PCB含有機器の処分|低濃度は2027年3月末が期限
目次
PCBは、古い建物の電気設備に残っている可能性がある物質です。キュービクルの中の変圧器やコンデンサ、古い蛍光灯の安定器に使われていました。厄介なのは、期限が決まっていて、しかもその期限が近いことです。
この記事では、PCB含有機器の処分を、期限、高濃度と低濃度の違い、どこに残っているか、調べ方、処分までの流れの順に整理します。制度の内容や届出の様式は改正と自治体の運用で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、都道府県・政令市のPCB担当窓口に確認してください。
結論:低濃度の処分期限は2027年3月31日
PCB特別措置法では、PCB廃棄物を期限までに処分することとされています。濃度によって期限が違い、高濃度のほうは既に終わっています。
| 区分 | 処分期限 |
|---|---|
| 高濃度PCB廃棄物 | すべての地域で終了済み |
| 低濃度PCB廃棄物 | 2027年(令和9年)3月31日 |
残された時間は多くありません。2026年9月の時点で、期限まで1年半ほどです。処分には、調べる・申し込む・順番を待つという時間がかかるため、「期限の直前に出せばよい」という進め方ができません。
高濃度が期限切れでも、出てくることがある
高濃度の処分期限は終わっていますが、期限後に建物から見つかることがあります。この場合も放置してよいわけではなく、自治体またはJESCOへ早めに連絡することとされています。
「期限が過ぎたからもう処分できない」ではありません。見つけた時点で連絡するのが正しい進め方です。
そもそもPCBとは
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、電気を通しにくく、燃えにくく、化学的に安定している性質から、変圧器やコンデンサの絶縁油、蛍光灯の安定器などに広く使われていた物質です。
人の健康への影響が明らかになり、1972年(昭和47年)ごろに製造が中止されました。そのため、それ以前に製造された電気機器に残っている可能性があります。
| 性質 | 施設の管理で意味すること |
|---|---|
| 分解されにくい | 放置しても無くならない |
| 蓄積する | 漏れると環境に残り続ける |
| 見た目では分からない | 銘板や分析でしか判別できない |
3つ目がこの問題を難しくしています。外から見て「PCBが入っているかどうか」は分かりません。機器の銘板の型式と製造年から判断するか、絶縁油を採って分析するかになります。
高濃度と低濃度の違い
同じPCBでも、濃度によって処分のしかたも期限も違います。
| 高濃度 | 低濃度 | |
|---|---|---|
| 何に入っていたか | PCBを意図的に使った機器 | 製造の過程で混入したもの |
| 代表的なもの | 古い変圧器・コンデンサ、安定器 | 微量のPCBが混入した絶縁油を使う機器 |
| 処分先 | JESCO(国が定めた処理施設) | 無害化処理の認定を受けた民間施設 |
| 期限 | 終了済み | 2027年3月31日 |
低濃度は「意図せず混ざってしまったもの」です。PCBを使う設計ではなかったのに、再生油などを通じて微量が混入したとされています。そのため、外観も型式も普通の機器で、分析するまで分かりません。
判断がつかないものは「疑い」として扱う
低濃度かどうか分からない機器は、「低濃度PCB含有の疑いがある電気工作物」として扱われます。この状態のまま使い続けている建物が多くあります。
疑いのまま期限を迎えると困ります。分析して含有が分かれば処分の対象になり、順番待ちが発生します。調べる段階から逆算して動く必要があります。
どこに残っているか
建物の中で確かめる場所は、おおむね決まっています。古い建物ほど可能性が上がります。
| 場所 | 機器 |
|---|---|
| キュービクル・電気室 | 変圧器(トランス)、高圧コンデンサ |
| 受変電設備 | 計器用変成器、リアクトル |
| 天井・照明器具 | 蛍光灯の安定器(古い建物) |
| 機械室 | 整流器、遮断器の一部 |
| 倉庫・地下 | 使用をやめて保管したままの機器 |
いちばん見落とされるのは5つ目です。「壊れたから外して置いてある」機器が倉庫の隅にあり、誰も中身を知らない、という形が実際にあります。使っていなくても廃棄物として扱う必要があります。
キュービクルの中身はキュービクルの点検にまとめています。
蛍光灯の安定器
古い建物の照明器具に入っている安定器も対象になります。器具ごと交換していれば済んでいますが、一部の部屋だけ古いまま残っていることがあります。
体育館、倉庫、機械室、階段室など、普段あまり使わない場所の照明が残りやすいところです。LEDに替えるときに、外した安定器の扱いを決めておきます。
調べ方
自分の建物にPCB含有機器があるかは、次の順で確かめます。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 電気設備の一覧を作る(機器の種類・型式・製造年) |
| 2 | 銘板の写真を撮る |
| 3 | メーカーの照会窓口や公表資料で判別する |
| 4 | 判別できないものは絶縁油を採って分析する |
| 5 | 含有が分かったら届出と処分の手配 |
1が無い建物が多くあります。まずここから始めます。キュービクルの中は資格者でなければ開けられないので、保安の委託先に相談して、点検のときに銘板を撮ってもらうのが現実的です。
分析には時間がかかる
絶縁油の分析は、採油して、検査機関に出して、結果が返ってくるまでに時間がかかります。さらに、含有が分かってから処分の順番を待つことになります。
期限から逆算すると、調べる作業は早いほど選択肢が残ります。2027年3月末が期限なら、分析・届出・処分の期間を見込んで動く必要があります。
使用中でも調べられる
使っている機器でも、運転を止めれば採油できます。キュービクルの年次点検(停電を伴う点検)のときに合わせると、そのための停電を別に組まずに済みます。
年次点検の段取りはキュービクルの点検にまとめています。
届出と保管
PCB廃棄物を保管している事業者には、毎年度、都道府県知事等へ届け出ることとされています。
| やること | 内容 |
|---|---|
| 保管等の届出 | 毎年度。前年度の保管・処分の状況 |
| 保管の基準を守る | 飛散・流出・地下浸透・悪臭の防止 |
| 表示 | 保管場所に掲示する |
| 台帳 | 機器ごとの記録 |
| 処分の委託 | 認定施設・JESCOへ |
保管したまま届出をしていないという状態が実際にあります。処分が終わるまでは毎年度の届出が続くため、担当が替わるときの引き継ぎに入れておきます。
保管の場所
保管する場合は、飛散や流出が起きない場所にします。屋外に置くなら、雨が当たらず、地面に染み込まない構造が必要です。
- 施錠できる場所に置く
- 受け皿を敷く(油が漏れたときに広がらない)
- 掲示をする
- 他の廃棄物と混ぜない
- 台帳と現物を突き合わせられるようにする
5つ目が効きます。処分を申し込むときに、何が何台あるかを正確に出す必要があります。
漏れているのを見つけたとき
PCBを含む機器から油が漏れているのを見つけたら、扱いが変わります。通常の油漏れとは別に考えます。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 触らない。人を近づけない |
| 2 | 油が広がらないよう受け止める(吸着材・受け皿) |
| 3 | 保安の委託先と自治体の担当窓口へ連絡する |
| 4 | 拭き取ったウエスや吸着材もPCB汚染物として扱う |
| 5 | 経緯を記録する |
4を知らないと、普通のごみとして捨ててしまいます。油を拭いた布、吸着材、汚れたコンクリートの一部も汚染物として扱う必要があるとされています。自己流で片づけないのが原則です。
見つけやすいのは年次点検のとき
キュービクルの中は普段開けません。油のにじみや床の染みが見つかるのは、年次点検で扉を開けたときがほとんどです。点検の報告書に「油にじみ」と書かれていたら、その機器の製造年をすぐ確かめます。
引き継ぎに入れておく
PCBは、担当が替わると経緯が消えやすい分野です。期限があり、毎年度の届出が続くのに、引き継ぎの紙に載っていないことがあります。
次の5つを1つのファイルにまとめておきます。
- 電気設備の一覧(型式・製造年・銘板の写真)
- 分析の結果(含有・不含有・未分析の別)
- 保管等の届出の控え(毎年度出しているもの)
- 処分の計画と申込みの記録
- 自治体の担当窓口と、保安の委託先の連絡先
3つ目が抜けると、翌年度の届出そのものが止まります。届出は処分が終わるまで続くので、担当が替わるタイミングがいちばん危ないところです。
一覧と期限の管理は建物の法定点検一覧にまとめています。
費用と順番待ち
処分には費用がかかります。機器の種類と台数、濃度によって変わります。
| 動くところ | なぜ |
|---|---|
| 濃度の区分 | 高濃度と低濃度で処分先が違う |
| 機器の種類と重さ | 変圧器は重い。運搬の費用が乗る |
| 台数 | まとめると効率がよいことがある |
| 取り外し工事 | 使用中の機器なら、停電させて外す |
| 運搬 | 収集運搬の許可を持つ業者が要る |
| 分析 | 判別できないものは事前に必要 |
4つ目を忘れやすいところです。処分の費用だけを見積もっていると、機器を外す工事と、その間の停電の段取りが抜けます。
期限が近づくと混みます
同じ期限に向かって、全国の事業者が処分を申し込みます。期限が近づくほど、処理施設の順番待ちが長くなることが見込まれます。
早く動いたほうが、日程も費用も選べます。期限の直前に持ち込もうとして受けてもらえない、という事態を避けるためにも、調査を先に済ませておきます。
よくある質問
PCBの処分期限はいつですか
低濃度PCB廃棄物は2027年(令和9年)3月31日とされています。高濃度PCB廃棄物は、すべての地域で処分期限を終了しています。期限の直前では処理施設が混み合うため、早めに動くほうが選択肢が残ります。
高濃度の期限が過ぎてから見つかりました
放置せず、自治体またはJESCOへ連絡します。期限後に発見されたものについての扱いが定められています。「もう処分できない」ではないので、見つけた時点で相談します。
自分の建物にあるか分かりません
まず電気設備の一覧を作り、機器の型式と製造年を控えるところから始めます。1972年ごろより前に製造された機器は可能性があります。判別できないものは絶縁油を採って分析します。キュービクルの中は資格者でないと開けられないので、保安の委託先に相談します。
使用中の機器も対象ですか
使用中のものは「PCB使用製品」として扱われ、使用をやめた時点でPCB廃棄物になります。低濃度については、期限に間に合うよう計画的に廃止を検討することとされています。使いながら分析することは可能で、年次点検の停電に合わせると効率的です。
蛍光灯の安定器も対象ですか
古い建物の照明器具に入っている安定器が対象になることがあります。体育館、倉庫、機械室、階段室など、普段あまり使わない場所の照明が古いまま残りやすいところです。LEDに替えるときは、外した安定器の扱いを決めておきます。
倉庫に外した機器が置いてあります
使っていなくても廃棄物として扱う必要があります。保管している場合は毎年度の届出が必要とされています。何が何台あるかを台帳にして、現物と突き合わせられるようにしておきます。
機器から油が漏れていました
触らず、人を近づけず、保安の委託先と自治体の担当窓口へ連絡します。油を拭いた布や吸着材、汚れたコンクリートの一部もPCB汚染物として扱う必要があるとされています。普通のごみとして捨てないよう、自己流で片づけないのが原則です。
期限までに間に合わないかもしれません
分かった時点で、自治体のPCB担当窓口に相談します。黙って期限を過ぎるのがいちばん悪い形です。処理施設は期限が近づくほど混み合うため、申込みだけでも早く出しておくと、日程を調整してもらえることがあります。調査が終わっていない機器があるなら、その状況も含めて伝えます。
費用はどのくらいかかりますか
濃度の区分、機器の種類と重さ、台数、取り外し工事、運搬、分析で変わります。処分の費用だけを見積もると、機器を外す工事とその間の停電の段取りが抜けます。見積りを取るときは、取り外しと運搬を含むかを明記してもらいます。
まとめ
PCB含有機器の処分は、低濃度が2027年3月31日という期限で動いています。高濃度はすべての地域で期限を終えていますが、期限後に見つかったものは自治体やJESCOへ連絡するという道が残されています。
期限までに間に合いそうにないときも、分かった時点で自治体の担当窓口に相談します。黙って過ぎるのがいちばん悪い形です。
残っている可能性があるのは、キュービクルの中の変圧器やコンデンサ、古い蛍光灯の安定器、そして倉庫に外して置いたままの機器です。最後のものがいちばん見落とされます。使っていなくても廃棄物として扱う必要があります。
外から見ても分かりません。機器の型式と製造年で判別するか、絶縁油を採って分析するかになります。分析には時間がかかり、含有が分かってからは処分の順番を待つことになるので、期限から逆算すると調査は早いほど選択肢が残ります。
そして、担当が替わると経緯が消えやすい分野です。保管しているあいだは毎年度の届出が続くので、電気設備の一覧・分析の結果・届出の控え・処分の計画・連絡先の5つを1つのファイルにまとめておきます。
まずやるのは、電気設備の一覧を作って、銘板の写真を撮ることです。キュービクルの中は資格者でなければ開けられないので、年次点検のときに撮ってもらうよう保安の委託先へ頼むところから始めます。