連結送水管の耐圧性能試験|3年ごとの対象と費用
目次
連結送水管の耐圧性能試験は、数年に一度しか回ってこないため、忘れられやすい項目です。毎年の消防設備点検の中に紛れていて、「今年は費用が高い」と言われて初めて気づく、という形になりがちです。
この記事では、連結送水管の耐圧性能試験を、連結送水管とは何か、試験の周期と対象、当日に起きること、不合格になったとき、費用と段取りの順に整理します。周期や実施の方法は設備の状況で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署と点検の委託先に確認してください。
結論:設置から一定の年数を過ぎると、数年ごとに水圧をかけて調べる
連結送水管は、消防隊が使うための設備です。建物の側の人が普段使うものではないため、状態に気づく機会がほとんどありません。
| 内容 | |
|---|---|
| 何のための設備か | 消防隊が高層階へ水を送るための配管 |
| 使う人 | 消防隊(建物の関係者ではない) |
| 普段の点検 | 消防設備点検の中で外観などを見る |
| 耐圧性能試験 | 設置から一定の年数を経過したものについて、数年ごと |
「使ったことがないから壊れていない」とは限りません。配管は使われないまま年数が経つと、内部でさびや腐食が進みます。いざ消防隊が水を送ろうとしたときに漏れる、という事態を防ぐための試験です。
3年ごとという周期
一般には、設置から一定の年数(おおむね10年)を経過したものについて、3年ごとに耐圧性能試験を行うという運用が広く知られています。自分の建物の設置年から数えて、次がいつかを一覧に書いておきます。
消防設備点検の全体像は消防設備点検とはにまとめています。
連結送水管はどこにあるか
建物の中で見たことがある人は多いはずですが、それが何かを知らないまま通り過ぎていることがほとんどです。
| 部分 | どこにあるか |
|---|---|
| 送水口 | 建物の外、地上。赤い表示。消防車がここにつなぐ |
| 配管 | 建物の中を縦に通る |
| 放水口 | 各階の階段室付近。格納箱の中 |
| ホース・ノズル | 放水口の箱に入っていることがある(湿式・乾式で違う) |
送水口が物で塞がれているのが、いちばん多い指摘です。建物の外にあるため、自転車が置かれる、植栽が伸びる、看板が立つ、といったことが起きます。
消防車が着いてから探すようでは間に合いません。送水口の前を空けておくのは、日常の管理でできる最も効果的なことのひとつです。
湿式と乾式
配管の中に常に水が入っているもの(湿式)と、空のもの(乾式)があります。建物の階数や設置の時期によって違います。
- 湿式 … 水が入っている。凍結の心配がある地域では対策が要る
- 乾式 … 空。消防隊が送水してから水が回る
自分の建物がどちらかを知っておくと、点検の報告書が読めるようになります。
試験の当日に起きること
耐圧性能試験は、配管に実際に水圧をかけて、漏れないかを確かめる試験です。そのため、通常の点検とは段取りが変わります。
| 起きること | 建物側で必要なこと |
|---|---|
| 送水口から加圧する | 消防車は使わず、試験用のポンプを使う |
| 各階の放水口を開ける | 階段室の格納箱を開ける。鍵の手配 |
| 配管に高い圧力がかかる | 一定時間保持する |
| 漏れがないかを見て回る | 各階を回る立会い |
| 水を抜く | 排水の経路を確保する |
排水がいちばん見落とされます。乾式の配管に水を入れたあと、抜く必要があります。抜いた水がどこへ流れるか、量はどれくらいかを事前に確かめておかないと、当日に床が濡れます。
立会いと鍵
各階の放水口を開けるため、階段室や格納箱の鍵が要ります。使わない設備なので、鍵の所在が分からなくなっていることがあります。
試験の1週間前に、開ける場所と鍵の所在を一覧にしておきます。当日に探すと、その階だけ未実施になります。
不合格になったとき
試験で漏れが見つかると、配管の補修や更新が必要になります。ここが金額の大きい部分です。
| 状態 | 一般的な対応 |
|---|---|
| 接続部からの漏れ | パッキンや金具の交換 |
| 弁からの漏れ | 弁の整備・交換 |
| 配管本体の腐食 | 部分的な取り替え、または更新 |
| 送水口の不良 | 口金や表示の交換 |
| 広い範囲の劣化 | 更新工事を計画する |
3つ目は費用も工期も大きくなります。配管は建物の中を縦に通っているため、取り替えるには壁や天井を開ける工事が伴うことがあります。
直るまでのあいだ
補修や更新に時間がかかる場合、その間は設備が使えない状態になります。放置してよいものではないので、次のように進めます。
- 不良の内容と範囲を報告書に明記する
- 改修の予定を添えて消防署へ報告する
- 工事の計画と予算を組む
- 完了したら改修の報告を入れる
「不良のまま毎年同じ報告を出し続ける」のが避けたい形です。金額が大きいぶん一度には直せないことがありますが、予定を示しているかどうかで扱いが変わります。
報告のしかたは消防設備点検報告書の出し方にまとめています。
費用と段取り
耐圧性能試験は、通常の点検とは別に費用がかかります。「今年だけ高い」と感じるのはこのためです。
| 動くところ | なぜ |
|---|---|
| 建物の階数 | 放水口の数。回る手間 |
| 配管の系統の数 | 系統ごとに試験する |
| 湿式か乾式か | 乾式は注水と排水の作業が増える |
| 排水の経路 | 確保できないと仮設が要る |
| 立会いの人数 | 各階を回るため |
| 実施の時間帯 | 営業中が難しければ夜間・休日 |
見積りを取るときは、次を先に伝えます。
- 建物の階数と、放水口のおおよその数
- 設置年(分かれば前回の試験の年も)
- 湿式か乾式か
- 排水できる場所があるか
- 営業しながらの実施が必要か
4つ目が抜けると、当日に困ります。排水の経路が無いと、仮設のホースを引くことになり、時間も費用も増えます。
3年ごとの予算に入れておく
通常の点検の費用とは別枠で、3年に一度の出費として予算に入れておきます。一覧に「次回の試験年」を書いておけば、前年度の予算を組むときに思い出せます。
期限の管理は建物の法定点検一覧にまとめています。
スプリンクラーや屋内消火栓との違い
水を使う消防用設備がいくつかあるため、点検票を読むときに混ざります。誰が使うかで分けると整理できます。
| 設備 | 誰が使うか | 水の出どころ |
|---|---|---|
| 連結送水管 | 消防隊 | 消防車が送水口から送る |
| 屋内消火栓 | 建物にいる人 | 建物の受水槽・ポンプ |
| スプリンクラー | 自動 | 建物の受水槽・ポンプ |
| 連結散水設備 | 消防隊 | 消防車から送る(地下街など) |
連結送水管だけは、建物の水を使いません。消防車が着いて、送水口につないで、初めて水が出ます。だから送水口の前が塞がっていると、設備そのものが無いのと同じことになります。
屋内消火栓とスプリンクラーは建物のポンプで動くので、停電したときに非常電源が働くかどうかが効いてきます。非常用発電機の話は非常用発電機の負荷試験にまとめています。
点検票の読み分け
報告書に並ぶ項目は、この区別が分かると読めるようになります。「耐圧性能試験」と書かれているのは、連結送水管と屋内消火栓のホース・配管についてです。数年ごとにしか出てこないので、出てきた年は費用の欄も変わります。
改修や増築のときに確かめること
建物に手を入れると、連結送水管の条件が変わることがあります。
| 場面 | 確かめること |
|---|---|
| 増築して階数が増えた | 必要な設備の範囲が変わることがある |
| 送水口の前を駐輪場や花壇にした | 塞いでいないか |
| 外構を変えた | 消防車が寄り付ける動線が残っているか |
| 階段室を改修した | 放水口の格納箱が隠れていないか |
| 看板やサインを付けた | 送水口の表示が読めるか |
3つ目が見落とされます。送水口があっても、そこまで消防車が寄れなければ使えません。駐車場の配置を変える、車止めを増やす、といった工事のときは、消防車の動線を確認します。
工事のあとの届出は消防用設備等設置届の出し方にまとめています。
日常でできること
耐圧性能試験は数年に一度ですが、日常の巡回で見られることがあります。どれも道具は要りません。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| 送水口の前 | 物が置かれていないか。植栽で隠れていないか |
| 送水口の表示 | 「連結送水管送水口」の表示が読めるか |
| 送水口の口金 | キャップがあるか。破損していないか |
| 放水口の格納箱 | 扉が開くか。中に物が入れられていないか |
| 表示灯 | 点いているか(設置されている場合) |
| 配管の露出部 | 漏れの跡、さび、結露 |
1つ目と4つ目が指摘の大半です。送水口の前に自転車が並ぶ、格納箱が物置になる。どちらも「使わない設備」だから起きます。
掲示と周知で防ぐ
物を置かせないようにするには、注意するより置けない状態にするほうが続きます。
- 送水口の前に白線や表示を引く
- 自転車置き場の位置をずらす
- 植栽の剪定を年間の計画に入れる
- 格納箱に「消防用設備。物を入れないでください」と掲示する
- 館内のルールに1行入れる
4つ目は効果が大きい割に手間がかかりません。箱を開けた人が、そこが何かを知らないまま使っていることがあります。
巡回の組み方は設備点検のやり方にまとめています。
よくある質問
連結送水管の耐圧性能試験は義務ですか
消防設備点検の一部として、設置から一定の年数を経過したものについて行うこととされています。一般には設置からおおむね10年を経過したものを3年ごと、という運用が知られています。自分の建物の扱いは、所轄の消防署と点検の委託先に確認します。
湿式と乾式のどちらか分かりません
点検の報告書か、設備の図面で分かります。判断がつかない場合は、点検の委託先に聞くのがいちばん早い方法です。乾式は試験のときに注水と排水の作業が増えるため、費用と当日の段取りが変わります。凍結のおそれがある地域では、湿式の凍結対策も確かめておきます。
前回いつやったか分かりません
点検結果報告書の控えに記載があることが多くあります。点検の委託先に照会すると、過去の実施記録が出てくることもあります。分からない場合は、設置年から逆算して、やる前提で計画を立てます。
試験の日に建物は使えますか
各階の放水口を開けて配管に水圧をかけるため、階段室での作業が入ります。建物全体を止める必要は通常ありませんが、排水が出るので床が濡れる場所ができます。時間帯と場所を事前に周知しておきます。
排水はどうしますか
乾式の配管では、注水したあとに水を抜く必要があります。抜いた水がどこへ流れるか、量はどれくらいかを事前に確かめます。排水の経路が無いと仮設のホースを引くことになり、時間も費用も増えます。
送水口の前に自転車が置かれます
注意するより、置けない状態にするほうが続きます。白線や表示を引く、自転車置き場の位置をずらす、館内のルールに1行入れる、といった方法があります。消防車が着いてから探すようでは間に合わない場所です。
不合格になったら、すぐ直さないといけませんか
配管本体の腐食のように費用と工期が大きいものは、一度には直せないことがあります。改修の予定を添えて報告するのが実務です。不良のまま毎年同じ報告を出し続けるのは避けたい形で、予定を示しているかどうかで扱いが変わります。
スプリンクラーとどう違いますか
連結送水管は消防隊が使う設備で、建物の水を使いません。消防車が送水口につないで水を送ります。屋内消火栓とスプリンクラーは建物のポンプで動くので、停電時に非常電源が働くかどうかが効いてきます。この区別が分かると、点検票の項目が読めるようになります。
外構の工事で注意することはありますか
送水口の前を塞がないことと、消防車が寄り付ける動線を残すことです。駐輪場や花壇にしてしまう、車止めを増やして寄れなくなる、といったことが起きます。送水口があっても、そこまで車が寄れなければ使えません。
費用が去年より高いと言われました
耐圧性能試験の年に当たっている可能性があります。通常の点検とは別に費用がかかるため、3年ごとの出費として予算に入れておきます。一覧に次回の試験年を書いておくと、前年度の予算編成で思い出せます。
格納箱の中に物が入れられています
「消防用設備。物を入れないでください」と掲示するのが手軽で効果的です。箱を開けた人が、そこが何かを知らないまま使っていることがあります。掲示に加えて、館内のルールにも1行入れておきます。
まとめ
連結送水管は、消防隊が高層階へ水を送るための設備です。建物の側の人が普段使わないため、状態に気づく機会がありません。だからこそ、設置から一定の年数を過ぎたものは数年ごとに水圧をかけて確かめることになっています。
試験の当日は、各階の放水口を開けて配管に圧力をかけます。鍵の所在と、水を抜く経路の2つを1週間前までにそろえておくと、当日の未実施が出ません。
不合格で配管本体の腐食が見つかると、費用も工期も大きくなります。一度に直せない場合は、改修の予定を添えて報告します。不良のまま毎年同じ報告を続けるのが避けたい形です。
改修や増築のときは、送水口の前と、消防車が寄り付ける動線を確かめます。設備があっても、そこまで届かなければ使えません。
そして、日常でできることははっきりしています。送水口の前を空けておくこと、格納箱を物置にしないこと。どちらも「使わない設備」だから起きることなので、注意するより置けない状態にするほうが続きます。