設備の保安と点検解説2026.09.01 公開DK-05

保安規程とは?自家用電気工作物で届け出る中身

目次

キュービクルを入れたら、保安規程を作って届け出るように言われた。自家用電気工作物を設置する事業者は、保安規程を定めて経済産業大臣に届け出ることとされています。ひな形をそのまま出して終わりにしている建物が多いのですが、中身は毎年の点検の根拠になります。

この記事では、保安規程を、求められる場面書く中身届出の手続き変更したときの扱い実務で効かせる方法の順に整理します。適用される規定は電気工作物の種類と規模で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所轄の産業保安監督部に確認してください。

キュービクルの保安点検の記録そのものを探している場合は、点検板に施設向けの様式がそろっています。

結論:自分たちで決めた保安のルールを、書いて届け出るもの

保安規程は、電気工作物の工事、維持、運用に関する保安を確保するために、設置する事業者が自分で定める規程です。

押さえるのは3つです。

1つ目は、自分で定めるものだということです。国が様式を押し付けるものではなく、設備と体制に合わせて自分で作ります。ひな形はありますが、そのままでは合わないことがあります。

2つ目は、使用を始める前に届け出ることです。設置してから作るのではなく、使い始める前に届け出ます。

3つ目は、守る義務があることです。届け出たら、その内容に従って保安を行います。書いたことをやっていない状態が、いちばん問題になります。

3つの性格自分で定める設備と体制に合わせて作る使用前に届け出る設置してからではない守る義務書いたことをやる
自分で定める・使用前に届け出る・守る義務という3つの性格を並べた層の図

3つ目が実務のすべてです。「年次点検を毎年行う」と書いて、3年やっていなければ、規程に違反している状態になります。書く前に、できることを書いてください。

対象になる設備

保安規程が求められるのは、自家用電気工作物を設置する場合です。

代表的なものは3つです。

1つ目は、高圧で受電している建物です。キュービクル式高圧受電設備を置いている建物。ビル、工場、店舗、学校など。

2つ目は、非常用の発電設備を持つ場合です。出力によって扱いが変わります。

3つ目は、太陽光発電などの発電設備を持つ場合です。出力によって、事業用電気工作物として扱われます。

対象になる設備設備中身高圧で受電キュービクルのある建物非常用発電設備出力によって扱いが変わる太陽光などの発電設備出力によって事業用に
高圧受電・非常用発電設備・発電設備という3つの対象を並べた表

低圧で受電している小さな建物は、対象になりません。自分の建物がどちらかは、受電の電圧で分かります。キュービクルがあれば高圧です。判断に迷うものは所轄の産業保安監督部に確かめてください。

書く中身

保安規程には、定めるべき事項が示されています。

主なものは5つです。

1つ目は、保安の業務を管理する者の職務と組織です。電気主任技術者の位置づけと、誰が何をするか。

2つ目は、保安教育に関することです。誰に、何を、どのくらいの頻度で。

3つ目は、保安のための巡視、点検、検査に関することです。周期と項目を書きます。

4つ目は、運転または操作に関することです。停電作業の手順、切り替えの方法。

5つ目は、災害その他非常の場合にとるべき措置です。停電、地震、浸水。

主な記載事項項目書くこと組織と職務主任技術者の位置づけ保安教育誰に何をどのくらい巡視・点検・検査周期と項目。実務に直結する運転操作と非常時停電作業と災害時の措置
組織・教育・点検・運転操作・非常時という主な記載事項を並べた表

3つ目がいちばん実務に効きます。ここに書いた周期が、そのまま毎年の点検の予定になります。月次点検を毎月と書けば毎月、隔月と書けば隔月です。実際にできる周期を書いてください。

届出の手続き

保安規程は、所轄の産業保安監督部へ届け出ます。

流れは4段です。

1つ目は、内容を作ることです。保安管理を委託している場合、委託先が原案を作ってくれることが多くあります。

2つ目は、電気主任技術者を決めることです。選任するか、外部に委託するか。保安規程の届出とあわせて手続きします。

3つ目は、届け出ることです。使用を開始する前に提出します。

4つ目は、控えを保存することです。現場に備え付けます。

手続きの4段1作成委託先が原案を作ることが多い2主任技術者選任するか外部に委託するか3届出使用を開始する前に4保存現場に備え付ける
作成・主任技術者・届出・保存という4段の手続きのフロー
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実際に使える様式が必要な方へ

キュービクルの点検記録と期限をまとめて管理する様式は、点検板でそのまま使えます。

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2つ目とセットで進みます。保安規程だけ出しても、主任技術者が決まっていなければ運用できません。キュービクルを入れる工事の段階で、保安管理の委託先を決めておくと流れが止まりません。

変更したときの扱い

保安規程を変えたときは、変更の届出が要ります。

変える場面は4つです。

1つ目は、設備を増やしたり減らしたりしたときです。キュービクルの増設、発電設備の設置。

2つ目は、体制が変わったときです。主任技術者の交代、委託先の変更、組織の改編。

3つ目は、点検の周期を変えたときです。

4つ目は、事業者の名称や所在地が変わったときです。

変更の届出が要る場面場面設備キュービクルの増設・発電設備体制主任技術者の交代・委託先の変点検の周期周期を変えたとき名称と所在地事業者の情報が変わったとき
設備・体制・点検周期・名称という4つの変更の場面を並べた表

2つ目がいちばん頻度が高くなります。担当者の異動、保安管理の委託先の入れ替え。変えたのに届け出ていない状態が起きやすい場所です。変更の届出が要るかどうかを、委託先に確かめる習慣にしてください。

ひな形をそのまま使わない

保安規程には、団体や委託先が用意したひな形があります。土台に使うのは構いませんが、そのままは危険です。

直すのは4つです。

1つ目は、設備の構成です。自分の建物にある設備を書きます。無い設備の記述が残っていることがあります。

2つ目は、点検の周期です。実際にできる周期にします。

3つ目は、体制と職務です。自社の組織に合わせます。

4つ目は、非常時の連絡先です。電力会社、委託先、社内の責任者。実在する番号にします。

4つ目は、年に1回確かめてください。担当者が替わると番号が変わります。停電した夜に、つながらない番号が並んでいる規程は使えません。

主任技術者との関係

保安規程と、電気主任技術者はセットです。片方だけでは運用できません。

関係は3つです。

1つ目は、規程に主任技術者の職務を書くことです。何をする人かを規程で定めます。

2つ目は、主任技術者が保安を監督することです。規程に沿って、点検と監督を行います。

3つ目は、事業者が主任技術者の意見を尊重することです。「費用がかかるから直さない」という判断が続くと、規程が機能しません。

3つ目が現実には難しい場面です。主任技術者から「この部分は交換したほうがよい」と言われても、予算が付かないことがあります。言われた内容と日付を記録に残すところまでは、必ずやってください。事故が起きたときに、判断の経緯が残ります。

点検の記録とつなげる

保安規程に書いた周期は、実際の記録で示します。

つなげるのは4つです。

1つ目は、規程の周期を一覧にすることです。月次、年次、それぞれの項目。

2つ目は、点検の記録の様式を、規程の項目に合わせることです。項目がずれていると、やったことを示せません。

3つ目は、実施の日を表にすることです。予定と実績を並べます。

4つ目は、指摘と対応を残すことです。

2つ目を先にやってください。委託先の様式をそのまま使っている建物が多く、規程に書いた項目と、記録の項目が合っていないことがあります。合っていれば、記録を並べるだけで規程どおりの運用を示せます。

現場で使える形にする

保安規程は、分厚い冊子のまま棚に置かれることが多くあります。使える形を別に作ります。

作るのは4つです。

1つ目は、点検の周期の一覧です。A4で1枚。

2つ目は、非常時の連絡先です。電気室と事務室に貼ります。

3つ目は、停電作業の手順です。操作の順番を、写真付きで1枚に。

4つ目は、誰に聞けばよいかです。委託先の担当者の名前と番号。

規程の本体は変えずに、抜き書きを作る形です。本体は届け出たとおりに保存し、現場では抜き書きを使います。使われない規程は、書いていないのと同じになります。

保安教育をどう回すか

保安規程には保安教育を書きますが、実際に行っている建物は多くありません。年に1回、短くても回す形を作ります。

回すのは4つです。

1つ目は、対象を決めることです。電気室に入る可能性のある人。設備の担当者、警備員、清掃の責任者。全員である必要はありません。

2つ目は、中身を絞ることです。電気室に勝手に入らない、濡れた手で触らない、異音や焦げたにおいがしたら連絡する。3つで足ります。

3つ目は、誰が話すかを決めることです。保安管理の委託先に頼めることがあります。年次点検の日に30分もらう形が現実的です。

4つ目は、記録を残すことです。日付、内容、参加者。

保安教育の4つの決めごと決めること中身対象電気室に入る可能性のある人中身入らない・触らない・連絡する講師年次点検の日に委託先へ頼む記録日付・内容・参加者
対象・中身・講師・記録という4つの保安教育の決めごとを並べた表

3つ目が現実的な答えです。委託先の技術者は、年に1回は必ず建物に来ます。その日に30分話してもらうことにすれば、日程の調整が要りません。話す中身も、その建物の設備に即したものになります。

非常時の手順を1枚にする

保安規程の非常時の措置は、文章のままでは使えません。1枚に落とします。

書くのは4つです。

1つ目は、停電したときです。まず何を見るか、誰に連絡するか、復旧の判断は誰がするか。

2つ目は、地震のあとです。電気室に入る前の確認、通電火災を避けるための考え方。

3つ目は、浸水のおそれがあるときです。電気室が地下にある建物では、先に止める判断が要ります。

4つ目は、異音や異臭に気づいたときです。近づかずに連絡する。

3つ目は、地下に電気室がある建物では必ず書いてください。水が入ってからでは何もできません。どの時点で止めるかを、平常時に決めておくことしかできない種類の備えです。

設備を増やしたときに見直す

建物に設備を足すと、保安規程との食い違いが生まれます。工事のたびに確かめます。

見直す場面は4つです。

1つ目は、キュービクルを増設したときです。

2つ目は、非常用発電機を入れたときです。

3つ目は、太陽光発電を付けたときです。

4つ目は、大きな負荷を足したときです。電気自動車の充電設備、大型の空調。

工事を計画した時点で、保安管理の委託先に伝えてください。工事が終わってから相談すると、変更の届出が遅れます。設備の図面(単線結線図)の更新も、工事の見積もりに含めてもらうと確実です。更新されていない図面は、次の工事のときに誤りのもとになります。

まとめ

保安規程は、自家用電気工作物を設置する事業者が、自分で定めて届け出る保安のルールです。

  • 使用を開始する前に、所轄の産業保安監督部へ届け出る
  • 書くのは、組織・教育・巡視と点検・運転操作・非常時の措置
  • 書いた周期が、そのまま毎年の点検の予定になる。できることを書く
  • 設備や体制を変えたら、変更の届出が要る
  • ひな形をそのまま使わず、設備の構成と連絡先は自分で直す

適用される規定は電気工作物の種類と規模で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所轄の産業保安監督部に確認してください。

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キュービクルの点検記録と期限をまとめて管理するなら、点検板の様式が近道です。

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よくある質問

Q. 保安規程は自分たちで作りますか。 A. 保安管理を委託している場合、委託先が原案を作ってくれることが多くあります。ただし定めるのは設置する事業者です。設備の構成と体制は、自分たちで確かめてください。

Q. いつまでに届け出ますか。 A. 使用を開始する前です。設置してから作るのではありません。工事の計画の段階で、委託先と一緒に準備してください。

Q. ひな形をそのまま出してよいですか。 A. 土台には使えますが、そのままは危険です。無い設備の記述が残っていたり、できない周期が書かれていたりします。設備の構成、点検の周期、体制、連絡先の4つは必ず直してください。

Q. 点検の周期を変えたいのですが。 A. 変更の届出が要ります。実際にできない周期を書いたままにしないでください。規程に書いたことをやっていない状態のほうが問題になります。

Q. 主任技術者が交代しました。 A. 主任技術者の選任または解任の手続きと、保安規程の変更の届出が要ることがあります。委託先か所轄の産業保安監督部に確かめてください。

Q. 保安規程はどこに置きますか。 A. 現場に備え付けます。あわせて、点検の周期と連絡先を抜き書きした1枚を電気室と事務室に貼ってください。本体だけでは使われません。

Q. 主任技術者から指摘を受けましたが、予算が付きません。 A. 言われた内容と日付を記録に残してください。事故が起きたときに、判断の経緯が残ります。優先順位を付けて、年度ごとに進める計画を作る形で示すと、予算も通りやすくなります。

Q. 低圧で受電しています。保安規程は要りますか。 A. 自家用電気工作物にあたらない場合は対象になりません。ただし発電設備を持っている場合は扱いが変わることがあります。所轄の産業保安監督部に確かめてください。

Q. 太陽光パネルを付けました。 A. 出力によって、事業用電気工作物として扱われることがあります。既存の保安規程の変更が必要になる場合があります。設置の前に確かめてください。

Q. 保安教育とは何をしますか。 A. 電気設備を扱う人に、感電の防止、停電時の対応、非常時の連絡などを伝えます。年に1回、30分でも構いません。実施した日と参加者を記録に残してください。

Q. 届け出た控えが見つかりません。 A. 委託先が写しを持っていることがあります。無ければ、所轄の産業保安監督部に相談してください。現場に備え付けることが求められているので、写しを作って置いてください。

Q. 建物を売却しました。保安規程はどうなりますか。 A. 設置する事業者が変わるので、新しい事業者が届け出ることになります。引き渡しの前に、保安規程と点検の記録を渡してください。受け取る側は、直近の記録を確かめてください。

Q. 保安教育は誰が行いますか。 A. 事業者が行います。ただし保安管理の委託先に頼めることが多くあります。年次点検の日に30分もらう形が現実的です。記録に講師の名前を残してください。

Q. 電気室が地下にあります。浸水が心配です。 A. どの時点で受電を止めるかを、平常時に決めておいてください。水が入ってからでは何もできません。止水板の設置や、排水ポンプの点検もあわせて確かめてください。

Q. 単線結線図の更新は、誰に頼みますか。 A. 工事を行う電気工事の業者に、工事の見積もりに含めてもらうのが確実です。あとから頼むと、現地を調べ直すことになります。更新した図面は、委託先にも渡してください。