設備点検の回し方実務2026.09.16 公開ST-34

石綿の事前調査|改修工事の前に建物側がやること

目次

石綿(アスベスト)の事前調査は、建物を壊すときだけの話ではありません。テナントの内装を変える、天井を張り替える、配管を1本替える。こうした小さな改修でも、原則として調査が必要とされています。

この記事では、石綿の事前調査を、いつから何が義務になったか対象になる工事誰が調査するか建物側がやること報告と掲示の順に整理します。制度は段階的に変わっており、対象や手続きも改正されています。自分の工事に何が適用されるかは、所轄の労働基準監督署と自治体の環境担当課に確認してください。

建物の管理記録や点検の様式そのものを探している場合は、点検板に施設向けの様式がそろっています。

結論:規模や金額によらず、原則すべての工事で要る

石綿の事前調査でいちばん多い誤解は、「小さい工事なら要らない」というものです。

内容
調査そのもの規模や金額によらず、原則すべての解体・改修工事で必要
調査結果の報告一定規模以上の工事で必要
有資格者による調査一定の時期以降、義務化されている

調査は全部の工事、報告は一定規模以上という分かれ方をしています。ここを混ぜると、「うちは小さいから何も要らない」という結論になってしまいます。

段階的に強くなってきた

この制度は、数年かけて段階的に広がってきました。途中で止まっている知識のまま進めると、いまの基準を外します。

時期変わったこと
2021年4月すべての改修工事で調査が必要に
2022年4月一定規模以上は調査結果の報告が義務に
2023年10月建築物は有資格者による調査が義務に
2026年1月工作物についても有資格者による調査が義務に

「前にやったときは要らなかった」が通じない分野です。工事の計画を立てるたびに、いまの扱いを確かめます。

段階的に対象が広がってきた2021/4全改修で調2022/4一定規模は報告2023/10建築物は有資格者2026/1工作物も有資格者都度いまの扱いを確認「前にやったときは要らなかった」が通じない分野
段階的に対象が広がってきた

誰が調査するか

調査は、資格を持った人が行うこととされています。工事をする事業者の側に義務がありますが、建物の側も知っておく必要があります。

対象調査する人
建築物建築物石綿含有建材調査者など
工作物工作物石綿事前調査者(2026年1月から)
分析分析の技能を持つ者

無資格の調査は認められません。見積りを取るときに、調査を誰が行うか、資格を持っているかを確かめておきます。

建物の側にできること

調査は工事事業者の義務ですが、建物の側に資料があると調査が早く、正確になります。

  • 設計図書(竣工図、仕上げ表)
  • 過去の改修の記録
  • 過去の石綿調査の結果
  • 建材のメーカーと型番が分かる資料
  • 前回の工事の写真

3つ目があると、同じ場所を何度も調べずに済みます。調査の結果は建物の資産なので、工事が終わったら必ず写しをもらって保管します。

資料があると調査が早く終わる用意するもの効くところ設計図書・仕上げ表書面で判断できる範囲が増える過去の改修の記録手を入れた場所が分かる**過去の調査結果****同じ場所を調べ直さずに済む**前回の工事の写真建材の特定に使える
資料があると調査が早く終わる

対象になる工事の範囲

「改修」の範囲が広いので、思っているより多くの作業が対象になります。

工事一般的な扱い
解体対象
内装の変更(間仕切り、天井、床)対象
設備の更新(配管、ダクト、空調)対象
外壁の改修対象
電気工事で壁や天井に穴を開ける対象になり得る
塗装の塗り替え建材に手を入れるかによる

5つ目のような小さな作業でも、建材を壊す・削る・穴を開けるなら対象になり得ます。判断に迷うなら、工事の前に所轄の労働基準監督署へ確認します。

対象外になる場合もある

建材に一切手を触れない作業(たとえば、既存の面をそのまま残して上から何かを置くだけ)は、対象外とされることがあります。ただし判断は個別なので、自分で「触らないから大丈夫」と決めないのが安全です。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

建物の管理記録を一から作るのは手間がかかります。既成の様式を使いたい方は点検板をご覧ください。

点検板で様式をさがす

報告と掲示

一定規模以上の工事では、調査の結果を電子システムで報告することとされています。報告するのは工事の事業者です。

やることいつ
事前調査を行う工事に着手する前
結果を報告するあらかじめ(着手前)
調査結果の掲示工事の場所に、見やすい場所へ
記録の保存一定期間

報告は着手前です。工事が始まってからでは遅く、日程に余裕を持って動く必要があります。分析が必要になると、結果が出るまでにさらに時間がかかります。

掲示は建物の利用者が見る

調査結果の掲示は、工事の場所の見やすいところに出されます。これはテナントや入居者の目に入ります。

何の掲示なのかを建物側から先に説明しておくと、余計な不安を生まずに済みます。「石綿」という言葉だけが見えると、含有していない場合でも心配されます。

  • 工事の内容と期間
  • 事前調査を行ったこと
  • 含有の有無
  • 含有していた場合の作業の方法と養生

含有していないなら、そう書いてある掲示です。ここを一緒に案内すると落ち着きます。

建物側が段取りですること

工事事業者の義務であっても、建物の側で先に動いておくと工期と費用が変わります。

段階やること
1工事の計画を立てる段階で、石綿の調査が要ることを織り込む
2設計図書と過去の調査結果を用意する
3見積りに調査と分析の費用が入っているかを確認する
4分析が必要になった場合の日程の余裕を見る
5テナント・入居者への説明の文面を用意する
6調査結果の写しを受け取って保管する

3が抜けると、あとから追加になります。「工事一式」の見積りに調査が含まれていないことがあります。調査、分析、報告のどこまでが含まれるかを明記してもらいます。

分析が必要になると日程が延びる

図面や建材の情報から判断できない場合、試料を採って分析することになります。ここで日程が延びます。

  • 試料を採る(現場で)
  • 分析機関に出す
  • 結果が出る
  • 結果に応じて工事の方法を決める
  • 報告する

「工事は来週から」という段階で調査を始めると間に合いません。計画の初期に織り込んでおきます。

分析が入ると日程が延びる1書面調査図面と資料から2現地調査資格者が見3**分析**結果が出るまで時間がかかる4報告・着手報告は着手前に済ませ
分析が入ると日程が延びる

建物の石綿の状況を一度まとめておく

工事のたびに一から調べるのは、時間も費用ももったいない形です。建物として1つの資料にまとめておくと、次の工事から早くなります。

まとめるもの内容
竣工の年使われている可能性のある建材の目安になる
調査した範囲と結果含有あり/なし/未調査の別
除去・封じ込めた範囲図面に色を塗る
残っている範囲次に触るときに要注意
分析の報告書原本を保管

4つ目がいちばん大事です。封じ込めや囲い込みで対応した箇所は、石綿が残ったままです。そこに次の工事で穴を開けると、飛散させてしまいます。

図に色を塗る

文章だけでは、10年後に読んだ人が場所を特定できません。平面図に色を塗り、写真を添えるのがいちばん確実です。

  • 調査済みで含有なし … 1色
  • 調査済みで含有あり、除去済み … 別の色
  • 調査済みで含有あり、残置 … 目立つ色
  • 未調査 … 白のまま

未調査を白のままにしておくのがポイントです。塗られていない場所は「まだ分かっていない」と一目で分かります。

建物の石綿の状況を1枚に安全そのまま工事できる要注意除去済みか残置かを書**白のまま**まだ分かっていない**白のまま**次に触る前に調べる調査済み ↑未調査 ↓← 含有あり含有なし →
建物の石綿の状況を1枚にまとめる

工事の前に入居者へ伝えること

改修工事では、掲示のほかに建物側からの案内が要ります。先に出しておくと問い合わせが減ります。

伝えること書き方の目安
工事の内容と期間いつからいつまで、どの区画か
事前調査を行ったこと「調査を行いました」と明記する
含有の有無無ければ「含まれていませんでした」
含有していた場合の対応作業の方法、養生、立入制限
音や振動が出る時間帯時刻で書く
連絡先質問の受付

2つ目と3つ目を書かないと、掲示だけが独り歩きします。「石綿」という言葉が目に入ると、含有していない場合でも心配されます。調べたうえで無かった、という事実をこちらから伝えるのが落ち着く形です。

費用と工期の見積り方

石綿の調査は、工事の見積りに埋もれやすい項目です。分けて出してもらうと比べられるようになります。

項目確かめること
書面調査図面と資料から判断する作業
現地調査資格者が現場を見る作業。範囲と箇所数
分析何検体ぶんか。1検体あたりの単価
報告電子システムへの報告を含むか
掲示物の作成含むか
含有時の追加どういう場合にいくら増えるか

3つ目の「検体数」で金額が動きます。建材の種類が多い建物では検体が増えます。最初の見積りは検体数を仮置きしていることが多いので、現地調査のあとに変わる前提で聞いておきます。

工期に見る余裕

一般には、次のくらいの段取りで見ておくと足ります。

  • 書面調査と現地調査 … 数日から1週間程度
  • 分析 … 結果が出るまでに時間がかかる
  • 報告 … 着手前に済ませる
  • 含有していた場合の届出と準備 … さらに追加

「工事の日程を先に決めてから調査を始める」と、ほぼ間に合いません。調査を含めた日程で計画を立てます。

見積りは検体数で動く項目確かめること書面調査図面と資料から判断現地調査範囲と箇所数**分析****何検体ぶんか**報告・掲示物含むか別か
見積りは検体数で動く

含有していたとき

石綿が含まれていた場合、工事の方法が変わります。除去、封じ込め、囲い込みといった対応が必要になり、作業の区画や養生も厳しくなります。

変わること内容
工法除去・封じ込め・囲い込み
工期養生と作業に時間がかかる
費用大きく上がることがある
届出レベルに応じた届出が必要になる
周知掲示、隔離、立入制限
廃棄物石綿含有廃棄物として処理

費用と工期の両方が動きます。だから、改修の予算を組む段階で「調査の結果によっては増える」ことを織り込んでおく必要があります。

建物の記録に残す

除去した範囲、封じ込めた範囲、残っている範囲を図面に色を塗って残します。次の工事のときに、同じ調査を一からやらずに済みます。

残っている石綿は、次の担当者に確実に伝わる形にしておきます。文章だけだと場所が特定できません。図と写真を添えます。

よくある質問

小さな改修でも事前調査は必要ですか

規模や金額によらず、原則すべての解体・改修工事で必要とされています。「調査は全部の工事、報告は一定規模以上」という分かれ方なので、小さい工事でも調査そのものは要ります。判断に迷うなら所轄の労働基準監督署に確認します。

誰が調査しますか

資格を持った調査者が行います。建築物は建築物石綿含有建材調査者など、工作物は工作物石綿事前調査者とされています。無資格の調査は認められないため、見積りの段階で資格の有無を確かめます。

建物の側は何を用意しますか

設計図書、過去の改修の記録、過去の石綿調査の結果があると、調査が早く正確になります。特に過去の調査結果があると、同じ場所を何度も調べずに済みます。工事が終わったら結果の写しを必ず受け取って保管します。

掲示を見た入居者から問い合わせが来ます

何の掲示なのかを建物側から先に説明しておくと、余計な不安を生みません。工事の内容と期間、事前調査を行ったこと、含有の有無をまとめて案内します。含有していないなら、そう書いてある掲示です。

見積りのどこを見ればよいですか

書面調査・現地調査・分析・報告・掲示物の作成に分けて出してもらいます。特に分析は検体数で金額が動くため、何検体ぶんの見積りかを確かめます。最初の見積りは検体数を仮置きしていることが多く、現地調査のあとに変わる前提で聞いておきます。

費用は誰が負担しますか

一般には、工事の費用の一部として扱われます。「工事一式」の見積りに調査が含まれていないことがあるため、調査・分析・報告のどこまでが含まれるかを明記してもらいます。含有していた場合の追加についても、先に考え方を確認しておきます。

分析にはどのくらいかかりますか

試料を採って分析機関に出し、結果が返ってくるまでに時間がかかります。「工事は来週から」という段階で調査を始めると間に合いません。計画の初期に織り込み、日程に余裕を持たせます。

前の工事のときは要りませんでした

制度は段階的に広がってきました。2021年4月にすべての改修工事で調査が必要になり、2022年4月に一定規模以上の報告が義務化、2023年10月に建築物は有資格者による調査が義務化されています。「前は要らなかった」は通じません。

封じ込めた石綿は、そのままでよいですか

封じ込めや囲い込みで対応した箇所は、石綿が残ったままです。そこに次の工事で穴を開けると飛散させてしまいます。残っている範囲を平面図に目立つ色で塗り、写真を添えて記録に残します。次の担当者に確実に伝わる形にしておきます。

石綿が見つかったらどうなりますか

除去・封じ込め・囲い込みといった対応が必要になり、工期も費用も上がります。改修の予算を組む段階で、調査の結果によって増える可能性を織り込んでおきます。対応した範囲と残っている範囲は、図面に色を塗って記録に残します。

まとめ

石綿の事前調査は、規模や金額によらず、原則すべての解体・改修工事で必要とされています。「調査は全部の工事、報告は一定規模以上」という分かれ方なので、小さな内装工事でも調査そのものは要ります。

制度は段階的に広がってきました。2021年4月、2022年4月、2023年10月、そして2026年1月と対象が増えています。「前にやったときは要らなかった」が通じない分野です。

建物の側にできるのは、資料を用意することです。設計図書、過去の改修の記録、そして過去の石綿調査の結果。特に3つ目があると、同じ場所を何度も調べずに済みます。工事が終わったら結果の写しを必ず受け取ります。

工事のたびに一から調べるのはもったいないので、建物として1枚の資料にまとめておきます。平面図に色を塗り、調査済みで含有なし/除去済み/残置/未調査を分けます。未調査を白のままにしておくと、分かっていない場所が一目で見えます。

そして、分析が必要になると日程が延びます。「工事は来週から」の段階で調査を始めると間に合いません。改修の計画を立てる初期の段階で織り込み、見積りに調査と分析が含まれるかを明記してもらうところから始めます。

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実際に使える様式が必要な方へ

建物の管理記録や点検の様式を探している方は点検板をご覧ください。

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