消防用設備等設置届の出し方|4日以内と着工届の違い
目次
消防用設備等の設置届は、内装工事や用途の変更をしたときに初めて出てくる手続きです。普段は点検と報告だけを回している施設の担当者にとって、着工届との違いや、誰が出すのかが分かりにくいところになります。
この記事では、消防用設備等の設置届を、着工届との違い、いつまでに出すか、誰が出すか、添付する書類、検査と検査済証の順に整理します。必要な書類や様式は所轄の消防本部で異なります。自分の建物に何が必要かは、所轄の消防署に確認してください。
結論:着工届は工事の前、設置届は工事の後
名前が似ているので混ざりますが、この2つはタイミングも出す人も違います。
| 着工届(工事整備対象設備等着工届出書) | 設置届(消防用設備等設置届出書) | |
|---|---|---|
| いつ | 工事に着手する日の10日前まで | 工事が完了した日から4日以内 |
| 誰が | 甲種消防設備士 | 建物の関係者(防火対象物の関係者) |
| 何のため | これから何を付けるかを知らせる | 付け終わったことを知らせ、検査を受ける |
| 対象 | 甲種消防設備士でなければ工事できない設備 | 設置した消防用設備等 |
着工届は工事をする側、設置届は建物の側が出すというのが、いちばん大事な分かれ目です。工事業者が着工届を出したからといって、設置届まで出ているとは限りません。
「業者が全部やってくれる」とは限らない
実務では、工事業者が設置届の作成まで手伝ってくれることが多くあります。ただし届出の名義は建物の関係者で、義務も建物の側にあります。
契約や見積りに「設置届の提出まで含む」と書かれているかを確かめておきます。書かれていなければ、自分たちで出すことになります。ここは点検結果報告書と同じ構図です。報告のほうは消防設備点検報告書の出し方にまとめています。
いつ、どこへ出すか
| 内容 | |
|---|---|
| 期限 | 工事が完了した日から4日以内 |
| 提出先 | 所轄の消防長または消防署長(所轄の消防署) |
| 出す人 | 防火対象物の関係者(所有者・管理者・占有者) |
| そのあと | 原則として消防署の検査を受ける |
4日以内というのは短い期限です。工事が終わってから書類を集め始めると間に合いません。工事の途中から、必要な書類を業者と一緒にそろえておくのが実務のやり方になります。
日数の数え方に気をつける
「4日以内」の数え方は、所轄によって案内が異なることがあります。工事完了の予定日が決まった段階で、いつまでに何を持っていくかを所轄の消防署に確認しておくと確実です。
オンラインで申請できる地域が増えています。東京消防庁をはじめ、電子申請の窓口を用意している消防本部があります。窓口へ行く前に、所轄のサイトを見ておくと往復が減ります。
どんなときに必要になるか
設置届が必要になるのは、新築のときだけではありません。施設の担当者が出会うのは、むしろ改装のときです。
| 場面 | 起きること |
|---|---|
| テナントの内装工事 | 間仕切りが変わり、感知器やスプリンクラーヘッドの位置が変わる |
| 用途の変更 | 事務所を店舗にした。必要な設備が増えることがある |
| 設備の増設 | 消火器の追加、自動火災報知設備の増設 |
| 設備の更新 | 受信機の入替、スプリンクラーの改修 |
| 建物の増築 | 区画と設備がまとめて変わる |
2つ目がいちばん見落とされます。用途が変わると防火対象物の区分が変わり、これまで不要だった設備が必要になることがあります。工事が終わってから設置を求められると、費用も工期も膨らみます。
着工の前に相談する
内装の工事を計画する段階で、所轄の消防署に相談しておくのがいちばん確実です。図面を持っていけば、必要な設備と届出を教えてもらえます。
一般には、次の順で進めている建物が多くあります。
- 用途と間取りの計画ができた時点で、所轄の消防署へ相談する
- 必要な設備と届出の種類を確認する
- 工事業者に、着工届と設置届のどちらを誰が出すかを確認する
- 工事の期間に、添付書類をそろえる
- 完了後4日以内に設置届を出す
- 検査を受ける
添付する書類
設置届には、いくつかの書類を添えることとされています。所轄によって求められるものが違うので、ここは必ず確認します。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 消防用設備等の設計に関する図書 | 平面図、配線図、系統図 |
| 試験結果報告書 | 設備ごとに、動かして確かめた結果 |
| 使用した機器の資料 | 認定や検定に関するもの |
| 工事を行った者の資料 | 消防設備士免状の写しなど |
| 防火対象物の概要 | 用途、階数、面積 |
「試験結果報告書」は工事業者が作るものです。設置届と一緒に出すため、完了の時点で受け取れるように、あらかじめ頼んでおきます。これが遅れると4日以内に間に合いません。
図面は建物側にも控える
設置届に添えた図面は、その後の点検でも使う書類です。感知器の位置や系統が載っているので、次の点検のときに業者へ渡せます。
提出したきりで建物側に控えが無いという状態が実際にあります。出す前に写しを取り、点検の書類と同じところに綴じておきます。保管の考え方は建物の法定点検一覧にまとめています。
工事業者との分担を先に決める
設置届でつまずくのは、書類の難しさではなく誰が何をやるかが決まっていないことです。工事の契約を結ぶ段階で、次の5つを確認しておきます。
| 確認すること | 決めておく形 |
|---|---|
| 着工届を誰が出すか | 甲種消防設備士が出す。業者側 |
| 設置届の作成を手伝うか | 手伝う/建物側で作る |
| 設置届の提出を代行するか | 名義は建物側。持参まで頼めるか |
| 試験結果報告書をいつもらうか | 工事完了の時点で受け取る |
| 検査の立会いに来るか | 来る/来ない |
4つ目が期限に直結します。試験結果報告書は業者しか作れない書類で、これが無いと設置届を出せません。「工事完了と同時に受け取る」と決めておくと、4日以内に間に合います。
相見積りのときに伝えること
金額だけを比べると、あとで手間の差が出ます。依頼の段階で次を伝えておくと、条件がそろった見積りが出てきます。
- 工事の範囲(設置・移設・増設・更新のどれか)
- 着工届と設置届のどちらを誰が出すか
- 試験結果報告書と図面の提出時期
- 検査の立会いを含むか
- 是正が出たときの対応が含まれるか
5つ目が抜けていると、検査で指摘が出た分が別料金になることがあります。工事の不備による是正なのか、追加の要望なのかの線引きも、先に確認しておきます。
検査と検査済証
設置届を出すと、原則として消防署の検査を受けることになります。書類だけで終わる手続きではありません。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 設置届を提出する |
| 2 | 検査の日程を調整する |
| 3 | 検査を受ける(実際に設備を動かす) |
| 4 | 指摘があれば是正する |
| 5 | 検査済証が交付される |
検査では実際に設備を動かします。感知器を作動させる、ベルを鳴らす、スプリンクラーの弁を開けるといったことが行われるため、入居者や利用者への周知が要ります。
当日に立ち会う人を決めておく
検査には、建物の関係者と工事業者の双方が立ち会うのが一般的です。鍵の手配、区画への立入、放送設備の操作など、当日に必要になることがあります。
- 各区画の鍵を誰が持つか
- 館内放送を誰が操作するか
- 受信機の前に誰が付くか
- 是正の指摘が出たときに、誰が判断するか
4つ目を決めていないと、その場で答えられずに持ち帰りになります。費用が絡む判断は事前に範囲を決めておきます。
検査済証は保管する
交付された検査済証は、建物の書類として保管します。その設備が正規の手続きを経て設置されたことを示すものです。
建物を売買したり、管理会社が替わったりするときに引き継ぐ書類でもあります。点検の報告書や図面と同じファイルにまとめておきます。
届出のあとに点検が始まる
設置届と検査で終わりではありません。その設備は、その日から点検と報告の対象になります。
| 時点 | 次に来るもの |
|---|---|
| 設置・検査済 | ここが起点 |
| 6か月後 | 機器点検 |
| 1年後 | 総合点検 |
| 1年または3年後 | 消防署への報告 |
設備を増やしたのに、点検の委託先に伝えていないというのが実際に起きます。次の点検で「この設備は契約に入っていない」となり、その部分だけ未実施で報告することになります。
増やしたら3か所に反映する
工事が終わったら、建物側で3つを更新します。
- 点検の委託契約(対象設備と台数)
- 建物の法定点検の一覧(次回の期限)
- 消防計画(設備の構成が変わった場合)
3つ目を忘れやすいところです。消防計画に書かれた設備の内容と実際がずれると、防火対象物点検で指摘が出ることがあります。消防計画の直し方は消防計画の作り方にまとめています。
点検の全体像は消防設備点検とはにまとめています。
設置届が要らない場合
すべての工事で届出が必要になるわけではありません。軽微なものは対象外とされていることがあります。
| 例 | 一般的な扱い |
|---|---|
| 消火器の入替(同じ本数・同じ位置) | 届出は不要とされることが多い |
| 感知器1個の故障による交換 | 同上 |
| 誘導灯の器具の交換 | 同上 |
| 設備の増設・移設 | 届出が必要になることがある |
| 受信機の入替 | 同上 |
「交換」か「増設・移設」かが分かれ目になりますが、判断は所轄の運用によります。迷ったら工事の前に所轄の消防署へ電話で聞くのがいちばん早く、確実です。
要らないと思って出さなかったものが、後の点検や防火対象物点検で指摘されることがあります。聞いておけば数分で済む話です。防火対象物点検については防火対象物点検とはにまとめています。
よくある質問
着工届と設置届はどちらも必要ですか
対象になる工事では両方必要です。着工届は甲種消防設備士が工事の10日前までに、設置届は建物の関係者が工事完了から4日以内に出すこととされています。出す人もタイミングも別です。
設置届は誰が出しますか
防火対象物の関係者(所有者・管理者・占有者)です。工事業者が作成を手伝うことが多くありますが、義務は建物の側にあります。契約に「設置届の提出まで含む」と書かれているかを確かめておきます。
オンラインで申請できますか
電子申請の窓口を用意している消防本部が増えています。東京消防庁をはじめ、オンラインで受け付けている地域があります。ただし対応の状況は所轄ごとに違うため、窓口へ行く前に所轄のサイトを見ておくと往復が減ります。添付する図面の形式が指定されていることもあります。
4日以内に間に合いそうにありません
工事が終わってから書類を集め始めると間に合いません。試験結果報告書は工事業者が作るものなので、完了の時点で受け取れるようあらかじめ頼んでおきます。どうしても遅れる場合は、所轄の消防署に事情を伝えて相談します。
テナントの内装工事でも要りますか
間仕切りが変わって感知器やスプリンクラーヘッドの位置が変わる場合や、設備を増設する場合には必要になることがあります。用途の変更を伴うときは特に注意が要ります。計画の段階で図面を持って所轄の消防署に相談します。
工事業者に何を頼んでおけばよいですか
試験結果報告書を工事完了の時点で受け取るという約束が、いちばん効きます。これは業者しか作れない書類で、無いと設置届を出せません。あわせて、着工届と設置届をそれぞれ誰が出すか、図面の提出時期、検査の立会いに来るか、是正が出たときの対応が含まれるかを、契約の段階で決めておきます。
設備を増やしたあと、他にやることはありますか
3つを更新します。点検の委託契約(対象設備と台数)、建物の法定点検の一覧(次回の期限)、そして消防計画です。3つ目を忘れやすく、消防計画に書かれた設備と実際がずれると、防火対象物点検で指摘が出ることがあります。
検査済証を失くしました
所轄の消防署に相談します。建物を売買したり管理会社が替わったりするときに引き継ぐ書類なので、見当たらない場合は前の所有者や管理会社の手元にあることがあります。見つかったら、点検の報告書や図面と同じファイルにまとめておきます。
過去の設置届が出ていたか分かりません
建物の書類に検査済証があるかを探すのが早道です。見当たらない場合は、所轄の消防署に建物の情報を伝えて照会できることがあります。前の所有者や管理会社の手元にあることもあります。設備の図面と検査済証は、建物を引き継ぐときの書類なので、見つかったら点検の報告書と同じファイルにまとめておきます。
まとめ
消防用設備等の設置届は、工事が完了した日から4日以内に、建物の関係者が所轄の消防署へ出すものです。工事の10日前までに甲種消防設備士が出す着工届とは、タイミングも出す人も別になります。
工事業者が着工届を出しても、設置届まで出ているとは限りません。契約や見積りに「設置届の提出まで含む」と書かれているかを確かめておきます。
施設の担当者が出会うのは、新築よりも改装のときです。特に用途の変更では、これまで不要だった設備が必要になることがあります。計画の段階で図面を持って所轄の消防署に相談すると、後から追加を求められて費用と工期が膨らむのを防げます。
期限を守る鍵は、試験結果報告書を工事完了と同時に受け取るという約束です。これは業者しか作れない書類で、遅れると4日以内に間に合いません。契約の段階で決めておきます。
そして、設置届を出すと実際に設備を動かす検査を受けます。館内への周知、鍵の手配、立ち会う人の分担を先に決めておきます。交付された検査済証は、点検の報告書や図面と同じファイルにまとめて保管します。