点検の対象かどうかは、出力で決まります。銘板の値を確かめて、所在地の都道府県のフロン担当課か保守業者に確かめてください。
漏れを見つけたときの動き
冷媒の漏れが疑われたときは、使い続けないことが原則です。
動きは4段です。
1つ目は、保守業者に連絡することです。症状と、気づいた日時を伝えます。
2つ目は、点検してもらうことです。どこから漏れているかを特定します。
3つ目は、修理してから充塡することです。漏れを直さずに冷媒を足すことは認められていません。
4つ目は、記録に残すことです。整備の内容、充塡した量、回収した量。
3つ目が重要です。「冷えないからガスを足す」を繰り返している現場がありますが、漏れたまま充塡することは認められていません。足しても、また漏れます。
記録の残し方
フロンの管理では、記録の作成と保存が求められています。
残すのは4つです。
1つ目は、点検の記録です。簡易点検と定期点検の実施日と結果。
2つ目は、整備の記録です。修理の内容と日付。
3つ目は、充塡と回収の記録です。業者から受け取る証明書。
4つ目は、機器の一覧です。設置の場所、型番、出力、設置の年。
4つ目を先に作ってください。一覧が無いと、何台あるのかも分かりません。建物を1周して、機器の写真と銘板を撮るところから始まります。半日で終わります。
一定量以上の漏えいは報告が要る
算定した漏えい量が一定を超える場合、国に報告することが求められています。
押さえるのは3つです。
1つ目は、漏えい量を算定することです。充塡した量と回収した量から計算します。
2つ目は、事業者単位で見ることです。建物ごとではなく、事業者全体の合計で判断します。
3つ目は、報告の期限があることです。年度ごとに、定められた時期までに報告します。
2つ目を見落とす会社があります。店舗を多く持つ事業者では、1店舗ごとは少なくても合計すると超えることがあります。各店舗の充塡の記録を本社で集める仕組みが要ります。詳しい扱いは、所在地の都道府県のフロン担当課に確かめてください。
機器を捨てるときの手続き
機器を廃棄するときは、冷媒を回収してから処分します。
流れは4段です。
1つ目は、回収を依頼することです。登録を受けた業者に頼みます。
2つ目は、行程管理票を交付することです。回収から処理までの流れを追う伝票です。
3つ目は、回収されたことを確かめることです。返ってきた伝票を確かめます。
4つ目は、保存することです。
回収せずに廃棄することはできません。解体や改装の工事のときに、業者がまとめて処分してしまうことがあります。工事の契約のときに、フロンの回収を含めることと、伝票を渡してもらうことを書いてください。
機器一覧の作り方
フロンの管理は、機器の一覧が土台になります。無いと点検も記録も始まりません。
入れる列は5つです。
1つ目は、管理番号です。自分たちで付けます。機器にシールを貼っておくと、点検のときに迷いません。
2つ目は、設置の場所です。階、部屋、屋外機の位置。
3つ目は、型番と冷媒の種類です。銘板に書かれています。写真を撮っておくと確実です。
4つ目は、出力です。定期点検の対象かどうかがここで決まります。
5つ目は、設置の年です。古い機器ほど漏れやすくなります。
1つ目のシール貼りが効きます。点検のときに「この機器は一覧のどれか」を探す時間が消えます。番号は建物と階が分かる形にすると、記録を見たときに場所が思い浮かびます。
古い機器と新しい機器で扱いが違う
冷媒には種類があり、古い機器に入っているものほど扱いが厳しくなっています。
押さえるのは3つです。
1つ目は、冷媒の種類です。機器の銘板に書かれています。種類によって、漏えい量の算定の係数が変わります。
2つ目は、古い機器は補充が難しくなることです。生産や輸入が段階的に減らされている冷媒があります。漏れたときに補充できないことが起こりえます。
3つ目は、更新の計画です。古い機器を持っている場合、壊れてからでは対応が遅れます。
2つ目が実務に効きます。「修理すれば使える」と思っていても、冷媒が手に入らなければ止まります。設置から年数がたった機器は、更新の時期を早めに考えてください。保守業者に、その冷媒の入手の見通しを聞くと分かります。
巡回のついでに回す形にする
簡易点検は3か月に1回です。専用の時間を作ると続きません。既にある巡回に組み込みます。
組み込み方は4つです。
1つ目は、四半期の最初の月に固定することです。1月、4月、7月、10月。日付まで決めておくと忘れません。
2つ目は、点検の順路を決めることです。機器一覧の番号順に回れるよう、番号の付け方を場所に沿わせます。
3つ目は、記録の様式を1枚にすることです。機器を縦に、点検項目を横に並べた表。印を付けるだけの形にします。
4つ目は、写真を撮ることです。気になった箇所だけ。前回の写真と比べられます。
3つ目が続くかどうかを決めます。機器ごとに1枚の様式にすると、20台あれば20枚になります。1枚に全部を並べれば、10分で終わります。書く量を減らすほど、実施の記録が残ります。
まとめ
フロンの簡易点検は、3か月に1回、自分たちで見て記録するものです。
- 対象は業務用の冷凍空調機器。家庭用は対象外
- 簡易点検に資格は要らない。設備の巡回のついでに見る形が現実的
- 見るのは、異音・油のにじみ・霜・熱交換器・周囲の5つ
- 一定の出力以上の機器には、別に定期点検がある
- 漏れを直さずに冷媒を足すことは認められていない
適用される規定は機器の種類と出力で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所在地の都道府県のフロン担当課に確認してください。
よくある質問
Q. 簡易点検は誰がやってもよいですか。 A. 資格は求められていません。自社の担当者が行えます。見る項目を決めて、写真つきの手順書を1枚作ると、誰がやっても同じ結果になります。
Q. 3か月に1回を忘れてしまいます。 A. 設備の巡回の予定に組み込んでください。四半期の最初の月に固定すると忘れません。記録の様式に、次回の予定日を書く欄を作る方法もあります。
Q. テナントのエアコンも建物が点検しますか。 A. その機器を管理している者が義務を負うのが基本です。契約と実態で判断が分かれることがあります。所在地の都道府県のフロン担当課に確かめてください。館内規則で役割を決めておくと揉めません。
Q. 定期点検の対象かどうか、どう分かりますか。 A. 機器の出力で決まります。銘板に書かれています。保守業者か、所在地の都道府県のフロン担当課に確かめてください。対象なのに行っていない機器があります。
Q. 冷えないので、ガスを足してもらいました。 A. 漏れを直さずに充塡することは認められていません。どこから漏れているかを特定して、直してから充塡します。足すだけを繰り返すと、また同じことになります。
Q. 記録は何年保存しますか。 A. 保存の年数が定められています。所在地の都道府県のフロン担当課に確かめてください。点検の記録、整備の記録、充塡と回収の記録をまとめて1つのファイルにしてください。
Q. 機器が何台あるか分かりません。 A. 建物を1周して、機器の写真と銘板を撮ってください。半日で終わります。一覧が無いと、点検も記録も始められません。
Q. 漏えい量の報告は、どこに出しますか。 A. 事業者単位で算定し、定められた時期までに報告します。建物ごとではなく事業者全体の合計で判断します。手続きは所在地の都道府県のフロン担当課に確かめてください。
Q. 改装工事で古いエアコンを外します。 A. 冷媒を回収してから処分します。工事の契約に、フロンの回収と行程管理票の交付を含めてください。業者がまとめて処分してしまうと、伝票が残りません。
Q. 油のにじみを見つけました。 A. 保守業者に連絡してください。冷媒が漏れている可能性があります。気づいた日時と場所を記録に残してから連絡すると、調べる範囲が絞れます。
Q. 点検の様式は決まっていますか。 A. 様式そのものは定められていませんが、記録すべき事項があります。点検の日、機器、点検した人、結果。業界団体が様式の例を出していることがあるので、それを土台にすると早く作れます。
Q. 保守契約に簡易点検を含めたほうがよいですか。 A. 含められますが、費用が乗ります。3か月に1回という頻度なので、自社で行うほうが現実的です。定期点検のほうは、専門の知見が要るので業者に頼んでください。
Q. 機器にシールを貼ってよいですか。 A. 構いません。管理番号を貼っておくと、点検のときに探す時間が消えます。屋外機は日光で劣化するので、耐候性のあるシールを選んでください。
Q. 古い冷媒の機器は、すぐ替えるべきですか。 A. すぐでなくて構いませんが、冷媒の入手の見通しを保守業者に聞いてください。漏れたときに補充できないと、その時点で使えなくなります。更新の計画を早めに立てられます。
Q. 点検の様式を1枚にまとめてよいですか。 A. 構いません。記録すべき事項が入っていれば、形は自由です。機器を縦、項目を横に並べた表にすると、1枚で全機器が収まります。書く量が減るほど続きます。
Q. 写真は残す必要がありますか。 A. 義務ではありませんが、気になった箇所だけ撮っておくと次回に比べられます。油のにじみや霜の付き方は、写真で比べるといちばん分かりやすくなります。