建物の定期報告解説2026.07.27 公開TH-12

定期報告の資格者|4つの調査員と建築士の関係

目次

定期報告の見積もりを取ると、会社によって「うちは建物だけ」「設備は別の者が行きます」と言われます。調査や検査を行える人は、報告の種類ごとに決まっています。ここを知らないと、4つのうち1つだけ誰も担当していない状態が起きます。

この記事では、定期報告の資格者を、4つの資格建築士との関係誰に頼むかの決め方資格を確かめる方法社内の人が取る場合の順に整理します。必要な資格と報告の対象は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。

有資格者の一覧や点検の記録そのものを探している場合は、点検板に施設向けの様式がそろっています。

結論:報告の種類ごとに、行える人が決まっている

定期報告は4種類あり、それぞれ別の資格が対応しています。

報告の種類行える人
特定建築物定期調査一級建築士、二級建築士、特定建築物調査員
建築設備定期検査一級建築士、二級建築士、建築設備検査員
防火設備定期検査一級建築士、二級建築士、防火設備検査員
昇降機等定期検査一級建築士、二級建築士、昇降機等検査員
報告ごとに行える人が違う報告行える人特定建築物定期調査建築士・特定建築物調査員建築設備定期検査建築士・建築設備検査員防火設備定期検査建築士・防火設備検査員昇降機等定期検査建築士・昇降機等検査員
4つの報告と、それぞれを行える資格を並べた表

建築士は4つすべてを行えます。ただし、実務としては専門が分かれています。建築士だから何でも頼める、とはなりません。昇降機の検査を建築士に頼んでも、機器の知識が要るため断られることが普通です。

4つの調査員と検査員

建築士とは別に、講習を修了して登録された人が行える仕組みがあります。

1つ目は、特定建築物調査員です。建物そのものを見ます。敷地、構造、防火、避難。

2つ目は、建築設備検査員です。換気、排煙、非常用照明、給排水の設備を見ます。

3つ目は、防火設備検査員です。防火戸、防火シャッター、耐火クロススクリーンなどを見ます。

4つ目は、昇降機等検査員です。エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機を見ます。

4つの調査員と検査員特定建築物調査員敷地・構造・防火・避難建築設備検査員換気・排煙・非常用照明防火設備検査員防火戸とシャッター昇降機等検査員昇降機
建築物・設備・防火設備・昇降機という4つの調査員と検査員の担当範囲を並べた層の図

それぞれ、講習を受けて修了考査に合格し、登録することで資格が得られます。受講には実務の経験が求められることが一般的です。建物の管理をしている人が取りやすい資格でもあります。

誰に頼むかの決め方

頼む相手を選ぶときの見方は4つです。

1つ目は、4つをまとめて頼めるかです。1社で4つ全部に対応できるなら、日程の調整が1回で済みます。

2つ目は、資格者が自社にいるかです。下請けに出す会社もあります。誰が来るのかを先に聞いてください。

3つ目は、提出の代行が含まれるかです。含まれない契約もあります。

4つ目は、是正の見積もりを出せるかです。指摘が出たあとに別の業者を探すと、時間がかかります。

頼む相手の4つの見かた見かた確かめること一括で頼めるか4つを同じ日にできるか自社の資格者か下請けに出していないか提出の代行含まれるか別料金か是正の見積もり指摘のあとに出せるか
一括対応・自社の資格者・提出代行・是正の見積もりという4つの判断材料を並べた表

1つ目がいちばん効きます。4つを別々の業者に頼むと、テナントへの立ち入りの連絡も4回、日程調整も4回になります。同じ日にまとめられるかを聞いてください。

資格を確かめる方法

見積もりの段階で、誰が来るのか、どの資格を持っているのかを確かめます。

確かめるのは3つです。

1つ目は、資格者証です。報告書には資格者の氏名と番号が入ります。事前に写しをもらっておくと確実です。

2つ目は、実際に来る人かどうかです。見積もりの担当者と、当日に来る人が違うことがあります。

3つ目は、登録が続いているかです。資格には更新の仕組みがあります。期限が切れていないか。

資格の確かめ方3段1資格者証事前に写しをもら2当日に来る人見積もりの担当と違うことがある3登録の期限切れていないか
資格者証・当日に来る人・登録の有効期限という3つの確かめどころを並べたフロー
点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

有資格者と点検の期限をまとめて管理する様式は、点検板でそのまま使えます。

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報告書を受け取ったら、資格者の欄を見てください。空欄や、聞いていない名前が入っていることがあります。受け取った時点で確かめるのが、いちばん簡単な方法です。

社内の人が資格を取る場合

建物を多く持っている会社では、社内で資格を取る選択があります。

考えるのは4つです。

1つ目は、費用の比較です。講習の費用と、毎年の外注の費用。建物の数が多いほど、社内で持つ意味が出ます。

2つ目は、受講の要件です。実務の経験が求められることが一般的です。誰が受けられるかを先に確かめます。

3つ目は、時間の確保です。講習は数日かかります。修了考査もあります。

4つ目は、報告の中立性です。自分の建物を自分で調査することについて、自治体によって扱いが違うことがあります。所在地の特定行政庁に確かめてください。

社内で取る場合の4つ検討すること中身費用講習費と毎年の外注費を比べる受講の要件実務の経験が求められる時間講習は数日。修了考査もある中立性自社の建物を調査できるか
費用・受講要件・時間・中立性という4つの検討の材料を並べた表

4つ目を先に確かめてください。資格を取ってから「自社の建物は調査できない」と分かると、費用が無駄になります。

資格者が見るところは決まっている

資格者が行う調査と検査は、国が定めた項目と方法に沿って行われます。業者ごとに違う項目を見るわけではありません。

決まっているのは3つです。

1つ目は、調査の項目です。何を見るかが定められています。

2つ目は、調査の方法です。目視か、測定か、作動させるか。

3つ目は、判定の基準です。要是正、要重点点検といった判定の区分。

だから、業者によって指摘の数が大きく変わるのは不自然です。前回と比べて極端に指摘が少ないときは、見ていない項目が無いかを報告書で確かめてください。項目の欄が空白のまま出ていることがあります。

報告書の見方

受け取った報告書は、綴じる前に3か所だけ見ます。

見るのは3つです。

1つ目は、資格者の氏名と番号です。誰が行ったか。

2つ目は、判定の欄です。要是正がいくつあるか。前回と比べて増えているか減っているか。

3つ目は、写真です。指摘の箇所の写真があるか。写真が無い指摘は、どこのことか分からなくなります。

3つ目が無い報告書は、直すときに困ります。「3階の防火戸」と書かれていても、3階に扉が10枚あれば探すことになります。写真を付けてもらうよう、依頼のときに頼んでください。

立ち会いをどうするか

調査や検査の日に、建物の担当者が立ち会うかどうか。立ち会ったほうが、そのあとが速く進みます。

理由は3つです。

1つ目は、その場で指摘が聞けることです。報告書が届くのは1か月後です。現場で「ここが要是正になります」と聞けると、すぐ動けます。

2つ目は、場所が分かることです。あとから報告書を見て探す手間が消えます。

3つ目は、建物のことを伝えられることです。「この部屋は去年から使っていない」「ここは改修した」。資格者にとっても、判断の材料になります。

全部の時間に立ち会う必要はありません。最初の30分と、最後のまとめの時間だけでも効きます。最後に「今日の指摘を口頭で教えてください」と頼むだけで、1か月を先取りできます。

資格者の一覧を社内で持つ

建物を複数持っている会社では、誰がどの建物を担当しているかが分からなくなります。

一覧にするのは4つです。

1つ目は、建物ごとの4つの報告と、頼んでいる業者です。

2つ目は、資格者の氏名と番号です。

3つ目は、契約の期間と更新の時期です。

4つ目は、前回の報告の日と、次の期限です。

この一覧があると、業者を見直すときにそのまま比較の土台になります。無い場合は、各拠点に問い合わせるところから始めることになります。年に1回、同じ様式で集める形にしてください。

費用の内訳を見る

定期報告の見積もりは、1式でいくらという形で出てくることが多くあります。中身を分けて出してもらいます。

分けるのは4つです。

1つ目は、報告の種類ごとの金額です。特定建築物、建築設備、防火設備、昇降機等。4つを別々に書いてもらいます。どれが高いのかが分かります。

2つ目は、調査の費用と報告書の作成の費用です。現場で見る作業と、書類を作る作業は別の手間です。

3つ目は、提出の代行の費用です。含まれているのか、別なのか。

4つ目は、追加になる条件です。高所作業車が要る、夜間の作業になる、テナントの数が多い。あとから追加される条件を先に聞いておきます。

見積もりの内訳分ける項目理由報告の種類ごとどれが高いか分かる調査と報告書の作成別の手間になる提出の代行含むか別か追加の条件高所作業車・夜間・テナント数
種類別・調査と作成・提出代行・追加条件という4つの内訳を並べた表

内訳が出せない業者は避けたほうが無難です。何にいくらかかっているかが分からないと、次の年に比べられません。同じ内訳の形で、3社から取ると判断できます。

引き継ぎのときに渡すもの

担当者が替わるとき、定期報告に関する資料を1つの箱にまとめて渡します。

渡すのは5つです。

1つ目は、4つの報告の対象と報告月の一覧です。

2つ目は、直近3回分の報告書の控えです。受付の印があるもの。

3つ目は、指摘と是正の記録です。何が残っているか。

4つ目は、業者の連絡先と契約の内容です。

5つ目は、次の期限と、業者へ連絡する日です。

5つ目を書いておくのが、いちばん親切です。引き継いだ人は、いつ動けばよいかが分かりません。「◯月に業者へ連絡」と1行あるだけで、抜けが消えます。

資格者と業者を分けて考える

「どの業者に頼むか」と「誰が資格者として名前を入れるか」は、別の話です。ここを混ぜると、契約の中身が見えなくなります。

分けて見るのは3つです。

1つ目は、契約の相手です。請求書が来る会社。管理会社を通している建物では、そこが窓口になります。

2つ目は、実際に調査する人です。下請けや協力会社の資格者が来ることがあります。毎年違う人が来ることも珍しくありません。

3つ目は、報告書に名前が入る人です。2つ目と同じであるのが普通です。違っていたら理由を聞いてください。

管理会社を通している建物ほど、2つ目が見えなくなります。誰が来て何を見たのかが分からないまま、報告書だけが届く形です。年に1回、当日に来る人の名前と資格を聞くだけで、状況が変わります。

まとめ

定期報告の調査と検査は、報告の種類ごとに定められた資格を持つ人が行います。

  • 建築士は4つすべてを行える。ただし実務では専門が分かれている
  • 建築士のほかに、特定建築物調査員、建築設備検査員、防火設備検査員、昇降機等検査員がいる
  • 頼むときは、4つをまとめて頼めるか、誰が来るか、提出代行が含まれるかを聞く
  • 報告書を受け取ったら、資格者の欄、判定の欄、写真の3か所を見る
  • 社内で資格を取る場合は、自社の建物を調査できるかを先に確かめる

必要な資格と報告の対象は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、建物の所在地の特定行政庁に確認してください。

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実際に使える様式が必要な方へ

有資格者と点検の期限をまとめて管理するなら、点検板の様式が近道です。

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よくある質問

Q. 建築士なら、4つ全部を頼めますか。 A. 資格の上では行えますが、実務では専門が分かれています。とくに昇降機は機器の知識が要るため、専門の会社に頼むのが一般的です。見積もりの段階で、どこまで対応できるか聞いてください。

Q. 調査員の資格は、どうやって取りますか。 A. 登録を受けた機関の講習を受け、修了考査に合格して登録します。実務の経験が受講の要件になることが一般的です。要件は資格ごとに違うので、講習の実施機関に確かめてください。

Q. 自社の建物を、自社の資格者が調査できますか。 A. 扱いが自治体によって違うことがあります。資格を取る前に、所在地の特定行政庁に確かめてください。取ってから使えないと分かると、費用が無駄になります。

Q. 報告書に資格者の名前が入っていません。 A. 業者に確かめてください。資格者が行ったことを示す欄です。空欄のまま提出すると、受け付けられないことがあります。

Q. 前回より指摘が極端に少ないのですが。 A. 見ていない項目が無いかを報告書で確かめてください。調査の項目と方法は定められています。項目の欄が空白のまま出ていることがあります。

Q. 立ち会いは必要ですか。 A. 義務ではありませんが、立ち会うと指摘をその場で聞けます。最初の30分と最後のまとめだけでも効きます。報告書が届くのは1か月後になることが多いためです。

Q. 業者を替えると、指摘が増えることがありますか。 A. あります。見る人が替わると、前回見落とされていた箇所が出ます。増えたこと自体は悪いことではありません。前回の報告書と並べて、何が増えたかを確かめてください。

Q. 資格者の登録には期限がありますか。 A. 更新の仕組みがあります。期限が切れた資格者が行った検査は、有効に扱われないことがあります。依頼のときに資格者証の写しをもらっておくと確実です。

Q. 4つを別々の業者に頼んでいます。まとめたほうがよいですか。 A. まとめられるならまとめてください。日程の調整、テナントへの連絡、報告書の管理がそれぞれ1回で済みます。ただし昇降機は、保守をしている会社が行うほうが自然な場合もあります。

Q. 見積もりが会社によって大きく違います。 A. 対象の範囲と、提出代行の有無を確かめてください。4つのうち何を含むかで金額が変わります。同じ条件を書いた紙を渡して出してもらうと比べられます。

Q. 報告書の写真が少ないのですが。 A. 依頼のときに、指摘の箇所の写真を付けてもらうよう頼んでください。写真の無い指摘は、あとから場所を探すことになります。是正の記録にも使えます。

Q. 資格者の一覧は、どこで確かめられますか。 A. 登録の機関が名簿を公開していることがあります。まずは業者に資格者証の写しを求めてください。報告書に入る氏名と番号が、実際に来た人のものかを確かめるのがいちばん確実です。

Q. 見積もりの内訳を出してもらえません。 A. 別の業者にも声をかけてください。内訳を出せることは、作業の範囲を把握していることの現れでもあります。1式の見積もりだけでは、次の年に比べられません。

Q. 担当者が急に替わりました。何から確かめますか。 A. 直近の報告書の控えと、次の報告月です。この2つが分かれば、当面は動けます。業者に連絡すれば、前回の内容と次の期限を教えてもらえます。

Q. 管理会社に任せています。自分たちで確かめることはありますか。 A. 報告書の控えを受け取って、資格者の欄と判定の欄を見てください。報告する義務は所有者か管理者にあります。任せていても、義務が移るわけではありません。