非常用照明の点検|30分点くかと誘導灯との違い
目次
非常用照明の点検は、誘導灯の点検の陰に隠れがちです。どちらも停電のときに点くので、まとめて「非常灯」と呼ばれていることも多くあります。ところがこの2つは根拠となる法律が違い、点検の枠組みも報告先も別です。どちらかが何年も見られていない建物が、実際にあります。
この記事では、非常用照明の点検を、誘導灯との違い、何を確かめるのか、器具の種類、点検と報告の枠組み、交換の目安の順に整理します。必要な照度や点灯時間、報告の時期は建物の用途・規模と特定行政庁(都道府県や市の建築部門)の定めで変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の特定行政庁に確認してください。
結論:非常用照明は「停電してから点き続けるか」を見る
非常用照明は、建築基準法に基づいて設置される照明です。目的は停電したときに避難経路を明るくすることで、一般には30分以上点灯することとされています(用途や階数によってはより長い時間が求められることがあります)。
点検で本当に見るのは、次の2つです。
| 見るところ | 何が分かるか |
|---|---|
| 常用の電源を切ったあと点くか | 蓄電池が生きているか |
| 決められた時間、点き続けるか | 蓄電池の容量が残っているか |
普段は点いていない器具なので、壊れていても誰も気づきません。ここが誘導灯との大きな違いです。誘導灯は普段から点いているのでランプ切れには気づけますが、非常用照明は点検するまで状態が分かりません。
「非常灯」と呼ぶと混ざる
現場では非常用照明も誘導灯も「非常灯」と呼ばれていることがあります。呼び方が同じだと、契約書や点検の記録でもどちらを指しているのか分からなくなります。設備の名前で書き分けておくと、抜けが防げます。
誘導灯との違い
| 非常用照明 | 誘導灯 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 建築基準法 | 消防法 |
| 目的 | 避難経路を明るくする | 避難口の場所を示す |
| 普段 | 点いていない | 点いている |
| 点検の枠組み | 建築設備定期検査など | 消防設備点検 |
| 報告先 | 特定行政庁 | 消防長・消防署長 |
| 見た目 | 白い光の照明器具 | 緑や白地に人と矢印の絵 |
どちらが欠けても避難は難しくなります。誘導灯だけ点いていても足元が見えず、非常用照明だけでは出口の位置が分かりません。誘導灯のほうは誘導灯の点検にまとめています。
委託先が別になっていることがある
誘導灯は消防設備点検の業者、非常用照明は建築設備定期検査の資格者が見ているのが一般的です。契約書に「照明の点検」とだけ書かれていると、どちらを指すのか読み取れません。設備の名前で書かれているかを一度確かめておきます。
非常用照明の器具の種類
非常用照明には、電源の取り方で大きく2つの型があります。点検のしかたも、寿命の考え方も変わります。
| 型 | 仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 電源別置型 | 建物の中央に蓄電池設備があり、そこから電気を送る | 器具ごとの蓄電池が無い。蓄電池設備の管理が要る |
| 電源内蔵型 | 器具ごとに蓄電池が入っている | 多くの建物で使われている。器具ごとに寿命が来る |
電源内蔵型は、器具1台ごとに蓄電池が入っています。台数の多い建物では、交換の時期が少しずつずれて訪れるので、設置年ごとにまとめて管理する形にしておくと予算が読めます。
また、器具の形でも分かれます。埋込み型、直付け型、階段に付く専用のものなど、同じ建物でも場所によって器具が違うことがよくあります。交換のときは型番を控えてから相談します。
自己点検機能が付いている機種
近年の機種には、自動またはリモコンで点検ができる機能が付いているものがあります。器具のモニタランプや、リモコンからの操作で非常点灯に切り替えて確認できるため、脚立を出さずに済みます。
台数の多い建物ほど効果が大きいので、更新のときには検討する価値があります。ただし機能が付いていても、法令上の点検や報告が不要になるわけではありません。日常の確認が楽になる、という位置づけです。
点検と報告の枠組み
非常用照明は建築基準法に基づく設備なので、点検と報告も建築側の枠組みで行われます。
| 内容 | |
|---|---|
| 枠組み | 建築設備定期検査などの中で見られる |
| 検査する人 | 建築設備検査員・建築士 |
| 周期 | おおむね年1回(特定行政庁が定める) |
| 報告先 | 特定行政庁 |
対象になる建物と報告の時期は、特定行政庁が指定します。全国一律ではないため、所在地の建築部門で確認します。建築設備定期検査の全体像は建築設備定期検査にまとめています。
検査で見られること
| 項目 | 見られること |
|---|---|
| 設置の状況 | 必要な場所に付いているか。破損・脱落が無いか |
| 電源の切替 | 常用の電源を切ったとき、非常点灯に切り替わるか |
| 点灯の継続 | 決められた時間、点き続けるか |
| 照度 | 避難に必要な明るさが確保されているか |
| 予備電源 | 蓄電池の状態、充電されているか |
照度は測って確かめられます。床面で測るため、棚や間仕切りを足したあとは、影になる場所ができていないかを見ておきます。
日常でできること
非常用照明は普段点いていないので、日常で見られることは限られます。それでも3つは見られます。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| モニタランプ | 充電中を示すランプが点いているか |
| 器具の外観 | カバーの破損、脱落、著しい汚れ |
| 器具の周り | 棚・間仕切り・掲示物で光がさえぎられていないか |
モニタランプが消えている器具は、充電されていない可能性があります。点検を待たずに気づける数少ないサインなので、巡回のときに見る項目に入れておきます。正常なときの見え方を写真に撮って巡回表に貼っておくと、誰が巡回しても違いに気づけます。
改装のあとに確かめる
非常用照明で見落としやすいのが、改装で器具の位置と部屋の形が合わなくなることです。
- 間仕切りを足して、非常用照明の無い部屋ができた
- 天井を下げて、器具を外したまま戻していない
- 高い棚を入れて、器具の光が床まで届かなくなった
- 内装を濃い色にして、同じ器具でも暗くなった
工事のあとに歩いて見ておくだけでも気づけます。器具の追加が必要になる場合があるため、内装の工事を計画する段階で建築士に相談しておくと、後から手戻りになりません。
巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
非常用照明が付いている場所の考え方
非常用照明は、どの部屋にも同じように付くわけではありません。用途・規模・階数によって、必要になる範囲が決まるとされています。設置そのものは設計の段階で決まっているので、管理する側が見るのは「今ある器具が有効に働いているか」です。
一般には、次のような場所に設置されています。
- 居室(一定の用途・規模のもの)
- 居室から地上へ通じる廊下、階段、通路
- これらに類する、避難のために通る部分
「窓があるから明るい」は通用しません。停電が夜に起きることを前提にしているため、昼間の採光とは別の話になります。外光が入る廊下でも、必要とされていれば設置されています。
免除される部分もある
一定の条件を満たす小規模なものや、特定の用途の建物では、設置が求められない場合があります。ただし判断は設計の話なので、自分の建物のどこが対象かは、竣工時の図書か建築士に確かめるのが確実です。
「この部屋には昔から無い」が、正しい状態とは限りません。用途を変更したあとに必要になっていることがあります。
点検で「不点灯」と書かれたときの読み方
報告書に不点灯と書かれていても、意味は1つではありません。原因によって、直し方も金額も変わります。
| 書かれ方 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| 非常点灯で不点灯 | 蓄電池の劣化が多い | 蓄電池または器具の交換 |
| 点灯時間が短い | 蓄電池の容量が落ちている | 同上 |
| 充電表示が出ない | 充電の回路か蓄電池の異常 | 業者へ連絡 |
| 照度が不足 | 器具の劣化、または周りの物や内装の変化 | 清掃・配置の見直し・器具の追加 |
4つ目だけは、器具のせいとは限りません。棚を入れた、内装を濃い色に変えた、といった建物側の変化で照度が落ちていることがあります。器具を替える前に、床面をさえぎっているものが無いかを見ると、費用をかけずに直ることがあります。
交換の目安
非常用照明も、器具本体より内蔵の蓄電池のほうが先に寿命を迎えます。
| 部分 | 目安 |
|---|---|
| 内蔵の蓄電池 | 数年で劣化する。点検で不点灯が出たら交換 |
| ランプ(光源) | 機種による。LEDは長いが無限ではない |
| 器具本体 | 一般には十数年が目安とされている |
器具に貼られている評定や適合のマークで、製造の時期が分かる機種があります。マークの様式が年代で変わっているため、いつごろのものかを見分ける手がかりになります。
交換の年をまとめて決める
台数が多い建物では、1台ずつ壊れるたびに呼ぶと出張の費用が毎回かかります。点検で不点灯が出た数が増えてきたら、フロア単位でまとめる年を決めておくと予算が読めます。
見積りを取るときは、次を先に伝えると差額が出にくくなります。
- 台数と、階ごとの内訳
- 天井の高さ(脚立で届くか、足場が要るか)
- 蓄電池だけの交換か、器具ごとの交換か
- 工事の時間帯(営業時間中が難しいか)
古い機種は蓄電池の供給が終わっていることがあります。型番を先に伝えて、蓄電池が手に入るかを確かめるところから始めると話が早く進みます。期限や設置年の管理は建物の法定点検一覧にまとめています。
よくある質問
非常用照明と誘導灯は同じものですか
別のものです。非常用照明は建築基準法で避難経路を明るくするもの、誘導灯は消防法で避難口の場所を示すものです。報告先も違い、非常用照明は特定行政庁、誘導灯は消防署になります。
「非常灯」と呼んでいますが、どちらのことですか
現場では両方をまとめて「非常灯」と呼ぶことがあります。呼び方が同じだと、契約書でも点検の記録でも、どちらを指しているのか分からなくなります。設備の名前で「非常用照明」「誘導灯」と書き分けておくと、どちらかが何年も見られていない状態を防げます。
非常用照明は何分点けばよいのですか
一般には30分以上とされていますが、用途や階数によってはより長い時間が求められることがあります。自分の建物にどれが適用されるかは、所在地の特定行政庁に確認します。
自己点検機能があれば点検は不要ですか
不要にはなりません。日常の確認が楽になるという位置づけです。リモコンや自動の機能で非常点灯に切り替えられるため、脚立を出さずに状態を見られます。法令に基づく点検と報告は、これまでどおり必要とされています。台数の多い建物では、更新のときに検討する価値があります。
普段点いていないので、壊れていても分かりません
そのとおりで、ここが非常用照明の難しいところです。モニタランプが点いているかを日常の巡回で見るのが、点検を待たずに気づける数少ない手がかりです。自己点検機能の付いた機種なら、リモコンで確認できるものもあります。
改装で部屋を仕切りました。何かすることはありますか
仕切ってできた部屋に非常用照明が無い、器具の光が届かない、といった状態が生じることがあります。内装の工事を計画する段階で建築士に相談しておくと、後から器具を追加する手戻りを防げます。
報告書に「照度が不足」と書かれました
器具の劣化だけが原因とは限りません。棚を入れた、間仕切りを足した、内装を濃い色に変えたといった建物側の変化で、床面の明るさが落ちていることがあります。器具を替える前に、光をさえぎっているものが無いかを見ると、費用をかけずに直ることがあります。
誘導灯と一緒に点検してもらえませんか
制度が別なので、報告は別々に行うことになります。ただし実務としては、同じ日にまとめて器具を見てもらう形にしている建物があります。館内への周知が1回で済み、脚立や足場も1回で足ります。日程を合わせられるかを、それぞれの委託先に聞いてみる価値はあります。
蓄電池だけ交換できますか
機種によります。古い機種は蓄電池の供給が終わっていて、器具ごとの交換になることがあります。型番を控えて、まず供給の状況を確かめます。
まとめ
非常用照明の点検で見るのは、常用の電源を切ったあと、決められた時間点き続けるかです。一般には30分以上とされています。普段は点いていない設備なので、点検するまで壊れていることに気づけません。
誘導灯とは別の設備です。非常用照明は建築基準法で避難経路を明るくし、誘導灯は消防法で避難口の場所を示します。報告先も委託先も別になっていることがあるため、契約書に設備の名前で書かれているかを確かめておきます。
器具には、建物の中央に蓄電池設備を置く電源別置型と、器具ごとに蓄電池が入っている電源内蔵型があります。多くの建物は後者で、1台ごとに寿命が来ます。設置年ごとにまとめて管理しておくと、交換の予算が読めます。
日常で見られるのは、モニタランプ、器具の外観、光をさえぎる物の3つです。モニタランプが消えている器具は、充電されていない可能性があります。
報告書に「照度が不足」と書かれたときは、器具を替える前に床面をさえぎっているものを見ます。棚や内装の変化で暗くなっているだけなら、配置を直すだけで済むことがあります。
そして、改装のあとが要注意です。間仕切りを足してできた部屋、高い棚、下げた天井は、どれも非常用照明の効き方を変えます。工事の計画段階で相談しておくと、後から追加する手戻りを防げます。