スプリンクラー設備の点検|ヘッドの周りと末端試験弁
目次
スプリンクラー設備は、火災のときに自動で水をまく設備です。人が操作しないので、動くかどうかは点検でしか分かりません。そして建物の側の使い方ひとつで、効かなくなることがあります。棚を高く積む、間仕切りを足す、ヘッドに物を掛ける。どれも工事ではなく、日常の中で起きます。
この記事では、スプリンクラー設備の点検を、設備の構成、点検で見ること、日常で効かなくしてしまう使い方、末端試験弁、誤作動と漏水の順に整理します。設置の基準や点検の要領は建物の用途・規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
結論:点検で見るのは「水が出るか」と「周りが空いているか」
スプリンクラーの点検は、消防設備点検の一部として行われます。周期は他の消防用設備と同じで、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回です。
| 見ること | |
|---|---|
| 機器点検(6か月) | ヘッドの外観と周囲、配管、弁、ポンプの外観、圧力計 |
| 総合点検(1年) | 末端試験弁を開いて、流水検知装置とポンプが動くか |
| 共通 | ヘッドの周りに物が無いか。散水が妨げられていないか |
3つ目が、建物の側でいちばん効く項目です。設備が正常でも、ヘッドの周りが塞がっていれば水が届きません。ここは点検の日だけ片づけても意味がなく、日常の状態が見られます。
消防設備点検の全体像は消防設備点検とはにまとめています。
設備の構成
点検票の用語は、構成が分かると読めるようになります。建物の側が知っておくのは5つで足ります。
| 部分 | 役割 |
|---|---|
| ヘッド | 天井に付いている散水口。熱で開く |
| 配管 | 各階へ水を送る |
| 流水検知装置(アラーム弁) | 水が流れたことを検知して知らせる |
| 制御弁 | その系統を止める弁。閉めたままにしない |
| ポンプ・水源 | 加圧送水装置、受水槽 |
| 送水口 | 消防隊が補給するための口 |
4つ目がいちばん危ない部分です。工事や修理のときに制御弁を閉めて、そのまま開け忘れることがあります。この状態では、その系統は火災のときに水が出ません。
制御弁の場所を図にしておく
水が出てしまった場面で探すことになります。慌てているときに、機械室の中のどれがどの系統の弁かを読み解くのは難しい作業です。
管理室に、系統ごとの制御弁の位置を書いた図を貼っておきます。階と区画、弁の場所、弁に付けた番号。この3つがあれば、誰でもたどり着けます。夜間や休日に残っている人が使うことも考えて、専門の用語を減らして書いておきます。
制御弁の開閉は記録に残す
一般には、次のように運用している建物があります。
- 制御弁を閉めるときは、閉めた人・日時・理由を記録する
- 閉めている間は表示札を掛ける
- 開けたら、記録に開けた日時を書く
- 閉めたままの弁が無いかを、巡回で確かめる
「工事の人が閉めて、そのまま帰った」が実際に起こります。表示札と記録の2つで防ぎます。
ヘッドの周りを空ける
スプリンクラーは、ヘッドから円形に水をまくことで効きます。周りに障害があると、その陰が濡れません。
| やりがちなこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 背の高い棚を天井近くまで積む | 棚の陰に水が届かない |
| 間仕切りを天井まで立てた | 区画が変わり、ヘッドが足りなくなる |
| ヘッドに物を掛ける(ハンガー、配線) | 散水が妨げられる。破損の危険 |
| 掲示物や照明で囲む | 熱が届かず、開くのが遅れる |
| ヘッドを塗装した | 熱に反応しにくくなる |
| 什器で天井面をふさぐ | 同上 |
3つ目は危険も伴います。ヘッドは熱で開く仕組みで、力を加えると壊れて水が出ます。一度出ると、その系統の水が止まるまで出続けます。
天井の高さで型が変わる
天井が高い空間では、通常のヘッドでは熱が届くのに時間がかかります。そのため放水型など別の設備が使われることがあります。アトリウムや大空間のある建物では、その区画だけ別の設備になっていることを知っておくと、点検票が読めます。
倉庫と物販で起きやすい
背の高い棚は、倉庫やバックヤード、物販の売場で増えていきます。最初は低かった棚が、必要に応じて段を足されていく形です。
一般には、天井から一定の距離を空けることが求められています。棚の最上段の高さに線を引いて、そこを超えないルールにしておくと、現場で判断できます。
テナントの区画では、入居のときに伝えておくと後から言いにくくなりません。
末端試験弁
総合点検で必ず出てくるのが、末端試験弁です。名前のとおり、配管のいちばん端に付いている試験用の弁です。
| 内容 | |
|---|---|
| 何のためにあるか | ヘッド1個ぶんの水を流して、設備が動くかを確かめる |
| どこにあるか | 各系統の末端。最上階や最遠部が多い |
| 開けると何が起きるか | 水が流れ、流水検知装置が働き、ベルが鳴る。ポンプが起動する |
| 排水 | 試験弁の先に排水の経路がある |
ベルが鳴ります。総合点検の日に館内が騒がしくなるのはこのためです。実施日を事前に周知しておかないと、火災と間違えて混乱が起きます。
建物の側で用意すること
- 末端試験弁の場所の鍵(施錠されていることがある)
- そこまでの動線(物が置かれていないか)
- 排水の経路が詰まっていないか
- 館内放送の手配
- ベルが鳴る時間帯の周知
2つ目が実際によく塞がります。末端は最上階の隅など、人が行かない場所にあります。物置になっていると、その系統の試験ができません。
誤作動と漏水
スプリンクラーで建物側がいちばん困るのは、火災でないのに水が出ることです。被害が大きくなるので、原因と初動を知っておきます。
| 原因 | 起きやすい場所 |
|---|---|
| ヘッドへの衝撃 | 倉庫、駐車場、搬入口。台車やフォークが当たる |
| 高温 | 厨房、機械室、直射日光の当たる場所 |
| 凍結 | 屋外に近い配管、寒冷地 |
| 経年劣化 | 設置から年数が経ったヘッド |
| 配管の腐食 | 漏水として現れる |
1つ目がいちばん多い形です。天井が低い場所や、台車が通る動線にあるヘッドは、ガードを付けることで防げます。
水が出てしまったとき
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 火災かどうかを確かめる(先に止めない) |
| 2 | 火災でなければ、その系統の制御弁を閉める |
| 3 | 消防設備の業者へ連絡する |
| 4 | 水損の範囲を確認し、下階への波及を止める |
| 5 | 復旧したら、制御弁を必ず開ける |
| 6 | 経緯を記録する |
5を忘れるのが、いちばん怖い事故につながります。止めたままにすると、その系統は火災のときに機能しません。閉めた弁の記録と表示札が効いてくるのはここです。
制御弁の場所を、管理室の図に落としておきます。慌てている場面で探すことになるためです。
閉鎖型と開放型
ヘッドにはいくつかの型があり、建物の用途で使い分けられています。点検票の用語が読めるようになります。
| 型 | 仕組み | どこで使うか |
|---|---|---|
| 閉鎖型 | 熱でヘッドが開く。開いたところだけ出る | 事務所、店舗、住戸など大半 |
| 開放型 | ヘッドは常に開いている。弁で一斉に出す | 舞台部など |
| 放水型 | 高い天井に向けて放水する | アトリウム、大空間 |
大半の建物は閉鎖型です。「1つのヘッドが開くと全部から水が出る」と思われていることがありますが、閉鎖型では熱で開いたヘッドからだけ出ます。
予備のヘッドを備えておく
ヘッドが壊れたときのために、予備のヘッドと交換の工具を備えておくこととされているのが一般的です。
どこに置いてあるかを、管理室の図に落としておきます。必要になるのは事故が起きた直後で、探している余裕がありません。予備が使われたら補充する、という手順まで決めておきます。
ポンプと水源
スプリンクラーは、建物のポンプで水を送ります。だからポンプと水源の状態も、設備の一部として点検されます。
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| 消火ポンプ | 起動するか、圧力が出るか |
| 圧力計 | 規定の範囲に入っているか |
| 呼水槽 | 水が入っているか |
| 水源(受水槽) | 必要な量が確保されているか |
| 非常電源 | 停電時にポンプが動くか |
5つ目は非常用発電機の話につながります。停電と火災が同時に起きたときに、ポンプが動かなければ水は出ません。発電機の負荷試験は非常用発電機の負荷試験にまとめています。
圧力計は日常で見られる
消火ポンプの周りには圧力計が付いています。針が規定の範囲に入っているかは、巡回で見られます。
下がっているなら、どこかで漏れている可能性があります。点検を待たずに業者へ連絡する材料になります。正常なときの針の位置を写真に撮って、ポンプ室に貼っておくと、誰が見ても分かります。
改装のときに確かめること
間仕切りや天井を変えると、ヘッドの配置と区画が合わなくなることがあります。
| 場面 | 起きること |
|---|---|
| 間仕切りを足した | 新しくできた部屋にヘッドが無い |
| 天井を下げた | ヘッドの位置を移す必要がある |
| 用途を変えた | 必要な設備の範囲が変わることがある |
| 大きな什器を入れた | 散水が妨げられる |
| 天井を張り替えた | ヘッドの取り付けが甘くなる |
内装の工事を計画する段階で、所轄の消防署に相談するのがいちばん確実です。工事が終わってから設置を求められると、天井を開け直すことになります。
工事のあとの届出は消防用設備等設置届の出し方にまとめています。
よくある質問
スプリンクラーの点検は自分でできますか
一定の規模・用途の建物では、消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要とされています。ただし、ヘッドの周りに物が無いか、制御弁が開いているか、圧力計が正常かは日常の巡回で見られます。自分の建物がどちらかは所轄の消防署で確認します。
ヘッドの近くに棚を置いてはいけませんか
散水が妨げられると効きません。天井から一定の距離を空けることが求められています。棚の最上段の高さに線を引いて、そこを超えないルールにしておくと現場で判断できます。テナントの区画では入居のときに伝えておきます。
総合点検でベルが鳴るのはなぜですか
末端試験弁を開いて、実際に水を流して確かめるためです。流水検知装置が働き、ベルが鳴り、ポンプが起動します。実施日を事前に周知しておかないと、火災と間違えて混乱が起きます。館内放送も用意しておきます。
火災でないのに水が出ました
まず火災かどうかを確かめ、火災でなければその系統の制御弁を閉めます。業者へ連絡し、水損の範囲を確認します。復旧したら制御弁を必ず開けます。閉めたままにすると、その系統は火災のときに機能しません。
制御弁が閉まっていました
その系統は水が出ない状態でした。すぐ開け、いつから閉まっていたかを調べます。工事や修理のときに閉めて開け忘れる形が多いため、閉めた人・日時・理由を記録し、表示札を掛ける運用にしておきます。巡回でも確かめます。
ヘッドに台車が当たりそうです
ガードを付けることで防げます。倉庫、駐車場、搬入口など、台車やフォークが通る動線にあるヘッドは、衝撃で壊れて水が出ることがあります。天井が低い場所も同様です。
ヘッドが1つ開くと、全部から水が出ますか
大半の建物で使われている閉鎖型では、熱で開いたヘッドからだけ出ます。全部から一斉に出るのは開放型で、舞台部など限られた場所で使われます。自分の建物がどちらかは点検票で分かります。
予備のヘッドはどこに置きますか
管理室の図に置き場所を落としておきます。必要になるのは事故が起きた直後で、探している余裕がありません。予備のヘッドと交換の工具を備えておくこととされているのが一般的です。使ったら補充する、という手順まで決めておきます。
ヘッドの交換は自分でできますか
消防用設備の工事にあたるため、資格を持つ人が行います。壊れて水が出ている場面では、まず制御弁を閉めて業者へ連絡します。予備のヘッドを備えておくのは、業者が来たときにすぐ交換できるようにするためで、自分たちで付け替えるためのものではありません。
圧力計の針が下がっています
どこかで漏れている可能性があります。点検を待たずに業者へ連絡する材料になります。正常なときの針の位置を写真に撮ってポンプ室に貼っておくと、誰が巡回しても違いに気づけます。
改装で間仕切りを足します
新しくできた部屋にヘッドが無い、天井を下げてヘッドの位置がずれる、といったことが起きます。内装の工事を計画する段階で所轄の消防署に相談すると、後から天井を開け直す手戻りを防げます。
まとめ
スプリンクラー設備の点検は、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回です。総合点検では末端試験弁を開いて実際に水を流すため、ベルが鳴ります。実施日の周知を忘れると混乱します。
建物の側でいちばん効くのは、ヘッドの周りを空けておくことです。背の高い棚、天井まで立てた間仕切り、ヘッドに掛けた物。どれも工事ではなく日常の中で起きます。棚の最上段に線を引いておくと現場で判断できます。
いちばん怖いのは、制御弁が閉まったままになっていることです。工事のときに閉めて開け忘れる形で起こります。閉めた人・日時・理由を記録し、表示札を掛け、巡回で確かめる。この3つで防げます。
制御弁の位置は、管理室に図を貼っておきます。慌てている場面で機械室の弁を読み解くのは難しい作業です。階と区画、弁の場所、弁の番号の3つがあれば、誰でもたどり着けます。
そして、水が出てしまったときは、火災かどうかを先に確かめてから止めます。復旧したら制御弁を必ず開けます。止めたままにするのが、いちばん重い結果につながります。