飲料水の水質検査|回数と項目、採水の場所
目次
貯水槽の清掃は年に1回やっている。では水質検査はいつ、何項目やるのか。回数も項目も、建物の扱いによって変わります。ビル管法の対象になる建物と、簡易専用水道にあたる建物では、求められるものが違います。
この記事では、飲料水の水質検査を、建物の扱いによる違い、回数と項目、採水の場所、結果の見方、異常が出たときの動きの順に整理します。適用される規定は建物の用途と規模、給水の方式で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。
結論:建物の扱いで、回数も項目も変わる
飲料水の水質検査は、建物がどの制度の対象になるかで中身が変わります。
大きく3つに分かれます。
1つ目は、ビル管法の特定建築物にあたる場合です。一定の用途と延べ面積の建物。検査の回数と項目が細かく定められています。
2つ目は、簡易専用水道にあたる場合です。受水槽の有効容量が一定を超える建物。年に1回の検査を、登録を受けた機関で受けることが求められます。
3つ目は、どちらにもあたらない小規模な貯水槽の場合です。自治体の条例で、検査が求められていることがあります。
1つ目と2つ目は重なることがあります。両方の対象になる建物では、両方の義務を満たす必要があります。片方をやっているから足りる、とはなりません。
ビル管法の対象になる場合
特定建築物にあたる建物では、水道水を使う場合と、井戸水などを使う場合で検査の内容が違います。
押さえるのは4つです。
1つ目は、検査の回数です。項目によって、6か月以内ごとに1回、1年以内ごとに1回といった周期が定められています。
2つ目は、項目です。色、濁り、におい、味、残留塩素といった日常の検査と、定期の水質検査の項目に分かれます。
3つ目は、残留塩素の測定です。7日以内ごとに1回、測ることとされています。これがいちばん頻度が高い項目です。
4つ目は、記録の保存です。測った結果を残します。
残留塩素の測定を業者に任せきりにしている建物があります。7日以内ごとという頻度は、外注だと費用がかさみます。建物の担当者が測る形にしている建物も多くあります。測定器は市販されています。
簡易専用水道にあたる場合
受水槽の有効容量が10立方メートルを超える場合、簡易専用水道として扱われるのが一般的です。
求められるのは3つです。
1つ目は、年に1回の貯水槽の清掃です。
2つ目は、年に1回の検査です。登録を受けた検査機関が行います。自分たちで行うものではありません。
3つ目は、日常の管理です。槽の周りの点検、水の状態の確認。
10立方メートル以下の小規模な貯水槽についても、自治体の条例で検査が求められていることがあります。「対象外だから何もしなくてよい」とはなりません。所在地の保健所に確かめてください。
検査の項目
水質検査の項目は、目的によって分かれます。
1つ目は、色と濁り、におい、味です。見て、嗅いで、確かめます。日常の検査として行います。
2つ目は、残留塩素です。消毒の効果が残っているかを見ます。測定器で測ります。
3つ目は、一般細菌と大腸菌です。汚染されていないかを見ます。
4つ目は、鉄、銅、亜鉛、蒸発残留物などです。配管や槽からの溶け出しを見ます。
何項目を、いつ検査するかは、建物の扱いと給水の方式で決まります。「毎年同じ項目でよい」と思い込まず、検査機関に、自分の建物で必要な項目を確かめてください。
採水の場所
検査の結果は、どこで水を採ったかで変わります。場所の決め方が大事です。
決めるのは3つです。
1つ目は、給水栓から採ることです。槽の中からではなく、実際に使う蛇口から採ります。
2つ目は、末端の栓を選ぶことです。配管のいちばん奥、いちばん上の階。水が滞留しやすい場所で採ると、いちばん悪い条件が出ます。
3つ目は、毎回同じ場所にすることです。場所が変わると、前回と比べられません。
採水の場所を図面に印を付けて残しておきます。担当者が替わっても同じ場所で採れます。「去年はどこで採ったか」が分からなくなるのが、いちばんよくある形です。
結果の見方
検査の結果は、基準値と比べて判断します。業者から届いた紙を、綴じる前に3か所見ます。
見るのは3つです。
1つ目は、基準を超えている項目が無いかです。超えていれば、その場で連絡が来るのが普通です。
2つ目は、前回と比べて動いている項目です。基準の中でも、値が動いているものは変化の合図です。鉄や濁りが増えていれば、配管か槽の状態が変わっています。
3つ目は、残留塩素の値です。少なすぎると消毒の効果が足りず、多すぎると味やにおいの苦情につながります。
2つ目を見るために、過去3回分を並べます。1回だけ見ても、動いているかどうかは分かりません。表にして、値を並べるだけで見えるようになります。
異常が出たときの動き
基準を超えた場合、飲用を止める判断が出てきます。
動きは4段です。
1つ目は、検査機関に確かめることです。どの項目が、どのくらい超えているか。
2つ目は、保健所に連絡することです。指示を仰ぎます。自分で判断しないことです。
3つ目は、館内に知らせることです。飲用を止めるなら、その旨を掲示します。代わりの水の手配も同時に考えます。
4つ目は、原因を調べることです。槽の汚れ、配管の劣化、逆流、消毒の不足。
3つ目の知らせ方を先に決めておきます。掲示の文面、テナントへの連絡、給水の代替。その日になってから考えると、半日が過ぎます。
貯水槽と配管の状態が結果に出る
水質検査は、設備の状態を映す鏡です。結果が悪いときは、必ず理由があります。
見る場所は4つです。
1つ目は、貯水槽の中です。清掃のときに、内部の写真を撮ってもらいます。
2つ目は、槽のふたと通気管です。すき間や、防虫網の破れ。ここから虫や異物が入ります。
3つ目は、オーバーフロー管です。排水口との間が離れているか。直接つながっていると、逆流の原因になります。
4つ目は、配管です。古い建物では、鉄の配管の内側がさびていることがあります。
1つ目と2つ目は、清掃のときに一緒に見てもらえます。報告書に写真を付けてもらうよう、依頼のときに頼んでください。
記録の残し方
水質検査の記録は、まとめて1つのファイルにします。分かれていると、あとで比べられません。
入れるのは4つです。
1つ目は、検査の結果の原本です。日付順に綴じます。
2つ目は、残留塩素の測定の記録です。日付と値。表の形にします。
3つ目は、貯水槽の清掃の報告書です。写真を含めて。
4つ目は、採水の場所を書いた図面です。
保存の年数は、制度と自治体によって違います。所在地の保健所に確かめてください。迷ったら長いほうに合わせるのが安全です。
業者の選び方
水質検査は、登録を受けた機関でなければ行えないものがあります。
確かめるのは4つです。
1つ目は、登録を受けているかです。簡易専用水道の検査は、登録を受けた機関が行います。
2つ目は、清掃と検査をまとめて頼めるかです。別々だと日程を2回調整することになります。
3つ目は、結果が出るまでの日数です。細菌の検査は日数がかかります。
4つ目は、異常が出たときの連絡の速さです。基準を超えた場合、すぐ連絡が来るかを先に確かめてください。報告書が届くまで知らされないと、対応が遅れます。
4つ目を契約のときに聞いておきます。「基準を超えた場合は、その日のうちに電話で連絡する」と決めておくだけで、対応の速さが変わります。
日常の点検で見るところ
水質検査は年に何回かですが、貯水槽まわりの日常の点検は毎月できます。ここで気づけると、検査で異常が出る前に手を打てます。
見るのは4つです。
1つ目は、槽の周りです。水たまり、汚れ、草。槽のそばに物を置かないことが基本です。
2つ目は、ふたと鍵です。閉まっているか、鍵がかかっているか。開けっ放しになっていると、異物が入ります。
3つ目は、通気管の防虫網です。破れていないか、詰まっていないか。
4つ目は、槽の外観です。ひび、さび、漏れの跡。基礎の部分も見ます。
4つとも、専門の知識は要りません。月に1回、5分で回れます。見た結果を紙に残すところまでを決めると続きます。写真を撮っておくと、前の月と比べられます。
清掃の日にまとめてやる
貯水槽の清掃は年に1回行います。この日に、できることをまとめます。
まとめるのは4つです。
1つ目は、槽の内部の写真です。清掃の前と後。業者に頼めば撮ってもらえます。
2つ目は、ふた、通気管、オーバーフロー管の確認です。槽を空にしたときにしか見えない部分があります。
3つ目は、水質検査の採水です。清掃のあとに水を張ってから採ります。
4つ目は、断水の連絡です。テナントへの事前の知らせ。時間帯と、その間の水の使い方を伝えます。
4つ目は1週間前に紙で配り、前日にもう1回知らせます。知らせていないと、当日に苦情が来ます。トイレが使えるかどうかをいちばん聞かれるので、そこを先に書いてください。
苦情から原因をたどる
水の苦情は、にごり、におい、味、色の4つの形で来ます。どれが来たかで、疑う場所が変わります。
たどり方は4つです。
1つ目は、にごりです。赤っぽいにごりは配管のさび、白っぽいにごりは空気の混入のことがあります。しばらく置いて消えるかどうかを確かめると見分けがつきます。
2つ目は、においです。塩素のにおいが強い場合と、かび臭い場合では原因が違います。残留塩素を測るところから始めます。
3つ目は、味です。金属の味は配管、苦い味は消毒の残りが多い場合があります。
4つ目は、色です。青っぽい色は銅の配管から、黄色や茶色は鉄の配管からのことがあります。
苦情が来たら、場所と時刻と症状を記録します。特定の階、特定の系統に偏っていれば、その配管に原因があります。建物全体で同時に出ているなら、槽か受水の側です。ここを分けるだけで、調べる範囲が大きく狭まります。
まとめ
飲料水の水質検査は、建物の扱いによって回数も項目も変わります。
- ビル管法の特定建築物、簡易専用水道、小規模な貯水槽で、求められるものが違う
- 残留塩素は7日以内ごとに1回。いちばん頻度が高い
- 簡易専用水道の検査は、登録を受けた機関が行う
- 採水は末端の給水栓から。毎回同じ場所にして、図面に印を残す
- 結果は過去3回分を並べて見る。動いている項目が設備の変化の合図
適用される規定は建物の用途と規模、給水の方式で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。
よくある質問
Q. 受水槽が無く、直結で給水しています。検査は要りますか。 A. 水道管から直接給水している場合、水道事業者が水質を管理します。ただしビル管法の特定建築物にあたる場合は、別に検査が求められることがあります。所在地の保健所に確かめてください。
Q. 残留塩素は自分たちで測れますか。 A. 測れます。市販の測定器で測る建物が多くあります。7日以内ごとという頻度なので、外注すると費用がかさみます。測り方は検査機関に教えてもらってください。
Q. 残留塩素が基準より少ないときは、どうしますか。 A. 水の使用量が少なく滞留している、消毒の効果が落ちているなどの原因があります。まず保健所に相談してください。使っていない系統の水を流す(捨て水)ことで改善することもあります。
Q. 採水はどこで行いますか。 A. 実際に使う給水栓からです。配管の末端、いちばん上の階など、水が滞留しやすい場所を選びます。毎回同じ場所にして、図面に印を残してください。
Q. 検査の結果はいつ届きますか。 A. 項目によります。細菌の検査は日数がかかります。基準を超えた場合はすぐ電話で連絡してもらうよう、契約のときに決めておいてください。
Q. 検査で異常が出ました。飲用を止めるべきですか。 A. 自分で判断せず、保健所に連絡して指示を仰いでください。止める場合の掲示と、代わりの水の手配を、あらかじめ決めておくと動けます。
Q. 貯水槽の清掃と水質検査は、同じ業者でよいですか。 A. 同じ業者に頼める場合があります。ただし簡易専用水道の検査は、登録を受けた機関が行います。清掃の業者が検査も行えるとは限りません。
Q. 記録は何年残しますか。 A. 制度と自治体によって違います。所在地の保健所に確かめてください。迷ったら長いほうに合わせてください。過去の値と比べるためにも、数年分は残しておくと役に立ちます。
Q. 井戸水を使っています。検査は同じですか。 A. 違います。井戸水を飲用に使う場合、求められる項目も回数も増えます。専用水道や飲用井戸として扱われることがあります。所在地の保健所に確かめてください。
Q. 空室が多く、水がほとんど使われていません。 A. 滞留が起きます。残留塩素が下がり、水質が悪くなります。定期的に水を流す(捨て水)運用を決めてください。どのくらいの頻度かは、保健所か検査機関に相談してください。
Q. テナントから水のにおいの苦情が来ました。 A. 残留塩素を測り、採水して検査します。苦情の日時と場所、どんなにおいかを記録に残してください。特定の階や系統に偏っていれば、配管の問題の可能性があります。
Q. 貯水槽の清掃を年2回にすると、検査も2回になりますか。 A. 清掃の回数と検査の回数は別に定められています。清掃を増やしても、検査の回数が自動的に増えるわけではありません。必要な回数は保健所に確かめてください。
Q. 貯水槽の清掃は、いつやるのがよいですか。 A. 利用の少ない時期と曜日を選びます。休館日があるならその日です。断水の時間帯を短くできるかを業者に相談してください。年に1回の時期を固定すると、テナントも予定を立てやすくなります。