蓄電池設備の点検|交換の時期と優先順位
目次
停電したときに動く設備の多くは、蓄電池で動いています。非常用照明、誘導灯、自動火災報知設備、防火シャッター。どれも普段は何もしていないので、電池が劣化していても気づきません。切れていることに気づくのは、停電したときです。
この記事では、蓄電池設備の点検を、どの設備が電池で動くか、寿命と交換の目安、点検で見ること、交換の計画の立て方、記録の残し方の順に整理します。点検の周期と方法は設備の種類と根拠になる法令で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所轄の消防署と保安管理の委託先に確認してください。
結論:普段は何もしていないので、劣化に気づけない
蓄電池は、使わないあいだも劣化します。充電したままにしておく使い方が多く、内部は少しずつ変化していきます。
問題は3つです。
1つ目は、外から見て分からないことです。見た目は変わりません。
2つ目は、普段の動作で分からないことです。照明が点いていても、それは商用の電気で点いています。
3つ目は、必要なときにしか分からないことです。停電して、はじめて足りないことが分かります。
だから、点検と交換の時期を決めて回すしかありません。「壊れたら替える」という考え方が通用しない設備です。設置した年を記録して、年数で判断するのが基本になります。
どの設備が電池で動くか
建物の中で、蓄電池に頼っている設備は思ったより多くあります。
主なものは5つです。
1つ目は、非常用照明です。停電したときに点く照明。器具の中に電池が入っているものと、別置きの電池から電気を取るものがあります。
2つ目は、誘導灯です。避難口や通路を示す緑の表示。常に点いていますが、停電したときは電池で点きます。
3つ目は、自動火災報知設備です。受信機に電池が入っています。
4つ目は、非常用の発電機の始動用です。発電機を回し始めるための電池。ここが切れていると、発電機は動きません。
5つ目は、防火シャッターや排煙設備の制御用です。
4つ目がいちばん見落とされます。発電機の点検はしていても、始動用の電池は別という扱いになっていることがあります。点検の範囲に含まれているかを確かめてください。
寿命と交換の目安
蓄電池には種類があり、寿命の目安が違います。
| 種類 | 使われる場所 | 交換の目安 |
|---|---|---|
| 小形制御弁式鉛蓄電池 | 非常用照明、誘導灯の器具内 | 4年から6年 |
| 据置鉛蓄電池 | 受信機、発電機の始動用 | 5年から7年 |
| アルカリ蓄電池 | 大きな設備の非常電源 | 7年から10年 |
年数はあくまで目安です。温度の高い場所に置かれている電池は早く劣化します。機械室が暑い建物では、目安より短くなります。
正確な目安は、製品の説明書に書かれています。設置のときの資料を確かめてください。無い場合は、型番からメーカーに問い合わせられます。
点検で見ること
点検では、外から分かることと、動かして分かることを確かめます。
見るのは5つです。
1つ目は、外観です。膨らみ、液漏れ、端子の腐食。膨らんでいる電池は、すぐ交換が要ります。
2つ目は、設置の年です。電池に貼られたシールか、記録から確かめます。
3つ目は、充電の状態です。充電装置の表示灯、電圧。
4つ目は、点灯の試験です。非常用照明と誘導灯は、電源を切って点くかを確かめます。
5つ目は、点灯し続ける時間です。決められた時間、点いていられるか。ここがいちばん落ちます。
5つ目が実務の核心です。点くだけなら、劣化した電池でも数分は点きます。決められた時間、点き続けるかが問われます。点検の報告書で、この項目を確かめてください。
交換の計画を立てる
蓄電池の交換は、まとめて時期が来ます。建物を建てたときに一斉に入れているためです。
計画の立て方は4つです。
1つ目は、一覧を作ることです。どこに何個あるか、いつ設置したか。
2つ目は、年度ごとに割ることです。一斉に替えると費用が集中します。古いものと、切れたら困るものから替えます。
3つ目は、優先順位を決めることです。発電機の始動用、避難経路の非常用照明、人の多い階の誘導灯。
4つ目は、費用を先に見積もることです。数が多いと大きな金額になります。年度の予算に乗せるには、前の年から動きます。
3つ目の優先順位を、点検の指摘とは別に自分で決めてください。点検の報告書は「要交換」としか書きません。どこから替えるかは、建物の使い方を知っている側が決めることです。
誘導灯と非常用照明の違い
似ているので混同されますが、別の設備です。
違うのは3つです。
1つ目は、目的です。誘導灯は避難口の場所を示すもの、非常用照明は避難の経路を明るくするものです。
2つ目は、根拠です。誘導灯は消防法、非常用照明は建築基準法の側になります。
3つ目は、点検と報告です。誘導灯は消防用設備等の点検として消防署へ、非常用照明は建築設備定期検査として特定行政庁へ報告します。
点検を頼んでいる業者が別々になることがあります。どちらも蓄電池を持っているので、交換の計画は建物の側でまとめて持ったほうが管理しやすくなります。
交換するときの注意
電池の交換は、同じ型番を選ぶことが基本です。
注意するのは4つです。
1つ目は、型番です。容量と大きさが合っていること。互換品を使う場合は、器具のメーカーに確かめてください。
2つ目は、廃棄です。鉛蓄電池は、決められた方法で処分します。一般のごみとして捨てられません。
3つ目は、交換した日の記録です。電池にシールを貼り、記録にも残します。
4つ目は、交換後の試験です。替えたあとに点灯の試験をして、規定の時間点くかを確かめます。
3つ目のシールが、次の交換のときに効きます。「いつ替えたか分からない電池」を作らないでください。記録が消えると、また年数で判断できなくなります。
器具ごと替える判断
古い建物では、電池だけ替えても器具が古いことがあります。
考えるのは4つです。
1つ目は、器具の設置年です。器具にも寿命があります。
2つ目は、部品の供給です。古い器具は、電池も部品も手に入らなくなります。
3つ目は、LEDへの更新です。誘導灯と非常用照明は、LEDの器具に替えると消費電力が下がります。
4つ目は、費用の比較です。電池の交換を2回繰り返す費用と、器具ごと替える費用を比べます。
2つ目で判断が決まることが多くあります。電池が手に入らない器具は、次に劣化した時点で使えなくなります。保守業者に、その器具の部品の供給の見通しを聞いてください。
記録として残しておく
蓄電池は、年数で判断する設備です。記録が無いと判断できません。
残すのは4つです。
1つ目は、機器の一覧です。場所、種類、型番、個数。
2つ目は、設置と交換の年です。いちばん重要な情報です。
3つ目は、点検の結果です。とくに点灯し続ける時間の結果。
4つ目は、交換の計画です。年度ごとに、どこを替えるか。
2つ目を一覧に書き込むところから始めてください。分からない電池は「不明」と書き、次の点検のときに確かめる印を付けます。分からないまま放置すると、いつまでも判断できません。
置かれている環境を見る
蓄電池の寿命は、置かれている環境で大きく変わります。同じ製品でも、場所によって倍近く違うことがあります。
見るのは4つです。
1つ目は、温度です。高いほど早く劣化します。機械室、屋上、直射日光の当たる場所は短くなります。
2つ目は、換気です。鉛蓄電池は充電のときに気体が出ます。閉め切った狭い場所に置かないことが基本です。
3つ目は、湿気です。端子の腐食につながります。地下や水回りの近くは注意します。
4つ目は、振動です。機械のそばでは、端子が緩むことがあります。
1つ目がいちばん効きます。夏に40度を超える機械室に置かれた電池は、目安の年数より早く劣化します。温度を測って記録に残すと、交換の時期を判断する材料になります。扇風機を回すだけで下がることもあります。
停電したときに何分持つか知っておく
電池の容量は、時間で表されます。自分の建物で、何がどのくらい持つのかを知っておきます。
確かめるのは4つです。
1つ目は、非常用照明の点灯時間です。建築基準法で求められる時間があります。それを超えて点き続けるわけではありません。
2つ目は、誘導灯の点灯時間です。設備によって異なります。
3つ目は、自動火災報知設備の稼働時間です。受信機がどのくらい動き続けるか。
4つ目は、発電機が動き出すまでの時間です。発電機がある建物では、電池で持たせる時間は短くて済みます。
1つ目と2つ目が短いことを知らない人が多くいます。停電が長引けば、非常用照明は途中で消えます。懐中電灯を備えておく必要があるのは、このためです。年次点検の停電作業のときに、実際に消えるのを見ておくと実感できます。
まとめ
蓄電池設備は、普段は何もしていないので、劣化に気づけない設備です。
- 非常用照明、誘導灯、自動火災報知設備、発電機の始動用、防排煙の制御に使われる
- 種類によって交換の目安が違う。4年から10年の幅がある。暑い場所ほど短い
- 点検では、決められた時間点き続けるかがいちばん重要
- 交換は一斉に時期が来る。年度ごとに割り、古いものと切れたら困るものから替える
- 交換した日をシールと記録に残す。「いつ替えたか分からない電池」を作らない
点検の周期と方法は設備の種類と根拠になる法令で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所轄の消防署と保安管理の委託先に確認してください。
よくある質問
Q. 蓄電池はどのくらいで交換しますか。 A. 種類によって4年から10年の幅があります。製品の説明書に目安が書かれています。温度の高い場所では短くなるので、機械室が暑い建物は注意してください。
Q. 点いているから大丈夫ではないですか。 A. 点くだけなら、劣化した電池でも数分は点きます。決められた時間、点き続けるかが問われます。点検の報告書で、点灯時間の項目を確かめてください。
Q. 発電機の始動用の電池は、点検に含まれますか。 A. 含まれていない契約があります。発電機の点検と、始動用の電池が別扱いになっていることがあります。点検の範囲に含まれるかを、保守業者に確かめてください。
Q. 電池が膨らんでいます。 A. すぐ交換が必要です。そのまま使い続けないでください。液漏れや破損につながります。業者に連絡して、交換の手配をしてください。
Q. 誘導灯と非常用照明は同じものですか。 A. 別の設備です。誘導灯は避難口の場所を示すもので消防法の側、非常用照明は経路を明るくするもので建築基準法の側になります。点検の業者も報告先も違います。
Q. 一斉に交換の時期が来ました。 A. 年度ごとに割ってください。古いものと、切れたら困るものから替えます。発電機の始動用、避難経路の非常用照明、人の多い階の誘導灯の順が目安です。
Q. 電池だけ替えられますか。 A. 替えられる器具と、替えられない器具があります。古い器具では電池が手に入らないことがあります。保守業者に、部品の供給の見通しを聞いてください。
Q. 交換した電池はどう捨てますか。 A. 鉛蓄電池は、決められた方法で処分します。一般のごみとして捨てられません。交換を頼んだ業者に、引き取りまで含めてもらうのが確実です。
Q. 設置した年が分かりません。 A. 電池にシールが貼られていることがあります。無ければ「不明」として一覧に書き、次の点検のときに業者に確かめてください。替えた時点で、必ずシールを貼る運用にしてください。
Q. 停電の試験は自分たちでできますか。 A. 非常用照明や誘導灯の点灯の確認は、試験用のスイッチや引きひもで行える器具があります。ただし、点灯し続ける時間の確認は点検として行います。方法は業者に確かめてください。
Q. LEDに替えると、電池も長持ちしますか。 A. 消費電力が下がるため、同じ容量でも点灯できる時間が長くなることがあります。ただし電池そのものの寿命は変わりません。年数での交換は必要です。
Q. 点検で「要交換」と出ましたが、予算がありません。 A. 優先順位を付けて、年度ごとに進める計画を示してください。避難に直結する場所から替えます。計画を書面にすると、予算も通りやすくなります。
Q. 機械室が暑いのですが、電池に影響しますか。 A. あります。温度が高いほど早く劣化します。夏の室温を測って記録に残してください。換気を良くする、扇風機を回すといった対応で下がることがあります。
Q. 非常用照明は何時間持ちますか。 A. 法令で求められる時間があり、それを超えて点き続けるわけではありません。停電が長引けば消えます。懐中電灯を備えておいてください。時間は設備によって違うので、業者に確かめてください。
Q. 電池の一覧は、どこまで細かく作りますか。 A. 場所、種類、型番、個数、設置か交換の年。この5つで足ります。誘導灯のように数が多いものは、階ごとにまとめて1行にして構いません。全部を1台ずつ書こうとすると、作るところで止まります。
Q. 点検を頼んでいる業者が設備ごとに違います。 A. 交換の計画は、建物の側でまとめて1枚に持ってください。業者ごとに別々の報告書を見ていると、全体の時期が見えません。年ごとの費用も、まとめないと見積もれません。