消防・防火解説2026.06.01 公開BK-06

防炎物品とは?対象の建物とラベルの見分け方

目次

カーテンを替えたら、消防の点検で指摘が出た。じゅうたんを敷いたら、防炎のラベルはどこかと聞かれた。防炎物品は、建物の用途によっては使うものが決まっていて、選び方を間違えると買い直しになります。

この記事では、防炎物品を、対象になる建物対象になる物ラベルの見分け方買うときの注意確かめられたときに出すものの順に整理します。対象の範囲は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。

防火管理の記録や点検の様式そのものを探している場合は、点検板に施設向けの様式がそろっています。

結論:燃え広がりを遅らせるための物で、建物によっては義務になる

防炎物品は、火がついても燃え広がりにくく作られた物です。まったく燃えないという意味ではありません。火に触れたときに炎が広がる速さを抑え、逃げる時間を作るためのものです。

考え方としては3つに分かれます。

1つ目は、防炎物品です。カーテン、じゅうたん、暗幕など、一定の建物で使うことが求められているもの。

2つ目は、防炎製品です。義務の対象ではないものの、防炎の性能を持たせた製品。寝具、衣類、テント、のぼりなど。

3つ目は、どちらでもない普通の物です。義務の対象になる建物では使えません。

3つの区分防炎物品一定の建物で義務になる防炎製品義務ではないが性能あり普通の物対象の建物では使えない
防炎物品・防炎製品・普通の物という3つの区分を並べた層の図

義務になるのは1つ目だけです。ただし義務でなくても、人が集まる場所や火の近くでは2つ目を選ぶほうが安全です。判断に迷うものは所轄の消防署に相談してください。

対象になる建物

防炎物品を使うことが求められるのは、防炎防火対象物と呼ばれる建物です。用途と規模で決まります。

代表的なものを挙げます。

1つ目は、不特定多数の人が集まる建物です。劇場、映画館、集会場、百貨店、飲食店、旅館、ホテル。

2つ目は、避難に配慮が要る人がいる建物です。病院、老人ホーム、幼稚園、保育所。

3つ目は、高い建物です。高さが31メートルを超える部分がある建物は、用途にかかわらず対象になるとされています。

4つ目は、地下街や工事中の建築物です。

対象になる建物の類型類型不特定多数が集まる劇場・百貨店・飲食店・旅館避難に配慮が要る病院・老人ホーム・保育所高い建物31mを超える部分がある地下街と工事中用途にかかわらず
不特定多数・要配慮者・高層・地下街と工事中という4つの対象の類型を並べた表

事務所ビルは、31メートルを超えなければ対象にならないことが多くあります。ただし1階に飲食店が入っていれば、その部分は対象になります。建物全体ではなく、用途の部分ごとに見るのが基本です。

対象になる物

対象の建物で使う物のうち、燃え広がりのきっかけになりやすい物が指定されています。

品目含まれるもの
カーテン窓のカーテン、間仕切りの布
布製ブラインド布でできたブラインド
暗幕舞台や会議室の暗幕
じゅうたん等じゅうたん、マット、人工芝など床に敷く物
展示用の合板展示会などで使う合板
どん帳舞台のどん帳
工事用シート建築工事の足場に張るシート
主な品目品目含まれるものカーテン窓と間仕切りの布布製ブラインド布でできたもの暗幕とどん帳舞台と会議室じゅうたん等マット・人工芝など床敷物
カーテン・ブラインド・暗幕・じゅうたん等という主な品目を並べた表

見落とされやすいのは、床に敷く物です。タイルカーペット、玄関マット、人工芝。あとから買い足すものなので、担当者が替わると防炎でない物が混ざります。

のれん、テーブルクロス、装飾用の造花などは、品目としての義務の対象ではないことが多くありますが、防炎製品を選ぶほうが安全です。

ラベルで見分ける

防炎物品には、防炎ラベルが付いています。これが付いていない物は、見た目では判断できません。

見るところは4つです。

1つ目は、ラベルがあるかどうかです。物に縫い付けるか、貼り付ける形で付いています。

2つ目は、品目の表示です。「カーテン」「じゅうたん等」など、何としての防炎性能かが書かれています。カーテン用のラベルが付いた布を床に敷いても、じゅうたんとしての性能は保証されません。

3つ目は、登録者の番号です。防炎の性能を確かめた事業者の番号が入っています。

4つ目は、色と形です。防炎物品と防炎製品ではラベルの見た目が違います。

ラベルの見分けどころ見るところ確かめることラベルの有無縫い付けか貼り付け品目の表示何としての性能か登録者の番号確かめた事業者色と形防炎物品と防炎製品で違う
ラベルの有無・品目・登録番号・見た目という4つの見分けどころを並べた表

ラベルは現物に付いたままにします。「じゃまだから」と切り取ってしまうと、確かめようがなくなります。切り取ってしまった場合は、購入したときの書類で示すことになります。

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防火管理の記録と点検の期限をまとめて管理する様式は、点検板でそのまま使えます。

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買うときの注意

防炎物品は、買ってから気づくと手遅れになります。発注の段階で押さえます。

押さえるのは4つです。

1つ目は、発注の書類に「防炎」と書くことです。口頭で伝えただけだと、違う物が来ます。

2つ目は、品目を指定することです。「防炎のカーテン」「防炎のタイルカーペット」と、使う場所に合った品目で頼みます。

3つ目は、納品のときにラベルを確かめることです。箱を開けた時点で見ます。取り付けたあとでは戻しにくくなります。

4つ目は、書類を残すことです。納品書、防炎性能を示す書類。あとで求められることがあります。

買うときの4段1発注書「防炎」と書く2品目の指定使う場所に合わせる3納品時箱を開けてラベルを見4書類納品書と性能の書類
発注書・品目の指定・納品時の確認・書類の保管という4段のフロー

既製品でないカーテンを作る場合は、生地と縫製の両方を見ます。防炎の生地を使っても、加工の仕方によっては性能が変わることがあります。発注先に、防炎ラベルを付けて納めてもらう形にするのが確実です。

洗濯と経年でどうなるか

防炎の性能は、永久に続くとは限りません。

気をつけるのは3つです。

1つ目は、洗濯の方法です。薬剤を後から付ける方式のものは、洗うと性能が落ちることがあります。洗濯しても性能が保たれるかどうかが、ラベルや取扱い表示に書かれています。

2つ目は、屋外での使用です。日光と雨で劣化します。工事用シートやテントは、期限を決めて交換します。

3つ目は、汚れと補修です。塗料や油が染みた部分は、もとの性能が出ないことがあります。継ぎ当てをした場合も同じです。

クリーニングに出すときは、防炎物品であることを伝えます。伝えないと、普通の洗い方で処理されます。戻ってきたラベルの表示も確かめてください。

点検や立入検査で確かめられること

消防の点検や立入検査では、防炎物品が使われているかを確かめられます。

見られるのは4つです。

1つ目は、カーテンのラベルです。めくって現物を見られます。

2つ目は、床に敷いた物です。あとから足したマットやタイルカーペット。

3つ目は、催し物で使った物です。のぼり、幕、装飾。

4つ目は、工事中のシートです。足場に張るシートに防炎の表示があるか。

確かめられる4か所カーテンめくって現物を見られる床に敷いた物あとから足したマット催し物の装飾のぼり・幕工事シート足場に張るもの
カーテン・床の物・催し物・工事シートという4つの確かめられる場所を並べた層の図

指摘が出たら、交換するまでの期限を決めます。すぐに全部替えられない場合は、どの部屋から替えるかの順番を決めて示すと、話が進みます。使用頻度の高い場所、人が多い場所から替えます。

テナントが持ち込む物をどうするか

貸しビルや商業施設では、内装をテナントが決めます。建物の側が知らないうちに、防炎でない物が入ります。

建物の側ですることは3つです。

1つ目は、館内規則に書くことです。入居のときに配る書面に、防炎物品を使うことと、対象になる品目を書きます。

2つ目は、内装工事の届出のときに確かめることです。工事の申請を受ける仕組みがあるなら、そこで図面と一緒に材料を見ます。

3つ目は、巡回のときに見ることです。日常の見回りで、新しく敷かれた物に気づく形にします。

テナントは、防炎の義務を知らないことが多くあります。責める話ではなく、知らせる話として伝えるほうが早く整います。入居のときに1回、書面で渡してください。

記録として残しておく

防炎物品は、現物にラベルが付いているだけだと、担当者が替わったときに分からなくなります。

残すのは3つです。

1つ目は、どこに何を使っているかの一覧です。部屋ごとに、カーテン、床材、暗幕。

2つ目は、買った時期と書類です。納品書と、防炎性能を示す書類。

3つ目は、交換の予定です。屋外で使う物は、劣化するので期限を決めます。

3つを1枚にして、建物の図面と一緒に綴じておきます。次に内装を替えるときに、そのまま発注の材料になります。一覧が無いと、毎回現物を見て回ることになります。

避難の考え方とつながっている

防炎物品は、単体で火事を防ぐものではありません。避難の時間を作るための仕掛けの1つです。

つながっているのは3つです。

1つ目は、避難経路です。廊下や階段に敷いた物が燃え広がると、逃げる道が使えなくなります。

2つ目は、煙です。布や樹脂が燃えると煙が出ます。燃え広がりが遅ければ、煙の量も抑えられます。

3つ目は、消火設備が働くまでの時間です。スプリンクラーが作動するまでのあいだに、炎が広がらないことが効きます。

この3つを知っていると、義務でない場所にも防炎製品を選ぶ理由が分かります。「決まりだから」よりも、「逃げる時間を作るため」のほうが現場に伝わります。

一覧の作り方

防炎物品の一覧は、部屋ごとに1行という形にすると作りやすくなります。品目ごとに作ると、部屋を回るときに何度も同じ場所へ行くことになります。

入れる列は5つです。

1つ目は、場所です。階と部屋の名前。図面の番号があるなら、それも入れます。

2つ目は、品目です。カーテン、床敷物、暗幕。使っている物をそのまま書きます。

3つ目は、ラベルの有無です。現物を見て、あるかないかを印で残します。無いものだけが、あとで確かめる対象になります。

4つ目は、買った時期です。分かる範囲で構いません。屋外で使う物は、ここから交換の時期を決めます。

5つ目は、書類の場所です。納品書や性能を示す書類を、どのファイルに綴じたか。

一覧は1回作れば、あとは差分だけです。内装を替えたときに1行直す、という形になれば維持できます。最初の1回に半日かかっても、そのあとが楽になります。

交換の順番をどう決めるか

すべてを一度に替えられる建物は多くありません。順番を決めて、計画として示します。

決め方は4つです。

1つ目は、人の多い場所からです。エントランス、共用の廊下、会議室。火災が起きたときに、逃げる人がいちばん多く通る場所です。

2つ目は、避難経路にあたる場所からです。階段、廊下、出入口の付近。ここが燃え広がると、逃げ道が使えなくなります。

3つ目は、火の近くからです。厨房の近く、喫煙のできる場所、電気設備の近く。

4つ目は、劣化しているものからです。日に焼けている、擦り切れている、汚れが染みている。

4つを組み合わせて順番を作り、期限とセットで書面にします。「今年度はこの3か所、来年度はこの2か所」という形にすると、予算も取りやすくなります。順番を示さずに「順次交換します」と言うと、進んでいないのと同じに見えます。

まとめ

防炎物品は、火がついても燃え広がりにくく作られた物で、一定の用途と規模の建物では使うことが求められています。

  • 対象は、不特定多数が集まる建物、避難に配慮が要る人がいる建物、31メートルを超える部分がある建物、地下街と工事中の建築物
  • 品目は、カーテン、布製ブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、どん帳、工事用シート
  • 見分けるのは防炎ラベル。品目の表示まで見る。ラベルは切り取らない
  • 発注の書類に「防炎」と品目を書く。納品のときにラベルを確かめる
  • 洗濯と屋外での使用で性能が落ちることがある

対象の範囲は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。

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実際に使える様式が必要な方へ

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よくある質問

Q. 事務所ビルでも防炎物品が要りますか。 A. 高さが31メートルを超える部分がある建物は、用途にかかわらず対象になるとされています。それ以外の事務所は対象にならないことが多くありますが、飲食店などが入っていればその部分は対象です。所轄の消防署に確かめてください。

Q. 防炎ラベルが切り取られていました。どうしますか。 A. 購入したときの納品書や、防炎性能を示す書類で説明します。書類も無い場合は、防炎でない物として扱われる可能性があります。次に買うときは、ラベルを残す運用にしてください。

Q. タイルカーペットも対象ですか。 A. じゅうたん等に含まれる床敷物として、対象になることがあります。あとから買い足すものなので混ざりやすい品目です。発注のときに防炎の品目を指定してください。

Q. 防炎物品と防炎製品は、どちらを買えばよいですか。 A. 義務の対象になる品目は防炎物品です。義務の対象でない物(寝具、テント、のぼりなど)は防炎製品から選びます。義務でなくても、人の多い場所では防炎製品を選ぶほうが安全です。

Q. 洗濯したら性能は落ちますか。 A. 製品によります。洗濯しても性能が保たれるものと、そうでないものがあります。取扱い表示を見てください。クリーニングに出すときは、防炎物品であることを伝えてください。

Q. 展示会で使うパネルも対象ですか。 A. 展示用の合板は品目に含まれています。会場の運営者から防炎の表示を求められることが多くあります。借りる場合は、貸す側に防炎かどうかを確かめてください。

Q. カーテンだけ防炎にすれば足りますか。 A. 足りません。対象の品目はすべてが対象です。床に敷いた物が抜けている建物がいちばん多くあります。一覧を作って確かめてください。

Q. 工事用のシートにも義務がありますか。 A. 工事中の建築物で使う工事用シートは、対象の品目に含まれています。施工業者が用意する物なので、発注の条件に入れておく形にしてください。

Q. 指摘が出ましたが、すぐに全部替えられません。 A. 交換の順番と期限を決めて、所轄の消防署に伝えてください。人の多い場所、避難経路にあたる場所から替えます。何もしないより、計画を示すほうが話が進みます。

Q. 中古で買った家具に付いている布も対象ですか。 A. 品目にあたるかどうかで決まります。カーテンやじゅうたんにあたるものは対象です。中古はラベルが無いことが多いので、対象の建物では新品を選ぶほうが確実です。

Q. 防炎の一覧は、どのくらいの頻度で見直しますか。 A. 年に1回は現物と突き合わせます。内装を替えたときは、その都度書き足します。見直しの日を、消防設備点検と同じ月にすると忘れません。

Q. 防炎物品を使っていないと、どうなりますか。 A. 立入検査で是正を求められます。従わない場合は、命令や公表の対象になることがあります。火災が起きたときの責任の問題にもなるので、指摘が出る前に一覧を作って確かめてください。

Q. 一覧は誰が作りますか。 A. 建物の担当者が作ります。内装業者に頼むと、その業者が納めた物しか分かりません。現物を見て回るのは、建物を知っている人でないとできません。巡回のついでに、月に1フロアずつ進める形でも構いません。