保安規程とは?自家用電気工作物で届け出る中身
目次
キュービクルを入れたら、保安規程を作って届け出るように言われた。自家用電気工作物を設置する事業者は、保安規程を定めて経済産業大臣に届け出ることとされています。ひな形をそのまま出して終わりにしている建物が多いのですが、中身は毎年の点検の根拠になります。
この記事では、保安規程を、求められる場面、書く中身、届出の手続き、変更したときの扱い、実務で効かせる方法の順に整理します。適用される規定は電気工作物の種類と規模で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所轄の産業保安監督部に確認してください。
結論:自分たちで決めた保安のルールを、書いて届け出るもの
保安規程は、電気工作物の工事、維持、運用に関する保安を確保するために、設置する事業者が自分で定める規程です。
押さえるのは3つです。
1つ目は、自分で定めるものだということです。国が様式を押し付けるものではなく、設備と体制に合わせて自分で作ります。ひな形はありますが、そのままでは合わないことがあります。
2つ目は、使用を始める前に届け出ることです。設置してから作るのではなく、使い始める前に届け出ます。
3つ目は、守る義務があることです。届け出たら、その内容に従って保安を行います。書いたことをやっていない状態が、いちばん問題になります。
3つ目が実務のすべてです。「年次点検を毎年行う」と書いて、3年やっていなければ、規程に違反している状態になります。書く前に、できることを書いてください。
対象になる設備
保安規程が求められるのは、自家用電気工作物を設置する場合です。
代表的なものは3つです。
1つ目は、高圧で受電している建物です。キュービクル式高圧受電設備を置いている建物。ビル、工場、店舗、学校など。
2つ目は、非常用の発電設備を持つ場合です。出力によって扱いが変わります。
3つ目は、太陽光発電などの発電設備を持つ場合です。出力によって、事業用電気工作物として扱われます。
低圧で受電している小さな建物は、対象になりません。自分の建物がどちらかは、受電の電圧で分かります。キュービクルがあれば高圧です。判断に迷うものは所轄の産業保安監督部に確かめてください。
書く中身
保安規程には、定めるべき事項が示されています。
主なものは5つです。
1つ目は、保安の業務を管理する者の職務と組織です。電気主任技術者の位置づけと、誰が何をするか。
2つ目は、保安教育に関することです。誰に、何を、どのくらいの頻度で。
3つ目は、保安のための巡視、点検、検査に関することです。周期と項目を書きます。
4つ目は、運転または操作に関することです。停電作業の手順、切り替えの方法。
5つ目は、災害その他非常の場合にとるべき措置です。停電、地震、浸水。
3つ目がいちばん実務に効きます。ここに書いた周期が、そのまま毎年の点検の予定になります。月次点検を毎月と書けば毎月、隔月と書けば隔月です。実際にできる周期を書いてください。
届出の手続き
保安規程は、所轄の産業保安監督部へ届け出ます。
流れは4段です。
1つ目は、内容を作ることです。保安管理を委託している場合、委託先が原案を作ってくれることが多くあります。
2つ目は、電気主任技術者を決めることです。選任するか、外部に委託するか。保安規程の届出とあわせて手続きします。
3つ目は、届け出ることです。使用を開始する前に提出します。
4つ目は、控えを保存することです。現場に備え付けます。
2つ目とセットで進みます。保安規程だけ出しても、主任技術者が決まっていなければ運用できません。キュービクルを入れる工事の段階で、保安管理の委託先を決めておくと流れが止まりません。
変更したときの扱い
保安規程を変えたときは、変更の届出が要ります。
変える場面は4つです。
1つ目は、設備を増やしたり減らしたりしたときです。キュービクルの増設、発電設備の設置。
2つ目は、体制が変わったときです。主任技術者の交代、委託先の変更、組織の改編。
3つ目は、点検の周期を変えたときです。
4つ目は、事業者の名称や所在地が変わったときです。
2つ目がいちばん頻度が高くなります。担当者の異動、保安管理の委託先の入れ替え。変えたのに届け出ていない状態が起きやすい場所です。変更の届出が要るかどうかを、委託先に確かめる習慣にしてください。
ひな形をそのまま使わない
保安規程には、団体や委託先が用意したひな形があります。土台に使うのは構いませんが、そのままは危険です。
直すのは4つです。
1つ目は、設備の構成です。自分の建物にある設備を書きます。無い設備の記述が残っていることがあります。
2つ目は、点検の周期です。実際にできる周期にします。
3つ目は、体制と職務です。自社の組織に合わせます。
4つ目は、非常時の連絡先です。電力会社、委託先、社内の責任者。実在する番号にします。
4つ目は、年に1回確かめてください。担当者が替わると番号が変わります。停電した夜に、つながらない番号が並んでいる規程は使えません。
主任技術者との関係
保安規程と、電気主任技術者はセットです。片方だけでは運用できません。
関係は3つです。
1つ目は、規程に主任技術者の職務を書くことです。何をする人かを規程で定めます。
2つ目は、主任技術者が保安を監督することです。規程に沿って、点検と監督を行います。
3つ目は、事業者が主任技術者の意見を尊重することです。「費用がかかるから直さない」という判断が続くと、規程が機能しません。
3つ目が現実には難しい場面です。主任技術者から「この部分は交換したほうがよい」と言われても、予算が付かないことがあります。言われた内容と日付を記録に残すところまでは、必ずやってください。事故が起きたときに、判断の経緯が残ります。
点検の記録とつなげる
保安規程に書いた周期は、実際の記録で示します。
つなげるのは4つです。
1つ目は、規程の周期を一覧にすることです。月次、年次、それぞれの項目。
2つ目は、点検の記録の様式を、規程の項目に合わせることです。項目がずれていると、やったことを示せません。
3つ目は、実施の日を表にすることです。予定と実績を並べます。
4つ目は、指摘と対応を残すことです。
2つ目を先にやってください。委託先の様式をそのまま使っている建物が多く、規程に書いた項目と、記録の項目が合っていないことがあります。合っていれば、記録を並べるだけで規程どおりの運用を示せます。
現場で使える形にする
保安規程は、分厚い冊子のまま棚に置かれることが多くあります。使える形を別に作ります。
作るのは4つです。
1つ目は、点検の周期の一覧です。A4で1枚。
2つ目は、非常時の連絡先です。電気室と事務室に貼ります。
3つ目は、停電作業の手順です。操作の順番を、写真付きで1枚に。
4つ目は、誰に聞けばよいかです。委託先の担当者の名前と番号。
規程の本体は変えずに、抜き書きを作る形です。本体は届け出たとおりに保存し、現場では抜き書きを使います。使われない規程は、書いていないのと同じになります。
保安教育をどう回すか
保安規程には保安教育を書きますが、実際に行っている建物は多くありません。年に1回、短くても回す形を作ります。
回すのは4つです。
1つ目は、対象を決めることです。電気室に入る可能性のある人。設備の担当者、警備員、清掃の責任者。全員である必要はありません。
2つ目は、中身を絞ることです。電気室に勝手に入らない、濡れた手で触らない、異音や焦げたにおいがしたら連絡する。3つで足ります。
3つ目は、誰が話すかを決めることです。保安管理の委託先に頼めることがあります。年次点検の日に30分もらう形が現実的です。
4つ目は、記録を残すことです。日付、内容、参加者。
3つ目が現実的な答えです。委託先の技術者は、年に1回は必ず建物に来ます。その日に30分話してもらうことにすれば、日程の調整が要りません。話す中身も、その建物の設備に即したものになります。
非常時の手順を1枚にする
保安規程の非常時の措置は、文章のままでは使えません。1枚に落とします。
書くのは4つです。
1つ目は、停電したときです。まず何を見るか、誰に連絡するか、復旧の判断は誰がするか。
2つ目は、地震のあとです。電気室に入る前の確認、通電火災を避けるための考え方。
3つ目は、浸水のおそれがあるときです。電気室が地下にある建物では、先に止める判断が要ります。
4つ目は、異音や異臭に気づいたときです。近づかずに連絡する。
3つ目は、地下に電気室がある建物では必ず書いてください。水が入ってからでは何もできません。どの時点で止めるかを、平常時に決めておくことしかできない種類の備えです。
設備を増やしたときに見直す
建物に設備を足すと、保安規程との食い違いが生まれます。工事のたびに確かめます。
見直す場面は4つです。
1つ目は、キュービクルを増設したときです。
2つ目は、非常用発電機を入れたときです。
3つ目は、太陽光発電を付けたときです。
4つ目は、大きな負荷を足したときです。電気自動車の充電設備、大型の空調。
工事を計画した時点で、保安管理の委託先に伝えてください。工事が終わってから相談すると、変更の届出が遅れます。設備の図面(単線結線図)の更新も、工事の見積もりに含めてもらうと確実です。更新されていない図面は、次の工事のときに誤りのもとになります。
まとめ
保安規程は、自家用電気工作物を設置する事業者が、自分で定めて届け出る保安のルールです。
- 使用を開始する前に、所轄の産業保安監督部へ届け出る
- 書くのは、組織・教育・巡視と点検・運転操作・非常時の措置
- 書いた周期が、そのまま毎年の点検の予定になる。できることを書く
- 設備や体制を変えたら、変更の届出が要る
- ひな形をそのまま使わず、設備の構成と連絡先は自分で直す
適用される規定は電気工作物の種類と規模で変わります。自分の設備に何が適用されるかは、所轄の産業保安監督部に確認してください。
よくある質問
Q. 保安規程は自分たちで作りますか。 A. 保安管理を委託している場合、委託先が原案を作ってくれることが多くあります。ただし定めるのは設置する事業者です。設備の構成と体制は、自分たちで確かめてください。
Q. いつまでに届け出ますか。 A. 使用を開始する前です。設置してから作るのではありません。工事の計画の段階で、委託先と一緒に準備してください。
Q. ひな形をそのまま出してよいですか。 A. 土台には使えますが、そのままは危険です。無い設備の記述が残っていたり、できない周期が書かれていたりします。設備の構成、点検の周期、体制、連絡先の4つは必ず直してください。
Q. 点検の周期を変えたいのですが。 A. 変更の届出が要ります。実際にできない周期を書いたままにしないでください。規程に書いたことをやっていない状態のほうが問題になります。
Q. 主任技術者が交代しました。 A. 主任技術者の選任または解任の手続きと、保安規程の変更の届出が要ることがあります。委託先か所轄の産業保安監督部に確かめてください。
Q. 保安規程はどこに置きますか。 A. 現場に備え付けます。あわせて、点検の周期と連絡先を抜き書きした1枚を電気室と事務室に貼ってください。本体だけでは使われません。
Q. 主任技術者から指摘を受けましたが、予算が付きません。 A. 言われた内容と日付を記録に残してください。事故が起きたときに、判断の経緯が残ります。優先順位を付けて、年度ごとに進める計画を作る形で示すと、予算も通りやすくなります。
Q. 低圧で受電しています。保安規程は要りますか。 A. 自家用電気工作物にあたらない場合は対象になりません。ただし発電設備を持っている場合は扱いが変わることがあります。所轄の産業保安監督部に確かめてください。
Q. 太陽光パネルを付けました。 A. 出力によって、事業用電気工作物として扱われることがあります。既存の保安規程の変更が必要になる場合があります。設置の前に確かめてください。
Q. 保安教育とは何をしますか。 A. 電気設備を扱う人に、感電の防止、停電時の対応、非常時の連絡などを伝えます。年に1回、30分でも構いません。実施した日と参加者を記録に残してください。
Q. 届け出た控えが見つかりません。 A. 委託先が写しを持っていることがあります。無ければ、所轄の産業保安監督部に相談してください。現場に備え付けることが求められているので、写しを作って置いてください。
Q. 建物を売却しました。保安規程はどうなりますか。 A. 設置する事業者が変わるので、新しい事業者が届け出ることになります。引き渡しの前に、保安規程と点検の記録を渡してください。受け取る側は、直近の記録を確かめてください。
Q. 保安教育は誰が行いますか。 A. 事業者が行います。ただし保安管理の委託先に頼めることが多くあります。年次点検の日に30分もらう形が現実的です。記録に講師の名前を残してください。
Q. 電気室が地下にあります。浸水が心配です。 A. どの時点で受電を止めるかを、平常時に決めておいてください。水が入ってからでは何もできません。止水板の設置や、排水ポンプの点検もあわせて確かめてください。
Q. 単線結線図の更新は、誰に頼みますか。 A. 工事を行う電気工事の業者に、工事の見積もりに含めてもらうのが確実です。あとから頼むと、現地を調べ直すことになります。更新した図面は、委託先にも渡してください。