防炎物品とは?対象の建物とラベルの見分け方
目次
カーテンを替えたら、消防の点検で指摘が出た。じゅうたんを敷いたら、防炎のラベルはどこかと聞かれた。防炎物品は、建物の用途によっては使うものが決まっていて、選び方を間違えると買い直しになります。
この記事では、防炎物品を、対象になる建物、対象になる物、ラベルの見分け方、買うときの注意、確かめられたときに出すものの順に整理します。対象の範囲は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
結論:燃え広がりを遅らせるための物で、建物によっては義務になる
防炎物品は、火がついても燃え広がりにくく作られた物です。まったく燃えないという意味ではありません。火に触れたときに炎が広がる速さを抑え、逃げる時間を作るためのものです。
考え方としては3つに分かれます。
1つ目は、防炎物品です。カーテン、じゅうたん、暗幕など、一定の建物で使うことが求められているもの。
2つ目は、防炎製品です。義務の対象ではないものの、防炎の性能を持たせた製品。寝具、衣類、テント、のぼりなど。
3つ目は、どちらでもない普通の物です。義務の対象になる建物では使えません。
義務になるのは1つ目だけです。ただし義務でなくても、人が集まる場所や火の近くでは2つ目を選ぶほうが安全です。判断に迷うものは所轄の消防署に相談してください。
対象になる建物
防炎物品を使うことが求められるのは、防炎防火対象物と呼ばれる建物です。用途と規模で決まります。
代表的なものを挙げます。
1つ目は、不特定多数の人が集まる建物です。劇場、映画館、集会場、百貨店、飲食店、旅館、ホテル。
2つ目は、避難に配慮が要る人がいる建物です。病院、老人ホーム、幼稚園、保育所。
3つ目は、高い建物です。高さが31メートルを超える部分がある建物は、用途にかかわらず対象になるとされています。
4つ目は、地下街や工事中の建築物です。
事務所ビルは、31メートルを超えなければ対象にならないことが多くあります。ただし1階に飲食店が入っていれば、その部分は対象になります。建物全体ではなく、用途の部分ごとに見るのが基本です。
対象になる物
対象の建物で使う物のうち、燃え広がりのきっかけになりやすい物が指定されています。
| 品目 | 含まれるもの |
|---|---|
| カーテン | 窓のカーテン、間仕切りの布 |
| 布製ブラインド | 布でできたブラインド |
| 暗幕 | 舞台や会議室の暗幕 |
| じゅうたん等 | じゅうたん、マット、人工芝など床に敷く物 |
| 展示用の合板 | 展示会などで使う合板 |
| どん帳 | 舞台のどん帳 |
| 工事用シート | 建築工事の足場に張るシート |
見落とされやすいのは、床に敷く物です。タイルカーペット、玄関マット、人工芝。あとから買い足すものなので、担当者が替わると防炎でない物が混ざります。
のれん、テーブルクロス、装飾用の造花などは、品目としての義務の対象ではないことが多くありますが、防炎製品を選ぶほうが安全です。
ラベルで見分ける
防炎物品には、防炎ラベルが付いています。これが付いていない物は、見た目では判断できません。
見るところは4つです。
1つ目は、ラベルがあるかどうかです。物に縫い付けるか、貼り付ける形で付いています。
2つ目は、品目の表示です。「カーテン」「じゅうたん等」など、何としての防炎性能かが書かれています。カーテン用のラベルが付いた布を床に敷いても、じゅうたんとしての性能は保証されません。
3つ目は、登録者の番号です。防炎の性能を確かめた事業者の番号が入っています。
4つ目は、色と形です。防炎物品と防炎製品ではラベルの見た目が違います。
ラベルは現物に付いたままにします。「じゃまだから」と切り取ってしまうと、確かめようがなくなります。切り取ってしまった場合は、購入したときの書類で示すことになります。
買うときの注意
防炎物品は、買ってから気づくと手遅れになります。発注の段階で押さえます。
押さえるのは4つです。
1つ目は、発注の書類に「防炎」と書くことです。口頭で伝えただけだと、違う物が来ます。
2つ目は、品目を指定することです。「防炎のカーテン」「防炎のタイルカーペット」と、使う場所に合った品目で頼みます。
3つ目は、納品のときにラベルを確かめることです。箱を開けた時点で見ます。取り付けたあとでは戻しにくくなります。
4つ目は、書類を残すことです。納品書、防炎性能を示す書類。あとで求められることがあります。
既製品でないカーテンを作る場合は、生地と縫製の両方を見ます。防炎の生地を使っても、加工の仕方によっては性能が変わることがあります。発注先に、防炎ラベルを付けて納めてもらう形にするのが確実です。
洗濯と経年でどうなるか
防炎の性能は、永久に続くとは限りません。
気をつけるのは3つです。
1つ目は、洗濯の方法です。薬剤を後から付ける方式のものは、洗うと性能が落ちることがあります。洗濯しても性能が保たれるかどうかが、ラベルや取扱い表示に書かれています。
2つ目は、屋外での使用です。日光と雨で劣化します。工事用シートやテントは、期限を決めて交換します。
3つ目は、汚れと補修です。塗料や油が染みた部分は、もとの性能が出ないことがあります。継ぎ当てをした場合も同じです。
クリーニングに出すときは、防炎物品であることを伝えます。伝えないと、普通の洗い方で処理されます。戻ってきたラベルの表示も確かめてください。
点検や立入検査で確かめられること
消防の点検や立入検査では、防炎物品が使われているかを確かめられます。
見られるのは4つです。
1つ目は、カーテンのラベルです。めくって現物を見られます。
2つ目は、床に敷いた物です。あとから足したマットやタイルカーペット。
3つ目は、催し物で使った物です。のぼり、幕、装飾。
4つ目は、工事中のシートです。足場に張るシートに防炎の表示があるか。
指摘が出たら、交換するまでの期限を決めます。すぐに全部替えられない場合は、どの部屋から替えるかの順番を決めて示すと、話が進みます。使用頻度の高い場所、人が多い場所から替えます。
テナントが持ち込む物をどうするか
貸しビルや商業施設では、内装をテナントが決めます。建物の側が知らないうちに、防炎でない物が入ります。
建物の側ですることは3つです。
1つ目は、館内規則に書くことです。入居のときに配る書面に、防炎物品を使うことと、対象になる品目を書きます。
2つ目は、内装工事の届出のときに確かめることです。工事の申請を受ける仕組みがあるなら、そこで図面と一緒に材料を見ます。
3つ目は、巡回のときに見ることです。日常の見回りで、新しく敷かれた物に気づく形にします。
テナントは、防炎の義務を知らないことが多くあります。責める話ではなく、知らせる話として伝えるほうが早く整います。入居のときに1回、書面で渡してください。
記録として残しておく
防炎物品は、現物にラベルが付いているだけだと、担当者が替わったときに分からなくなります。
残すのは3つです。
1つ目は、どこに何を使っているかの一覧です。部屋ごとに、カーテン、床材、暗幕。
2つ目は、買った時期と書類です。納品書と、防炎性能を示す書類。
3つ目は、交換の予定です。屋外で使う物は、劣化するので期限を決めます。
3つを1枚にして、建物の図面と一緒に綴じておきます。次に内装を替えるときに、そのまま発注の材料になります。一覧が無いと、毎回現物を見て回ることになります。
避難の考え方とつながっている
防炎物品は、単体で火事を防ぐものではありません。避難の時間を作るための仕掛けの1つです。
つながっているのは3つです。
1つ目は、避難経路です。廊下や階段に敷いた物が燃え広がると、逃げる道が使えなくなります。
2つ目は、煙です。布や樹脂が燃えると煙が出ます。燃え広がりが遅ければ、煙の量も抑えられます。
3つ目は、消火設備が働くまでの時間です。スプリンクラーが作動するまでのあいだに、炎が広がらないことが効きます。
この3つを知っていると、義務でない場所にも防炎製品を選ぶ理由が分かります。「決まりだから」よりも、「逃げる時間を作るため」のほうが現場に伝わります。
一覧の作り方
防炎物品の一覧は、部屋ごとに1行という形にすると作りやすくなります。品目ごとに作ると、部屋を回るときに何度も同じ場所へ行くことになります。
入れる列は5つです。
1つ目は、場所です。階と部屋の名前。図面の番号があるなら、それも入れます。
2つ目は、品目です。カーテン、床敷物、暗幕。使っている物をそのまま書きます。
3つ目は、ラベルの有無です。現物を見て、あるかないかを印で残します。無いものだけが、あとで確かめる対象になります。
4つ目は、買った時期です。分かる範囲で構いません。屋外で使う物は、ここから交換の時期を決めます。
5つ目は、書類の場所です。納品書や性能を示す書類を、どのファイルに綴じたか。
一覧は1回作れば、あとは差分だけです。内装を替えたときに1行直す、という形になれば維持できます。最初の1回に半日かかっても、そのあとが楽になります。
交換の順番をどう決めるか
すべてを一度に替えられる建物は多くありません。順番を決めて、計画として示します。
決め方は4つです。
1つ目は、人の多い場所からです。エントランス、共用の廊下、会議室。火災が起きたときに、逃げる人がいちばん多く通る場所です。
2つ目は、避難経路にあたる場所からです。階段、廊下、出入口の付近。ここが燃え広がると、逃げ道が使えなくなります。
3つ目は、火の近くからです。厨房の近く、喫煙のできる場所、電気設備の近く。
4つ目は、劣化しているものからです。日に焼けている、擦り切れている、汚れが染みている。
4つを組み合わせて順番を作り、期限とセットで書面にします。「今年度はこの3か所、来年度はこの2か所」という形にすると、予算も取りやすくなります。順番を示さずに「順次交換します」と言うと、進んでいないのと同じに見えます。
まとめ
防炎物品は、火がついても燃え広がりにくく作られた物で、一定の用途と規模の建物では使うことが求められています。
- 対象は、不特定多数が集まる建物、避難に配慮が要る人がいる建物、31メートルを超える部分がある建物、地下街と工事中の建築物
- 品目は、カーテン、布製ブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、どん帳、工事用シート
- 見分けるのは防炎ラベル。品目の表示まで見る。ラベルは切り取らない
- 発注の書類に「防炎」と品目を書く。納品のときにラベルを確かめる
- 洗濯と屋外での使用で性能が落ちることがある
対象の範囲は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
よくある質問
Q. 事務所ビルでも防炎物品が要りますか。 A. 高さが31メートルを超える部分がある建物は、用途にかかわらず対象になるとされています。それ以外の事務所は対象にならないことが多くありますが、飲食店などが入っていればその部分は対象です。所轄の消防署に確かめてください。
Q. 防炎ラベルが切り取られていました。どうしますか。 A. 購入したときの納品書や、防炎性能を示す書類で説明します。書類も無い場合は、防炎でない物として扱われる可能性があります。次に買うときは、ラベルを残す運用にしてください。
Q. タイルカーペットも対象ですか。 A. じゅうたん等に含まれる床敷物として、対象になることがあります。あとから買い足すものなので混ざりやすい品目です。発注のときに防炎の品目を指定してください。
Q. 防炎物品と防炎製品は、どちらを買えばよいですか。 A. 義務の対象になる品目は防炎物品です。義務の対象でない物(寝具、テント、のぼりなど)は防炎製品から選びます。義務でなくても、人の多い場所では防炎製品を選ぶほうが安全です。
Q. 洗濯したら性能は落ちますか。 A. 製品によります。洗濯しても性能が保たれるものと、そうでないものがあります。取扱い表示を見てください。クリーニングに出すときは、防炎物品であることを伝えてください。
Q. 展示会で使うパネルも対象ですか。 A. 展示用の合板は品目に含まれています。会場の運営者から防炎の表示を求められることが多くあります。借りる場合は、貸す側に防炎かどうかを確かめてください。
Q. カーテンだけ防炎にすれば足りますか。 A. 足りません。対象の品目はすべてが対象です。床に敷いた物が抜けている建物がいちばん多くあります。一覧を作って確かめてください。
Q. 工事用のシートにも義務がありますか。 A. 工事中の建築物で使う工事用シートは、対象の品目に含まれています。施工業者が用意する物なので、発注の条件に入れておく形にしてください。
Q. 指摘が出ましたが、すぐに全部替えられません。 A. 交換の順番と期限を決めて、所轄の消防署に伝えてください。人の多い場所、避難経路にあたる場所から替えます。何もしないより、計画を示すほうが話が進みます。
Q. 中古で買った家具に付いている布も対象ですか。 A. 品目にあたるかどうかで決まります。カーテンやじゅうたんにあたるものは対象です。中古はラベルが無いことが多いので、対象の建物では新品を選ぶほうが確実です。
Q. 防炎の一覧は、どのくらいの頻度で見直しますか。 A. 年に1回は現物と突き合わせます。内装を替えたときは、その都度書き足します。見直しの日を、消防設備点検と同じ月にすると忘れません。
Q. 防炎物品を使っていないと、どうなりますか。 A. 立入検査で是正を求められます。従わない場合は、命令や公表の対象になることがあります。火災が起きたときの責任の問題にもなるので、指摘が出る前に一覧を作って確かめてください。
Q. 一覧は誰が作りますか。 A. 建物の担当者が作ります。内装業者に頼むと、その業者が納めた物しか分かりません。現物を見て回るのは、建物を知っている人でないとできません。巡回のついでに、月に1フロアずつ進める形でも構いません。