誘導灯の点検|非常用照明との違いと交換の目安
目次
誘導灯の点検は、「点いているから大丈夫」で済まされがちな設備です。ところが誘導灯が本当に働くのは停電のときなので、普段点いているかどうかは、点検の答えになりません。見るのは、電源が切れたあとに何分点き続けるかです。
この記事では、誘導灯の点検を、非常用照明との違い、誘導灯の種類、自分で見られる範囲、点検のやり方、交換の目安の順に整理します。点検の要領や必要な資格は建物の規模・用途で変わります。自分の建物にどれが適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
結論:誘導灯は「停電してから何分点くか」を見る
誘導灯の点検でいちばん多い勘違いは、点灯しているかどうかだけを見てしまうことです。誘導灯には蓄電池が内蔵されていて、停電したときにその蓄電池で点き続けます。蓄電池が劣化していると、電源を切った瞬間に消えます。
| 見るところ | 何が分かるか |
|---|---|
| 普段の点灯 | 電源が来ているか。ランプが生きているか |
| 電源を切ったあとの点灯 | 蓄電池が生きているか。ここが本題 |
| 表示面の見え方 | 汚れ、色あせ、物陰に隠れていないか |
| 設置の位置 | 避難の向きと合っているか |
誘導灯の不良でいちばん多いのは、蓄電池の劣化です。外から見ても分からないので、点検で電源を切ってみるまで気づけません。ここが「点いているから大丈夫」が通じない理由です。
誘導灯と非常用照明は別の設備
現場でよく混ざるのが、誘導灯と非常用照明です。見た目が似ていて、どちらも停電時に点くので、同じものだと思われていることがあります。実際には根拠となる法律が違います。
| 誘導灯 | 非常用照明 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 消防法 | 建築基準法 |
| 目的 | 避難口の場所を示す | 避難経路を明るくする |
| 見た目 | 緑または白地に人と矢印の絵 | 白い光の照明器具 |
| 点検の枠組み | 消防設備点検 | 建築設備定期検査 |
| 報告先 | 消防長・消防署長 | 特定行政庁 |
「誘導灯の点検をしているから非常用照明も見てもらっている」とは限りません。制度が別なので、委託先も報告先も別になっていることがあります。非常用照明のほうは非常用照明の点検にまとめています。
混同したまま委託していることがある
管理を委託している建物では、「照明の点検」とだけ書かれた契約になっていることがあります。この書き方だと、誘導灯だけを見ているのか、非常用照明まで含むのかが読み取れません。
一般には、誘導灯は消防設備点検の業者、非常用照明は建築設備定期検査の資格者が見ています。契約書に設備の名前で書かれているかを一度確かめておくと、どちらかが空白のまま何年も過ぎる状態を防げます。
建物によっては両方ある
避難口の真上に誘導灯、その下の廊下に非常用照明、という並びになっている建物が多くあります。どちらが欠けても避難は難しくなります。誘導灯だけ点いていても足元が見えず、非常用照明だけでは出口の位置が分かりません。
誘導灯の種類
点検票に並ぶ用語は、種類が分かると読めるようになります。大きく3つです。
| 種類 | どこに付いているか | 表示 |
|---|---|---|
| 避難口誘導灯 | 出入口の上 | 人が扉から出る絵 |
| 通路誘導灯 | 廊下・階段 | 人と矢印 |
| 客席誘導灯 | 劇場・映画館の客席 | 足元を照らす |
避難口誘導灯と通路誘導灯の違いは、矢印があるかどうかです。矢印のあるものは「この方向へ進め」、矢印のないものは「ここが出口」を示しています。
矢印の向きは改装で狂う
間仕切りを変えたあと、矢印だけ昔のままになっていることがあります。避難の経路が変わったのに、誘導灯が古い出口を指し続けている状態です。点検では設置状況として見られますが、改装の直後に自分で歩いて確かめるのがいちばん確実です。
誘導灯の点検でやること
誘導灯は消防用設備なので、点検は消防設備点検の一部として行われます。周期は他の設備と同じで、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回です。
| 見ること | |
|---|---|
| 機器点検(6か月) | 設置場所、外観の破損・汚れ、点灯、表示灯(モニタ)の状態、非常点灯への切替 |
| 総合点検(1年) | 電源を切り、定められた時間、点き続けるか |
点検の全体像は消防設備点検とはにまとめています。
自分で見られる範囲
有資格者による点検が必要な建物でも、日常の巡回で見られることがあります。難しい道具は要りません。
| 見るところ | やり方 |
|---|---|
| 表示面 | ほこり・色あせ・破損。読めるか |
| 見通し | 棚・掲示物・観葉植物で隠れていないか |
| 点灯 | 消えている器具がないか |
| モニタランプ | 器具に付いている小さなランプの色 |
モニタランプは、蓄電池やランプの状態を示しています。正常なときは緑の点灯、異常があると消灯や点滅になる機種が一般的です。正常な状態を写真に撮って巡回表に貼っておくと、誰が巡回しても違いに気づけます。
巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
点検棒を使う
誘導灯は天井近くに付いているため、脚立を出すのが手間になります。点検スイッチを引く専用の棒(点検棒)を使うと、床から非常点灯に切り替えられる機種があります。台数が多い建物では、これがあるだけで巡回の時間が変わります。
見落としやすい誘導灯
点検で指摘が出やすいのは、設備の故障ではなく、周りの状況です。どれも日常の巡回で防げます。
| 状況 | なぜ問題か |
|---|---|
| 掲示物やポスターで隠れている | 表示が見えない |
| 棚・什器を移動して陰になった | 通路から読めない |
| 観葉植物が伸びて重なった | 季節で変わるので気づきにくい |
| 改装で天井を下げて位置がずれた | 有効な高さから外れることがある |
| 消灯したまま放置 | ランプ切れが見過ごされている |
いちばん多いのは掲示物です。壁面の空いている場所に貼ると、誘導灯の周りが埋まっていきます。掲示のルールに「誘導灯・消火器の周りには貼らない」を1行入れておくと、毎回の注意が要らなくなります。
消灯してよい誘導灯もある
一定の条件を満たす場合に、人がいない時間帯は消灯してよいとされる機種や運用があります。ただし条件は細かく決まっているため、独自の判断で消してよいものではありません。消灯している誘導灯があるなら、それが認められた運用なのかを設置業者と消防署に確認しておきます。
停電したときに誘導灯はどう動くか
誘導灯の点検を理解するには、停電の瞬間に何が起きるかを知っておくと早くなります。多くの機種は、常用の電源が切れると自動で内蔵の蓄電池に切り替わります。
| 時点 | 誘導灯の状態 |
|---|---|
| 平常時 | 常用の電源で点灯。同時に蓄電池を充電している |
| 停電した瞬間 | 自動で蓄電池に切り替わる。点灯を続ける |
| 停電から一定時間 | 定められた時間は点き続けることとされている |
| 蓄電池が切れたあと | 消える |
| 復電後 | 常用の電源に戻り、蓄電池の充電が始まる |
復電したあと、蓄電池が充電し直されるまでには時間がかかります。停電が続けて起きると、2回目は十分に点かないことがあります。長時間の停電や計画停電のあとは、モニタランプが正常に戻っているかを見ておくと安心です。
点検で「不点灯」と書かれたときの読み方
点検票に「不点灯」と書かれていても、意味は1つではありません。
| 書かれ方 | 意味 |
|---|---|
| 平常時から消灯 | 電源かランプの問題。すぐ分かる |
| 非常点灯で不点灯 | 蓄電池の劣化。外から見ても分からない |
| 点灯時間が短い | 蓄電池の容量が落ちている |
| 表示面の汚損 | 器具は生きている。清掃で直ることがある |
いちばん重いのは2つ目です。普段は点いているので、報告書を読まないと気づけません。点検票の「不良」の欄を、誰が読んで誰が手配するかを決めておくと、翌年に同じ指摘が並ぶことが減ります。
誘導灯が付いている場所の考え方
誘導灯は、どの建物にも同じように付くわけではありません。用途・規模・階数によって、必要な種類と数が決まるとされています。設置そのものは設計の段階で決まっているので、管理する側が見るのは「今ある器具が有効に働いているか」です。
一般には、次のような場所に付いています。
- 屋外への出口、直通階段への出入口
- その出口が見通せない廊下の曲がり角
- 階段や傾斜路(通路誘導灯や階段の照明)
- 劇場・映画館などの客席の足元
用途を変更したときは、必要な誘導灯も変わることがあります。事務所の一部を店舗にした、間仕切りを増やして個室にした、といった場合です。内装の工事をするときは、着工の前に所轄の消防署へ相談しておくと、後から追加を求められて費用と工期が膨らむのを防げます。
交換の目安
誘導灯は、器具そのものと内部の蓄電池で寿命が違います。蓄電池のほうが先に来ます。
| 部分 | 目安 |
|---|---|
| 内蔵の蓄電池 | 数年で劣化する。点検で不点灯が出たら交換 |
| ランプ(光源) | 機種による。LEDは長いが無限ではない |
| 器具本体 | 一般には十数年が目安とされている |
2度目の蓄電池交換の時期に、器具ごと交換するかを検討するのが一般的な考え方です。古い機種は部品の供給が終わっていることがあり、蓄電池だけ替えられない場合があります。
費用の見当を付けておく
誘導灯の交換は、金額そのものより台数と足場のかけ方で総額が変わります。吹き抜けや天井の高いホールにある器具は、1台でも高所作業車や足場が必要になり、同じ機種でも手間が変わります。
見積りを取るときは、次を先に伝えると差額が出にくくなります。
- 台数と、階ごとの内訳
- 天井の高さ(脚立で届くか、足場が要るか)
- 蓄電池だけの交換か、器具ごとの交換か
- 取り外した器具の処分を含むか
- 工事の時間帯(営業時間中か、夜間か)
3つ目を伝えていないと、蓄電池だけの見積りと器具ごとの見積りが混ざって比べられません。古い機種は蓄電池の供給が終わっていることがあるため、まず型番を伝えて、蓄電池が手に入るかを確かめるところから始めると話が早く進みます。
夜間や休館日の工事は割増になることがありますが、営業時間中に脚立を立てられない場所では、結局そちらのほうが安く済むこともあります。どちらが現実的かは、建物の使われ方で決まります。
まとめて交換する年を決める
台数の多い建物では、1台ずつ壊れるたびに呼ぶと出張の費用が毎回かかります。点検で不良が出た数が増えてきたら、フロア単位でまとめる年を決めておくと予算が読めます。
設置年と機種を一覧に控えておくと、部品の供給が終わる前に相談ができます。一覧のつくり方は建物の法定点検一覧にまとめています。
よくある質問
誘導灯の点検は自分でできますか
一定の規模・用途の建物では、消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要とされています。自分でやってよい建物でも、表示面の汚れや見通しの確認は日常の巡回でできます。自分の建物がどちらかは所轄の消防署で確認します。
誘導灯が切れています。次の点検まで待ってよいですか
避難のときに出口を示すためのものなので、切れたまま次の点検まで待つ、という扱いはしません。気づいた時点で交換し、交換した記録を残します。同じ場所で繰り返すなら、器具の寿命を疑います。
誘導灯と非常灯は同じものですか
別のものです。誘導灯は消防法で出口の場所を示すもの、非常灯(非常用照明)は建築基準法で避難経路を明るくするものです。報告先も違い、誘導灯は消防署、非常用照明は特定行政庁になります。
モニタランプが点滅しています
機種によって意味は違いますが、蓄電池かランプの異常を示していることが多くあります。取扱説明書か器具の表示で意味を確かめ、分からなければ設置業者に連絡します。点滅したまま放置すると、停電時に点かない状態が続きます。
誘導灯を移設したいのですが、勝手に動かしてよいですか
誘導灯は、避難の経路に合わせて位置と種類が決められています。内装の変更に合わせて自分で動かすと、有効な範囲から外れることがあります。間仕切りの変更や用途の変更を伴う工事では、着工の前に所轄の消防署と設置業者へ相談しておきます。工事が終わってから追加を求められると、費用も工期も膨らみます。
掲示物で隠れているものは点検で指摘されますか
設置状況として見られます。避難のときに読めなければ意味がないので、周りを空けておきます。掲示のルールに書いておくと、担当が替わっても守られます。
まとめ
誘導灯の点検で本当に見るのは、電源を切ったあとに点き続けるかです。普段点いていることは、蓄電池が生きている証拠になりません。不良でいちばん多いのが蓄電池の劣化で、これは外から見ても分かりません。
誘導灯と非常用照明は別の設備です。誘導灯は消防法で出口の場所を示し、非常用照明は建築基準法で避難経路を明るくします。報告先も委託先も別になっていることがあるので、両方の点検が回っているかを確かめます。
日常でできるのは、表示面の汚れ、見通し、消えている器具、モニタランプの4つです。掲示物や棚で隠れているのが、いちばん多い指摘なので、掲示のルールに1行入れておくと毎回の注意が要らなくなります。
点検票に「不点灯」と書かれていても、平常時から消えているのか、非常点灯で点かないのかで意味が変わります。重いのは後者で、普段は点いているぶん報告書を読まないと気づけません。不良の欄を誰が読み、誰が手配するかを決めておくと、翌年に同じ指摘が並ばずに済みます。
交換は蓄電池が先に来ます。2度目の蓄電池交換の時期に器具ごと替えるかを検討するのが一般的で、設置年と機種を控えておくと部品が無くなる前に相談ができます。見積りを取るときは、台数・天井の高さ・蓄電池だけか器具ごとかの3つを先に伝えると、比べられる形の金額が出てきます。