建物の衛生管理実務2026.08.01 公開ES-10

飲料水の水質検査|回数と項目、採水の場所

目次

貯水槽の清掃は年に1回やっている。では水質検査はいつ、何項目やるのか。回数も項目も、建物の扱いによって変わります。ビル管法の対象になる建物と、簡易専用水道にあたる建物では、求められるものが違います。

この記事では、飲料水の水質検査を、建物の扱いによる違い回数と項目採水の場所結果の見方異常が出たときの動きの順に整理します。適用される規定は建物の用途と規模、給水の方式で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。

貯水槽の清掃や点検の記録そのものを探している場合は、点検板に施設向けの様式がそろっています。

結論:建物の扱いで、回数も項目も変わる

飲料水の水質検査は、建物がどの制度の対象になるかで中身が変わります。

大きく3つに分かれます。

1つ目は、ビル管法の特定建築物にあたる場合です。一定の用途と延べ面積の建物。検査の回数と項目が細かく定められています。

2つ目は、簡易専用水道にあたる場合です。受水槽の有効容量が一定を超える建物。年に1回の検査を、登録を受けた機関で受けることが求められます。

3つ目は、どちらにもあたらない小規模な貯水槽の場合です。自治体の条例で、検査が求められていることがあります。

建物の扱いで変わる特定建築物ビル管法。項目と回数が細かい簡易専用水道年1回、登録機関の検査小規模の貯水槽条例で求められる
特定建築物・簡易専用水道・小規模貯水槽という3つの扱いを並べた層の図

1つ目と2つ目は重なることがあります。両方の対象になる建物では、両方の義務を満たす必要があります。片方をやっているから足りる、とはなりません。

ビル管法の対象になる場合

特定建築物にあたる建物では、水道水を使う場合と、井戸水などを使う場合で検査の内容が違います。

押さえるのは4つです。

1つ目は、検査の回数です。項目によって、6か月以内ごとに1回、1年以内ごとに1回といった周期が定められています。

2つ目は、項目です。色、濁り、におい、味、残留塩素といった日常の検査と、定期の水質検査の項目に分かれます。

3つ目は、残留塩素の測定です。7日以内ごとに1回、測ることとされています。これがいちばん頻度が高い項目です。

4つ目は、記録の保存です。測った結果を残します。

ビル管法で押さえる4つ項目中身回数6か月または1年ごとの周期項目日常の検査と定期の水質検査残留塩素7日以内ごとに1回記録測った結果を残す
回数・項目・残留塩素・記録という4つの押さえどころを並べた表

残留塩素の測定を業者に任せきりにしている建物があります。7日以内ごとという頻度は、外注だと費用がかさみます。建物の担当者が測る形にしている建物も多くあります。測定器は市販されています。

簡易専用水道にあたる場合

受水槽の有効容量が10立方メートルを超える場合、簡易専用水道として扱われるのが一般的です。

求められるのは3つです。

1つ目は、年に1回の貯水槽の清掃です。

2つ目は、年に1回の検査です。登録を受けた検査機関が行います。自分たちで行うものではありません。

3つ目は、日常の管理です。槽の周りの点検、水の状態の確認。

簡易専用水道の3つ1清掃年に1回、貯水槽2登録機関の検査年に1回。自分では行えない3日常の管理槽の周りと水の状
清掃・登録機関の検査・日常の管理という3つの義務を並べたフロー

10立方メートル以下の小規模な貯水槽についても、自治体の条例で検査が求められていることがあります。「対象外だから何もしなくてよい」とはなりません。所在地の保健所に確かめてください。

検査の項目

水質検査の項目は、目的によって分かれます。

1つ目は、色と濁り、におい、味です。見て、嗅いで、確かめます。日常の検査として行います。

2つ目は、残留塩素です。消毒の効果が残っているかを見ます。測定器で測ります。

3つ目は、一般細菌と大腸菌です。汚染されていないかを見ます。

4つ目は、鉄、銅、亜鉛、蒸発残留物などです。配管や槽からの溶け出しを見ます。

検査の項目の種類種類見るもの色・濁り・におい・味日常の検査残留塩素消毒の効果が残っているか一般細菌と大腸菌汚染されていないか鉄・銅・亜鉛など配管や槽からの溶け出し
外観・残留塩素・細菌・金属という4つの項目の種類を並べた表
点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

貯水槽の清掃と点検の記録をまとめて管理する様式は、点検板でそのまま使えます。

この様式をひらく

何項目を、いつ検査するかは、建物の扱いと給水の方式で決まります。「毎年同じ項目でよい」と思い込まず、検査機関に、自分の建物で必要な項目を確かめてください。

採水の場所

検査の結果は、どこで水を採ったかで変わります。場所の決め方が大事です。

決めるのは3つです。

1つ目は、給水栓から採ることです。槽の中からではなく、実際に使う蛇口から採ります。

2つ目は、末端の栓を選ぶことです。配管のいちばん奥、いちばん上の階。水が滞留しやすい場所で採ると、いちばん悪い条件が出ます。

3つ目は、毎回同じ場所にすることです。場所が変わると、前回と比べられません。

採水の3つの決め方給水栓から槽の中からではない末端を選ぶ滞留しやすい場所毎回同じ場所図面に印を残す
給水栓・末端・同じ場所という3つの採水の決め方を並べた層の図

採水の場所を図面に印を付けて残しておきます。担当者が替わっても同じ場所で採れます。「去年はどこで採ったか」が分からなくなるのが、いちばんよくある形です。

結果の見方

検査の結果は、基準値と比べて判断します。業者から届いた紙を、綴じる前に3か所見ます。

見るのは3つです。

1つ目は、基準を超えている項目が無いかです。超えていれば、その場で連絡が来るのが普通です。

2つ目は、前回と比べて動いている項目です。基準の中でも、値が動いているものは変化の合図です。鉄や濁りが増えていれば、配管か槽の状態が変わっています。

3つ目は、残留塩素の値です。少なすぎると消毒の効果が足りず、多すぎると味やにおいの苦情につながります。

2つ目を見るために、過去3回分を並べます。1回だけ見ても、動いているかどうかは分かりません。表にして、値を並べるだけで見えるようになります。

異常が出たときの動き

基準を超えた場合、飲用を止める判断が出てきます。

動きは4段です。

1つ目は、検査機関に確かめることです。どの項目が、どのくらい超えているか。

2つ目は、保健所に連絡することです。指示を仰ぎます。自分で判断しないことです。

3つ目は、館内に知らせることです。飲用を止めるなら、その旨を掲示します。代わりの水の手配も同時に考えます。

4つ目は、原因を調べることです。槽の汚れ、配管の劣化、逆流、消毒の不足。

3つ目の知らせ方を先に決めておきます。掲示の文面、テナントへの連絡、給水の代替。その日になってから考えると、半日が過ぎます。

貯水槽と配管の状態が結果に出る

水質検査は、設備の状態を映す鏡です。結果が悪いときは、必ず理由があります。

見る場所は4つです。

1つ目は、貯水槽の中です。清掃のときに、内部の写真を撮ってもらいます。

2つ目は、槽のふたと通気管です。すき間や、防虫網の破れ。ここから虫や異物が入ります。

3つ目は、オーバーフロー管です。排水口との間が離れているか。直接つながっていると、逆流の原因になります。

4つ目は、配管です。古い建物では、鉄の配管の内側がさびていることがあります。

1つ目と2つ目は、清掃のときに一緒に見てもらえます。報告書に写真を付けてもらうよう、依頼のときに頼んでください。

記録の残し方

水質検査の記録は、まとめて1つのファイルにします。分かれていると、あとで比べられません。

入れるのは4つです。

1つ目は、検査の結果の原本です。日付順に綴じます。

2つ目は、残留塩素の測定の記録です。日付と値。表の形にします。

3つ目は、貯水槽の清掃の報告書です。写真を含めて。

4つ目は、採水の場所を書いた図面です。

保存の年数は、制度と自治体によって違います。所在地の保健所に確かめてください。迷ったら長いほうに合わせるのが安全です。

業者の選び方

水質検査は、登録を受けた機関でなければ行えないものがあります。

確かめるのは4つです。

1つ目は、登録を受けているかです。簡易専用水道の検査は、登録を受けた機関が行います。

2つ目は、清掃と検査をまとめて頼めるかです。別々だと日程を2回調整することになります。

3つ目は、結果が出るまでの日数です。細菌の検査は日数がかかります。

4つ目は、異常が出たときの連絡の速さです。基準を超えた場合、すぐ連絡が来るかを先に確かめてください。報告書が届くまで知らされないと、対応が遅れます。

4つ目を契約のときに聞いておきます。「基準を超えた場合は、その日のうちに電話で連絡する」と決めておくだけで、対応の速さが変わります。

日常の点検で見るところ

水質検査は年に何回かですが、貯水槽まわりの日常の点検は毎月できます。ここで気づけると、検査で異常が出る前に手を打てます。

見るのは4つです。

1つ目は、槽の周りです。水たまり、汚れ、草。槽のそばに物を置かないことが基本です。

2つ目は、ふたと鍵です。閉まっているか、鍵がかかっているか。開けっ放しになっていると、異物が入ります。

3つ目は、通気管の防虫網です。破れていないか、詰まっていないか。

4つ目は、槽の外観です。ひび、さび、漏れの跡。基礎の部分も見ます。

日常の点検4つ見るところ確かめること槽の周り水たまり・汚れ・物ふたと鍵閉まっているか通気管防虫網の破れと詰まり外観ひび・さび・漏れの跡
周り・ふたと鍵・通気管・外観という4つの日常の点検項目を並べた表

4つとも、専門の知識は要りません。月に1回、5分で回れます。見た結果を紙に残すところまでを決めると続きます。写真を撮っておくと、前の月と比べられます。

清掃の日にまとめてやる

貯水槽の清掃は年に1回行います。この日に、できることをまとめます。

まとめるのは4つです。

1つ目は、槽の内部の写真です。清掃の前と後。業者に頼めば撮ってもらえます。

2つ目は、ふた、通気管、オーバーフロー管の確認です。槽を空にしたときにしか見えない部分があります。

3つ目は、水質検査の採水です。清掃のあとに水を張ってから採ります。

4つ目は、断水の連絡です。テナントへの事前の知らせ。時間帯と、その間の水の使い方を伝えます。

4つ目は1週間前に紙で配り、前日にもう1回知らせます。知らせていないと、当日に苦情が来ます。トイレが使えるかどうかをいちばん聞かれるので、そこを先に書いてください。

苦情から原因をたどる

水の苦情は、にごり、におい、味、色の4つの形で来ます。どれが来たかで、疑う場所が変わります。

たどり方は4つです。

1つ目は、にごりです。赤っぽいにごりは配管のさび、白っぽいにごりは空気の混入のことがあります。しばらく置いて消えるかどうかを確かめると見分けがつきます。

2つ目は、においです。塩素のにおいが強い場合と、かび臭い場合では原因が違います。残留塩素を測るところから始めます。

3つ目は、味です。金属の味は配管、苦い味は消毒の残りが多い場合があります。

4つ目は、色です。青っぽい色は銅の配管から、黄色や茶色は鉄の配管からのことがあります。

苦情が来たら、場所と時刻と症状を記録します。特定の階、特定の系統に偏っていれば、その配管に原因があります。建物全体で同時に出ているなら、槽か受水の側です。ここを分けるだけで、調べる範囲が大きく狭まります。

まとめ

飲料水の水質検査は、建物の扱いによって回数も項目も変わります。

  • ビル管法の特定建築物、簡易専用水道、小規模な貯水槽で、求められるものが違う
  • 残留塩素は7日以内ごとに1回。いちばん頻度が高い
  • 簡易専用水道の検査は、登録を受けた機関が行う
  • 採水は末端の給水栓から。毎回同じ場所にして、図面に印を残す
  • 結果は過去3回分を並べて見る。動いている項目が設備の変化の合図

適用される規定は建物の用途と規模、給水の方式で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。

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実際に使える様式が必要な方へ

貯水槽の清掃と点検の記録をまとめて管理するなら、点検板の様式が近道です。

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よくある質問

Q. 受水槽が無く、直結で給水しています。検査は要りますか。 A. 水道管から直接給水している場合、水道事業者が水質を管理します。ただしビル管法の特定建築物にあたる場合は、別に検査が求められることがあります。所在地の保健所に確かめてください。

Q. 残留塩素は自分たちで測れますか。 A. 測れます。市販の測定器で測る建物が多くあります。7日以内ごとという頻度なので、外注すると費用がかさみます。測り方は検査機関に教えてもらってください。

Q. 残留塩素が基準より少ないときは、どうしますか。 A. 水の使用量が少なく滞留している、消毒の効果が落ちているなどの原因があります。まず保健所に相談してください。使っていない系統の水を流す(捨て水)ことで改善することもあります。

Q. 採水はどこで行いますか。 A. 実際に使う給水栓からです。配管の末端、いちばん上の階など、水が滞留しやすい場所を選びます。毎回同じ場所にして、図面に印を残してください。

Q. 検査の結果はいつ届きますか。 A. 項目によります。細菌の検査は日数がかかります。基準を超えた場合はすぐ電話で連絡してもらうよう、契約のときに決めておいてください。

Q. 検査で異常が出ました。飲用を止めるべきですか。 A. 自分で判断せず、保健所に連絡して指示を仰いでください。止める場合の掲示と、代わりの水の手配を、あらかじめ決めておくと動けます。

Q. 貯水槽の清掃と水質検査は、同じ業者でよいですか。 A. 同じ業者に頼める場合があります。ただし簡易専用水道の検査は、登録を受けた機関が行います。清掃の業者が検査も行えるとは限りません。

Q. 記録は何年残しますか。 A. 制度と自治体によって違います。所在地の保健所に確かめてください。迷ったら長いほうに合わせてください。過去の値と比べるためにも、数年分は残しておくと役に立ちます。

Q. 井戸水を使っています。検査は同じですか。 A. 違います。井戸水を飲用に使う場合、求められる項目も回数も増えます。専用水道や飲用井戸として扱われることがあります。所在地の保健所に確かめてください。

Q. 空室が多く、水がほとんど使われていません。 A. 滞留が起きます。残留塩素が下がり、水質が悪くなります。定期的に水を流す(捨て水)運用を決めてください。どのくらいの頻度かは、保健所か検査機関に相談してください。

Q. テナントから水のにおいの苦情が来ました。 A. 残留塩素を測り、採水して検査します。苦情の日時と場所、どんなにおいかを記録に残してください。特定の階や系統に偏っていれば、配管の問題の可能性があります。

Q. 貯水槽の清掃を年2回にすると、検査も2回になりますか。 A. 清掃の回数と検査の回数は別に定められています。清掃を増やしても、検査の回数が自動的に増えるわけではありません。必要な回数は保健所に確かめてください。

Q. 貯水槽の清掃は、いつやるのがよいですか。 A. 利用の少ない時期と曜日を選びます。休館日があるならその日です。断水の時間帯を短くできるかを業者に相談してください。年に1回の時期を固定すると、テナントも予定を立てやすくなります。