ダクト清掃の目安|厨房と空調で頻度が違う理由
目次
空調のダクトは、何年も掃除していない建物が多くあります。見えないうえに、掃除しなくても風は出るからです。ところが厨房の排気ダクトは事情が違い、油が溜まると火災の経路になります。同じ「ダクト清掃」でも、空調と厨房では急ぎ方がまったく違います。
この記事では、ダクト清掃を、空調と厨房の違い、頻度の目安、汚れがもたらすもの、業者の選び方と当日の段取り、記録の残し方の順に整理します。清掃の義務や頻度は建物の用途と規模、設備の種類で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所と所轄の消防署に確認してください。
結論:空調は空気の質、厨房は火災。目的がまったく違う
ダクトは大きく2種類あります。同じ管でも、掃除する理由が違います。
1つ目は、空調のダクトです。冷暖房の空気を送る管。汚れると、ほこりやカビが室内に出ます。空気の質の問題です。
2つ目は、厨房の排気ダクトです。調理の煙と油を外へ出す管。油が溜まると、火がついたときに管の中を火が走ります。火災の問題です。
急ぎ方が違います。空調のダクトは数年放置しても事故にはなりませんが、厨房の排気ダクトは油が溜まった状態で1回の火で大きな火災になります。予算が限られているなら、厨房が先です。
頻度の目安
清掃の頻度は、設備と使い方で変わります。
| 対象 | 目安 |
|---|---|
| 厨房の排気ダクトとフード | 半年から1年に1回。使用量が多い店はより短く |
| グリスフィルター | 毎日から週1回の洗浄。店舗側で行う |
| 空調のダクト | 数年に1回。状態を見て決める |
| 空調機のフィルター | 月1回から3か月に1回の清掃 |
ビル管法の対象になる建物では、空気調和設備の管理について定めがあります。空気環境測定の結果や、設備の状態に応じて清掃を行うことになります。「何年に1回」と一律に決まっているわけではないので、測定の結果と目視の状態で判断します。
厨房については、消防の側からも指導が入ることがあります。所轄の消防署に確かめてください。
厨房の排気ダクトを先に見る理由
厨房の排気ダクトは、建物の中でいちばん火災のリスクが高い管です。
理由は4つです。
1つ目は、油が溜まることです。調理の煙に含まれる油が、管の内側に付きます。
2つ目は、その油が燃えることです。火が入ると、管の中を走ります。
3つ目は、管が階をまたぐことです。屋上まで立ち上がる管が多く、火が上へ運ばれます。
4つ目は、見えないことです。フードの中は見えても、立ち上がりの部分は見えません。
フードだけ掃除して、ダクトの中は何年もやっていない建物が多くあります。フードは目に見えるので掃除されますが、その先の管は忘れられます。清掃の見積もりに、どこまでの範囲が含まれるかを確かめてください。
空調ダクトの汚れがもたらすもの
空調のダクトが汚れると、風量が落ち、空気の質が下がります。
起きるのは4つです。
1つ目は、風量の低下です。汚れで断面が狭くなり、送られる空気の量が減ります。
2つ目は、電気代の増加です。同じ風量を出すために、送風機がより多く働きます。
3つ目は、においです。カビや汚れのにおいが室内に出ます。
4つ目は、ほこりの飛散です。吹き出し口の周りの天井が黒く汚れていたら、内部にほこりが溜まっている合図です。
吹き出し口の周りの汚れは、誰でも見て分かります。黒い筋が出ていたら、清掃の検討を始める合図です。写真を撮って、前の年と比べるだけで判断の材料になります。
中を見てから決める
ダクト清掃は費用がかかります。先に状態を見てから判断します。
やり方は4つです。
1つ目は、点検口から覗くことです。点検口がある建物では、開けて中を見られます。
2つ目は、カメラで撮ってもらうことです。業者に頼むと、内部の写真や動画を出してもらえます。
3つ目は、吹き出し口を外して見ることです。手前の部分だけでも状態が分かります。
4つ目は、風量を測ることです。設計時の値と比べます。
2つ目が判断の材料としていちばん強いものです。写真があれば、社内で予算を通すときの説明ができます。「汚れているらしい」では、予算は通りません。
業者の選び方
ダクト清掃は、どこまでやるかで費用が大きく変わります。
確かめるのは5つです。
1つ目は、範囲です。フードだけか、立ち上がりまでか、屋上のファンまでか。図面に線を引いて示してもらいます。
2つ目は、方法です。手作業か、機械か、薬剤を使うか。
3つ目は、作業の時間帯です。営業中はできません。夜間か休業日になります。
4つ目は、作業前後の写真です。必ず出してもらってください。見えない場所なので、写真しか証拠がありません。
5つ目は、点検口の設置です。点検口が無い建物では、作るところから始まります。次回以降が楽になるので、この機会に付けておくと効きます。
4つ目が無い見積もりは避けてください。やったかどうかを確かめる手段がありません。作業前と後を、同じ場所から撮ってもらいます。
当日の段取り
清掃の日は、営業と建物の使い方に影響します。先に決めます。
決めるのは4つです。
1つ目は、日時です。厨房なら休業日か閉店後。空調なら休館日。
2つ目は、止める設備です。空調を止める範囲と時間。テナントに事前に知らせます。
3つ目は、養生です。天井を開けるので、ほこりが落ちます。什器と床を覆います。
4つ目は、においと音です。薬剤を使う場合のにおい、機械の音。近隣への配慮が要ることがあります。
厨房の清掃は、油と薬剤で床が滑ります。作業後に床を洗う時間まで含めて、営業の再開時刻を決めてください。「朝には終わっている」つもりで組むと、開店に間に合いません。
フィルターは自分たちで回す
ダクトそのものは業者ですが、フィルターは自分たちで回せます。ここを続けると、ダクトの汚れ方が遅くなります。
決めるのは4つです。
1つ目は、場所の一覧です。空調機、吹き出し口、厨房のグリスフィルター。何枚あるかを数えます。
2つ目は、頻度です。空調は月1回から3か月に1回、グリスフィルターは毎日から週1回。
3つ目は、担当です。清掃の業者か、店舗側か、施設の担当か。厨房はテナント側で行うことが多くあります。
4つ目は、記録です。やった日を表に印で残します。
グリスフィルターの洗浄は、テナントに任せきりにしないでください。忙しい店ほど後回しになり、その油がダクトへ流れます。巡回のときに状態を見る形にすると、声をかけやすくなります。
記録として残しておく
ダクト清掃は、数年に1回のことです。前回いつやったかが分からなくなります。
残すのは4つです。
1つ目は、実施した日と範囲です。図面に、清掃した範囲を色で示します。
2つ目は、作業前後の写真です。いちばん重要な記録です。
3つ目は、業者と費用です。次に見積もりを取るときの基準になります。
4つ目は、次回の目安です。何年後か、どういう状態になったらか。
4つ目を書いておくのが親切です。「3年後」と書くだけでなく、「吹き出し口の周りが黒くなったら」という条件も添えると、担当者が替わっても判断できます。
屋上のファンまで見る
厨房の排気は、屋上のファンまで一続きの設備です。ダクトだけ掃除してファンを見ていない建物があります。
見るのは4つです。
1つ目は、ファンの羽根の汚れです。油が付くと重くなり、風量が落ちます。
2つ目は、ベルトです。緩むと風量が落ちます。切れると排気が止まります。
3つ目は、周りの油の付着です。ファンの外側や屋上の床に油が垂れていないか。滑って転ぶ原因になります。
4つ目は、防火ダンパーです。火災のときに閉じる部品が、油で固まっていないか。
4つ目がいちばん見落とされます。ダクトの中の防火ダンパーは、油で固まると閉じません。清掃の範囲にダンパーの点検が含まれるかを、見積もりの段階で確かめてください。
排気が弱いときに疑う順番
「フードの吸いが悪い」という話が出たとき、いきなり清掃を頼む前に順番があります。
疑う順番は4つです。
1つ目は、グリスフィルターです。目詰まりしていれば、外して洗うだけで戻ります。いちばん多い原因です。
2つ目は、給気です。排気だけ強くても、入ってくる空気が無ければ吸いません。窓や給気口が閉まっていないかを見ます。
3つ目は、ベルトとファンです。屋上に上がって、回っているか、緩んでいないかを見ます。
4つ目は、ダクトの中です。ここまで来て、はじめて清掃の話になります。
1つ目と2つ目で戻ることが多くあります。給気の問題は見落とされやすく、厨房の扉を閉め切っているだけで吸わなくなることがあります。順番に確かめてから業者を呼ぶと、費用がかかりません。
防火ダンパーと清掃をつなげる
厨房と空調のダクトには、火災のときに閉じる防火ダンパーが付いていることがあります。ここはダクト清掃と切り離せません。
つなげるのは4つです。
1つ目は、位置を把握することです。図面に印を付けます。どこに何個あるかを知らない建物が多くあります。
2つ目は、清掃の範囲に入れることです。ダンパーの周りは油とほこりが溜まりやすい場所です。
3つ目は、作動を確かめることです。手で動かして、閉じるかどうか。固まっていることがあります。
4つ目は、防火設備定期検査との関係を確かめることです。検査の対象になるダンパーがあります。
1つ目を先にやってください。位置が分からなければ、清掃の範囲にも入れられません。竣工図から拾って、1枚の図面にするところから始まります。
費用を平準化する
ダクト清掃は、数年に1回まとめて大きな金額になります。予算が通りにくい形です。
平準化の仕方は4つです。
1つ目は、フロアや系統ごとに分けることです。今年はこの系統、来年は別の系統。
2つ目は、厨房を毎年、空調を数年に1回にすることです。急ぎ方が違うので、頻度を分けます。
3つ目は、他の工事と同じ時期にまとめることです。天井を開ける工事があるなら、同じ機会に清掃します。
4つ目は、状態の写真を毎年残すことです。進み方が見えると、やる年を予測できます。
4つ目が、いちばん予算を取りやすくします。「3年前の写真と比べてここまで進んでいます」という説明は、見積もりの金額よりも強い材料になります。
まとめ
ダクト清掃は、空調と厨房で目的がまったく違います。
- 空調は空気の質の問題、厨房は火災の問題。厨房が先
- 厨房の排気ダクトは半年から1年に1回が目安。油が階をまたいで火を運ぶ
- 空調のダクトは状態を見て決める。吹き出し口の周りの黒い筋が合図
- 業者に頼むときは、範囲・方法・時間帯・作業前後の写真・点検口の5つを確かめる
- フィルターは自分たちで回す。続けるとダクトの汚れ方が遅くなる
清掃の義務や頻度は建物の用途と規模、設備の種類で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所と所轄の消防署に確認してください。
よくある質問
Q. 空調ダクトは何年に1回掃除しますか。 A. 一律に決まっているわけではありません。空気環境測定の結果と、内部の状態を見て判断します。まずカメラで中を撮ってもらってください。写真があれば、社内で予算を通す説明ができます。
Q. 厨房のダクトは、テナントと建物のどちらが費用を持ちますか。 A. 契約によります。フードとグリスフィルターはテナント、立ち上がりから屋上のファンまでは建物という分け方が多くあります。契約書で確かめて、曖昧なら明文化してください。
Q. 点検口がありません。 A. 清掃のときに作ることになります。次回以降が楽になるので、この機会に付けておくと効きます。位置は業者と相談して決めてください。
Q. 作業前後の写真は、必ずもらえますか。 A. 依頼のときに条件として伝えてください。見えない場所なので、写真しか証拠がありません。同じ場所から撮ってもらうよう頼むと、比べられます。
Q. 清掃したあと、においが残りました。 A. 薬剤のにおいであれば、換気を続けると薄れます。数日たっても残る場合は業者に連絡してください。作業の前に、使う薬剤の種類とにおいの残り方を聞いておくと安心です。
Q. 吹き出し口の周りが黒くなっています。 A. 内部にほこりが溜まっている合図のことがあります。吹き出し口を外して手前を見てください。写真を撮って、前の年と比べると進み方が分かります。
Q. グリスフィルターは誰が洗いますか。 A. 店舗側で行うことが多くあります。ただし忙しい店ほど後回しになります。巡回のときに状態を見る形にして、溜まる前に声をかけてください。
Q. 清掃は営業中にできますか。 A. 厨房も空調も、基本的にはできません。天井を開けてほこりが落ち、設備を止めることになります。休業日か、閉店後から翌朝までの作業になります。
Q. 費用はどのくらいかかりますか。 A. 範囲と建物の規模で幅が大きく、一律には言えません。範囲を図面で示した同じ条件で、3社から取ってください。範囲が違う見積もりを金額だけで比べると判断を誤ります。
Q. 厨房のダクト清掃をやっていないと、消防から指摘されますか。 A. 立入検査で、油の堆積について指導を受けることがあります。所轄の消防署に確かめてください。火災が起きたときの責任の問題にもなります。
Q. 空調の風が弱くなりました。ダクトの汚れですか。 A. 可能性の1つです。フィルターの目詰まり、送風機の不具合、ダンパーの位置も疑います。フィルターの清掃から先に試してください。それで戻ることがよくあります。
Q. 記録は何年残しますか。 A. 法令で一律に決まっているものではありませんが、前回と前々回の分は残してください。汚れ方の進み方が分かると、次の清掃の時期を決められます。
Q. 防火ダンパーは、ダクト清掃で一緒に見てもらえますか。 A. 業者によります。見積もりの段階で、点検が範囲に含まれるかを確かめてください。油で固まっていると、火災のときに閉じません。
Q. 屋上のファンの掃除は、誰がやりますか。 A. ダクト清掃の業者に含めてもらうのが一般的です。屋上での作業になるので、安全の確保が要ります。自分たちで上がって掃除しないでください。
Q. 防火ダンパーの位置が分かりません。 A. 竣工図から拾えます。無い場合は、ダクト清掃の業者か、防火設備の検査をした資格者に相談してください。1枚の図面にまとめておくと、次の工事で使えます。
Q. 清掃の費用を毎年に分けられますか。 A. 分けられます。系統やフロアごとに区切って、年ごとに進める形です。厨房を毎年、空調を数年に1回という分け方が現実的です。