屋内消火栓の点検|1号と2号の違いと放水試験
目次
屋内消火栓は、廊下の赤い扉の中にあるホースと筒先のことです。人が操作して使う設備なので、いざというときに建物の中の人が扱えるかどうかが問われます。ところが点検の記録を見ると、扉の前に段ボールが積まれていた、ホースが固まっていた、という指摘が毎回のように出ます。
この記事では、屋内消火栓の点検を、1号と2号の違い、機器点検で見るところ、総合点検の放水試験、扉の前をふさがない管理、指摘が出たあとの直し方の順に整理します。設置の基準と点検の要領は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
結論:屋内消火栓の点検は、動くことと、たどり着けることの2つを見る
屋内消火栓の点検は、消防用設備等の点検の一部として行われます。周期は他の消防用設備と同じで、機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回とされています。
見るところは大きく2つに分かれます。
1つ目は、設備が動くかどうかです。ポンプが起動するか、規定の圧力と水量が出るか、表示灯が点くか。ここは点検の資格を持つ人が測ります。
2つ目は、そこまでたどり着けるかどうかです。扉の前に物が置かれていないか、標識が見えるか、ホースが取り出せるか。こちらは日常の使い方で決まる部分で、点検の日だけ片づけても意味がありません。
指摘のほとんどは2つ目から出ます。設備そのものは業者が管理しているので大きく壊れていることは少なく、周りの使い方が変わっていることのほうが多いからです。
1号と2号で、必要な人数が違う
屋内消火栓には種類があり、何人で操作する前提かが違います。ここを知らないと、訓練の組み方を間違えます。
| 操作の前提 | 特徴 | |
|---|---|---|
| 1号消火栓 | 2人以上での操作を前提としている | 放水量が多い。ホースを伸ばしてから開栓する |
| 易操作性1号消火栓 | 1人でも操作できる | 1号と同じ性能で、ホースが引き出しやすい形 |
| 2号消火栓 | 1人でも操作できる | 放水量は1号より少ない。扱いやすい |
古い建物には1号が入っていることが多くあります。1号は、ホースを全部伸ばしてから栓を開ける前提で作られています。伸ばさずに開けるとホースが暴れるため、1人で使うのは難しいとされています。
自分の建物がどれかは、消火栓の扉か箱に表示があります。分からない場合は、点検を頼んでいる業者か所轄の消防署に確かめてください。訓練の内容は、この種類に合わせて決めます。
機器点検で見るところ
6か月に1回の機器点検では、外から見て分かることと、簡単に動かして分かることを確かめます。
1つ目は、箱と扉です。開くか、表示灯が点いているか、「消火栓」の標識があるか。
2つ目は、ホースと筒先です。本数はそろっているか、折り目のところが固くなっていないか、結合金具が回るか。
3つ目は、弁と配管です。開閉弁が固着していないか、漏れがないか、圧力計が正常な範囲を指しているか。
4つ目は、ポンプと起動装置です。起動用の押しボタンか発信機が動くか、ポンプの外観に異常がないか。
ホースには使用期限の考え方があります。製造からの年数や、耐圧試験の結果で判断されます。詰め替え用のホースを用意している建物もあります。交換の目安は設置している製品によって違うので、点検業者に確かめてください。
総合点検では、実際に水を出す
1年に1回の総合点検では、実際に放水して性能を確かめます。
確かめるのは3つです。
1つ目は、ポンプが起動することです。消火栓の弁を開けると、圧力が下がってポンプが自動で起動する仕組みになっています。起動したことを、ポンプ室の表示か音で確かめます。
2つ目は、規定の放水圧力と放水量が出ることです。ノズルの先に測定器を当てて測ります。建物のいちばん不利な場所、つまり最上階のいちばん遠い消火栓で測るのが基本です。
3つ目は、非常電源に切り替わっても動くことです。停電したときにポンプが動かなければ意味がありません。
放水試験の日は、水の行き先を先に決めておきます。屋上や外に出す、バケツで受ける、排水口へ流す。決めていないと、廊下や階段が水浸しになります。テナントが入っている建物では、事前に日時を知らせておくと苦情が減ります。
扉の前をふさがない
屋内消火栓でいちばん多い指摘は、扉の前に物が置かれていることです。設備は正常でも、使えなければ同じです。
置かれやすい場所は決まっています。
1つ目は、バックヤードの通路です。在庫や什器の仮置きになります。
2つ目は、非常階段の踊り場です。「一時的に」置いたものが動かなくなります。
3つ目は、テナントの店先です。看板や台車が消火栓の前に出ます。
直し方は、床に線を引くことです。消火栓の前に「置かない範囲」をテープで示すと、注意するより早く定着します。テナントには、入居のときの説明と、年に1回の書面で伝えます。
「気をつける」では直りません。置いてよい場所を別に用意すると、はじめて物が動きます。ふさがれる場所は、たいてい他に置き場が無い場所です。
指摘が出たあとの動き方
点検で不良と判定された項目は、直して報告する必要があります。放置すると次の点検でも同じ指摘が残ります。
直すまでの流れは4段です。
1つ目は、指摘の中身を分けることです。部品の交換が要るもの、清掃で直るもの、物をどけるだけのもの。3つ目はその日のうちに終わります。
2つ目は、費用のかかるものを見積もることです。ポンプの部品、ホースの交換、配管の補修。金額が出ないと社内で決められません。
3つ目は、期限を決めることです。次の点検までに直すのか、今年度中なのか。
4つ目は、直したことを記録に残すことです。いつ、誰が、何をしたか。次の点検のときに業者へ渡します。
指摘の一覧を、前回と並べて見ます。同じ指摘が3回続いているなら、直し方ではなく建物の使い方に原因があります。設備を直しても、また同じ状態に戻ります。
訓練でホースを伸ばしてみる
屋内消火栓は、使ったことがない人がほとんどです。年に1回の消防訓練で、実際にホースを伸ばす時間を取ります。
やることは3つです。
1つ目は、扉を開けて中を見ることです。開け方を知らない人が多くいます。
2つ目は、ホースを1本伸ばすことです。放水まではしなくても、重さと長さが分かります。
3つ目は、2人で組む形を確かめることです。1号なら、筒先を持つ人と栓を開ける人に分かれます。
訓練のあとは、ホースをきちんと畳んで戻します。畳み方が違うと、次に引き出したときに絡みます。畳み方は点検業者に教わって、写真を箱の中に貼っておくと残ります。
建物が変わったら、設備も見直す
間仕切りを足す、用途を変える、什器を増やす。建物の使い方が変わると、消火栓の有効範囲が変わります。
見直すきっかけは3つです。
1つ目は、内装の工事をしたときです。新しい壁が、ホースの届く範囲を切ることがあります。
2つ目は、テナントが入れ替わったときです。業種が変わると、置かれる物の量と場所が変わります。
3つ目は、倉庫として使い始めたときです。もともと事務室だった部屋に棚を並べると、消火栓の前がふさがります。
工事の前に、消防設備の図面を見ます。終わってから「届かなくなった」と分かると、やり直しになります。判断に迷うものは所轄の消防署に相談してください。
ポンプの周りも点検の対象になる
屋内消火栓は、消火栓の箱だけの設備ではありません。水源、ポンプ、配管、非常電源まで含めて1つの設備です。箱だけを見ていると、いちばん止まりやすい部分を見落とします。
見るところは4つあります。
1つ目は、水源です。受水槽か専用の水槽から水を取ります。消火用に確保しておく量が決まっているので、他の用途で使い切らないようにします。水位計が動いているかも確かめます。
2つ目は、ポンプ室です。ポンプの外観、軸まわりの漏れ、異音、振動。ポンプ室が物置になっている建物が多くあります。扉が開かない、前に荷物がある状態だと、いざというときに誰も入れません。
3つ目は、制御盤です。表示灯、切替スイッチの位置、警報のブザー。手動と自動の切り替えが「手動」のまま戻っていないことが実際にあります。点検や工事のあとに戻し忘れる形です。
4つ目は、非常電源です。非常用発電機か蓄電池から電気を取ります。発電機の燃料が入っているか、蓄電池の交換時期が来ていないか。ここは別の点検と重なる部分なので、担当を決めておかないと抜けます。
制御盤の切り替えの位置だけは、毎月見る形にします。ここが「手動」のままだと、火災のときにポンプが自動で動きません。表示を写真に撮って正しい位置を貼っておくと、誰でも確かめられます。
費用と契約の見方
屋内消火栓の点検は、消防設備点検の契約の中に含まれているのが普通です。何が含まれていて、何が別料金かを先に見ておきます。
見るのは4つです。
1つ目は、点検の回数です。機器点検と総合点検が、それぞれ年に何回含まれているか。
2つ目は、報告書の作成と提出が含まれるかです。作成までで、提出は自分たちという契約があります。
3つ目は、不良箇所の修繕が別かどうかです。ほとんどの契約では別になります。部品代と作業代の考え方を先に聞いておくと、見積もりが出たときに判断できます。
4つ目は、放水試験にかかる費用と時間です。水の処理や養生を業者に頼むなら、そのぶんが乗ります。
契約書を毎年読み直す必要はありませんが、担当者が替わったときには一度読みます。前任者が口頭で決めていた範囲は、契約書に書かれていないことがあります。書かれていないことは、次の年には無かったことになります。
まとめ
屋内消火栓の点検は、設備が動くこととそこまでたどり着けることの2つを見ます。前者は点検業者が測り、後者は日々の使い方で決まります。
- 周期は機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回とされている
- 1号は2人以上、易操作性1号と2号は1人でも操作できる。訓練は種類に合わせる
- 総合点検では、いちばん不利な場所で放水圧力と水量を測る
- 指摘のほとんどは「扉の前に物がある」こと。床に線を引くと定着する
- 同じ指摘が3回続いたら、設備ではなく建物の使い方に原因がある
設置の基準も点検の要領も、建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所轄の消防署に確認してください。
よくある質問
Q. 屋内消火栓の点検は、自分たちでできますか。 A. 消防用設備等の点検は、一定の規模の建物では有資格者が行うものとされています。小規模な建物では関係者が行える場合もあります。自分の建物がどちらかは、所轄の消防署に確かめてください。日常の見回りは、資格に関係なく誰でもできます。
Q. 点検の結果は、どこへ出しますか。 A. 所轄の消防署へ報告します。報告の周期は建物の用途で違い、特定防火対象物は1年に1回、それ以外は3年に1回とされています。自分の建物がどちらかは消防署に確かめてください。
Q. ホースはどのくらいで交換しますか。 A. 製品と設置の状況によります。耐圧試験の結果で判断する形が一般的です。設置から10年を目安に試験を行うという考え方が使われていますが、扱いは製品によって違うので点検業者に確かめてください。
Q. 放水試験で、建物の中が濡れないようにできますか。 A. 排水の経路を先に決めておけば防げます。屋上や外の排水口へ導く、ホースを窓から出す、受ける道具を用意する。試験の前に業者と決めておくことが確実です。
Q. 表示灯が消えていました。すぐ直す必要がありますか。 A. 表示灯は、暗いときに消火栓の位置を示すものです。消えていると場所が分かりません。電球や安定器の交換で直ることが多いので、気づいた時点で業者に連絡してください。
Q. 消火栓の前に自動販売機を置いてよいですか。 A. 使用の妨げになるため避けます。置く場所を変えられない場合は、所轄の消防署に相談してください。「動かせるから大丈夫」と自分で判断しないことです。
Q. 2号消火栓なら、訓練は1人でよいですか。 A. 1人で操作できる設備ですが、訓練は複数人で行うほうが実際に近くなります。通報する人、避難を誘導する人、消火にあたる人。火災のときに1人だけということはありません。
Q. 消火栓のポンプは、いつ動いているか分かりますか。 A. ポンプ室や防災センターに表示があります。誤作動で動きっぱなしになると、ポンプが傷みます。表示を見る担当と時間を決めて、毎日確かめる形にしてください。
Q. テナントが勝手に扉の前に物を置きます。 A. 口頭の注意だけでは戻ります。床の線引き、写真つきの書面、契約時の説明の3つをそろえてください。改善されない場合は、所轄の消防署から指導が入ることがあります。
Q. 建物の増築をしたら、消火栓を足す必要がありますか。 A. 増築の規模と用途によって変わります。工事の計画の段階で確かめるのが確実です。所轄の消防署と、設計を担当する建築士に相談してください。
Q. ポンプが自動で起動しませんでした。どこを疑いますか。 A. 制御盤の切り替えが「手動」になっていないか、起動用の圧力スイッチが動いているか、非常電源に問題がないかの順に見ます。自分で配線に触らないことです。点検業者に連絡してください。
Q. 消火栓の水は、掃除や散水に使ってよいですか。 A. 使わないでください。消火用に確保しておく量が決まっているとされています。使った量がすぐ戻るとは限りません。掃除用の水栓は別に用意してください。
Q. 点検の日に、テナントに立ち会ってもらう必要がありますか。 A. 専有部に消火栓がある場合は、立ち入る必要があるため事前に知らせます。立ち会いまでは求めない建物が多くありますが、入室の可否と鍵の扱いは先に決めておいてください。