清掃作業計画の作り方|日常と定期を分ける
目次
清掃は毎日入っているのに、床のワックスがいつかけられたのか誰も知らない。日常清掃と定期清掃が分けて管理されていない建物では、この状態が起きます。ビル管法の対象になる建物では、清掃について計画を立てて実施することが求められています。
この記事では、清掃作業計画を、日常と定期の分け方、計画に書く項目、周期の決め方、点検と記録、業者との契約の順に整理します。求められる内容は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。
結論:毎日やることと、周期でやることを分けて書く
清掃作業計画は、やることを2つに分けて書きます。
1つ目は、日常清掃です。毎日、または毎週行うもの。ごみの回収、トイレの清掃、床の掃き拭き、ガラスの拭き上げ。
2つ目は、定期清掃です。月、半年、年といった周期で行うもの。床の洗浄とワックス、ガラスの全面清掃、カーペットの洗浄、照明器具の清掃。
分けないと、定期清掃が消えます。毎日の清掃は目に見えるので続きますが、年に1回のことは誰も覚えていません。計画に書いて、日付を決めておかないと、気づいたら3年やっていない状態になります。
計画に書く項目
計画は、誰が読んでも同じ動きができる形にします。
書くのは5つです。
1つ目は、場所です。階、部屋、共用部。図面と対応させると分かりやすくなります。
2つ目は、作業の内容です。掃く、拭く、洗う、磨く。具体的に書きます。
3つ目は、周期です。毎日、週1回、月1回、年2回。
4つ目は、担当です。清掃業者か、自社の担当か、テナントか。
5つ目は、使う資機材と薬剤です。床材によって使える薬剤が違います。
4つ目が抜けている計画が多くあります。「やること」は書いてあっても、誰がやるかが書かれていないと、共用部とテナント区画の境目が空白になります。
周期の決め方
周期は、汚れ方で決めます。同じ建物でも場所によって違います。
見るのは4つです。
1つ目は、人の通る量です。エントランス、エレベーターホール、トイレ。通る人が多い場所ほど短い周期にします。
2つ目は、外からの汚れの入り方です。雨の日の玄関、駐車場に近い入口。
3つ目は、床材です。カーペット、塩ビ、石材。手入れの方法と周期が違います。
4つ目は、見られる場所かどうかです。来客の目に触れる場所は、汚れる前に手を入れます。
全部を同じ周期にしないでください。「年2回の床洗浄」と一律に決めると、エントランスは足りず、使っていない会議室は多すぎます。場所ごとに変えると、同じ費用でも結果が良くなります。
トイレの清掃を別立てにする
トイレは、建物の印象をいちばん左右する場所です。計画の中で別立てにします。
決めるのは4つです。
1つ目は、1日の回数です。朝1回だけか、昼にも入るか。利用者が多い建物では、1日2回以上にしている例があります。
2つ目は、点検の時間です。清掃とは別に、見回って補充だけする時間を作ります。
3つ目は、補充品の管理です。トイレットペーパー、石けん、ペーパータオル。切らさない担当を決めます。
4つ目は、におい対策です。排水口のトラップの封水、換気扇の作動。
2つ目が効きます。清掃を増やすより、見回って紙を補充するだけの時間を1回足すほうが、苦情は減ります。時間も費用もかかりません。
点検と記録
計画どおりに行われているかを、建物の側で確かめます。業者の報告だけに任せません。
やることは4つです。
1つ目は、日常清掃の記録です。日付と担当者。トイレの中に点検表を貼る形がよく使われています。
2つ目は、定期清掃の実施の記録です。いつ、どこを、何をしたか。作業前後の写真があると確実です。
3つ目は、建物の側の巡回です。週に1回、決めた場所を見ます。
4つ目は、苦情の記録です。どこについて、いつ、何を言われたか。
4つ目を集めると、計画の弱いところが見えます。同じ場所の苦情が続くなら、周期か方法が合っていません。苦情を集めるだけで、次の計画の材料になります。
業者との契約で見るところ
清掃の契約は、何をどのくらいやるかが曖昧になりがちです。
見るのは5つです。
1つ目は、日常清掃の時間と人数です。1日何時間、何人。
2つ目は、定期清掃の内容と回数です。年に何回、どこを。
3つ目は、資機材と消耗品の負担です。洗剤、ペーパー類をどちらが用意するか。
4つ目は、対象の範囲です。共用部だけか、テナント区画も含むか。屋上、駐車場、外周が抜けやすい場所です。
5つ目は、追加で頼む場合の単価です。臨時の清掃を頼むときの金額。
4つ目がいちばん揉めます。「外周の落ち葉は誰が掃くのか」が決まっていない建物があります。図面に色を塗って範囲を示すと、あとで揉めません。
資機材と薬剤の置き場
清掃の道具と薬剤は、置き場を決めておきます。
決めるのは4つです。
1つ目は、場所です。鍵のかかる倉庫。水が使えると便利です。
2つ目は、薬剤の管理です。混ぜてはいけないものがあります。表示のある容器に入れたまま保管します。
3つ目は、換気です。閉め切った倉庫に薬剤を置くと、においがこもります。
4つ目は、在庫の確認です。月に1回、数を確かめます。
薬剤を詰め替えて表示の無い容器に入れないでください。何が入っているか分からない容器は、事故のもとになります。安全データシートを一緒に置いておくと、万一のときに使えます。
年間の計画を1枚にする
日常と定期を分けたら、定期のほうを1枚のカレンダーにします。
作るのは4つです。
1つ目は、縦に作業、横に月を並べることです。年2回のものは、2つの月に印が付きます。
2つ目は、実施した日を書き込む欄を作ることです。予定と実績が1枚で見えます。
3つ目は、担当を書くことです。業者か自社か。
4つ目は、費用の欄を作ることです。年間の合計が見えます。
1枚にすると、抜けが見えます。「今年はまだやっていない作業」が、色の付いていないマスとして残ります。年度の途中で確かめるときに、この1枚があれば足ります。
特定建築物での位置づけ
ビル管法の対象になる建物では、清掃について定めがあります。
押さえるのは3つです。
1つ目は、日常清掃を行うことです。
2つ目は、大掃除を定期に行うことです。6か月以内ごとに1回、統一的に行うこととされています。
3つ目は、記録を残すことです。実施した内容と日付。
「大掃除」は、年末の掃除のことではありません。定期的に、建物を統一的に清掃することを指します。日常清掃と別に、計画して記録するものです。詳しい扱いは所在地の保健所に確かめてください。
建物の側の巡回で見る3つ
清掃の品質は、業者の報告だけでは分かりません。建物の側が、週に1回だけ見ます。全部を見る必要はありません。
見るのは3つです。
1つ目は、いちばん人が通る場所です。エントランスとエレベーターホール。来館者が最初に見る場所なので、ここが整っていれば印象は保てます。
2つ目は、いちばん汚れやすい場所です。トイレ、喫煙のできる場所、ごみ置き場。苦情がいちばん出る場所でもあります。
3つ目は、いちばん忘れられる場所です。非常階段、屋上、機械室の前、駐車場の隅。誰も見ないから、たまっていきます。
3つ目を月に1回でも見ると、大きな差が出ます。清掃の契約に入っていないことが多い場所なので、入っているかどうかを確かめるところから始まります。入っていなければ、追加するか自社でやるかを決めます。
見た結果は写真で残します。同じ場所を毎回同じ角度から撮ると、良くなっているか悪くなっているかが分かります。文章の報告より、写真2枚の比較のほうが伝わります。
清掃の人が働きやすい形にする
清掃の品質は、働く人の環境で決まる部分があります。ここを整えると、続く人が増えます。
整えるのは4つです。
1つ目は、水が使える場所です。モップを洗う流し、バケツを置く場所。遠いと、洗う回数が減ります。
2つ目は、道具の置き場です。鍵のかかる場所に、まとめて置けること。
3つ目は、休憩する場所です。座れる場所があるかどうか。
4つ目は、連絡の手段です。困ったときに誰に言えばよいか。建物の担当者の連絡先を渡しておきます。
4つ目が効きます。清掃の人は、建物の中でいちばん多くの場所を毎日見ています。電球が切れている、水が漏れている、扉が閉まらない。気づいたことを言える相手がいれば、その情報が建物の側に届きます。言える相手がいないと、情報はそこで消えます。
特別清掃をどこに入れるか
日常と定期のほかに、その時期にしか要らない清掃があります。年間の計画に先に入れておきます。
入れるのは4つです。
1つ目は、季節のものです。落ち葉、雪、花粉、梅雨のカビ。地域によって時期が決まっています。
2つ目は、行事に合わせたものです。年度末の異動、大きな催し物の前後、来客の多い時期。
3つ目は、工事の前後です。改装や設備の更新でほこりが出ます。工事の見積もりに清掃を含めてもらうと、あとで揉めません。
4つ目は、テナントの入退去です。原状回復の範囲と、共用部の清掃をどちらが持つか。
1つ目と2つ目は、前の年のカレンダーを見れば分かります。「去年の11月に落ち葉の苦情が来た」なら、今年は10月末に入れておきます。苦情が来てから頼むと、業者の予約が取れません。
まとめ
清掃作業計画は、日常清掃と定期清掃を分けて書くものです。
- 分けないと定期清掃が消える。年に1回のことは誰も覚えていない
- 書くのは、場所・内容・周期・担当・資機材の5つ。担当が抜けやすい
- 周期は場所ごとに変える。一律にすると、足りない場所と多すぎる場所が出る
- トイレは別立てにする。清掃を増やすより、見回りを1回足すほうが効く
- 契約では、対象の範囲を図面に色で示す。屋上・駐車場・外周が抜けやすい
求められる内容は建物の用途と規模で変わります。自分の建物に何が適用されるかは、所在地の保健所に確認してください。
よくある質問
Q. 清掃作業計画は、業者に作ってもらってよいですか。 A. 原案を業者に作ってもらうのは構いません。ただし範囲と担当は建物の側で決めてください。業者が作ると、自社の作業の範囲だけが書かれた計画になります。
Q. 定期清掃の周期は、どう決めますか。 A. 場所ごとに、通行量と床材と見られるかどうかで決めます。一律に決めないことです。まず1年やってみて、汚れ方を見てから翌年に調整する形でも構いません。
Q. テナント区画は計画に入れますか。 A. 誰がやるかを書いておいてください。テナントが自分で行う場合も、計画の表に「テナント」と書くだけで、空白が消えます。共用部との境目がはっきりします。
Q. 大掃除とは何ですか。 A. 年末の掃除のことではありません。建物を統一的に清掃することを指し、6か月以内ごとに1回行うこととされています。日常清掃とは別に計画して記録します。詳しくは所在地の保健所に確かめてください。
Q. 清掃の記録はどこに残しますか。 A. 日常清掃はトイレなどに貼る点検表、定期清掃は実施の報告書です。1つのファイルにまとめて、年ごとに綴じてください。あとから実施の有無を確かめられます。
Q. トイレの苦情が減りません。 A. 清掃の回数を増やす前に、見回って補充するだけの時間を作ってみてください。紙が切れている、においがこもっているという苦情は、これで多くが消えます。
Q. 外周の落ち葉は誰が掃きますか。 A. 契約で決まっていなければ、どちらもやりません。図面に色を塗って範囲を示し、契約に添付してください。屋上、駐車場、外周が抜けやすい場所です。
Q. 薬剤の管理で気をつけることはありますか。 A. 詰め替えて表示の無い容器に入れないでください。混ぜてはいけないものがあります。安全データシートを置き場に一緒に置いてください。
Q. 清掃の品質をどう確かめますか。 A. 週に1回、建物の側で決めた場所を見てください。毎回同じ場所を見ることが大事です。写真を撮って並べると、良くなっているか悪くなっているかが分かります。
Q. 費用を下げたいのですが。 A. 回数を一律に減らすより、場所ごとの周期を見直してください。使っていない会議室の周期を延ばし、エントランスはそのままにする、という調整で結果が変わります。
Q. 建築物清掃業の登録がある業者に頼むべきですか。 A. 登録は一定の基準を満たしていることの目安になります。義務ではありませんが、特定建築物では登録業者に頼んでいる建物が多くあります。所在地の保健所で登録の状況を確かめられることがあります。
Q. 計画は毎年作り直しますか。 A. ゼロから作り直す必要はありません。前年の計画に、実績と苦情を踏まえた調整を加える形で足ります。年度の初めに1時間で見直せる形にしておいてください。
Q. 清掃の人からの気づきを、どう集めますか。 A. 連絡先を渡して、気づいたら言ってよいと伝えることから始まります。紙のノートを1冊置いて、書いてもらう形にしている建物もあります。設備の不具合の発見が早くなります。
Q. 巡回の写真は、どのくらい残しますか。 A. 1年分あれば足ります。同じ場所を同じ角度で撮り続けることが大事で、枚数は多くなくて構いません。契約を見直すときの材料になります。
Q. 工事のあとの清掃は、誰が持ちますか。 A. 工事の見積もりに含めてもらうのが確実です。含めていないと、工事業者は片づけて帰るだけになります。共用部まで清掃するかを、契約の前に決めてください。