消防・防火解説2026.06.11 公開BK-08

自衛消防組織とは?置く建物と班の分け方

目次

大きな建物では、火災が起きたときに消防隊が着くまでの数分間を、建物の中の人だけで動くことになります。そのための組織が自衛消防組織です。一定の用途と規模の建物では、置くことが求められています。

この記事では、自衛消防組織を、対象になる建物置く人と資格班の分け方動かすための訓練名簿の維持の順に整理します。対象の範囲と必要な資格は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。

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結論:消防隊が着くまでの数分を、建物の中の人で動かすための組織

自衛消防組織は、火災その他の災害が起きたときに、建物の中の人で初動を行うための組織です。消防計画に書く自衛消防の体制とは別に、法令で置くことが求められる建物があります。

やることは大きく3つです。

1つ目は、知らせることです。119番への通報と、館内への周知。

2つ目は、逃がすことです。避難の誘導と、逃げ遅れの確認。

3つ目は、抑えることです。初期の消火と、延焼を防ぐための扉の閉鎖。

初動でやる3つ知らせる119番と館内への周知逃がす誘導と逃げ遅れの確認抑える初期消火と扉の閉鎖
知らせる・逃がす・抑えるという3つの初動を並べた層の図

3つを同時にやるため、人を分けて役割を与えます。1人が順番にやると間に合いません。誰が何をやるかを先に決めておくことが、この組織の中身です。

対象になる建物

自衛消防組織を置くことが求められるのは、規模の大きい建物です。

代表的なものを挙げます。

1つ目は、一定以上の延べ面積があり、特定の用途が入っている建物です。百貨店、飲食店、旅館、病院などが入る大規模なもの。

2つ目は、一定以上の階数がある建物です。地上何階以上、地下何階以上という形で決まっています。

3つ目は、地下街です。

対象の決まり方決まり方中身用途と面積特定の用途が入る大規模なもの階数地上と地下の階数で決まる地下街規模にかかわらず
用途と面積・階数・地下街という3つの対象の決まり方を並べた表

具体的な数字は自分で判断しないほうが確実です。延べ面積、階数、用途の組み合わせで決まるため、似た建物でも結論が変わります。所轄の消防署に建物の概要を伝えて確かめてください。

なお、対象にならない建物でも、消防計画の中で自衛消防の体制を決めておくことは求められます。法令上の組織を置くかどうかと、備えるかどうかは別の話です。

統括防火管理者との関係

管理権原が分かれている建物では、統括防火管理者が全体の消防計画を作ります。自衛消防組織も、建物全体で1つになります。

関係は3つです。

1つ目は、組織を置く責任です。管理権原者が置きます。分かれている場合は共同で置きます。

2つ目は、動かす人です。統括防火管理者が、全体の自衛消防組織を指揮する形が一般的です。

3つ目は、各テナントの役割です。それぞれの区画で、誘導と初期消火を担当します。

統括防火管理者との関係項目誰が担うか置く責任管理権原者。共同で置く指揮する人統括防火管理者が一般的各区画の役割テナントの誘導と初期消火
置く責任・指揮する人・各区画の役割という3つの関係を並べた表

テナントごとに別の自衛消防組織を作るのではありません。建物として1つの組織を作り、その中に各テナントの人が入る形になります。ここを取り違えると、訓練がばらばらになります。

置く人と資格

自衛消防組織には、統括管理者を置きます。組織全体を指揮する人です。

求められるのは3つです。

1つ目は、統括管理者を定めることです。建物全体の自衛消防の指揮をとる人。

2つ目は、一定の資格を持つ人を置くことです。自衛消防業務講習を修了した人などを置くことが求められる場合があります。

3つ目は、不在のときの代理を決めることです。夜間、休日、出張。統括管理者がいない時間帯のほうが長い建物が多くあります。

人の置き方3段1統括管理者全体の指揮をとる2資格を持つ人講習の修了が要る場合3代理夜間と休日の指揮
統括管理者・資格を持つ人・代理という3つの人の置き方を並べたフロー

代理の決め方がいちばん抜けます。「統括管理者が来るまで待つ」形になっていると、いちばん危ない時間帯に誰も動けません。時間帯ごとに、その場にいる人の中で誰が指揮をとるかを決めてください。

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班の分け方

自衛消防組織は、班に分けて役割を持たせます。班の数は建物の規模と人数で決めます。

よく使われるのは5つです。

1つ目は、通報連絡班です。119番への通報、館内放送、関係先への連絡。

2つ目は、初期消火班です。消火器と屋内消火栓での初期消火。

3つ目は、避難誘導班です。逃げる道の確保と、来館者の誘導。

4つ目は、安全防護班です。防火戸や防火シャッターの確認、電気やガスの停止。

5つ目は、応急救護班です。けが人の手当てと、救急への引き継ぎ。

主な班任務通報連絡119番・館内放送・関係先初期消火消火器と屋内消火栓避難誘導逃げ道の確保と誘導安全防護と救護防火戸・電気ガス・手当て
通報連絡・初期消火・避難誘導・安全防護・応急救護という主な班を並べた表

人数が少ない建物では、班を兼ねて構いません。大事なのは班の数ではなく、やることに漏れがないことです。5つの役割を、その場にいる人数で割り振れる形にしておきます。

夜間と休日をどうするか

自衛消防組織でいちばん弱くなるのは、人が少ない時間帯です。

備えるのは4つです。

1つ目は、いる人数を書き出すことです。平日の昼、平日の夜、土日、深夜。時間帯ごとに何人いるか。

2つ目は、その人数でできることに絞ることです。2人しかいない時間に5つの班は作れません。通報と避難誘導の2つに絞るという決め方でも構いません。

3つ目は、初期消火をどこまでやるか決めることです。人が少ないときは、消火より避難を優先する。この判断を先に決めておきます。

4つ目は、呼び出しの手順です。誰に、どの順番で連絡するか。

人数の少ない時間帯の計画を、いちばん先に作ります。昼間の計画は作りやすく、夜間の計画は作りにくい。だから多くの建物で、いちばん危ない時間帯の計画が後回しになっています。

訓練で確かめること

自衛消防組織は、訓練でしか確かめられません。名簿があっても動けるとは限りません。

確かめるのは4つです。

1つ目は、連絡がつながるかです。放送設備が使えるか、内線がつながるか、携帯の番号が生きているか。

2つ目は、集まるまでの時間です。火災が分かってから、班の人が持ち場に着くまで何分かかるか。測ります。

3つ目は、道具が使えるかです。消火器の場所、消火栓の開け方、拡声器の電池。

4つ目は、避難の誘導が届くかです。声が通るか、来館者が指示に従って動くか。

2つ目を測るのが、いちばん役に立ちます。「5分かかった」と分かれば、配置か手順を変える理由になります。時間を測らない訓練は、やったという記録しか残りません。

名簿を維持する

自衛消防組織の名簿は、作った日から古くなります。人は異動し、テナントは入れ替わります。

維持するのは3つです。

1つ目は、更新の時期を決めることです。年度の初めと、大きな人事異動のあと。年に2回で足ります。

2つ目は、連絡先を確かめることです。内線と携帯。つながるかどうかを実際にかけて確かめます。

3つ目は、掲示することです。防災センターと、各階の事務室。誰が見ても分かる場所に貼ります。

名簿は、名前だけでなく役割と時間帯も書きます。「夜間の通報は誰」が分かる形にしないと、名簿があっても使えません。

資機材の備えを一覧にする

自衛消防組織が使う道具は、普段使わないものばかりです。あることと、使えることは別です。

一覧にするのは4つです。

1つ目は、場所です。どこに何があるか。図面に印を付けます。

2つ目は、数量です。消火器、拡声器、担架、懐中電灯、ヘルメット。

3つ目は、状態です。電池が生きているか、期限が切れていないか。

4つ目は、確かめる頻度です。月に1回、担当を決めて見ます。

電池と期限は、訓練の日にまとめて確かめます。訓練で使ってみれば、動かないものはその場で分かります。使わずに棚に置いたままだと、必要なときに動きません。

消防計画とのつなげ方

自衛消防組織は、消防計画に書き込むことで形になります。別の紙にすると、どちらかが古くなります。

書き込むのは4つです。

1つ目は、組織の図です。統括管理者と各班の関係。

2つ目は、班ごとの任務です。やることを3つずつ書きます。長く書くと読まれません。

3つ目は、時間帯ごとの体制です。昼、夜、休日。

4つ目は、訓練の計画です。年に何回、いつ、何を確かめるか。

消防計画を変更したら、所轄の消防署へ届け出ます。組織を変えたのに計画が前のままだと、立入検査で食い違いを指摘されます。

消防隊が着いたときの引き継ぎ

自衛消防組織の仕事は、消防隊が着いた時点で終わりではありません。引き継ぐところまでが役割です。

伝えるのは4つです。

1つ目は、どこが燃えているかです。階と場所。図面を指して伝えると速く伝わります。

2つ目は、中に人がいるかです。逃げ遅れの有無、確認できていない区画。ここがいちばん先に聞かれます。

3つ目は、何をしたかです。初期消火を試みたか、防火戸を閉めたか、電気やガスを止めたか。

4つ目は、危険なものがあるかです。燃料、ボンベ、薬品、電気設備。

消防隊への引き継ぎ4つ伝えること中身火点階と場所。図面を指す逃げ遅れいちばん先に聞かれる実施したこと初期消火・防火戸・電気ガス危険物燃料・ボンベ・薬品
火点・逃げ遅れ・実施したこと・危険物という4つの引き継ぎ事項を並べた表

引き継ぐ人を決めておきます。誰が消防隊を迎えるか、どこで待つか。建物の入口で待つ人がいないと、消防隊が入口を探すところから始まります。建物の図面を持って待つ形にすると、そのあとが速く進みます。

訓練の想定を毎年変える

同じ想定を繰り返すと、動きが型になります。芯は変えず、想定だけ入れ替えます。

変えるのは4つです。

1つ目は、出火の場所です。厨房、電気室、倉庫、テナントの区画。

2つ目は、時間帯です。開店前、営業中、閉店後、夜間。

3つ目は、使えない設備です。階段の1つが使えない、放送設備が使えない、エレベーターが止まっている。

4つ目は、いない人です。統括管理者が不在、班長が不在。代理が動けるかを確かめる回を必ず入れます。

4つ目がいちばん役に立ちます。計画どおりの人がそろっている想定では、いちばん起きやすい形を試せていません。

まとめ

自衛消防組織は、消防隊が着くまでの数分間を、建物の中の人で動かすための組織です。

  • 対象は、用途と面積、階数、地下街で決まる。自分で判断せず消防署に確かめる
  • 統括管理者を置き、資格を持つ人を置くことが求められる場合がある
  • 班は、通報連絡・初期消火・避難誘導・安全防護・応急救護の5つが基本。兼ねてよい
  • いちばん弱いのは夜間と休日。人数の少ない時間帯の計画を先に作る
  • 訓練では、集まるまでの時間を測る。測らないと改善の理由が出ない

対象の範囲も必要な資格も、建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。

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よくある質問

Q. 自衛消防組織と、消防計画に書く自衛消防の体制は同じものですか。 A. 重なりますが、同じではありません。法令で自衛消防組織を置くことが求められる建物は限られています。対象でない建物でも、消防計画の中で体制を決めることは求められます。所轄の消防署に確かめてください。

Q. 統括管理者には、どの資格が要りますか。 A. 自衛消防業務講習の修了が求められる場合があります。建物の用途と規模で変わるので、所轄の消防署に確かめてください。講習は定員があり、すぐには受けられないことがあるので早めに動いてください。

Q. 人数が足りず、5つの班を作れません。 A. 兼ねて構いません。大事なのは班の数ではなく、やることに漏れがないことです。人数の少ない時間帯は、通報と避難誘導の2つに絞るという決め方でも構いません。

Q. テナントごとに組織を作りますか。 A. 作りません。建物として1つの組織を作り、その中に各テナントの人が入る形です。統括防火管理者がいる建物では、その人が全体を指揮する形が一般的です。

Q. 夜間は警備員しかいません。 A. その人数でできることに絞って計画を作ります。通報と、警備会社への連絡、避難の呼びかけ。「できないこと」を計画に書かないことが大事です。書いてあると、できるつもりになります。

Q. 訓練は年に何回やりますか。 A. 建物の用途で回数が定められています。特定用途の建物では、消火と避難の訓練を年に2回以上行うこととされています。所轄の消防署に確かめてください。

Q. 名簿はどこに貼りますか。 A. 防災センターと各階の事務室です。役割と時間帯まで書いた形にしてください。名前だけの名簿は、火災のときに使えません。

Q. 来館者の避難誘導は、どこまでやりますか。 A. 建物の外か、安全な場所までです。逃げ遅れがいないかの確認までを役割に入れてください。トイレや倉庫の中は見落とされます。

Q. けが人が出たときは、どこまで手当てしますか。 A. 救急が着くまでの応急の手当てです。無理に動かさないことが原則です。救急への引き継ぎで伝える内容(いつ、どこで、どういう状態か)を決めておくと、引き継ぎが速く済みます。

Q. 自衛消防組織を置いていないと、どうなりますか。 A. 対象の建物で置いていない場合、立入検査で是正を求められます。従わない場合は命令の対象になることがあります。対象かどうかを確かめるところから始めてください。

Q. 組織を変えたら、届出が要りますか。 A. 自衛消防組織を設置したときや変更したときは、所轄の消防署へ届け出ることとされています。消防計画の変更もあわせて届け出てください。様式は自治体で違います。

Q. 訓練の記録には何を書きますか。 A. 日時、参加者、想定、流れ、かかった時間、気づいたこと、次に直すこと。かかった時間と、次に直すことの2つが、翌年の訓練を変えます。

Q. 訓練で消防署に立ち会ってもらえますか。 A. 所轄の消防署に相談すると、立ち会いや指導をしてもらえることがあります。外から見てもらうと、自分たちでは気づけない点が出ます。日程は早めに相談してください。

Q. 自衛消防組織の資機材は、どこまでそろえますか。 A. 法令で一律に数が決まっているわけではありませんが、建物の規模に応じた備えが求められます。消火器、拡声器、懐中電灯、担架、ヘルメットが基本です。訓練で使ってみて、足りないものを足すのが確実です。

Q. 班の名前は、この5つでなければいけませんか。 A. 建物に合っていれば変えて構いません。実際に動く単位で分けるほうが使われます。名前を変えても、やることに漏れが出ない形にしてください。