キュービクルの点検|月次と年次で見るところの違い
目次
キュービクルの点検は、施設の担当者から見ると「業者が来て、何かを測って帰っていく」設備の代表です。中を開けられるのは資格を持つ人だけなので、自分たちで何を見ればよいのかが分かりにくいところがあります。
この記事では、キュービクルの点検を、キュービクルとは何か、月次点検で見るところ、年次点検で見るところ、自分たちにできること、更新の考え方の順に整理します。点検の頻度や中身は保安規程の定めと設備の規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、保安の委託先と所管の産業保安監督部に確認してください。
結論:キュービクルの点検は月次と年次で見るものが違う
キュービクルの点検は、大きく2つに分かれます。止めずに見るか、止めて見るかが分かれ目です。
| 月次点検 | 年次点検 | |
|---|---|---|
| 頻度の例 | 月1回または隔月 | 年1回、または条件により数年に1回 |
| 停電 | させない | させる |
| 中心になること | 外から見る・測る・記録する | 中を開けて測る・清掃する |
| 段取り | 立会いだけで済むことが多い | テナントへの周知が要る |
「毎月来ているのに、どうして年に1回止めるのか」という質問がよく出ます。月次点検は電気を止めずにできる範囲なので、機器の内部の絶縁や、保護装置が正しく働くかまでは確かめられません。そこを見るのが年次点検です。
頻度そのものは、その建物の保安規程に書かれた内容によって決まります。保安規程の話は自家用電気工作物とはにまとめています。
キュービクルの中に入っているもの
点検の記録に出てくる用語は、中身の役割が分かると読めるようになります。代表的なものだけ押さえれば十分です。
| 機器 | 役割 |
|---|---|
| 断路器・開閉器 | 電気の入り口を開け閉めする |
| 遮断器 | 事故のときに電気を切る |
| 変圧器(トランス) | 高圧を建物で使う電圧に下げる |
| 進相コンデンサ | 力率を改善する |
| 保護継電器(リレー) | 異常を検知して遮断器に切らせる |
| 計器・計器用変成器 | 電圧・電流を測って表示する |
建物の中の電気は、変圧器を通って初めて使える電圧になります。キュービクルが止まれば、建物全体が止まるということです。だから年次点検の段取りが大ごとになります。
屋外と屋内で傷み方が違う
キュービクルは屋上や駐車場の隅など、屋外に置かれていることが多い設備です。屋外のものは雨風と日射にさらされるため、扉の錆、パッキンの劣化、換気口の詰まりが出やすくなります。
屋内に置かれている場合は、室温と換気が課題になります。機器は熱を持つので、換気扇が止まっていたり、吸気口が塞がれていたりすると、室温が上がって機器の寿命が縮みます。
月次点検で見ていること
月次点検は停電させずに行うため、外から確かめられることと、運転したまま測れることが中心になります。
| 見ること | 何が分かるか |
|---|---|
| 外観(錆・変形・油のにじみ) | 進んでいる劣化 |
| 計器の指示(電圧・電流・力率) | 負荷の状態、異常の兆候 |
| 機器の温度 | 過熱している箇所 |
| 異音・異臭 | 放電、焼損の兆候 |
| 絶縁監視装置の記録 | 地絡の兆候(連続で見ている装置) |
| 周りの状況 | 物の置き方、小動物の侵入跡 |
温度は赤外線の測定器で見ていることが多く、写真として記録に残せます。同じ箇所を毎月撮っておくと、上がってきているかが分かります。記録をもらって手元に残しておくと、こうした比較ができるようになります。
絶縁監視装置と遠隔監視
近年は、絶縁の状態を常時監視して、異常があれば自動で通報する装置を付けている建物が増えています。これがあると、月次点検の一部を遠隔で行う形が認められることがあります。
遠隔になった場合も、現地に来る回数がゼロになるわけではありません。どの頻度で来るのか、どこまでが遠隔なのかを契約で確かめておきます。
年次点検で見ていること
年次点検は建物を停電させて行います。電気が流れていない状態でしかできないことが中心です。
| 見ること | なぜ止めるのか |
|---|---|
| 絶縁抵抗の測定 | 電圧がかかったままでは測れない |
| 接地抵抗の測定 | 同上 |
| 保護継電器の動作試験 | 実際に動かして、正しく切れるかを見る |
| 内部の清掃 | ほこりは放電の原因になる |
| 端子の増し締め | 緩みは過熱と焼損につながる |
| 機器の分解・目視 | 扉を開けて内部を見る |
いちばん大事なのは保護継電器の動作試験です。事故のときに遮断器を切らせる装置なので、これが動かないと、自分の設備の故障が周りの地域まで波及します。普段は何もしていない装置なので、動かしてみるまで状態が分かりません。
停電の段取りが本番
年次点検で難しいのは、電気の作業そのものではなく停電の段取りです。一般には、次の順で準備している建物が多くあります。
- 1か月以上前に日程を決め、テナントへ文書で知らせる
- 停電する時間帯と、復電の予定時刻を明示する
- サーバー・冷蔵庫・水槽・自動ドアなど、止められない設備を洗い出す
- 必要なら仮設の電源(発電機)を手配する
- エレベーターを止める時間と、その間の移動手段を決める
- 復電後に各設備が正常に立ち上がったかを確認する
最後が抜けやすいところです。停電から復帰しない設備があっても、翌朝まで誰も気づかないことがあります。復電の直後に館内を1周する手順まで含めて計画しておきます。
止められない設備がある建物
病院や、データを扱う施設、生き物を扱う施設では、完全に止めることが難しい場合があります。一般には、次のような方法をとることがあります。
- 仮設の発電機を入れて、その系統だけ生かす
- 区画を分けて、日を変えて実施する
- 無停電電源装置(UPS)でつなぐ
- 条件を満たして、年次点検の周期を延ばす
どれも委託先との相談が要ります。建物の事情を先に伝えておくと、実施のしかたを組んでもらえます。
自分たちにできること
キュービクルの中は資格を持つ人でなければ開けられませんが、外側と周りは日常で見られます。むしろここが、点検で指摘の出やすいところです。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| 扉と施錠 | 鍵がかかっているか。「立入禁止」の表示があるか |
| 周りの空間 | 物が置かれていないか。保安上の距離が保たれているか |
| 換気口・フィルタ | 落ち葉やごみで塞がれていないか |
| 基礎とフェンス | 傾き、錆、破損が無いか |
| 小動物の侵入跡 | ねずみ・蛇・鳥の糞や巣 |
| 樹木・雑草 | 枝が触れていないか |
キュービクルの周りを物置にしてしまうのが、いちばん多い指摘です。屋上や駐車場の隅にあるため、置き場所として便利に見えてしまいます。「キュービクルの周りには物を置かない」を、館内のルールに1行入れておくと、毎回の注意が要らなくなります。
小動物の侵入は実際に事故になる
ねずみや蛇がキュービクルの中に入り込み、高圧の部分に触れて短絡を起こす事故が実際に起きています。換気口の網が破れていないか、ケーブルの引込み口に隙間が無いかは、外からでも見られます。
巣や糞を見つけたら、掃除する前に委託先へ連絡します。中に入り込んでいる可能性があるためです。
巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
点検の記録をどう使うか
点検のたびに記録が出てきますが、ファイルに綴じて終わりになっている建物が多くあります。記録は、比べて初めて意味が出ます。
| 見かた | 何が分かるか |
|---|---|
| 同じ項目を時系列で並べる | 絶縁抵抗が下がってきている、温度が上がってきている |
| 前年の同じ月と比べる | 季節の影響を除いた変化 |
| 指摘の欄だけ抜き出す | 何年も直っていない項目 |
| 計器の指示を並べる | 負荷が増えているか(増設の判断材料) |
「何年も同じ指摘が並んでいる」のが、いちばん見つけやすい形です。指摘の欄だけを1枚に書き写すと、放置されているものが浮かび上がります。
負荷の増加は先に見えている
テナントの入れ替わりや設備の増設で、電気の使用量は少しずつ増えていきます。計器の指示を毎月並べておくと、容量に余裕があるかが見えます。
容量がいっぱいになってから増設を相談すると、変圧器の交換や受電設備の改修が必要になり、金額も期間も大きくなります。余裕が減ってきた段階で相談を始めると、選択肢が残ります。
記録が手元に無い建物
委託先の手元にしか記録が無いという建物が実際にあります。これだと、契約を切り替えたときに過去の経過が分からなくなります。点検のたびに写しをもらい、建物側にも1部残す形にしておきます。
更新の考え方
キュービクルの中の機器には、それぞれ更新の目安があるとされています。建物全体をいっぺんに替えるのではなく、機器ごとに順番が来ます。
| 部分 | 考え方 |
|---|---|
| 進相コンデンサ・保護継電器 | 比較的早く更新の対象になる |
| 変圧器・遮断器 | 使用の状況と点検の結果で判断する |
| キュービクル本体(外箱) | 屋外設置は錆の進行で決まることがある |
年次点検の結果に「更新を検討」と書かれ始めたら、そこから予算を組み始めるのが現実的な進め方です。故障してから手配すると、部品の供給が終わっていて長期間止まることがあります。
更新の相談で伝えること
見積りを取るときは、次を先に伝えると比べられる金額が出てきます。
- 設置年と、キュービクルの銘板に書かれている型式
- 受電の容量(変圧器の容量)
- 屋外か屋内か、搬入の経路(クレーンが入るか)
- 停電できる時間帯と、止められない設備
- 仮設の電源が必要かどうか
搬入の経路がいちばん金額を動かします。屋上のキュービクルを入れ替えるには大型のクレーンが要ることがあり、道路の使用許可や夜間の作業が伴います。設備そのものの値段だけで比べると、後から差が出ます。
期限や設置年の管理は建物の法定点検一覧にまとめています。
よくある質問
キュービクルの点検は義務ですか
高圧で受電している建物は自家用電気工作物にあたり、設置者が保安を確保することとされています。その手段として、保安規程に点検の頻度を定め、そのとおりに実施する形になります。保安規程に書いた頻度が、その建物で守るべき頻度です。
毎月来てもらっているのに、なぜ年に1回止めるのですか
月次点検は電気を止めずにできる範囲なので、機器の内部の絶縁や、保護装置が正しく働くかまでは確かめられません。そこを見るのが年次点検です。特に保護継電器の動作試験は、止めなければできません。
台風や大雨のあとに見ておくことはありますか
屋外に置かれたキュービクルは、浸水と飛来物の影響を受けます。基礎の周りに水が溜まっていないか、扉や換気口から雨が入った跡が無いか、飛んできた物が当たっていないかを外から見ておきます。異常を見つけたら、自分で扉を開けずに委託先へ連絡します。中に水が入っている状態で通電していると危険です。
キュービクルの鍵は誰が持ちますか
施錠して、限られた人だけが開けられる状態にしておきます。委託先と建物側の双方が持っているのが一般的です。鍵の所在が分からなくなっている建物があるので、点検の前に確かめておきます。
屋内のキュービクルで気を付けることはありますか
室温と換気です。機器は熱を持つので、換気扇が止まっていたり、吸気口が塞がれていたりすると室温が上がり、機器の寿命が縮みます。電気室を物置にすると、吸気口の前に荷物が積まれることがよく起きます。換気扇が回っているか、吸気口の前が空いているかを、巡回の項目に入れておきます。
周りに荷物を置いてはいけませんか
保安上の距離を保つことと、点検や消火のときに近づけることが必要になります。扉が開けられない状態は、点検そのものができません。屋上や駐車場の隅は置き場所として使われやすいので、館内のルールに書いておきます。
点検の記録はどう使えばよいですか
ファイルに綴じるだけでは活きません。同じ項目を時系列で並べると、絶縁抵抗が下がってきている、温度が上がってきている、といった変化が見えます。指摘の欄だけを1枚に書き写すと、何年も直っていない項目が浮かび上がります。記録は建物側にも1部残しておくと、委託先を替えたときにも経過が追えます。
電気の容量が足りるか知りたいのですが
計器の指示(電流や電力)を毎月並べておくと、容量にどれだけ余裕があるかが見えます。いっぱいになってから増設を相談すると、変圧器の交換や受電設備の改修が必要になり、金額も期間も大きくなります。余裕が減ってきた段階で委託先に相談すると、選択肢が残ります。
更新はいつごろ考えればよいですか
年次点検の結果に更新の助言が出始めたら、そこから予算を組み始めるのが現実的です。故障してからでは部品が無く、長期間止まることがあります。設置年と型式を控えておき、委託先に部品の供給状況を聞いておきます。
まとめ
キュービクルの点検は、月次と年次で見るものが違います。月次は電気を止めずに、外観・計器・温度・異音を見ます。年次は建物を停電させて、絶縁の測定、保護継電器の動作試験、内部の清掃と増し締めを行います。
年次点検でいちばん大事なのは、保護継電器が正しく動くかの確認です。普段は何もしていない装置なので、動かしてみるまで状態が分かりません。ここが働かないと、自分の設備の故障が周りの地域まで波及します。
年次点検の難しさは、電気の作業ではなく停電の段取りにあります。1か月前の周知、止められない設備の洗い出し、仮設電源の手配。そして復電のあとに館内を1周して、各設備が立ち上がったかを確かめるところまでを計画に入れます。
点検の記録は、綴じるだけでなく並べて比べます。絶縁抵抗の推移、温度の推移、何年も残っている指摘。どれも1枚に書き写すだけで見えてきます。記録は建物側にも1部残しておきます。
自分たちでできるのは、外側と周りです。扉の施錠、周りに物を置かないこと、換気口の詰まり、小動物の侵入跡。どれも日常の巡回で見られます。キュービクルの周りを物置にしないというルールを1行入れておくだけで、指摘がかなり減ります。