定期報告の資格者|4つの調査員と建築士の関係
目次
定期報告の見積もりを取ると、会社によって「うちは建物だけ」「設備は別の者が行きます」と言われます。調査や検査を行える人は、報告の種類ごとに決まっています。ここを知らないと、4つのうち1つだけ誰も担当していない状態が起きます。
この記事では、定期報告の資格者を、4つの資格、建築士との関係、誰に頼むかの決め方、資格を確かめる方法、社内の人が取る場合の順に整理します。必要な資格と報告の対象は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。
結論:報告の種類ごとに、行える人が決まっている
定期報告は4種類あり、それぞれ別の資格が対応しています。
| 報告の種類 | 行える人 |
|---|---|
| 特定建築物定期調査 | 一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員 |
| 建築設備定期検査 | 一級建築士、二級建築士、建築設備検査員 |
| 防火設備定期検査 | 一級建築士、二級建築士、防火設備検査員 |
| 昇降機等定期検査 | 一級建築士、二級建築士、昇降機等検査員 |
建築士は4つすべてを行えます。ただし、実務としては専門が分かれています。建築士だから何でも頼める、とはなりません。昇降機の検査を建築士に頼んでも、機器の知識が要るため断られることが普通です。
4つの調査員と検査員
建築士とは別に、講習を修了して登録された人が行える仕組みがあります。
1つ目は、特定建築物調査員です。建物そのものを見ます。敷地、構造、防火、避難。
2つ目は、建築設備検査員です。換気、排煙、非常用照明、給排水の設備を見ます。
3つ目は、防火設備検査員です。防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーンなどを見ます。
4つ目は、昇降機等検査員です。エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機を見ます。
それぞれ、講習を受けて修了考査に合格し、登録することで資格が得られます。受講には実務の経験が求められることが一般的です。建物の管理をしている人が取りやすい資格でもあります。
誰に頼むかの決め方
頼む相手を選ぶときの見方は4つです。
1つ目は、4つをまとめて頼めるかです。1社で4つ全部に対応できるなら、日程の調整が1回で済みます。
2つ目は、資格者が自社にいるかです。下請けに出す会社もあります。誰が来るのかを先に聞いてください。
3つ目は、提出の代行が含まれるかです。含まれない契約もあります。
4つ目は、是正の見積もりを出せるかです。指摘が出たあとに別の業者を探すと、時間がかかります。
1つ目がいちばん効きます。4つを別々の業者に頼むと、テナントへの立ち入りの連絡も4回、日程調整も4回になります。同じ日にまとめられるかを聞いてください。
資格を確かめる方法
見積もりの段階で、誰が来るのか、どの資格を持っているのかを確かめます。
確かめるのは3つです。
1つ目は、資格者証です。報告書には資格者の氏名と番号が入ります。事前に写しをもらっておくと確実です。
2つ目は、実際に来る人かどうかです。見積もりの担当者と、当日に来る人が違うことがあります。
3つ目は、登録が続いているかです。資格には更新の仕組みがあります。期限が切れていないか。
報告書を受け取ったら、資格者の欄を見てください。空欄や、聞いていない名前が入っていることがあります。受け取った時点で確かめるのが、いちばん簡単な方法です。
社内の人が資格を取る場合
建物を多く持っている会社では、社内で資格を取る選択があります。
考えるのは4つです。
1つ目は、費用の比較です。講習の費用と、毎年の外注の費用。建物の数が多いほど、社内で持つ意味が出ます。
2つ目は、受講の要件です。実務の経験が求められることが一般的です。誰が受けられるかを先に確かめます。
3つ目は、時間の確保です。講習は数日かかります。修了考査もあります。
4つ目は、報告の中立性です。自分の建物を自分で調査することについて、自治体によって扱いが違うことがあります。所在地の特定行政庁に確かめてください。
4つ目を先に確かめてください。資格を取ってから「自社の建物は調査できない」と分かると、費用が無駄になります。
資格者が見るところは決まっている
資格者が行う調査と検査は、国が定めた項目と方法に沿って行われます。業者ごとに違う項目を見るわけではありません。
決まっているのは3つです。
1つ目は、調査の項目です。何を見るかが定められています。
2つ目は、調査の方法です。目視か、測定か、作動させるか。
3つ目は、判定の基準です。要是正、要重点点検といった判定の区分。
だから、業者によって指摘の数が大きく変わるのは不自然です。前回と比べて極端に指摘が少ないときは、見ていない項目が無いかを報告書で確かめてください。項目の欄が空白のまま出ていることがあります。
報告書の見方
受け取った報告書は、綴じる前に3か所だけ見ます。
見るのは3つです。
1つ目は、資格者の氏名と番号です。誰が行ったか。
2つ目は、判定の欄です。要是正がいくつあるか。前回と比べて増えているか減っているか。
3つ目は、写真です。指摘の箇所の写真があるか。写真が無い指摘は、どこのことか分からなくなります。
3つ目が無い報告書は、直すときに困ります。「3階の防火戸」と書かれていても、3階に扉が10枚あれば探すことになります。写真を付けてもらうよう、依頼のときに頼んでください。
立ち会いをどうするか
調査や検査の日に、建物の担当者が立ち会うかどうか。立ち会ったほうが、そのあとが速く進みます。
理由は3つです。
1つ目は、その場で指摘が聞けることです。報告書が届くのは1か月後です。現場で「ここが要是正になります」と聞けると、すぐ動けます。
2つ目は、場所が分かることです。あとから報告書を見て探す手間が消えます。
3つ目は、建物のことを伝えられることです。「この部屋は去年から使っていない」「ここは改修した」。資格者にとっても、判断の材料になります。
全部の時間に立ち会う必要はありません。最初の30分と、最後のまとめの時間だけでも効きます。最後に「今日の指摘を口頭で教えてください」と頼むだけで、1か月を先取りできます。
資格者の一覧を社内で持つ
建物を複数持っている会社では、誰がどの建物を担当しているかが分からなくなります。
一覧にするのは4つです。
1つ目は、建物ごとの4つの報告と、頼んでいる業者です。
2つ目は、資格者の氏名と番号です。
3つ目は、契約の期間と更新の時期です。
4つ目は、前回の報告の日と、次の期限です。
この一覧があると、業者を見直すときにそのまま比較の土台になります。無い場合は、各拠点に問い合わせるところから始めることになります。年に1回、同じ様式で集める形にしてください。
費用の内訳を見る
定期報告の見積もりは、1式でいくらという形で出てくることが多くあります。中身を分けて出してもらいます。
分けるのは4つです。
1つ目は、報告の種類ごとの金額です。特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機等。4つを別々に書いてもらいます。どれが高いのかが分かります。
2つ目は、調査の費用と報告書の作成の費用です。現場で見る作業と、書類を作る作業は別の手間です。
3つ目は、提出の代行の費用です。含まれているのか、別なのか。
4つ目は、追加になる条件です。高所作業車が要る、夜間の作業になる、テナントの数が多い。あとから追加される条件を先に聞いておきます。
内訳が出せない業者は避けたほうが無難です。何にいくらかかっているかが分からないと、次の年に比べられません。同じ内訳の形で、3社から取ると判断できます。
引き継ぎのときに渡すもの
担当者が替わるとき、定期報告に関する資料を1つの箱にまとめて渡します。
渡すのは5つです。
1つ目は、4つの報告の対象と報告月の一覧です。
2つ目は、直近3回分の報告書の控えです。受付の印があるもの。
3つ目は、指摘と是正の記録です。何が残っているか。
4つ目は、業者の連絡先と契約の内容です。
5つ目は、次の期限と、業者へ連絡する日です。
5つ目を書いておくのが、いちばん親切です。引き継いだ人は、いつ動けばよいかが分かりません。「◯月に業者へ連絡」と1行あるだけで、抜けが消えます。
資格者と業者を分けて考える
「どの業者に頼むか」と「誰が資格者として名前を入れるか」は、別の話です。ここを混ぜると、契約の中身が見えなくなります。
分けて見るのは3つです。
1つ目は、契約の相手です。請求書が来る会社。管理会社を通している建物では、そこが窓口になります。
2つ目は、実際に調査する人です。下請けや協力会社の資格者が来ることがあります。毎年違う人が来ることも珍しくありません。
3つ目は、報告書に名前が入る人です。2つ目と同じであるのが普通です。違っていたら理由を聞いてください。
管理会社を通している建物ほど、2つ目が見えなくなります。誰が来て何を見たのかが分からないまま、報告書だけが届く形です。年に1回、当日に来る人の名前と資格を聞くだけで、状況が変わります。
まとめ
定期報告の調査と検査は、報告の種類ごとに定められた資格を持つ人が行います。
- 建築士は4つすべてを行える。ただし実務では専門が分かれている
- 建築士のほかに、特定建築物調査員、建築設備検査員、防火設備検査員、昇降機等検査員がいる
- 頼むときは、4つをまとめて頼めるか、誰が来るか、提出代行が含まれるかを聞く
- 報告書を受け取ったら、資格者の欄、判定の欄、写真の3か所を見る
- 社内で資格を取る場合は、自社の建物を調査できるかを先に確かめる
必要な資格と報告の対象は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。
よくある質問
Q. 建築士なら、4つ全部を頼めますか。 A. 資格の上では行えますが、実務では専門が分かれています。とくに昇降機は機器の知識が要るため、専門の会社に頼むのが一般的です。見積もりの段階で、どこまで対応できるか聞いてください。
Q. 調査員の資格は、どうやって取りますか。 A. 登録を受けた機関の講習を受け、修了考査に合格して登録します。実務の経験が受講の要件になることが一般的です。要件は資格ごとに違うので、講習の実施機関に確かめてください。
Q. 自社の建物を、自社の資格者が調査できますか。 A. 扱いが自治体によって違うことがあります。資格を取る前に、所在地の特定行政庁に確かめてください。取ってから使えないと分かると、費用が無駄になります。
Q. 報告書に資格者の名前が入っていません。 A. 業者に確かめてください。資格者が行ったことを示す欄です。空欄のまま提出すると、受け付けられないことがあります。
Q. 前回より指摘が極端に少ないのですが。 A. 見ていない項目が無いかを報告書で確かめてください。調査の項目と方法は定められています。項目の欄が空白のまま出ていることがあります。
Q. 立ち会いは必要ですか。 A. 義務ではありませんが、立ち会うと指摘をその場で聞けます。最初の30分と最後のまとめだけでも効きます。報告書が届くのは1か月後になることが多いためです。
Q. 業者を替えると、指摘が増えることがありますか。 A. あります。見る人が替わると、前回見落とされていた箇所が出ます。増えたこと自体は悪いことではありません。前回の報告書と並べて、何が増えたかを確かめてください。
Q. 資格者の登録には期限がありますか。 A. 更新の仕組みがあります。期限が切れた資格者が行った検査は、有効に扱われないことがあります。依頼のときに資格者証の写しをもらっておくと確実です。
Q. 4つを別々の業者に頼んでいます。まとめたほうがよいですか。 A. まとめられるならまとめてください。日程の調整、テナントへの連絡、報告書の管理がそれぞれ1回で済みます。ただし昇降機は、保守をしている会社が行うほうが自然な場合もあります。
Q. 見積もりが会社によって大きく違います。 A. 対象の範囲と、提出代行の有無を確かめてください。4つのうち何を含むかで金額が変わります。同じ条件を書いた紙を渡して出してもらうと比べられます。
Q. 報告書の写真が少ないのですが。 A. 依頼のときに、指摘の箇所の写真を付けてもらうよう頼んでください。写真の無い指摘は、あとから場所を探すことになります。是正の記録にも使えます。
Q. 資格者の一覧は、どこで確かめられますか。 A. 登録の機関が名簿を公開していることがあります。まずは業者に資格者証の写しを求めてください。報告書に入る氏名と番号が、実際に来た人のものかを確かめるのがいちばん確実です。
Q. 見積もりの内訳を出してもらえません。 A. 別の業者にも声をかけてください。内訳を出せることは、作業の範囲を把握していることの現れでもあります。1式の見積もりだけでは、次の年に比べられません。
Q. 担当者が急に替わりました。何から確かめますか。 A. 直近の報告書の控えと、次の報告月です。この2つが分かれば、当面は動けます。業者に連絡すれば、前回の内容と次の期限を教えてもらえます。
Q. 管理会社に任せています。自分たちで確かめることはありますか。 A. 報告書の控えを受け取って、資格者の欄と判定の欄を見てください。報告する義務は所有者か管理者にあります。任せていても、義務が移るわけではありません。